2020/07/15-2020/07/16 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に羽月 柊さんが現れました。<補足:待合済:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。黒のスーツに竜を模した仮面をつけている。小さな白い竜を2匹連れている。>
ご案内:「落第街 路地裏」に黒龍さんが現れました。<補足:黒髪黄金瞳 黒ずくめ姿 丸型サングラス 煙草>
羽月 柊 >  
満月の煌めく夜。

落第街に落ちる影から、ぬぅとそれは現れた。
カツン、と革靴の音が静寂に響く。

2匹の白を連れ、それらとは対照的に、
黒のスーツに夜空のような紫髪の長髪をふわりとなびかせた、
表情を隠すように竜を模した仮面の男。

今まで気配は無かった。
男は"あちら側"の道から帰って来た所だったからだ。
精霊や妖精、そういったモノ達が通る、この世とは少しだけズレた場所。
現世からは少し遠く、異世界とはまた違う。
元々はこの世界で秘匿されていた場所。

ただ、それが人間にとって良いモノという訳は無い。
柊は周囲を見回すことなく、一旦立止まると、
疲弊から息を落ち着けるように目を閉じて、嘆息した。

黒龍 > ――男が”こちら側”に戻ってきて一息を付いた直後。
まるで狙ったかのようなタイミングで、路地裏に靴音を響かせて堂々と歩いてくる黒ずくめの男が一人。
目元は暗がりと丸い形のサングラスで分かり難いが、垣間見える黄金の眼差しは鋭い。
口には火の点いた煙草を咥えており、紫煙を燻らせながら気配も音も隠す気も偲ぶ気も全く無い。
よく見れば、その左手は黒い義手のような金属製のそれであり、その左手で口元の煙草を一度摘みながら。

「――へぇ、何か面白そうな奴が居やがるな」

そんな台詞とは裏腹に、声色は淡々としていて何処か気だるそうでもある。
左手で口元の煙草を手に持ちながら、盛大に宙へと紫煙を吐き出しつつ――

「それに、この残り香は――アレか、”向こう側”ってやつかね」

と、何処か面白がるようにまた独り言の如く口にして。

羽月 柊 >  
自分ではない靴音に閉じていた眼をそちらへ向ける。

色素の薄い桃眼は、この影の世界では灯が無ければあっさりと塗りつぶされる。
それとは反して、傍らの小竜たちの瞳は、
暗がりの猫の眼のように爛々と月明りを反射していた。

「……どうも、何か用事かな。」

独り言の真意を測るように、黒髪の男を見つめて、
わざとらしく首を傾げる。

ここに"出た"時には居なかった。
出た時に出くわすことならまだし、"向こう側"の感覚を嗅ぎ取られた。
それだけで、裏の世界であるこの場所では、警戒せねばならない。
だが、もう一度向こう側に潜るには身体が持たない。

軽めの魔術がいつでも発動できるように、指を鳴らす準備だけする。

黒龍 > 「――いんや、偶々通り掛かったらお前さんが”向こう側”の残り香を漂わせてたもんでな…ま、それなりに”鼻が利く”んだよ」

と、右手の指先で己の鼻先をちょいちょいと示しつつ。それが真実か否かは兎も角として。
男も興味深いが、彼の傍らに居る小竜達に黄金の視線が僅かに細まる…が、特に何かする素振りは見せず。

「――あー何かするつもりなら止めとけ。別にこっちにゃ争う気は無いがやるなら構わないぜ」

彼の仕草を目にすれば、如何にも面倒臭ぇ、とばかりに顔を歪めて右手をヒラヒラと軽く振ってみせる。

「まぁ、しかしまた面白いモンを連れてるな……あン?」

小竜達と視線が何気なく合うが、こちらの”正体”に気付いているのかガン見されてる気がする。
…まぁ、そもそも別に正体なんて隠してはいない。異邦人がこの島では珍しく無いなら尚更だ正体を隠す意味も無い。

羽月 柊 >  
軽い目くらまし程度の魔術を発動するつもりが、見透かされる。
これは敵う相手では無い。そう判断するに容易い。
仮面の下で桃眼を細め苦い顔をする。

「大人しく通してくれるかわからな…ん………あ、おい、"フェリア"?」

落ち着いて言葉を紡ごうとした矢先、
己の護衛の小竜たちが相手に視線を注いでいることに気付く。


そしてあろうことか…その一匹は、警戒心も何もなく、
そちらに飛んで行ってしまったではないか。


思わず隻手を伸ばして止めようとしたが…

『あら、どこかで見たと思ったら久しぶりジャナイ?』

キュアッと黒龍の近くで赤い二角の小竜、フェリアがそう鳴いた。

「久しぶり……?」

発されたのは確かに竜語だが、仮面の男も理解しているようで、
フェリアの言葉を復唱した。

黒龍 > 「――魔術には”それなりに”習熟してるもんでな…あと、重ねていうが別に争う気はねーし、そっちを妨害するつもりもねーっての。
暇潰しと興味本位で声を掛けたみてーなモン。無視するも話しに興じるもそっちの勝手にしろってな?」

緩く肩を竦めながらそんな言葉をのたまう。少なくともドンパチをいきなりやる気は無い。
と、先ほどから視線を感じていた小竜の一匹がこちらへと警戒心も無く近付いてくる。

「…フェリア?……あーー思い出した。あのカラス、だっけか?アイツと一緒に居たよなお前」

フェリアの鳴き声もごく自然に”声”として聞き取れるらしく、普通に受け答えをしており。
口元に笑みを浮かべれば、軽く生身の右手を伸ばしてフェリアの角をくすぐるように撫でようと。

「…そうするとアレか?もしやカラスの言ってた養父ってお前か?
アイツから養父の住所っつぅかそういうのは聞いてたんだが行く機会すっかり逃してたんだよなぁ」

と、苦笑気味に口にして。もう2年は前になるだろうか。我ながら放置しすぎた気はする。

羽月 柊 >  
「それでそれなりだと言われてしまうと、俺の立つ瀬が無いな。」

そう言いながら今度は攻撃意識も無く指を鳴らす。
ぱっと薄暗い路地に光が出現すれば、互いの姿が照らされる。

仮面の奥で覗く桃眼は、どういう事かと一人と一匹に視線が注がれていた。


少なくとも竜語を解する。
そしてまず危険な場所に出すことをしないはずの息子を知っている。
いつかの教師のように、こういった場所に来ることを厭わないタイプのモノか。

そう思案を巡らせる。

しかし、もう一匹の蒼い二角の小竜が、仮面の男の肩に留まり鳴いた。

『シュウ、この人型してるヒト、同族ダヨ。』


フェリアの方はといえば、大人しく角を撫でられている。
竜にとって角は急所の一つだが、警戒していない。

『そういえば、シュウに報告シてなかったかしラ、ワタシ。
 何年モ前だと、そのヘン曖昧ねェ。』

ころころとフェリアは笑っている。
シュウと呼ばれた仮面の男は、困った顔で近付いてきた。

黒龍 > 「…ま、実際の所、”今は”魔術が使えない身だからな俺は」

彼が指を鳴らせば、路地裏に光が出現し二人の男と小竜達を照らし出す。
その魔術すら今の自分は全く使えない状態だ――彼の魔術を察知できたのは魔力感知だけは残しているからに過ぎない。

世界は異なれど、それが竜たるならばその言葉を聞き取る事は不可能ではない。
少なくとも、フェリアとの意思疎通は特に問題なくごく自然にやれているようで。

「おい、そっちの会話も聞こえてるぞ…人型っつーのはまぁ正しいけどよ。
ま、龍である事を隠しても堅苦しいだけだしな…。」

と、もう一匹の小竜が男に囁いていたのも聞こえているらしく、口を挟んだが特に怒っている訳ではない。
そもそも、正体を見抜かれたとして龍の気配も隠していないのだ。

「あーーまぁ、俺の方もすっかり忘れてたしお互い様っつぅ事で気にすんなフェリア。
んで、まぁー自己紹介は一応しとくべきか、俺ぁ黒龍。異邦人で種族は龍…ま、よろしくな」

フェリアの角を撫でていた手を引っ込めつつ、軽くニヤリと笑って自ら名乗ろうか。
その見た目からして、如何にも無頼漢といった感じだが、笑顔はどこか悪童じみており。

羽月 柊 >  
カツカツと近づいてきた紫髪の男はその仮面を外す。
人間としては成人過ぎてそこそこの年月がその顔に刻まれている。

男に朗らかさは無かった。

名乗られたならばこちらも名乗らねばなるまい。
"龍"という言葉に、僅かに姿勢を正すべきかとも考えたが、
急に態度が変わっても気味が悪いだろうとそのまま。

「…俺は柊、羽月 柊(はづき しゅう)。
 君の記憶通り、カラスの養父をしている。
 フェリアは知っての通りだろう、こちらはセイルだ。」

と、もう一匹の方の紹介も行う。

胸元から煙草らしき箱を取り出しつつ、黒龍の来た道を見た。

「しかし……今年のうちに人型の…"竜"ではない"龍"の方に二人も逢うとは…。
 異邦というなら、来た時は苦労しただろう。」

黒龍 > 近付いてくる男…その姿を静かにサングラス越しの男の黄金瞳が見据えている。
彼がその顔を隠していた仮面を外せば、人間としての年月がその顔の刻まれた顔立ちが露になる。

「おぅ、んじゃシュウで。俺も黒龍で良いぜ。一応本名はあるんだが、まぁ言わないに越した事はねーからな」

真名、というほど大仰なものでもないが。ともあれ、もう一匹のセイルと呼ばれた小竜にもよろしくな、とばかりに緩く右手を挙げて。

「――あン?俺以外にも別のトコから来た”人型の龍”が居やがるのか?そりゃ興味深いこったが…。
あーー俺の場合は元の世界の同族に嵌められたっつぅかな。その時に色々あってこっちに来た。
まぁ、一部自力で門を”抜けた”から片腕を犠牲にしたけどな」

と、義手である黒い左腕を軽く示しつつ煙草を蒸かしながら笑う。
異邦の世界に流れ着いて約3年、になるだろうか?流石にもう順応はしている。

「あと、”もう一人”はどうかしらねーが、俺にはかしこまった呼称とかそういう堅苦しいのはいらんからな。
自由にやらせて貰っちゃいるが、最低限は”こっちの常識”は弁えてるつもりだぜ」

だから、かしこまられても面倒臭いし疲れる。気さくな方が己的にも助かるのだ。

羽月 柊 >  
「なるほど、彷徨ではなく自分からこちらに。」

煙草の箱からそれを取り出し口に咥えると、パチンと指を鳴らす。
僅かな発火の光と共に先端から煙が出て、それを蒸かす。

傍から見れば完全に煙草を吸ってる人達であるが、
間近であるなら、その煙草の煙に匂いは無いと分かるかもしれない。
ふぅと煙を黒龍に向かってではなく口端で横に流せば、
それは地を這い、黒龍が来た道の後ろへ向かい、新たな来訪者から道を隠す。

"向こう側"に行った訳では無い。
ほんの僅かに、ここを通ろうとしたモノに、他の道へ行こうと思わせるだけ。
力を持っているモノならば簡単に破られてしまう軽い膜。


「…まぁ、こちら側の言語を訳なく使えている点からもよく分かる。
 君たちのような人型に成れる龍は総じて能力が高い。
 こんな裏の街まで来て狩られないというのだから、相当だろう。
 
 俺は、君たちのようには1人で生きられぬ幼体や
 卵の眷属たちを世話していると思ってくれれば良い。
 そうでなくとも竜関係なら手を貸そう。
 おそらく息子やフェリアもそのつもりだったんだろうからな。」

裏の世界で自分が顔を晒しているのはなるべく隠したい。
そんな理由だ。

「…ついこの間だ。
 転移荒野に君のように別世界からの龍が来た。金龍がね。
 そちらは俺が少々世話させて貰ったが、まだ来たばかりだ。
 そこそこに暴れているよ。」

黒龍 > 「正確には、閉鎖空間に幽閉されてたんだが、偶々その空間に”門”が出現してな。
――で、まぁこれ幸いと”ぶち抜いて”来たら元の世界どころかこの常世島の転移荒野の辺りだったって訳だ」

閉鎖空間、幽閉、門、ぶち抜いて、など色々とアレな単語が並んでいるがそれはそれとして。
左腕もその時に失った…正確には、己の左腕を丸々対価として門を強制的に開け放った、というのが正しい。

彼の煙草――否、それに気付いたのか視線が煙の流れる方角へと緩く向けられて。

(――人避けの術式の類か。薄い膜みてーなもんだが、やっとくに越した事はねーわな)

と、心の中で呟きながら視線をシュウへと戻して。魔力感知というのは、その魔術の性質の看破も意味する。

「あーーまぁ、転移荒野や異邦人街にもちょくちょく出向いてるが、基本は落第街とかスラムを気儘にうろついてるな俺は。
もっとも、この世界の魔力の質は俺の魔力とどうもあわねーらしくてな。
だから、まぁ元の龍の姿に戻るのも控えてる…つーか現状は戻れねーし」

だから人型の龍、という呼称は間違いでもないのだ。本体ともいえるドラゴンの姿になれないのだから。
シュウの言葉にふぅん、と相槌を打ちながら煙草をゆっくりと蒸かして。

「…つまりは竜専門の保護者みてーなもんか。まぁ、そういうのも居てもおかしくはねー島だが。
…まー何か竜を保護したらそっちに回せばいいってこったな」

と、気楽に言うがそれは彼の負担が増すだけな気もする。が、それはそれである。
自分のように独立して単体で世界に溶け込んで生きていけるドラゴンはそう多くは無いだろうから。
まぁ、何かあったら頼るかもしれないが――むしろ、こちらが手を貸す側になるかもしれない。

「金龍――あーー…何か”偉そうな奴”の気がするな。
さて、俺とはあまり反りが合わなそうだが、どうなるかね…。」

ぽつり、と呟くように。暴れているとの彼の言葉に、どうやらこの男も苦労させられているようだ、と察しつつ。

「まぁ、そいつが何かしでかしたら俺も手を貸してやる。暇潰しにはなりそうだ」

羽月 柊 >  
「…閉鎖空間にすら容易く《門》は顕現し得るか……。
 興味深いが、厄介でもあるな。
 鍵の無い扉があちこちにある訳だから…。」

そんなものだから自分のやっている研究や事業がある訳なのだが、
ある意味病院と同じで、対象がいなければ仕事にはならないのである。

黒龍の保護したら回せば良いのかという発言には、
若干苦い顔で目を伏せた。

「……まぁ、回してもらうのは事例が増えてありがたいが、
 俺は個人で動いてる。こちらの許容量は決して大きい訳じゃあない。
 人型だとせいぜい後引き取れて数人だろう。

 悩みや不自由があれば、竜関係は君でもなんでも俺に出来る限り解決には動くが、
 引き取れるのは幼体や卵だ。
 それも、俺はこのセイルやフェリアのように体を小さくして世話をしてる。
 そうじゃなければ生活委員や手続きの手伝いぐらいだ。」

黒龍が読み取れるならば、
セイルやフェリアは魔力や竜の力としては
身体に見合わない大きさを持っているのが分かるかもしれない。

「……名前だけで分かるモノなのか。
 まぁ、『この世を統べる』だとか言っているがな、彼女は。」

黒龍 > 「まぁ、流石に俺も”門”に関しちゃこっちの連中と同じ程度の事しか知らないからな」

そもそも研究者肌ではないし、元の世界に帰還できる方法の目処があるならまだしも、現状はそれも無い訳で。
…と、こちらの言葉に些か苦い顔で目を伏せている男に苦笑を浮かべて。

「おぅおぅ、苦労するタイプそーだなお前さんは。
ま、俺も別にそうそうそっちに厄介事を持ち込む気はねーよ。
(…俺自身が厄介事になる可能性はあるけどな)」

その可能性は否めないので、心の中で呟くに留める。――我は終焉を叫ぶ龍(ニーズホッグ)なれば。

「――ああ、フェリアとセイル(そいつら)が見かけに似合わない”力”を持ってるのも、それが理由か。

――この世を統べる、ねぇ?……あーー…んーー…うん。」

と、何か妙に彼にしては珍しく歯切れの悪い曖昧な言葉を漏らして。
こう、何かあんまり思い出したくない黒歴史を思い出したかのような。
煙草の吸殻をトントンと指先で落としつつ、しかしそれを口には出さずに一息。

「ま、何にせよなんだかんだ面識が出来ただけ僥倖ってこったな。
あーーカラスに会ったら俺は元気してるって伝言ついでに頼めるか?」

羽月 柊 >  
「まぁ、こちらもそうそう良くは知らん。知っていたとしてどうにか出来るモノでもない。
 どうにか出来れば《大変容》そのモノがどうにか出来てしまうからな。

 それにしても、情報が多くて先ほど逃したが、
 魔術自体は判別できるのに君自身魔術が使えないというのは興味深いな。
 魔力の質が合わない話に類するのか、変換機等は試したのか?」

そう話す柊自身の魔力は少々歪だった。
魔力を持ってはいるが、それは手に集中している。
人体が元来から持ち合わせている魔力というのはこの男からは一切感じられなかった。

裏の世界ながら、話すことは物騒ではない。
ほんの少しだけ切り取ったこの場所は、今は平和だ。

それも少し経ち、自分たちが居なくなればまた、夜の闇に呑まれることだろうが。

柊の煙草は徐々に短くなっていく。
膜自体もそれに合わせて有限なモノだ。
あると便利な代物ではあるが、万能ではない。

「そうだな、この子らは俺の護衛に合わせて少々弄ってあるが…。
 ……怒らないのだな、君も、金龍も。

 苦労に見合う成果が出ればよし、出ないならそれも経験だ。
 伊達に人間として歳を喰っちゃいない…。」

伝言は伝えておこう、あの子も喜ぶだろうと頷く。

黒龍 > 「『大変容』ねぇ。こっちの世界での歴史の転換点みたいなものだったっけかな。
――どの世界でも似たようなモノはあるんだな」

ぽつり、と呟きながら一度目を伏せたが直ぐに何事も無かったかのように瞳を開いて。

「あぁ?いや、変換機?とかそういう類のは試してねーな。
現状は自分自身で封印処置をして余計な魔力の消費を食い止めてるっつー感じにしてるし。
そもそも、その手の方面はあんまし詳しくねーんだよ俺」

と、肩を竦めてみせる。こちらの世界の機械とかマジックアイテムの類は未だにあまり分かっていない。
それよりも、「シュウこそ独特っつーか、手に魔力が集中してんのな」と。魔力感知の精度はかなりのものであり。

「あぁ?何で怒る理由があんだよ。そいつらが嫌々お前に付き従ってるようには見えないし洗脳とか脅迫の類でもない。
セイルとフェリアの意志なら、そいつを尊重してやるのが同族の誼ってやつだろーが」

お前は何を言ってるんだ?という真顔で首を傾げて。
そもそも、そんな事でいちいち目くじらを立てたり激昂するほど狭量ではないつもりで。

「ま、お前らに信頼関係とかそういうのがちゃんとあんだろーよ。
そんなの俺じゃなくても龍じゃなくても分かるってもんだろ。

ま、そんな訳で伝言は頼んだぜシュウ。俺ぁそろそろ引き揚げる。――”切れる頃合”だしな?」

と、彼の煙草を指差してニヤリ、と笑えばゆっくりと歩きして。軽く彼の肩をポンッ、と叩いてから横を通り過ぎて歩き出そうか。

「んじゃ、またそのうちな。フェリアとセイルもまたな」

と、振り返らずに右手を軽く揚げてから一足先に立ち去ろうと。

羽月 柊 >  
「龍としてのプライドが許さないやもなどと思ったのだ。
 この子らが生まれた時から一緒に行動しているが、
 そういった妙な拘りやプライドは…もしかしたら人間の方が厄介なのかもしれんな。」

人間は人間に特別意識を抱きすぎる。そう口の中で呟いた。
魔術学会ではセイルやフェリア、その他の子たちに対する偏見の眼は強い。
魔力の無い自分への偏見も。

そういった偏見無く、今の2匹を見て言ってくれる龍たちの方が、
どれほどありがたいか。

 
「俺はそういった変換機やらの外付けに頼ってる側でね。
 興味があるなら気が向けばうちへ来ると良い。
 多少の解析や変換の手伝いぐらいは出来るかもしれないからな。」

とはいうが、黒龍が気が向くかどうかは分からない。
今までもこうして互いに知らずにいたのだから。

最後のひと吸いをしようかと手に持った煙草に口を付ける瞬間、
相手から声をかけられる。

「……あぁ、これでこの一本は終わりだとも。
 俺も、また逢える事を楽しみにしている。」

黒龍 > そうして一足先に。彼が煙草を吸い終える頃には男の姿も気配も、靴音も路地裏の向こうへと消えている事だろう。

後に残るのは龍の気配――”終焉”の気配。それも直ぐに霧散して闇に混じり、この世界の一部となって消えていく――。

――その日、終焉龍と竜と共に歩む者は出会った。

ご案内:「落第街 路地裏」から黒龍さんが去りました。<補足:黒髪黄金瞳 黒ずくめ姿 丸型サングラス 煙草>
羽月 柊 >  
最後に煙を吐き出し、手元の煙草が手持ち花火の残滓のように散っていく。
黒龍が去った方向を一瞥し、それもすぐに視線を戻すと外していた仮面を付け直す。

「…本当に、君たち竜や龍を相手している方が、よっぽど分かりやすいな。」

セイルやフェリアは"終焉"の気配を感じ取ったが、
それは柊に知らされることは無かった。

膜が晴れる。
切り取られた場所が元に戻る。
闇夜の落第街の喧騒が、この場に戻って来る。

遠くで聞こえるのは、怒号か、哀しみか。

そんなモノには興味が無いとばかりに、黒龍が去った方とは別に、
柊は真っすぐ歩いていく。

――竜と共に歩む者の運命は、未だこの夜闇のように、先が見えない。

ご案内:「落第街 路地裏」から羽月 柊さんが去りました。<補足:待合済:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。黒のスーツに竜を模した仮面をつけている。小さな白い竜を2匹連れている。>