2017/04/22 のログ
ご案内:「ロビー」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:くたびれた白衣を身に纏った無精髭の魔術教師。いつも疲れ果てた顔をしている。ポケットに入っている煙草はペルメルのレッド。光を放つ指輪を嵌めている。>
獅南蒼二 > 教職員にとって,4月は非常に忙しい時期と言えるだろう。
新たな年度が始まり,何も知らぬ新入生が入学してくるだけでも大変なのだが,
一年間の授業計画やら自己の研究のテーマやら,様々なものを作成しなければならない。
比較的そういった縛りの緩いこの学園でも,仕事量は明らかに増大する。
そしてこの男は,愚直にも何から何までを毎年殆ど書き直すものだから,輪をかけて時間が足りなくなる。
……そんなもの,誰も読んですらいないだろうに。

「………こんなところか。」

教職員としてはある種,理想的な形だろう。
ただ,一つ問題があるとすれば,彼の書く文章は読む者のことを一切考えていないという点だ。
この男の授業を履修しようと思ったなら,一度はシラバスに目を通しておくことをお勧めする。

多分,吐きそうになるだろうから。

獅南蒼二 > 獅南がテーブルの上に置いたバインダーを見れば,これまた吐き気がするだろう。
印刷された昨年度版の授業計画やら研究テーマに,びっしりと赤で書き込みがされている。
それすらも印刷ではないかと思えるほどの几帳面で丁寧な文字なのが救いで,何とか読み解くことはできるだろうが。

獅南はソファにどっかりと座り込み,ポケットから煙草を取り出した。
火をつけることなくそれを咥えて,その煙草の先に軽く手を翳す。
分かる人には分かるだろうが,えらく緻密な魔力操作によって煙草の先端を加熱するとともに,煙を消し去っている。

校内禁煙?煙出さなければ良いんだろう?
というまるで子供のような論理だが,傍から見れば慰みに煙草を噛んでいるようにしか見えないだろう。

「……思ったよりも生徒が集まらなかったな。」

小さく呟く獅南。……多分シラバスが原因です。

ご案内:「ロビー」にヨキさんが現れました。<補足:27歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブ、黒ボトム、黒革オープントゥのハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 廊下を歩いていたヨキが、見知った背中を見つけて進路を変える。
片手に仕事用の分厚いバインダー、もう片手にコンビニの袋。

獅南に後ろから近付いて――持っていた袋を、のし、と相手の頭に載せる。
スナック菓子と板チョコレートとペットボトルの重み。

「――獅南。シラバスを見たぞ。
 貴様、真面目に生徒を集める気がなかろう?」

頭上から一方的に言葉を降らせたのち、考え直す。

「…………、いや。お前にそのような殊勝な心がある訳なかったな……」

そうして見下ろした顔に煙草がちらついて、声は余計に重たくなった。
無論のこと、獅南の手管には気付いていない。

「……煙草。火を点けたら怒るぞ」

獅南蒼二 > 頭に袋を乗せられても一切動じない。
視線だけを貴方に向けて,顔色の悪い白衣の教師は僅かに笑んだ。

「…あの程度の文章も読めんようではどうせ続かんだろう。
 予め警告してやっているだけ,優しいとは思わんか?」

やれやれ,と小さく肩をすくめながら,咥えていた煙草をテーブルに置く。
明らかに短くなっているのだが,燃えた形跡も何もないのだから,断罪するのは難しいだろう。
もしかしたら,心の中でドヤ顔をしているかもしれない。

「…それで,その袋には私の息抜きを邪魔するに足る何かが入っているのか?」

ヨキ > 眉を下げる。
わざとらしく溜め息を吐いて、断りもなく獅南の向かい側にどっかりと腰を下ろした。

「全くもってお優しいことで。
 どうせこの間の学期末も、散々振るい落としたのだろう?
 ヨキが教えている何人かも、お前の講義だけ単位が怪しいと嘆いておったぞ」

煙草を一瞥する。短い。どう見ても短い。
ごく一瞬、顔中をくしゃくしゃに丸めたような顰め面をした。

「ふん、お前のような意地の悪い男にくれてやるものなどないわい。
 これはヨキだけのお楽しみじゃ」

板チョコレートの箱を取り出す。
一欠けら割って自らの口へ放り込み、もぐもぐと味わう。

「だが……積もる話ならある。

 バイクの免許を取ることにした。
 果たしていつのことになることやら、だが」

視線を逸らす。反応を伺うように、相手を目だけで見る。

ご案内:「ロビー」にVJさんが現れました。<補足:ジャージ(白ロリ仕様)>
VJ >  
「あらあら――男二人揃ってチョコレートだなんて」

いやに高いヒールの靴音と共に、その声はやってくる。

「外の自販機で二回も当たりが出たんですけど、もらってくださるかしら」

180ml缶のブラックコーヒーが2本。

獅南蒼二 > この学園で獅南の近くにこうも無遠慮に入り込むのは貴方くらいだろう。
獅南は明らかに面倒そうな表情だが,どこか楽しげなのも確かだった。

「努力と研鑽によって十分な成果を出した者には相応の評価をしているつもりだ。
 一人は…言う事は立派だったが明確な努力不足,もう一人のお調子者は単位を持って帰った。」

さらりと一人一人の評価が口をついて出るのは,この男が一人一人の生徒を客観的に評価している証拠でもある。
逆に言えば,情に訴えかけても一切通用しない冷徹さの表れでもあった。

「おいおい,栄養失調寸前の友人に恵む分くらいはあるだろう?」

そんな風に笑いながら,続けられた言葉には,僅かに目を細める。

「ほぉ……。」

小さく声を漏らす。その表情は,やはり楽しげで…

「……お前に転ばれては困るからなぁ。
 しかし私も免許は持っていない,お前に合わせて取るべきか?」

…さらりとそう返した。今判明する衝撃の事実かも知れない。

獅南蒼二 > 横から声をかけてきた女に視線を向けて,小さく肩をすくめる。
チョコレートを買ってきたのはヨキだけなのだが,この場でそれを言っても始まらない。

「幸運を使い果たす勢いだな。
 くれるというなら貰うが……返せるものが何もないぞ?」

ポケットには煙草しか入っていない。
もしかしたらヨキの袋の中にまだ何かあるかもしれないけれど…!

ヨキ > 頬杖を突いて咀嚼する口を動かしながら聞き入る顔は、どこか子どもじみている。
校則の鬼とばかりに辣腕を振るうヨキがそんな表情を見せるのも、また獅南の前だけだろう。

「…………。厳しいことを言って、実際にただ振るい落としているだけならヨキも怒りようがあるんだがな。
 そうやってきちんと教師をやっているのだからタチが悪い」

笑って相伴を求められると、唇を尖らせて煙草の吸い殻(らしきもの)を睨む。
少し逡巡してから、チョコレートを半分割り、獅南の前へ差し出す。

「相も変わらず栄養失調などと言っておるのか、お前は?
 滋養のある弁当でもこさえてやろうか」

こさえてやろうか、と尋ねるような口調だが、ヨキのことであるから半ば押しかけ女房と化すのかも知れない。
運転免許の話には、笑われずに済んだだけいくらか安堵したらしい。正面へ顔を引き戻す。

「……お前とバイクの話をしてから、ずっと考えていてな。
 犬のときは侭ならなかったが、今なら挑戦できると思った。
 どうせならお前も、イチからやり直してみればいい」

そこでやっと、小さく笑った。

ヨキ > そうして、やってきたVJへ目を向けて笑い掛ける。

「……おや、君か。
 何だ、偉く幸運ではないか。まだ今年も上半期だと言うのに」

ついているな、と笑う。

「返すもの……ちょっと待ってくれ。
 これはとっておきのお楽しみで」

手荷物のビニル袋を覗き込む。隙間から覗くのは、期間限定の新ジャガイモを使ったポテトチップスらしい。

「…………。美味いから一緒に開けよう」

しばし黙した後、ポテトチップスの袋を取り出す。
言外に、ヨキなら何か返せるものがあると言われた気がした。

VJ >  
「どうかしら。代わりに男運が悪いかもしれませんけど」

向かい合う二人を見て、にこりと微笑む。彼女はこれでテンションが低い。
獅南の言葉とヨキの動きに、彼女は首を左右へ振った。

「お返しなんて、男同士の語らいに無粋を挟める特権で充分ですわ」

ソファを回り込み、テーブルにコーヒーを置く。各々の正面へと。
踵を返す。

「とはいえ余り長居はしませんけど。特権を使って一つお伺いしたいだけ」

コーヒーを餌に。
適当なソファの背もたれに肘を突き、寄り掛かる。
バストが豊満でさえあったならば悩殺的なポーズかもしれないのに。
やや伏し目、しかし深刻にはならない口調で、藪から棒に彼女は言う。

「仮にも教員として――自分より強い生徒って、どう導いてあげればいいのかしらね?」

獅南蒼二 > ヨキから渡されたチョコレートを頬張りながら,視線はヨキと現れた女性に交互に向けられる。
何処かで顔は見たことがある気がするが,言葉を交わしたことは無い。
だからこそ,この2人が知り合いなのかと想像した。そしてどうやら,正解だったらしい。

「弁当か…悪くないが,それを口実に研究室に入り浸られてはなぁ?」

ヨキのやることが想像できたのか,くくく,と楽しげに笑う。
それでも拒否したりしないのは優しさなのか,獅南自身がそれを悪く思っていないのか。

「…確かにお前の言う通りだ。
 魔術学に対しては努力と研鑽を語りながら,運転免許すら持っていないのではな。
 後で手続きを教えてもらってもいいか?」

…おそらく後者だろう。免許の件でさえ,えらくあっさりと,承諾した。

獅南蒼二 > それから,視線は…女性へと向けられる。
女性が口にした悩みは,獅南にとってある意味で過去の命題に近しいものでもあった。
己よりも才能に勝る生徒を,いかにして導くのか。

「……私はアンタがどんな教師なのか知らんし,アンタが思い描いている生徒の姿も見えてこない。
 だが,言いたいことは分からないでもないな……。」

ポケットから新しい煙草を取り出しかけて,やめた。
ここにヨキが居なかったらきっと,取り出していただろう。

「アンタは今…“導いてあげる”と言ったな?
 無意識かもしれんが,それはつまり,その生徒をアンタと同じレベルまで引き上げたい,アンタの後ろを歩かせたい,ということだ。
 ということはだ,経験だか常識だか、何だかは知らんが,アンタの方がその生徒よりも“先んじている”部分があるということだろう。」

言葉を紡ぎながら,自分でも考えをまとめていく。
まったく状況が分からないからこそ,自分に置き換えて話すことができた。

「だが,他方でその生徒には遠く及ばん部分もある……と。」

ふむ…と,小さく声を漏らしてから……

「ん,そういえば,
 ……お前の言う“強さ”というのは,いわゆる“戦闘能力”としての強さととらえて構わんのか?」

ヨキ > 交友のある訳ではないが、学生よりも数の少ない教師ならばある程度は覚えやすいというもの。
このVJのように、華やかで(一見して)教育熱心であるならば尚更だ。

「口実どころか、普通にお前のところへ遊びにゆく理由だからな。
 弁当を届けて、食わせて、感想をもらって、喋って、お茶をして、話し込んで、夜になったら崑崙に行く」

会話の分量がやたらと多いし、崑崙までがワンセットとあっては拘束時間の長さは明白だ。
ふふん、とやけに偉そうに鼻を鳴らしてみせる。

「お。乗ったな?
 いいぞ、お前より先に合格してやるからな」

にやりと笑う。
VJから受け取ったコーヒーを開けながら、彼女へと目を移す。

「……自分より強い生徒、ねえ」

獅南の言葉を聞きながら、テーブルの上に載せた腕を組む。

「身体的にせよ、精神的にせよ……相手が強いと思うならば、自分もまた折れぬことが第一だと思うがな。
 何かしら信念のある教師に、教え子は自然とついて来る」

普段から自信たっぷりのヨキらしい台詞。
そこで言葉を切って、詳しくを問うた獅南を一瞥してVJを見遣る。

VJ >  
「私はまあ、とりあえずぶん殴って、這いつくばってる人間に持論を撒き散らすことしか出来ないんだけど。
 どうにもね、その前提が難しいコをちらほら見かける気がして。
 歯ァ食いしばれって言って、奥歯の一本も折れなかったら教師失格でしょう」

 頷く。戦闘能力としての強さで相違ないと。
 アンニュイな表情と、その口からまろび出る言葉の粗さは、あまり反りがあっていない様子だったが。

「う、ん――そう言われてみると」

自意識――すなわち信念を叩きつけることが目的で。
その信念を見失っているから、こうして弱音を吐いている。

「……ふふっ、子どもじゃないんだから、ちゃんとした答えは自分で探してみるとしますわ」

短い問答であったが、少なくとも話しかけてきた時よりは明るい声色で、彼女は背もたれから身を浮かせる。

VJ >  
「ごめんなさいね、慌ただしくして」

長居はしない。こちらの都合だけれど。

「あ、それと――レザーのジャケットにワカバは似合いませんわ
 冬が始まる前に、外せるように。急いだほうがいいと思うけど」

そう言い残して、また彼女はヒールの音を響かせて消えた。

ご案内:「ロビー」からVJさんが去りました。<補足:ジャージ(白ロリ仕様)>
獅南蒼二 > 言葉を返そうとするまえに,女性はさらりとロビーから去ってしまった。
小さく肩をすくめて,笑う。

「……本当に慌ただしいな。
 だがまぁ,あの様子なら勝手に答えにまでたどり着くだろう。
 いつもあんな調子なのか,あの女教師は?」

知り合いであろうヨキにそんな風に聞いてみつつ,

「…で,何だったか……弁当?
 ただでさえ忙しい時期に,お前と話している時間が作れると思うか?」
話を戻した。折角なので珈琲のタブを開けて,一口飲み,
「……まぁ,崑崙で酒を飲むという点に関しては満場一致で賛成だがな。」
それが妥協点だろう。珈琲を飲み干して,缶をテーブルの上に置く。

ヨキ > 「はは。言葉より先に手が出るか。
 そうしたらまずは、拳よりも強い言葉と精神とを武器にすべきではないかと思うがなあ。
 戦いの能力で言えば、ヨキなどへなちょこもいいところであるからな」

何しろ美術教師だ、と何故か胸を張る。
どうあれ「常世島の秩序」を旗印にやってきたヨキは、生徒相手に折れたことが殆んどない。
VJの弱音が弱音と受け取れぬほどには、このヨキという男は無神経なようだった。

「探してみて見つからなければ、またヨキらを頼ることだ。
 我々は生徒を教える仲間なのだからな。――コーヒー、有難う」

礼を告げてVJを見送り、彼女が言い残した言葉にふっと笑う。

「……だってさ。
 早いところ『カンを取り戻さなくては』いけないようではないかね、獅南先生?」

小声でにやりとする。

ヨキ > やがて獅南に向き直り、残りのコーヒーを飲む。

「いや。ヨキも彼女を詳しくは知らないが、評判は悪くないぞ。
 教師も人間だ、壁にぶつかることもあろう」

コーヒーにチョコレート。最高の組み合わせだ。

「そりゃあ……多忙なのはヨキとて同じだ。
 話すヒマがないならそれで構わん。独りで勝手に過ごしてるから」

この図体のでかい、むやみに存在感だけは人一倍強い男が、無言で居座るつもりらしい。

「酒だけでもいいけど」

言葉とは裏腹に、どう見ても顔が(よくない)と言っている。
相変わらず嘘と強がりが下手だ。

獅南蒼二 > ヨキの言葉に,小さく肩をすくめて…

「…なに,エンジンを掛ければすぐに思い出すだろうさ。
 お前こそ,へなちょこの美術教師なのだろう? 振り回されんようにな。」

意外と負けず嫌い…いや,意外でも何でもなく負けず嫌いなのだった。
貴方が去っていった女性に向けた言葉には…何も言わない。
必要であればまた助言を求めに来るだろう。そして,必要でなければ手を貸す必要は無いだろう。

「そうか,悪くないのなら私よりはマシだな。
 ……で,多忙な美術教師は自分のアトリエで静かに仕事をするということを学んではくれんのかね?」

貴方のそんな顔は何度も見てきたし,ずっと変わらない。
そしてその顔をしたときは大抵,駄目だと言っても最終的には居座るときだ。

「…ソファとテーブルを片づけておいてやるから,そこでお前の仕事をしろ。
 前のようにあれこれ口を出されては気が散るのでな。」

だからこうして,先に条件を提示しておく。この2人の距離感は,こうしてだんだんと分かりやすくなってきた。

ヨキ > 「さすが。相当乗り回していたんだろうからな。悪い奴だ。
 さて、建物の壁なら壊したことはあるが、バイクを起こすくらいの力がヨキにあるものかな」

へなちょこアピールがすごく下手だ。
こうして黙っていたって肩と胸板は獅南よりしっかりしている。
相手が続ける言葉に、冗談めかした顔で笑う。

「残念だったな。独りきりで仕事をするのは、もう十分やってきたとも。
 もうちょっと気軽に、お前の所へ行きたくなっただけだよ」

言って、示された条件にいよいよ笑みを深めた。

「……ふふ、決まりだな。
 お前もタダで美味い食事が食えるんだから感謝しろよ」

大口を叩く。他者に対して折れぬヨキであるならば、こうしてコツを掴まれさえすると操られるのは簡単だった。

「本当に邪魔になるときには、長居しないから。絶対にさ」

“絶対に”。ヨキが口にするとき、それは紛れもない真実だった。

獅南蒼二 > 「若気の至りだ……もう時効だろう?」

獅南こそ,加齢と不養生によって体力の衰えは著しい。
体格も決して恵まれているとは言えないのだし,経験以外に勝っている部分は何一つ無い。
それでも決して強がりを崩さず,そしてそれをやってのけるのがこの男だ。

「それではまるで私がタダ飯に釣られたようじゃないか?
 まぁ,感謝はするよ…そうでなければ出前の蕎麦くらいしか食わんようになってしまうからな。」

……この男は本当に,生活能力の欠片も無い。
教わったことや自ら必要を感じて学んだことはすぐに吸収するというのにこの体たらくである。
そんな獅南を気にかけてくれる貴方は,約束を決して破らず,嘘を吐くこともしない。
それは獅南が一番よく知っていることだった。

「いや,邪魔をしないのなら構わんよ。
 ……それに私も,お前に相談したいことがあってな。」

……最後に付け加えた言葉は,これまでになく深刻な表情だった。

ヨキ > 「これからは、真面目にしていてもらわないとな?
 それでこそ大人の格好がつくというものさ」

目を細める。ふざけ合って交わすような言葉の合間に、気遣いが交じる。

「全く、そのうち蕎麦さえ億劫がって食わなくなるのではないかと心配で敵わん。
 それなりに腹の膨れた方が、頭も冴え渡るに決まっている。
 どうせお前と過ごすなら、何かしらお前にとってもプラスにならねばな」

それから最後に「相談したいこと」と聞くや、ヨキの眉がぴくりと動いた。

「…………。何だ?」

唇を引き結ぶのは、真面目な話をするときの表情だ。
続きを促す。

獅南蒼二 > 「これから? 何を言うか,私はいつでも真面目だろう?
 警察に止められれば真面目に魔術で切り抜けるつもりだったさ。」

冗談半分,本気半分である。
あの蕎麦屋が居る限りは餓死することは無いから安心しろ。
なんて冗談にしても笑えない冗談を続けて…

「…お前も知っている女生徒の話だ。
 ここでは人の目も耳も多い,続きは,お前が弁当を持ってきてくれた時にでも,な。」

…促された続きを,少しだけ話した。
分かるのは,それが周囲に聞かれては困るほどの内容だということ。
そして,共通の話題になり得る女生徒に関するものだということ。
恐らく,貴方もその女生徒に心当たりがあるだろう。

「……さて,とはいえまずは今日の授業を終えねばな。
 チョコレートをもう一欠片もらっても構わんか?」

しかしすべてはまた後日,気兼ねなく全てを話せる場所で。

ヨキ > 「魔術で切り抜けることのどこが真面目だ?
 お前の魔術が上手なことは知っているが、下手をすれば常世学園の問題ともなりうるのだぞ」

そもそもヨキや獅南が籍を置いている時点で、常世学園の教員採用システムは半ば危ういと言ってよい。
とは言え、その口ぶりから獅南への信頼が今更揺らがないことは明らかだった。

「………………、」

獅南の口から「公言を憚るべき、共通の見知った女生徒」の話が出れば、察するのは容易かった。
そっと目を伏せて、微笑む。

「――分かった。その話は、あとでゆっくりしよう。
 ヨキも用事は出来る限り片付けておく」

獅南の求めに応じて、半分に割ったチョコレートを差し出す。

「さて。込み入った話になりそうだ」

無論のこと、面倒がる様子はない。
打ち明けられるだけの信頼を受け取り、答えを返す強さに満ちた顔。

獅南蒼二 > 「……お前が言えたことか?」

常世学園の問題,と,その言葉に思わず聞き返してしまった。
極右武力集団の構成員と,闇夜に暗躍する裁定者にして執行人。どちらもマトモとは言い難い。
だがそんな2人が,今日も教壇に立つのだから,この学園は実に寛大である。

「酒の肴くらいにはなる内容を用意しておいた。
 ……では,また連絡する。」

ありがとう。とチョコレートを受け取って,缶と吐きそうな書き込みの書類を持ち,獅南は立ち上がった。
通り掛けに缶をゴミ箱に放り込んで,そのまま教室へと歩いていく。

…獅南から短い用件だけのメールが届くのは,夕方になってからのことだった。

ご案内:「ロビー」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:くたびれた白衣を身に纏った無精髭の魔術教師。いつも疲れ果てた顔をしている。ポケットに入っている煙草はペルメルのレッド。光を放つ指輪を嵌めている。>
ヨキ > 「何を言う。ヨキこそは常世島が誇る正義の番人であるぞ。
 自ら進んで行っていることに、後ろ暗さなどあるものか」

自信たっぷりに言い張った。正義のためにやっているのだから、殺人さえノーカウントという訳だ。

「どう致しまして。……連絡、いつでも待ってる」

別れの挨拶を返し、去ってゆく背を見送る。

「――…………、」

独りその場に残って、ふっと息を吐く。
やがてカフェインとカカオに冴えた頭で、次の講義へ向かうべく席を立った。

ご案内:「ロビー」からヨキさんが去りました。<補足:27歳/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/拘束衣めいた細身の白ローブ、黒ボトム、黒革オープントゥのハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>