2020/07/16 のログ
ご案内:「大時計塔」に武楽夢 十架さんが現れました。<補足:黒髪赤目/学生服姿/細身の青年>
武楽夢 十架 >  
何が"登れば"、だ。
 "簡単に言ってくれる……!"

この悪態も何度目か。
 "この螺旋階段が終わらないのではないかと思ったのは何十回思ったことか。"
  "何が登れば絶景だ、フザケやがって。"

筆記科目が先程終わってこれで自分の前期試験が無事終わり、少し余裕が戻ってきて色々と重っ苦しい事情に向かい合うのを一瞬忘れるのに扶桑百貨店の展望台で遠くをみるのはいいかもと同じ農業系部活の野郎どもに話した所
「あそこは男や独り身がいくところではない」「孤高なお前は今シングルスポットな時計塔がいい」なんて唆されて登り始めて休憩含みどれだけの時間が経ったか。

「……あ、ようやくもう少しでかな」

少し上を見上げれば光が見えた。
これで景色が悪かったら流石にキレる。



なんて思ってたが、遠くまで眺められる景色っていうのは中々いいものだな、という絶景が待ってくれていた。
代わりにクリーニングから回収したシャツが早速汗に濡れたけど、これは立入禁止を破って登るやつの気持ちも少しは分かる。

武楽夢 十架 >  
階段が終わると同時に思いっきり膝をついた。
この場に誰かいたとしてもそいつだって同じように疲れるだろ、普通。
最近真面目に鍛えはじめた、とはいっても普通に走るとはまた違うぞこれと心のなかで悪態をつくのも何度目か。
青年としてはこの場で横にならなかっただけ、褒めて欲しいところだった。

「はー……嫌になるね、ほんと」

忙しさで気がつけば日付は過ぎて色々あった日々だったと考えさせられる。
やることは増えるし、考えることも増えた。

呼吸が整ってきたところで立ち上がって周囲を確認する。
誰かに見られてないよな、というちょっとした恥ずかしさもあった。

武楽夢 十架 >  
「誰も居ないか……ま、こんな苦労して登るより扶桑百貨店ならエレベーターで一瞬だ」

それに元気印の子供か普段から鍛えてるとかそういう体力バカじゃなければ早々こんな所来ないだろ。

やること、ToDoリスト、ほんとはやらないし会わないでいた方がいい相手もいる。
実際には観ては居ないが記録映像や情報として調べた、そんな相手様。
お陰でいい人とも知り合いもしたが、なんとも言えない気持ちはある。

「……時間が出来たなら探して会って話すのが義理だよな」

向こうさんは気にしてないかも知れないが
組織の人間としては、このまま『武楽夢十架』としては何もせず終わるというのはベターだ。
しかし、同年代の人としては一言あって然るべきかな、なんて思ったりする訳だ。
自己満足のために。

ご案内:「大時計塔」に日ノ岡 あかねさんが現れました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。左腕に腕章。腕章には林檎に噛み付いた蛇が絡みついているエンブレム。>
日ノ岡 あかね > 「ところが居るんだね」

くすくすと笑っているのは……立ち入り禁止の展望室に勝手に入り込んでいる女。
ウェーブのセミロング。常世学園制服。黒い瞳。
いつか、出会った女。
日ノ岡あかね。

「久しぶり、トカ君」

相変わらずの笑みを向けて、あかねは展望室の隅で片手を振った。
もう片手には……厳ついデザインのポラロイドカメラを持っていた。

武楽夢 十架 >  
全く、なんていう采配か。
思わず笑ってしまった。

「ははは……ちなみに最初から?」

だとすると結構恥ずかしいな、と顎に手を当てた。
なんとも、噂をすると現れるというか……。
人を驚かせるのが好きなのか、などと考え肩の力を抜いた。

「つい最近のはずだけど、試験とか色々忙しかったのもあって確かに久しぶりな気分だよ。
 あかねさんはここで写真撮影?」

振り返って見る彼女はいつかの朝のようか。
笑い返す赤い瞳は、同年代の少女を映した。

日ノ岡 あかね > 「さて、どうかしら? やっていたことはそれで間違いないけどね」

そういって、現像したばかりの写真を何枚か見せる。
見晴らしのいい景色が写されている。

「トカ君は黄昏に来た感じ? 煙草吸うようにもみえないし」

此処は良く隠れた喫煙所にもなっている。
そのことを揶揄するように、煙草を咥えるジェスチャーだけして見せる。
以前と同じように、ただただ楽しそうに笑いながら。

武楽夢 十架 >  
「その反応は『何も見てない』と受け取っておくよ、俺のために」

にしても、風景撮影とはいい趣味だ。 写真って言えば先輩とかが昔に生産者の顔とかで取られたりしてたが、自分の代には来てない話だな、なんて変な方向を考えてしまう。

「いいね、この島は色んな景色があるし。その瞬間、その時間を残せるっていうのは」

遺すのは自分のためでもあり、誰かのためにもなる。

「黄昏って……いやまあ、来て早々膝はついてたけど、
 試験終わりの気分転換だよ。っていうか、喫煙って……吸う人?」

そういう黄昏れるのは、ちょい前に少ししたが気分転換もそういうのを切り替えるってなればそうかも知れないとは思いつつ。
明るい声で返した。
最後はタバコを吸う動作をして問い返した。そういうイメージは……ちょっと悪い格好したら似合いそうだなと密かに思った。

日ノ岡 あかね > 「ううん、私は吸わないわ。まぁ、たまに吸うけど、常備はしてないわね。友達が良く吸ってるだけ」

同寮の喫煙不良娘の顔を思い出して、ケラケラと笑う。
窓から吹き込む風が、軽くあかねの横髪を撫でた。

「瞬間、時間を残す……いい感性ね? トカ君のそういう情緒的なところ、私はとても好きよ。まぁ、だけど……」

一歩近づく。
夜色の瞳。光を返さない黒い瞳で……十架の紅い瞳を覗き込んで。

「今私に聞きたいことって……それでいいの? トカ君」

あかねは……笑った。

武楽夢 十架 >  
なるほどね、と頷いてから。
続けられた言葉に、全くねと一度目を閉じて笑った。

「……前にちょっと話した時から少し思ってたが
 まず先に、同年代としての余計なお節介として忠告しておくけど
 素直で相手の気持ちを察するのは凄いけど、心の準備を与えず刺すのはちょっと警戒されるぞ」

ま、その程度なら分かってやってるんだろうけどさと黒い瞳に微笑み返した。
それはバカやった同級生とか先輩に向けるのと同じ瞳で聞き流しても構わないと軽い口調だった。

「そして聞きたいことは確かにあるけど、
 先に言わなきゃならないこともある」

君が覚えているかは知らないけども、と勿体ぶった前置きをして。

日ノ岡 あかね > 「なら、先にそれを聞かせて」

にっこりと笑って、あかねは先を促すように片手を仰ぐ。
手に持っているものはポラロイドカメラだけ。
武器の類いは当然非所持。
異能も……首に相変わらずついている『それ』のせいで使用はできないことがわかる。
十架が『それ』を知っていれば……だが。

「心の準備は好きなだけしていいわよ。私、待つのは得意じゃないけど……少しくらいならちゃんと我慢できるわ」

クスクスと笑う。
楽しそうに。

武楽夢 十架 >  
「話合いの後で、手伝うとしたら、と言ったけど

―――俺は君を手伝えない。 伝えるのが遅くなったのはごめん」

あかねの顔を見て、首のチョーカーをみて、時計台(ここ)から外(しま)を見た。

「それに女の子の過去を調べるっていうのは少し悪いことをしたと思ってる」

色々と調べた。
足りない情報はあるけど、大まかな内容は知った。
それで少女にどんな感情があったかなんて想像できやしない。
共感なんてしやしない。
青年だったらされたくはない。

改めて、あかねの黒い瞳を見た。

「君があの街の人たちをまとめあげるだけなら、よかった」

それだけでないから、青年は今更にはなったけど、伝えようと考えた。

「君の期待に俺は応えられない。
 だから、俺の聞きたいことっていうのは君に答えてもらわなくてもいい。
 それは同年だとしても友達としてもフェアじゃない」
「ここに来た時ぼやいてたのは、そういうこと」

色々勝手に探った手前、許せなんて言えないしと困った顔をして笑った。

日ノ岡 あかね > 「残念、まぁでも……色々調べたなら仕方ないわよね」

あかねのやろうとしている事。
やった事。
これからやる事。

調べたなら、ある程度は知られているだろう。

この島でした事
『トゥルーサイト』でした事
『トゥルーバイツ』でやろうとしている事。
挑む先。
真理。
其処に踏み込む意味。

その今までの行い全てとは言わずとも、断片を調べ上げた十架に対して。
あかねは、緩やかに微笑み。

「でも、それって私に興味があるからしてくれた事でしょ? 私は嬉しいわよ。だって、私を知ろうとしてくれるって……『考えてくれてる』ってことじゃない」

頭を下げた。

「ありがと……私を知ろうとしてくれて。それは少なくとも私にとっては凄く嬉しい事だから、こうさせてね?」

とても、嬉しそうに。
そして、すぐに頭をあげて……また顔を見る。
じっと、目を向ける。

「じゃあ、聞きたいことどうぞ。出来る限り答えるわ」

武楽夢 十架 >  
「ははは……罵声を幾らか貰う覚悟ではあったんだけどね」

女の子の秘密は相手が教えてくれるまでは勝手に調べるな、だったか。
昔に聞いた言葉だったか、よく覚えちゃいないが。

過去の『トゥルーサイト』の事は記録を閲覧した。
現在の『トゥルーバイツ』のやろうとしていることを調べて教わった。

目標に向かって全力になれるその姿は憧れる部分はあるし、応援もしたくはなる。
それでも、譲れない。

「あかねさんの、自分のために行う『話』に興味が出たっていうのもあったし、
 自分が好きなものに興味を持ってくれた相手をちゃんと見ないのはちょっと俺のマナーに反するからね」

あの朝に思惑とかなんにせよ、作ってるものに興味を抱いてもらえた礼をしたかったのがはじまりだ。
じゃあ、と続いた言葉に思わずため息をついた。

「……あのな、じゃあってなんだ。

 聞かないって言ったばっかりだろ!
 聞いて俺が邪魔しに動いたらどうするんだよ」
「それともなんだ、実は聞いてほしくて仕方ないってワケか?!
 機密情報だ何だと調べるの大変だったんだぞ!情報だって一部潰されてるし!」
「そこんところどうなんだよ!」

ぜぇぜぇ、と思わず声を荒げてキレた。
逆ギレだ。

日ノ岡 あかね > 「あはははは!! 『それ』がトカ君なんだ、最高!」

嬉しそうに笑う。
お腹を抱えてそれはもう嬉しそうに。楽しそうに。
ぜぇぜぇと息があがっている十架の様子も、あかねからすればとても『喜ばしい』ものらしい。

「聞いてほしいわよ。だって、言わなかったら『また』調べるかもしれないじゃないトカ君」

実際、言わなくても彼は調べた。
自分の力だけで『此処』まで来た。
なら、此処で何も語らなかったところで。

「なら、此処である程度白黒ハッキリさせたほうが『私が楽』だわ。それに私……自分語りってそんな嫌いじゃないしね?」

目を細めて、両手を合わせる。
とてもとても、楽しそうに。

「……此処にいる人って、みんなそういうところあると思わない?」

小首を傾げた。

武楽夢 十架 >  
あかねの笑い声で額に手を当てた。

「あ~~、もう調子狂う……」

こういう奴いる。ほんと一人は学年に居たりする。いや、ダブってなきゃ実際居たわけだ。
もういい、こういう手合は一度そういう行為で痛い目でもみなきゃ……ああ、いや『昔の学校』でいたやつは何度怒られてもそのままだったよ。
そう、そういう手合。

「もういい、遠慮しないからな……ったく。
 ……あー、ま、久しぶりに肩の力抜けたっていうか」

こういうのが、もう好きにしてというか、精神的なまな板の上の鯉という気分だ。
ムードメーカーではなくトラブルメーカーな訳だが。
"いいじゃん。白黒つけるの。俺黒な"なんてヤケな思考になってきたと自笑して少し、深呼吸した。

「みんな、自分語りが好きって……?」

それを農業活動とか以外ぼっちの俺に聞くか?と自傷しながら、考えた。

「うーん、あるかも知れないか……?」

少ない出会いではあるが、そういうのを言われればそうかも知れない……か。

日ノ岡 あかね > 「遠慮ない方が嬉しいわよ。変に遠慮されたり、変に敬遠されたり、変に腫物扱いされる方が……人って傷つくものよ?」

馴れ馴れしく近付きながら、十架の目を見てあかねは楽しそうに笑う。
真っ黒な目を相変わらず猫のように細めながら、ニコニコと。

「誰だって自分の事を知ってほしい。自分の事を理解してほしい。自分の事を大事にして欲しい……みんなそう思ってるわ。ただ、いちいち全部取説付けても誰も読まないし、そういう取説だらけの人間は煙たがられるから『誰にでもやらない』だけ。そういうものでしょ」

だから、少しずつ距離を測る。
少しずつお互いに知っていく。
少しずつお互いに伝え合う。
あかねはそれを……尊く思う。

「というわけで、改めてどうぞ。聞いてくれるなら私も喜んで答えられる限りは答えるので」

大仰に会釈して見せて、あかねは笑う。
日ノ岡あかね取扱説明書その一。
日ノ岡あかねは聞かれれば答えられる限りは答える。いつでも。

武楽夢 十架 >  
「言ったな?何でも聞くからな?
 最初からそんな遠慮なんてあんましてなかったし、男友達相手みたいに雑にするのは流石にって思ってたのはある……」

腫れ物扱いっていうのはちょっと分かるが。
彼女の過去としちゃ、農業する体力もなくて憐れまれてたのと同等に語るのは桁が違うか。

「確かに一理あるかも知れないが、知って欲しい受け容れて欲しい認めて欲しいなんて言うのは仕方ないし、
 取説だらけの人ってのがいたらまあ……ちょっと嫌厭するが、人だっていうなら読んでやるのも付き合い……」

なんか言ってて悲しくなってくるなと自分の付き合いの狭さに一瞬目を背けたくなった。
いや待て。

「それで言ったら君は『取り扱い注意』とか貼られてそうだ」

少ししてやったりという風に笑い返してようやく余裕を持ってその顔を見て、

「先ず俺が知ったことを先に言えば、風紀にある君の記録色々と風紀で君を識る人の意見の一つかな」

指を計二本立てた。この二つだと言って続ける。

「それで、一番知りたくなるのは君の《異能》についてだ。
 耳にした《真理》だ目にした《窓》って単語も気になりはするけどね。
 ――がっつく男は嫌われると、昔怒られたので、そこを一つ」

虫食いなんて気になる状態だったものが一番。
他は正直、情報の捕捉だった。
資料の文面的にそれで過去に色々あったとしても遠慮するななんて言ったのは相手だと青年は開き直って言葉にする。

日ノ岡 あかね > 「順番に答えるわね。まず、私の『異能』については秘密。今は封じられているとはいえ、首輪が無ければ私の武器でもあるから……私はそれについては答えない」

一度そう区切ってから、あかねは続ける。

「正直……自分の異能についてベラベラ喋ったり見せびらかす人達の事全然わかんないの私。少なくとも落第街に長くいた私からすれば、自殺行為どころかそれ以上の危険を侵す事……異能戦は情報戦よ。見せれば見せるだけ、聞かせれば聞かせるだけ『不利』になる。それはそれだけ『命が脅かされる危険が増す』ということ……出来る限りは隠すに限るわ。だからこそ、風紀委員会も私の『異能』は伏せてくれていたんじゃないかしら? 今は風紀委員だしね、私。まぁ、高い情報権限を持つ人ならそれでもバレてると思うけどね。昔、暴走もしてるし」

クスクスとあかねは笑う。
実際、あらゆる戦いにおいて『知られる事』は大きなリスクを抱えている。
知らせることがメリットになる事も当然あるが、大体において武器の性能は『知られない』方が有利に働く。
命の取り合いになるような場合ではそれこそ……致命の差となる。
元違反部活生であるからこそ、あかねはそれをよく知っていた。

「次に『真理』と『窓』について。これは隠す事でもないから答えるわ。まず、『真理』は全ての答えよ。この世界のあらゆる問題に答えてくれるもの……まぁ、テストの答案覗くようなものよ。ただ、この世界には残念ながらそんなものは存在していない」

この世界の遍く問題に答える何か。そんなものは存在していない。
世界の英知と技術の全てを集めても、それは叶わない。
だからこそ、人は悩み、苦しみ、考え続ける。
しかし、それは。

「この世界にないだけ」

つまりは、そういうこと。

「……だから、『それを知る異世界の存在』に尋ねるの。これが私たちの言う『真理』の正体。『窓』はその異世界の存在に語り掛けるためのポータルよ……小型の『門』ってところ。普通の『門』を開くだけのリソースなんて準備出来ないからね……前はそれを使って『真理の声』だけは何とか聞けたの」

それが、『トゥルーサイト』の行った事。
それが、日ノ岡あかねがかつて挑んだ『真理』の正体。
しかし。

「まぁ、失敗したけどね。私以外はみんな死んじゃったわ。やっぱり、『真理』が相手となると、『前の方法』じゃどうにもならなかったわね」

そう、失敗した。敗北した。取りこぼした。
故に。
……方法をアップデートして、また挑む。
それだけの話。

武楽夢 十架 >  
黙って話を聞いた。
黙って聞いて、

「……ほ、ほんとに全部答えるやつがあるか!」

条件反射的に左手でデコピンを仕掛ける。なんの変哲もないただのデコピンだ。
動きがわかれば、素人だって躱せる。
この距離で躱しきれるかは、意思次第な感もある。


「あー…うん。『異能』についてはそう。そうだね。俺でもそう思うよ。
 でも律儀に答えてくれるってお人好しとか言われない? ちょっと色々通り越して少し不安になった」

ほんとにこの子、取り扱い注意って間違ってないんじゃないか。 『真理』に頼るまでもないんじゃないか、その認識は。



「で、イメージしづらかった二つの《モノ》に対しての捕捉としちゃあ完璧だね」

何を指して『真理』というのか。 これが不明瞭だったのは確かだ。
言われた内容をはい、なるほどそうなんですねと飲み込むのも、疑うのも簡単な状況ではあるが、説得力がこれまでの情報と今の話にはある。
こう聞いてしまうと更に疑問は出てくるわけだが、要点だけ。
大事なことだけ明確にしよう。

「……嫌われてもいいから最後にもう一つ……二つだけがっついていい?」

日ノ岡 あかね > 「いったぁ!! 女の子にデコピンとかする奴おるぅ~? いたわー、あははは! トカ君のそういうところ、好きよ。お人よしって言われたのは今初めてかもしれないのでとても新鮮な気持ちね」

避けもしないでデコピンを普通に受けて、あかねは笑う。
とても楽しそうに。

「嫌うかどうかはわからないけど、割と私、トカ君の事は好きだからがっつかれるのは大歓迎よ。さぁ、どうぞどうぞ」

両手を広げてニコニコ笑う。
まるで、教室の隅でクラスメイトにそうしているかのように。

武楽夢 十架 >  
全くほんとただのクラスメイトだったらよかった。
バカなノリやってアホなはなしするような同級生だったら。

つられて笑った。

友人として相談乗って彼女に彼氏が居たら勘違いされて襟首掴まれるのも在り得たかもしれないなぁ。

どうぞどうぞ、という彼女言葉にそんなたらとかればな妄想は蹴り捨てた。
ふぅ、と息を吐いて そんな僅かな……そうだったらそれは面白かったなぁって夢から醒めていく。


 "前に失敗した時、日ノ岡あかね以外は死亡した。"
 では―――、


笑みは浮かべない。
赤い瞳は煌めかない。


「『真理』を手に入れることに成功した場合と
 失敗した場合に『予想される状況』について聞いておきたい。
 この二つについて聞きたい」

日ノ岡 あかね > 「成功したら、成功した人は生き残る。『真理』から『実行可能な願いの叶え方』を聞ける。それだけ」

『真理』には尋ねるだけだ。
成功したところで『式と答え』を聞けるだけ。
仮に……存在しなければ『解なし』と言われるだけ。
それも含めて、分のいい博打ではない。

「失敗したら、失敗した人は死ぬ。元々、人間……いいえ、たかがこの世界で生きられる知性体が相手するには過ぎる相手。こっちの方が高確率ね。今回も『真理に挑む99%の人』はこうなると思うわ。前みたいにね……シンプルでしょ?」

あかねは笑う。小首を傾げいつも通りに。

武楽夢 十架 >  
「分かった」

わかった。

成功すれば、それはハッピーエンドかも知れない。
しかし、どちらにせよそんなもの。
『埒外の存在』から得られる解答など碌なものであるはずがない。
解っていた。《真理》がどういうものか聞いた時に。
しかし、少しは夢もみたかったんだ。

少女の前から数歩離れる。


「なら」

 失敗すれば出鱈目な解答すら得られず死ぬだけ。
 じゃあ、その規模は本当に前回と同じで済むのか。

「俺は」

 そんな馬鹿げた話で人を消失(ころ)させられるかよ。


「君の敵だ」


笑みもなく、赤い瞳でそう宣言する。
認められないなら止めるしかない。

日ノ岡 あかね > 「そう、残念ね」

言葉とは裏腹に、あかねはとても嬉しそうに笑う。とても楽しそうに笑う。
一歩離れた十架の顔をずっと見ながら……あかねは笑う。

「でも、なんで? 私は誰にも強要はしていない。『トゥルーバイツ』は全員志願者。全員『トゥルーサイト』の末路も知っているし、トカ君に話した以上に何度も成功率が低く、恐らく十中八九死ぬだけであることも説明してある……死ぬのもその志願者一同だけ。しかも大半は元違反部活生か二級学生。全員どん詰まりよ」

実際、誰もがこんなことは馬鹿げていると知っている。
それを理解した上で挑んでいる。それを承知の上で実行している。
狂った集団自殺と言われれば、実際その通りではある。
だが……他の代案がないのだ。なら、例えそれが一縷の望みであったとしても。

「……『真理』に頼るしかない私達と、どうして敵対する理由があるの?」

それに縋るしかない。
それが……『トゥルーバイツ』という集団。
真理に噛み付くほか無い者達。
それと、武楽夢十架が対立する理由。
それを……日ノ岡あかねは知りたい。

武楽夢 十架 >  
「なんでか……」

その問い掛けに、ははっと声が漏れた。

「―――志願者だとは資料や話に聞いて知ってる。どういう人たちが集まってるのかも知ってる」

知らないわけがない。
自分とて見てきている。 あの街の住人を。
あそこに住んで、あそこに堕ちたわけじゃない。けれど。

「『真理』と言えば、聞こえがいい」

死にたいというのならビルから落ちればいい。それこそ何人も居るんだそれぞれの手足を拘束して繋いで前のやつをそれこそこの時計塔からでも落とせばいい。
ただの集団自殺なら、自分に止める気はない。
そういう相手に声をかけて全員を救える力は青年にはない。
だから人に迷惑をかけない程度に勝手にしろとせめて見捨ててあげることしか出来ない。


「『異世界の化け物』に幻想を抱くような事は認められない」


 本人たちがそうなってもいいとか言おうが。
 起こることで起きる最悪があるというなら。
 彼ら、君に恨まれようと構いやしない。


「君等が勝手にそうするように、俺がそうするっていう我儘だよ」


冷めた赤い瞳で大仰な理由なんてないと笑って言った。

「君たちの『真理』は認められない」

日ノ岡 あかね > 「……」

全部、それこそ全部聞き終えて。
あかねは押し黙り、暫し……十架の目を見つめたのち。

「あははははははははははは!!」

笑った。
とても、とても。
……楽しそうに。

「いいじゃない、大好きよ、そういうの」

満面の笑みで。
微かに頬を朱にすら染めて。
あかねは笑った。

「私も幻想を見ていないとはいえないわ。たかが異界の自分より多分頭が良いであろう怪物に話を聞くだけ……実際、これは本当に分が悪い博打。出来れば私もこんなことはしたくない……だけど、他の手段がないからそうするだけ。そういう意味じゃあ、末期症状の患者が怪しげな民間療法を訝しみながらも実行しようとしているのとこれは同じ……トカ君に関わらず、普通の人達ならそう思って然るべき。だから、アナタのワガママは正当。私は好ましいと思うわ」

十架の言い分を全面的に認める。
それは全て正しい。全て間違っていない。
だからこそ。

「白黒ついて嬉しいわ。最高の敵になってくれそうね、トカ君」

大仰に会釈をする。
スカートの端をつまんで、大袈裟に礼をする。
ダンスの相手にそうするように、敬意を示して。

「『楽しみ』にしてるわ、アナタのワガママ」

その言葉を最後に、あかねは屋上を去っていく。
音もなく、その場から消える様に。
螺旋階段を踏みしめる足音は……しなかった。

ご案内:「大時計塔」から日ノ岡 あかねさんが去りました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。左腕に腕章。腕章には林檎に噛み付いた蛇が絡みついているエンブレム。>
武楽夢 十架 >  
「……はぁ……」

ドッと疲れた。
思わず、姿が見えなくなって床に腰を下ろした。

ここに来てからの発言は、全て本心だ。
最初から最後まで。

最後の彼女の声は、笑い声とも泣き声とも俺には判別できなかったが。

「……ああ『意味』は変わったが期待には応えるさ」

きっと、彼女よりも今の俺は弱い。
島全体で見てもきっと最弱の部類だ。

「だけど、否定して恨まれてやるよ」

そう、今は呟いて横なった。

ご案内:「大時計塔」から武楽夢 十架さんが去りました。<補足:黒髪赤目/学生服姿/細身の青年【乱入歓迎】>