2020/07/15 のログ
ご案内:「宗教施設群-修道院」にマルレーネさんが現れました。<補足:165cm/金髪碧眼修道服/乱入歓迎>
マルレーネ > 大変な目にあった。
私は服を見に行ったはずだ。見に行っただけのはずだった。
見たことの無い店に入って、見たことの無い服装に囲まれる。

リボン!リボン!リボン!フリル!フリル!フリル!
フリル!フリル!リボン!フリル!リボン!リボン!

見たことが無いほどのふりふりの濁流が彼女に襲い掛かる。
いやいや。 いやいや。
これは流石に前の世界でも経験が無いわけで。

それどころか、店員の目には"コイツ全然イケてない"と映ったのだろう。
無料でいい、お試しでいい、体験でいい。
だからちょっと触らせろと言わんばかりにフードを奪われ、髪の毛を弄られた。

マルレーネ > 「いややっぱり無いですよねこれ。」

鏡の前には、修道服ながら可愛い系ツインテールにされた女子の姿があった。フードが入らないくらいに可愛らしいふわふわフリルのついたリボンつき。
死ぬほど恥ずかしくて腰から力が抜けてその場に崩れ落ちるシスター。

一日、一日つけていたら恥ずかしさもなくなります!
一日つけてダメなら返してください!
と力説されて約束をさせられてしまった。押しが強い店員。店員押しが強い。

「今日は修道院を閉めることまで考えなければ。」

表にはいつも通り"相談・悩み・愚痴・不満・懺悔 何でも聞きます"と記載された看板を掲げているが。

いるんだが。

ご案内:「宗教施設群-修道院」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 野暮用で通り掛かった修道院の前。
いつも何かと忙しくしているシスターの姿がなかったから、避暑ついでに修道院に立ち寄ることにした。
通るたびに遠目で見かけて、気に掛かっていた場所だ。

美術教師ヨキ。
異邦人として異邦人街を懇意にしていることもあって、姿を見かけることもあったかも知れない。

「こんにちは、シスター。
少しばかり邪魔をさせてもらうよ……、」

扉を潜って、間もなく。
普段、通りで見かけるシスターとはまるきり雰囲気の異なる様相に、ぱちくりと瞬きする。

「……おや! シスター、今日は随分とお洒落をしているね。
今日はこれからお出かけの用事でもあったかな?」

すわ女性の身支度の合間に来てしまっただろうかと、遠慮する素振りさえ見せる。

マルレーネ > 間が悪い。いや悪くないのか? いや悪い。
脳内で言葉が流れて落ちて、慌てるという言葉が最も似合う挙動で飛び上がって振り向く。

「あ。っと、ととと、はい、どうぞもちろん。」

珍しく目を白黒させる。
先日……まだ生徒によっては続行中のテスト。
それで彼女は来たばかりの異邦人ということもあり、簡単に終わったのだが。

友人の因幡幸子女史の助言でもって、"これ落とすと補習めちゃ長"危険教科だけはバッチリギリギリ赤点を回避した。
そして問題は。


美術は赤点だったということだ。

あ、これ家にやってきて叱責するという例のアレですね。叱られるのは久々だなぁ。などと頭の中を高速で言葉がぐるぐる回る。
ぐるぐる回るおめめ。


「え、ええと、いえいえいえいえ。 先ほど偶然お店に通りかかったら、こういうリボンをつけたらどうだと貸してもらいまして。 い、今すぐ外しますね。」

あっははは、あはは、気が動転している笑い方をしながらリボンに手をかける。

ヨキ > 「ああ……そうか、シスター・マルレーネ。
他の同僚から聞いたよ、赤点を取ったと。

勿体ないな、ヨキの下教わればそうそう赤点をもらうことなどなかったのに。
運が悪かったね」

軽い調子で笑ってみせる。
リボンを外そうとする彼女を見ながら、手近な椅子に腰を下ろす。

「何だ、外してしまうのかい。
でも確かに、普段の頭巾を被っている君の方が似合うよ」

そんなに慌てることもないのに、とばかり、穏やかな調子。

「赤点を取っただなんて、またどうして。提出日にでも間に合わなかったのか?」

マルレーネ > 「あ、あはは………。
 すみません。」

一瞬笑ってごまかそうとしたが、すぐに思い直す。
教えを乞う立場の人間の態度では無いな、と少し反省。
ちゃんと頭を下げながらも、ツインテールがぺたりと落ちる。


「に、似合う……ですか?」

何時ものフードは、あって当たり前のもの。
似合うという言葉で表現されたことが無いからか、ちょっとだけ頬を赤くする。
見た目を褒められるのもうれしくないわけでは無いが、そういったふさわしい恰好を褒められるのは、普段とちょっと違うくすぐったさがある。


「……その、ちょっとだけ、この場所に慣れ切っていないというか。
 前の場所と同じように過ごそうとしているんですけど、上手くいかないこともあって。

 ……それで、少し落ち込んでしまうことが、いくつか。」

情けない話だとは思う。でも、……隠すことでもない。
まだツインテールのままではあれど、少しばかり落ち着きを取り戻した声で。

ヨキ > 「うん。似合うと思うよ。
きっと、君がずっと信仰者としてやってきたためだろうね。
君の敬虔さが見えるような気がして、好きなんだ。

君の髪は綺麗だから、そうやって結っているのも似合うがね。
もう少しこちらの文化に慣れてからでも、遅くはないと思うよ」

小さな修道院らしく、落ち着いた声でぽつぽつと話す。

「……そうだな。ところ変われば、そぐわない点も多かろう。
特に信心と暮らしとは、切っても切り離せないものだから。
君の苦労は、想像するにあまりある。

さすがに君の信ずるものや、同胞のように、とはいかないがね。
今日は君の隣人として、君の話を聞くよ。

シスター・マルレーネである以上に――ヨキと同じ異邦人の、ひとりのマルレーネ君としてね」

マルレーネ > 「………………。」

相手の言葉に、目を少しだけ細めて。
頬を染め、頬をぽりぽり。照れくさくなる。
見た目と信仰への姿勢をどちらも同時に褒められるとか、一番照れる奴。


「………ありがとうございます。
 でも、皆さんとてもよくしてくれるので。本当に助かっています。

 "そういった人を受け入れる文化"がある場所に来た、わけですよね。
 もし、それが無かったら。
 海の底にでも飛んでしまったら、その時点で終わっていたわけですし。」

照れながらもゆったりと、自分は恵まれていた、と口にする。
そう、恵まれていたのだ、私は。


「………。」

話を聞く、と言われて、しばし煩悶するような表情を浮かべる。
聞いていいものかどうか、悩むような。


「……私はあえて聞かないようにしていたんですが。」

目を閉じて、一息。

「他の世界から来て、元の世界に戻った方はいらっしゃるんでしょうか。」

おそらく、何度も何度も聞かれたであろう質問。視線は、僅かに背ける。

ヨキ > 「そうだよ。我々異邦人は、少なくとも恵まれてはいる。
命の危険がなく、身の安全や衣食住を保障され、異邦人街や生活委員会という、元の文化を最大限尊重してくれる場を用意してくれても居る。
中には押し付けのように感じられる者も居るが……。

《門》によって日々を侵されているのは、地球人だって同じだ。
一方が一方の世界に移る以上、ある程度の衝突と妥協は避けられない」

マルレーネの沈黙に、こちらもしばし黙る。
足元に視線を落として、彼女の言葉を待ち――

投げ掛けられた質問に、二三小さく頷く。

「…………。
居ないね。今のところは」

首を振る。

「十年以上この島に居ても、聞いたことがない。
卒業して本土へ移り住む者があれば、《門》研究の最先端であるこの島に残るものも在る。
故郷に帰れるかも知れないという、一縷の望みを懸けてね。

だが、『帰れた』という話は、全く聞かない」

眉を下げて、薄く笑う。

「君は、帰りたいよな」

疑問形ではなく。

マルレーネ > 「驚きました。元の世界で異国に飛ばされたとしてもこのような待遇はありえない。
 むしろ、しばらくは現実では無くて本当に死んだのだと思っていました。
 あまりにも都合が良い夢を見るものだと。

 ………はい、そうですね。
 望まずにやってきているのですから、当然起こりうること。」

目を閉じて、軽く祈る。
予測された返答を受け止めるための間がありがたかった。

「………そうでしょうね。
 希望があるのならば、何を信じているか分からないようなこの場所に、相談に来る人はもっと少ない。」

次の言葉が胸に刺さって、滑らかで穏やかだった喉が、詰まる。


「………わかりません。」

当然のはずの言葉が出てこなくて、目を伏せる。


「お茶、お持ちしますね。気が利かずにすみません。 何がいいですか?
 何でもありますよ。 いろんな人が来ますからね?」

言葉を無理に跳ねさせながら、くるりと振り向いて笑顔を一つ。
ぱちん、っとウィンクをして、奥へと足を進めて。

ヨキ > 「むしろ、この学園はよくやっている。
細かなところまで人員の配備や教育も行き届き、よくぞ多くの異邦人を迎え入れるものだと感心する」

言葉を詰まらせるマルレーネに、掛けられる言葉はない。
お茶を支度するという彼女へ、あ、と声を上げて。

「いや。斯様な気遣いなど、…………」

少し考えてから。

「それでは、冷たい麦茶でもあれば」

麦茶。この日本の、夏の象徴めいた飲み物。

――やがて、マルレーネが茶の支度をしている間に。

いずれの神も問わず、いずれの茶葉もある。
きっと、彼女の故郷以外のものたちが。

そんな修道院の中を、見渡しながらに。

「馬鹿だな、ヨキは。
……『君の故郷の茶が飲んでみたい』だなんて、考えてしまった。

それをいちばん飲みたいのは、君なのに」

独りごちる。この小さな部屋の中であれば、彼女にも届くほどの声。

マルレーネ > 「それは本当に思いました。
 この世界に馴染むことが大変な方のみ、と言われても仕方ないと思います。
 誰であっても。 ………不思議なもので、それで助かっていますからね。」

ふふふ、と笑いながら麦茶を入れる。
相手の言葉に、少しだけ目を細めて。ちょっぴり悪戯に笑いかける。

「聞こえてましたよ。
 ………いいですけど、後悔しませんか?
 私の本当の故郷は、とても寒かったんです。とっても。

 それこそ、草木もほんのちょびっとで。
 その中でも育つ木がありまして、その固い皮の中にある、固くなりかけの皮をお湯に入れてですね。
 そのお湯を飲むんです。

 これがまた味が薄いんですよ。ほぼお湯。子供心に、お湯ですよねこれ、っていつも思っていたものです。
 よくよく考えれば、子供をだましてるだけで、大人は全員お酒だったって話なんですけどね。」

 ころころと笑いながら、ぺろ、っと舌を出して。麦茶を二人分ことん、と置く。


「故郷を思わない日はありません。
 ………ですけれど、あちらの世界では遅かれ早かれ死ぬ運命にありましたから。
 こうやって、何も心配せずに日常を送れることが夢のようだと思うこともあります。

 ……本音ですよ?」

ヨキ > 「ああ。……ヨキたちは、よくぞ助かったものだ。
遠くまで辿り着いて、こうして茶を飲んだりしてる」

マルレーネの故郷の話には、明るく笑って。

「――ははは! なるほど、そうだったか。
ならばこちらの食生活は、さぞや多彩だろう。

いいよ、それでもヨキは、後悔なぞせんよ。
君の故郷の味は、どんなに似せたって二つとないものだから。

それで君の思い出話が聞けるなら」

置かれた麦茶を、いただきます、と挨拶してから口にする。

「……夢のよう、か。確かに、何とも賑やかな夢だ。
死ぬ運命とは、戦争のために? それとも……気候や貧しさや、疫病のために?」

戦争、と。
十年以上この世界に暮らしているというヨキの口から、その語がいの一番に出た。

マルレーネ > 「思い出話なら、いくらでも話しますよ。
 隠すようなことも一つもありませんから。 何より、この暑さでお湯を飲むのはちょっと。」

 流石にちょっと、と頬に手を当てる。
 この格好ちょっと暑いんですよね、などと言いながら、空調の無い粗末な設備。


「こちらの世界でも、戦争は当たり前なのですか?」

お茶を口にしながら、まず最初に出てきた言葉がそれであることに飲む手を僅かに止めて。
思ったままに問いかける。


「………こちらの世界で話してはいけないことなんて一つもありませんからね。

 私は神を信仰していました。
 それはもう誰もが私を知っている……あ、ごめんなさいこれは嘘ですけど。
 ちょっとばかり有名なくらいに、真剣に信じていました。」

ころりと笑いながら、冗談も交えて。


「こちらの世界でも………いえ、あるかどうかわからないことは控えますが。
 宗教そのものは正しい柱があったとしても。それは権力と結びつき、お金を集め、政治に入り込みます。

 私の世界では、それがもう当たり前になっていました。
 戦える私は、私の意思とは関係なく戦うことになり、それこそ戦争にも参加しました。」

お茶を飲みながら、目を閉じて。
色々見てしまった、色々知ってしまった。腐敗をその目で、身体で確かめてしまった。
目を閉じたまま、様々な光景が蘇り、指が僅かに震えて、湯飲みを置く。


「ですから、戻りたいかと言われると。 本当に分かりませんね? こうやって話を聞いてくれる頼れる方もいませんでしたしね。」

なんて、ちょっと露骨でした? と冗談にしながら舌をぺろりと。
笑いに混ぜて流そうとする。

ヨキ > 「はは。寒い地域の生まれなら、この島の暑さはさぞ堪えるだろう。
君の話は、いくらでも聞いていたくなってな。話しぶりが心地よいんだ」

マルレーネの問い掛けに、首を振る。

「いや。この地球では、かつて戦争があった、ということは聞いている。
そういう世界から来た者が、ヨキの教え子に少なからず在ったんだ」

そうして、麦茶を片手に話に聞き入る。

「……そうか。
君はたくさん、たくさん嫌なものを見てきてしまったのだな」

語る様子を。目を伏せるのを。その指先が微かに震えるのを、見る。

「…………。ヨキはな。

元の世界から来た頃に比べると、いろいろなことが様変わりしてしまった。
だから今、さまざまな幸運が重なって元の世界へ帰れることになったとしても――
戻った先で、ヨキはふたたび異邦人と呼ばれることになろう。

……だからヨキは、こちらの世界に骨を埋めると決めておる。

とびきり大らかで、自由で、懐の深い異邦人として。
地球人にとっても、いずれの世界の異邦人にとっても味方で在りたい」

空いているマルレーネの手へ、己の手を伸ばす。
自分より小さな手を包み込むように、ぽんと重ねる。

「――君の神は、異性とこうして触れ合うことを禁じているか?

だが、今だけは許してくれよ。
“教え子”が揺らいでいるところを、放ってはおけなんだ」

マルレーネ > 「いろんな場所を歩いてきましたけど………あのエアコンだけは本当、危険ですね。
 涼しいというのが快適すぎて動きたくなくなるというか。」

あはは、と笑いながらあるあるを口にする。
我慢には慣れているが、我慢しなくていい、には慣れていない。


「………そうなんですね。
 私はまだまだ未熟ですが、それでも。 その言葉に強がりや嘘が無いことは分かります。

 己の在り方を、そうやって改めて作り直すのは………。
 いえ、言うまでもないことですね。」

とても苦労はしたのだろう。それを改めて問うのは無粋に思えた。
首を横に振っているところで、手をそっと重ねられて。


「……いいえ、全然。
 揺らいでるように、見えました?」

えへ、と。 包み隠さず話していた彼女が笑って誤魔化しながら、その手を解くこともなく。
嬉しそうに頬を緩めながら、その手を持ち上げ、己の額を付けて目を閉じる。

「………私はまだ分かりませんが。
 それでも、私がここにきて意味があったと自分で思える程度には、正しいことを………いえ、私が正しいと思えることを為したいと思っています。

 そのため、私は聖職者である前に学生となりました。 教え導いて頂けることを、感謝します。」

正しい祈りのような所作で、目を閉じたまま相手に伝える。
心の中の迷いや、不安を振り払うように。 一言一言に力を込めて………。


「……ちょっと大げさでした?」

なんて、てへー、と舌を出して笑って最後に誤魔化そうとするのはクセらしい。

ヨキ > 「ははは。この国にはな、冬になるとコタツという危険な机が待っておるんだ。
君にはぜひ、あれを体感してもらわなくてはね」

マルレーネが問わずに秘した台詞に、小さく笑う。

「……戦争そのものを経験したことはないが。
ヨキは、似たようなやり方で追い立てられる側だったから」

ぽつり、と口にする。

「戦いは、人の心を傷付ける。

揺らぎを見せない君の姿勢を、ヨキは尊重する。
それでも、“目にしてしまった記憶”は消えないから」

祈りに似たマルレーネの言葉を、静かに受け取る。
返す言葉はない。この静謐が、確かに聞き届けたことを証明するかのよう。

「大袈裟などということはない。ヨキは君を嗤いはせぬ。

――ヨキは本来、祈りを受け取る側だったから」

何と話すべきか。
言葉を選びながらに。

「《門》を潜る前は、もともと人間ですらなかった。
人びとの信仰を受け取る、一匹の大きな獣であったよ。

永い永い時間を経て信仰のかたちが変わり、追い立てられる側に変じてしまったけれども――

だからヨキは、人の祈りと誓いを、そこにある感謝を、無下にはしない。
そこに当人だけが持つ厳粛な心が秘められていることを、知っておるから」

誤魔化そうとするマルレーネに、笑い掛ける。晴れやかに。

「だから、シスター・マルレーネ。
ヨキの前では、己の営みを大袈裟などと思うな。

捧げられたものを受け取る気概なくして、異邦人を支える教師を名乗れはしない」

マルレーネ > 「こたつ。 危険な机って、何ですか、噛みついてくるんですか?
 …………。 なんとなく予想はつきましたが、私は寒さには強いんですからね、そんなものに負けたりしませんよ?」

ふふーん、と自信満々に胸を張って言っておく。
フラグって何でしょうね。少なくともまだ彼女はそれを知らない。


「………そうだったんですね。
 この世界はあまりにも懐が深くて、私にはまだ到底理解の及ばぬことばかり。

 ですが、………道理で納得しました。
 どこまで話していいものか、いつも、とても悩むのですが、今日は話していいと感じました。それは、私よりももっともっと、大きな波を渡ってきたからなのですね。

 支えられている、その有難さを素直に受け取らせて頂きます。」

素直にその言葉を返しながら、目を伏せる。
一人で全てを背負わなくてもいいことを感じる。そうやって生きてきたのだろう、この世界は。


「ああ、本当に。目にしてしまったものは消えないのですね。
 何もかも忘れて、ただ信じていられたらどれだけ――――………」

その手を、ぎゅ、っと握りながら、もう一度己の額につけて。
1、
2、
3。
心の中で三つ数えて、吐息を吐き出す。
思い出しかけて、それを心の奥底に押し込める。

「………いいえ。折角来ていただいたのです。
 お茶をゆっくりと頂きましょう。 まだ外は暑いようですから。」

ヨキ > 立派なフラグが立ってしまった。
くすくす、とただ笑う。詳しくは言わない。冬になれば、否応なしにどこかで味わうだろうから。

「せっかく共に流れ着いた身であるのだから。
ヨキは君の味方で、共に考える隣人で在りたいんだ。

ヨキにとっては、君の聡明さが有難い。
だからそれと同じほどに、ヨキを頼ってくれたら嬉しいと思う」

マルレーネが手を額に添え、三つ数える様子を見つめる。

――あとはもう、何も言わない。
彼女の誓いを無下にはするまいと、自分もまた誓っているから。

……ふっと微笑む。
頷いて、手をするりと離し、湯呑を取る。

「ああ。
お互い、一日くらいはゆっくりと茶飲み話に興じる時間があってもいい」

麦茶を一口。ああ、と美味そうな吐息。

「今年はこれからまだまだ暑くなるよ、シスター・マルレーネ。
二つ結びでなくとも……、髪を結って暑さを逃がすことくらいは、君の信仰も許してくれるといいね」

そんなことを、笑いながらに。
穏やかに語らう時間が、過ぎてゆく。

ご案内:「宗教施設群-修道院」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
マルレーネ > ……はっ。

ツインテールだった……。

恥ずかしさで改めて真っ赤になってぷしゅう、と湯気が出るシスターだった。

ご案内:「宗教施設群-修道院」からマルレーネさんが去りました。<補足:165cm/金髪碧眼修道服/可愛い系ツインテール/乱入歓迎>