2020/07/21 のログ
ご案内:「歓楽街」に日ノ岡 あかねさんが現れました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。左腕に腕章。腕章には林檎に噛み付いた蛇が絡みついているエンブレム。>
日ノ岡 あかね > 入り組んだ通りの中、立体的かつ乱雑に通された歩道橋。
増築に増築を重ねた結果出来上がったと思われるデタラメな違法建築物の上で、あかねはポラロイドカメラを構える。
まるで幾何学模様のように入り組んだ複数の歩道橋。
そこに行きかう人々ごと、シャッターで景色を切り取る。
「いつ来ても、此処は賑やかね」
違法建築の歩道橋の上、売り切れ表示ばかりが並んでいる自販機の隣で、あかねは笑う。
ご案内:「歓楽街」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 紫煙が尾を引く。
教師らしからぬ――否、歓楽街らしい歩き煙草で、長身の美術教師が教え子の姿に目を留めた。
「やあ、日ノ岡君」
自販機、あかね、ヨキの順に並び立って。
「最近、順調なようではないか……『トゥルーバイツ』。
そこここで君と同じ腕章を見かけるようになった。
城戸君にはなかなか会えずじまいだがね」
己の二の腕をなぞり、腕章を模したジェスチャ。
「君自身の調子はどうだい。
今日は『楽しいこと』の前に記念撮影かね?」
日ノ岡 あかね > 「あら、こんばんは、ヨキセンセ」
にっこり笑って、紫煙を引き連れた既知の教師に軽く片手を振る。
自販機の隣で並び立つ二人。
人並みの流れは相変わらず、目前で川のように流れ続ける。
「ま、私も含めてそこそこ順調よ、みんなのお陰……ヨキセンセも居てくれるお陰ですよ? センセが共通の知人だったから仲良くなったって例も一杯あるんだから」
同一の知人同士の話題で盛り上がるというのは、よくある事。
ヨキはその「同一の知人」として良く話題に上がる人物の一人だった。
『トゥルーバイツ』も、そういう縁で知り合った隊員も何人かいる。
「先生も記念撮影する? 『楽しいこと』の前には大事でしょ?」
両手で構えたカメラを持ち上げて、ニコニコ笑う。
とても、楽しそうに。
ヨキ > 「ああ。腕章を着けてから、顔が生き生きとしてきた教え子も見かけてな。
生徒同士だからこそ芽生えてくれた縁が有難い。
君には礼を言わなくてはね」
笑って頷く。見守る者の、穏やかな表情で。
カメラを手に楽しげなあかねの様子には、吸殻を携帯灰皿へ押し込めて。
「それでは、一枚撮ってもらおうかな。
代わりに、ヨキのスマートフォンでも撮らせておくれよ。
互いに一枚ずつ持っておけば、思い出にもなろう」
ピースサインを作る。
この男、写真を撮られ慣れているし、また撮ることも好いている。
「『真理に噛み付きに行く』そうだな。
何を仕出かすか知らないが、己の道を進む教え子を晴れやかに送り出してやらなくてはね」
日ノ岡 あかね > 「勿論よ! それじゃ、遠慮なく……えいっ!」
互いに身を寄せて、自撮り風の写真を撮る。
ヨキのスマートフォンで一枚、あかねのポラロイドカメラで一枚。
だが、ポラロイドカメラの一枚もヨキに手渡す。
「私もスマホあるから、センセが撮った奴後で送って。その写真は……持っててくれると嬉しいわ」
にこりと笑う。
夜の歓楽街、文字通りの遊蛾の舞う街灯の下。
色取り取りのネオンの光は、ヨキとあかねの相貌に複雑な陰影を象る。
「まぁ、『真理に噛み付く』っていっても……前と同じことするだけよ。勿論、前より成功率は上げて挑むけど……何せ相手が相手だからね。多分焼け石に水。それでも、やらない理由にはならないから出来ることは全部するけどね」
前。『トゥルーサイト』の頃にやったこと。
『真理』と呼ばれる異界の『何か』と接触し、『願い』をかなえる方法を教えてもらう。
無論、実現不可能な事を言われることもあるかもしれない。
敢え無く『解なし』とだけ言われて終わるかもしれない。
それでも。
「まぁ、『見て見ぬ振り』は出来ないし、自分の運命を塗り替えようと思ったら……他に手がないからね」
他の手は概ね試した。
試した末に此処にいる。
だから本当に……これは最後の手段。
「『私』が『私』だから『私』を行う話をしてくるだけ……センセ、助けてくれてありがとね」
既にヨキは『助けて』くれた、そう、あかねは思っている。
ヨキの名のお陰で……落第街での『トゥルーバイツ』の活動が楽になった事例は少なくない。
恐らく、動いてくれていたのだろう。
そう、あかねは好意的に解釈していた。
「お陰で何とか……今回も博打を打ちにいけそうだわ」
ヨキ > ポラロイド写真を受け取って、徐々に鮮明になる画像と正面のあかねの顔とを見比べながら。
「なら有難く、この写真はいただいておこう。
判った。綺麗に撮れておるから、安心したまえ。送っておくよ」
もらった写真を、丁重に鞄の中へ仕舞い込む。
「ほう、前と同じことか――ふ、はは。君は本当に博打打ちだな」
『トゥルーサイト』の顛末は、ヨキも無論知っている。
彼女――日ノ岡あかねが、最後の生き残りであることも。
「ヨキの手助けなど、微々たるものだ。
君と『トゥルーバイツ』の面々が駆け回ったからこその成果だと……ヨキはそう思っておる。
『君』が『君』だから『君』を行う話なのだろ。
教師が出来ることは――君を支え、隣に並び立ち、その背を押してやること。それだけだ」
にっこりと。
気さくに笑う。
「博打も博打、大博打だな。
勝負に挑む前に、憂いや悩みなどはなかろうな?
思考が鈍っては、君の頑張りも水の泡だ」
日ノ岡 あかね > 「ふふ、センセも相変わらずの御謙遜ね……まぁ、本当は博打なんて打ちたくないんだけど……他に手がないから仕方ないわ。他の手が『諦める』しかないなら……『諦められない』なら『博打を打つ』しかない……それだけだからね」
ヨキとあわせて、気さくにあかねも笑う。
先日の天気の話でもするかのように気楽に、気安く。
実際、ヨキからすれば……その程度の時間間隔なのかもしれない。
彼の教師とあかねが生きる時間は……どうしても感じ方が違う。
「憂いも悩みも一杯あるけど、まぁ、それも含めて大丈夫。準備は全部したから……あとは計画通りに進めるだけ。それでダメなら私の負けよ。元々、勝ち目の薄い勝負。覚悟はしてるわ」
元より、既に一度負けている勝負。
しかも、相手が相手だ。
芳しい結果だけを期待するのは余りに向こう見ず。
失敗したときのことは当然考え……覚悟している。
「むしろ、私は運がいいわ。二回も勝負できるんだから。『トゥルーサイト』は私以外は一回しかできなかったのにね」
ヨキ > 「君は全く、よく出来た生徒だとも。
君ほどの優等生なら、堅実な道を歩んでもらいたいくらいだが……君だからこそ出来る勝負というものもある。
勝負と聞いては、さぞ引き止められたり、妨害の手も多かろうな?」
腕を組む。
思慮深くも大胆な少女の横顔を、見下ろす。
焼き付けるように、見つめる。
「……ふふ、そうだな。二回目の勝負だ。
捲土重来。再び立ち上がる君を、ヨキは応援するよ。
だから、……そうだな」
少し考えてから。
「たとえ成功したとしても、『補習』は免れられぬだろうから。
その後のことを、約束しようか。
扶桑百貨店の『エンピレオ』を、フルコースで……それとも、『崑崙』で美味しいお酒がいいかな。
『橘』のデザートを、有りっ丈シェアするのも悪くないね。
ヨキはそうやって、君の『帰り着く場所』のひとつで在り続けよう」
鞄から、スマートフォンを取り出してみせて。
「……だが、危なくなったときは。助けを呼ぶことも臆するな。
無言でもいい。本当に困ったときには、とにかくヨキの電話を鳴らせ」
日ノ岡 あかね > 「ヨキセンセは本当に優しいんだから……そういうところ、大好きですよ。『補習』も安心していける」
ヨキの提案は、どれもこれも……心から喜ばしいもの。
あかねは頬を軽く朱に染めながら、じんわりと笑う。
あかねの帰る場所。居場所。それを提供してくれるという教師。
……そこにあかねも辿り着きたい。
だから……引けない。諦められない。
『願い』を手にしなければ、そこには行けない。
本当の意味で其処に行くためには……『願い』を手にするほかない。
それを、日ノ岡あかねは……身をもって知っている。
「センセの提案は全部嬉しいんだけど……思ったより邪魔はなさそうみたい」
軽く肩を竦めて、あかねは笑う。
どこか、申し訳なさそうに。
「一人だけね、トカ君って子だけが真正面から『そんなことさせない』っていってくれたんだけど……他の人達はそうでもないみたい。だから、博打自体はあっさり出来そうよ」
それ自体は良い事。
あかねとしても好都合。
だが、同時に……少しだけ、あかねは苦笑を漏らした。
「『悪』が『悪』だから『悪』を行う話は、どうやら私の話とは交わらないみたい」
素直に言えば、それは残念だったから。
計画の一環でしかなかったとはいえ、『楽しみ』は『楽しみ』だった。
『トゥルーサイト』も届かなかった『願い』を、ある意味違う方法で叶えようとしている集団ではないかと、あかねは少しだけ期待していた。
だが、どうもそれも……あかねの想像とは大分違う目的を持っていたようで。
「対面は今回居そうにないわ。刺激はなさそうね。あっさり終わりそうよ」
思ったより、この島は『平和』だということだ。
誰もに敵は居らず、誰もに障害はない。
日常が横たわっている。
それが分かったのは良くもあり、残念でもあった。
ヨキ > 「だって、そうでなくては。
……死んだ君の仲間も。『ヨキの教え子』も。浮かばれぬよ」
『トゥルーサイト』時代。
命を落としたあかねの仲間の中には、ヨキが知った顔もあった。
だから。だからこそ。
ヨキは迷わずあかねを送り出し、また帰る場所ともなる。
どこか残念そうなあかねの苦笑いに、ヨキもまたふっと吹き出す。
「――そうか。それは良かったというべきか、残念がるべきか。
みながみな、己の生に懸命なのだよ。
今回はそれがたまたま、君とは衝突しなかったというだけ。
人と人とがぶつかり合う機会など、生きて居ればいくらでもあるのだから」
手を伸べる。
あかねの背中に、ぽんと手を置く。
「ヨキはいつでも、教え子を送り出す側だ。
送り出してそのまま袂を分かった者も在れば、命を落とした者も在る。
……それでも、君には。
『ただいま』と、言って欲しいから。
ずっと地下に居た君には。
常世島の夏を、久々に味わってもらいたいからな」
それは『トゥルーバイツ』が成し遂げようとしている大願よりも、ずっとずっとささやかな願い。
あかねの背に、手を宛がったまま。
そこに日ノ岡あかねが在ることを、刻み込む。
日ノ岡 あかね > 「確かに、今回は水着を着る暇もなかったしね」
冗談めかして笑う。背中に置かれた大きな手も心地良い。
あかねは、ヨキという教師のこういうところがとても好きだった。
彼は何も変わらなかった。いつでも彼のままだった。
この島に来た時も。
暴走事故を起こした時も。
『トゥルーサイト』に居た時も。
『トゥルーサイト』が……あかね以外皆死んだ時も。
『補習』から戻った時も。
『トゥルーバイツ』が出来た時も。
……二度目の博打を内に行く今この時も。
ヨキはヨキという存在のままでいてくれた。
きっと、また次……いつ出てくることになっても。
ヨキはヨキとして、日ノ岡あかねと接してくれる。
そう、信じられる。信頼できる。
だから……あかねにとって、ヨキという教師は……ありがたい存在だった。
自分が居ても居なくても……きっと、そのままで居てくれるだろうから。
「ふふ、私の『願い』だってささやかなモノよ? まぁ、でも……きっとみんな、そうなんでしょうね。願っている事はきっとささやかで……そのささやかな『願い』のために懸命に生きている。今回、見たい話が途中までしか見れそうにないのは残念だけど……それも『今回たまたま見れなかった』ってだけね。あとでセンセ、教えてね? 今度の『補習』多分長いだろうから」
出てきた頃にはきっともう、合法的に酒も煙草もできるだろう。
それは覚悟している。織り込み済み。
だが、それは少しだけ……あかねにとっても楽しみでもあった。
「だから……次の『ただいま』の時は、それも一緒に楽しめるわね?」
煙草を吸うジェスチャーをして、いつもヨキが楽しんでいるそれを揶揄しながら、あかねは笑った。
とても、嬉しそうに。
「じゃあ、こんなところで」
そういうと、あかねは改めて制服の皺を少し伸ばし、スカートを直してから……ヨキの目前にまで移動し。
日ノ岡 あかね >
「ヨキ先生、いつも本当に……ありがとうございました。行ってきます」
日ノ岡 あかね > かしこまって、そう頭を下げる。
しっかりと、背筋を伸ばしてそういってから……元の姿勢に戻って、いつも通りに笑った。
嬉しそうに、楽しそうに。
いつもの、日ノ岡あかねの笑みを漏らして。
「『また』ね、センセ」
そのまま、雑踏に消えていく。
相変わらず足音もさせず、野良猫のように。
その少女の姿は、歓楽街の人並みに消え……あっと言う間に見えなくなった。
まるで、夏の陽炎のように。
ご案内:「歓楽街」から日ノ岡 あかねさんが去りました。<補足:常世学園制服。軽いウェーブのセミロング。首輪のようなチョーカーをつけている。左腕に腕章。腕章には林檎に噛み付いた蛇が絡みついているエンブレム。>
ヨキ > あかねの冗句に、明るく笑う。
異能者の島の教師は、とりわけタフな存在でなくては務まらない。
だからヨキは、異能を制御出来ない生徒たちをも見ているし、こうして歓楽街や落第街も気に掛けている。
日ノ岡あかねは、そんな風にして出会った生徒のひとりだった。
だからこそ、彼女がこうして自分の道を選択することを、ヨキは阻まない。
「ああ。君の代わりに見守っておくよ。
ヨキは独りしか居らぬゆえ……多少の取りこぼしは容赦してくれ」
冗談めかして笑う。
「積もる話を、たくさんたくさん交換しよう。
ヨキと君とは、ずっとそうやって永くやってゆける」
付かず離れず――教師と生徒にしては近しくて。そんな、心地よい距離感。
「ふふ。酒も煙草も、大いに満喫しよう。
君はきっといい女になると、ヨキが保証するから」
――やがて、あかねと向かい合う。
畏まった距離。視線が交わる。
ヨキ >
「こちらこそ、どうもありがとう――日ノ岡あかね君。君のおかげで、ヨキも教師として成長できた。
気を付けて、行ってらっしゃい」
ヨキ > こちらもまた、頭を下げ返す。まるで卒業式の予行演習みたいに。
再び顔を見合わせれば、ヨキもまたいつも通りの笑顔で。
「ああ、『また』会おう。日ノ岡君」
見送って、独り。
そのまま路上に立つ。
――手の中の、スマートフォンを操作して。
二人で撮った写真を、あかねの宛先へと送信する。
かわいらしいペンギンのキャラクタが“がんばれ!”と旗を振る――
そんな何気ないスタンプと共に。
間もなく、ヨキもまた歩き出す。
いつも通りの歩調で、ヒールの靴音と共に。
小洒落た様相に。あえかな香水の匂いに。規則正しい足音に。大きな手の体温に。
何もかもの余韻を残すようにして。
ここにヨキは在ると、示すかのように。
ご案内:「歓楽街」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒七分袖カットソー、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>