2020/07/22 のログ
ご案内:「ある少女の覚醒(前)」に さんが現れました。<補足:[ソロール]>
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漆黒の闇の中に今にも落ちてきそうな月を見上げていた。
その足元、冷ややかな、死んだ肉の感触。
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それは、人間の死体で。
おびただしい数の死体で。
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左胸が食いちぎられた死体。
繋がっているのが不思議なほど切り刻まれた死体。
肋骨の下から切断され、傷口が焼き潰された死体。
皮膚一枚の下から食い破られたかのような死体。
顔半分をかろうじて残した殴打痕だらけの死体。
首から下を鶏肉のように照り焼かれた死体。
無数の風穴が開けられた死体。
飴細工のように手足が捻り潰された死体。
秘部から首の下まで引き裂かれた死体。
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死体。
死体。
死体。
死体。
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──それらは全て、私の死体だった。
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どの死に様も。
甘美な香りのように私を誘惑し。
どの死に様も。
恐ろしい結末を私に見せつけ。
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──そうして私は──
ご案内:「ある少女の覚醒(前)」から さんが去りました。<補足:[ソロール]>
ご案内:「ある少女の覚醒(前)」に雨見風菜さんが現れました。<補足:[ソロール]シャツ、スパッツに割烹着>
ご案内:「ある少女の覚醒(前)」から雨見風菜さんが去りました。<補足:[ソロール]シャツ、スパッツに割烹着>
ご案内:「ある少女の覚醒(後)」に雨見風菜さんが現れました。<補足:[ソロール]シャツ、スパッツに割烹着>
女生徒 > 彼女は今日、実家に帰省する。
その前に時間があり、更に予定よりも早く目が冷めたため。
「風菜、起きてる?」
友人である雨見風菜の隔離部屋へと上がり込む。
雨見風菜 > 「おはようございます、──ちゃん」
風菜は、二つの触手を従え。
いま、朝食の調理を終えたかのように。
そしてこれから配膳をするところだったようだ。
女生徒 > 「──」
絶句。
普段の友人が、昨日と全く変わりないはずなのに。
雨見風菜 > 「どうしましたか、──ちゃん?」
女生徒 > 風菜の声に、我に返る。
「ごめん、なんかあんたが眩しく見えた。
……ってかその触手なんなのよ、ついにそういう魔術に手を出したの?」
言いながらローテーブルに着く。
「それに、あんたが朝食を作ってるなんて珍しい。
どういう風の吹き回しよ?」
雨見風菜 > 風菜は、二つの触手とともに自分と友人、二人分の配膳をする。
「悪夢を見ました。
その果てに、この子達が私の異能として発現しました」
触手はどうやら風菜の意のままらしい。
「それで早く目が覚めまして。
──ちゃんが来る気がしたのもあって、朝食を作ってみました」
雨見風菜 > 「「いただきます」」
二人の声が重なる。
女生徒 > 「悪夢を見た、って割にはさっぱりした顔ね」
味噌汁を啜る。
レシピ通りにしか作らない風菜の味は変わらない。
「てか、そもそもあんたの異能って『糸』じゃなかった?」
雨見風菜 > 「そうですね。
死を恋い焦がれ、そして死に恐怖したからでしょうか」
キャベツの千切りを一口。
どうにも曖昧な言葉だ。
「ええ、『糸』も『触手』も、私の異能です」
卵焼きに醤油をかけ、一口。
「私の異能は、単なる『糸』ではありませんでした」
女生徒 > 「死を恋い焦がれ……?
ちょっとあんた何言ってんの?」
焼き鮭を齧る。
そして白米を一口。
見事な炊きあがりだ。
「あんたの異能が、単なる『糸』じゃないっていうのもよくわからないわね」
雨見風菜 > 「悪夢の内容は、こうやって物を食べてるときにするものではないですね。
食欲がなくなるんじゃないかなと思いますが」
焼き鮭の身を解し、白米に乗せて一口。
女生徒 > 「良いわよ、言ってみなさいよ」
卵焼きとキャベツの千切りを一緒に口に入れ、続きを促す。
雨見風菜 > 「今にも落ちてきそうな月の下。
深い深い穴の中、夥しい数の死体の上に、立っていました」
焼き鮭の皮を剥がし、口に入れる。
「その死体はすべて私で。
様々な死に方で、私を見つめていて」
茶を一口。
「私はそれを羨ましく思い。
そうして……」
味噌汁を啜って。
「ここまでです。
そこで目が覚めました」
女生徒 > 「女子高生の見る夢じゃないわね。
カウンセリング受けたら?」
味噌汁を飲み干す。
「……なんて、そんなのが必要だったら、ああもさっぱりした顔にはならないか」
雨見風菜 > 「ええ。
そのおかげで、私は私の異能と向き合えました」
キャベツに、卵焼きにかけて流れ落ちた醤油を絡ませる。
「私の異能は『生命をつなぎとめる異能』でした。
『糸』は傷口をふさぎ、自己治癒を促す異能。
そして『触手』は肉体と同化し、治療をする異能だったようです」
そのキャベツを口に入れる。
「まあ、『触手』は『生命をつなぎとめる』には乱暴なのですが」
女生徒 > 「ははあ、つまり」
卵焼きを食べ尽くした。
醤油との相性が絶妙で少し物足りない。
「ビッチだと思っていたら聖女でしたと。
びっくりね」
雨見風菜 > 「いえ、いいえ。
私は痴女のまま、変わるつもりはありませんよ」
焼き鮭を食べ尽くす。
塩加減が朝のおかずにちょうどよかった。
「私は私です」
女生徒 > 外から聞こえてくる蝉の鳴き声がうるさい。
「馬鹿だねぇあんたって」
ケラケラと笑う。
雨見風菜 > 網戸から、夏の暑い風が入り込む。
食事が終わったら、窓は閉めたほうが良いかもしれない。
「あらやだ、──ちゃんはご存知でしょうに」
クスクスと笑う。
女生徒 > 呆れたものだ。
目の前の友人は、己が死んでいる悪夢を見たにも関わらず。
異能が新たに生えたにも関わらず。
昨日までと同じように笑っている。
これが笑わずにいられようか。
雨見風菜 > ひとしきり笑い合って。
「さ、──ちゃん。
帰省されるんでしょう?」
風菜が箸を置く。
ふたりとも、朝食を完食していた。
女生徒 > 「ええ、帰省前にあんたの顔が見たくなったの。
来てよかったわ、ごちそうさま」
雨見風菜 > そうして、風菜は自室から友人を見送り。
新たな日々に思いを馳せつつ、朝食の片付けをしていくのだった。
ご案内:「ある少女の覚醒(後)」から雨見風菜さんが去りました。<補足:[ソロール]シャツ、スパッツに割烹着>