2020/07/24 のログ
ご案内:「大時計塔」に園刃 華霧さんが現れました。<補足:着崩した制服 林檎に噛み付いた蛇が絡みついているエンブレムのついた腕章>
ご案内:「大時計塔」に山本 英治さんが現れました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス(待ち合わせ済)>
園刃 華霧 >  
「ァー……」

此処数日、あちこちに出歩いた。
目撃者も当然たくさんいる。
仲間にも会った。
知らない男とも話した。

さて――

「……明日、ダな。
 ひひ、もーいーくつ……寝るまでモないナ。
 後一回……一回、ダ」

手には火のついていない煙草
ただ、座り込んで外を眺めている

山本 英治 >  
「いーけないんだ、いけないんだー」

軽佻浮薄な言葉で後ろから声をかける。

「未成年の喫煙っすか、園刃先輩」

メンソールの煙草を咥えて、柵も手すりもないそこで大きく伸びをする。
ここは大時計塔。遥か眼前に街を見下ろす、静かな夜空。

「あ……火がついてないなら補導だっけ?」
「どっちにせよ、別嬪さんが寿命を削るのは感心しない」

すぐに真顔に戻って、彼女に語りかける。

「って……前にこういうこと話したんだよな………ここで」

カチッ、カチッとライターを擦った。
すぐに火がつく。風もない。ライターも新しい。
前回とは、違う。

「ってことは次の俺の台詞は……」
「なんかあったんですか? かな」

園刃 華霧 >  
……来た。
本当に来やがった。
来ないと、思っていたのに。
――できるだけ、ゆっくりと……余裕ぶって振り向く

「『ァー……英治くんじゃン。
 犯罪っつーナら、そモそも、此処立ち入り禁止デしょ。
 お互い様デないノ。』
 ……だったカ?」

へらりと笑う。

「『なンかって……』
 『諦めの悪い』バカアフロがアタシを止めルってうるサくてナ。
 ムカつくカらブン殴ろウと思ってタとこ。
 『なンなら、手伝ってクれるー?』」

じろり、と見返してやる

山本 英治 >  
「……そうだな」

目元だけで笑って、深く紫煙を吐き出した。
もう台詞はなぞらない。
ここから先は、俺と園刃先輩だけが紡げる。
煙は風もない空に散ってすぐ消えてしまう。

「殴るだけじゃ気がすまないって顔してますね」
「それにしてもバカアフロはひどい」
「美しいディリジャン(淑女)の台詞とは思えませんよ」

俺の表情から、きっと色が消えたろう。
これからが全ての始まり。そしてあるいは。

「鶴尾摩衣が死にました」
「常世ディスティニーランドです。なにもない、抜け殻でした……」

指先で煙草を摘んで、携帯灰皿に灰を落とした。

園刃 華霧 >  
「出村秀敏も死んだナ。落第街で。
 死体は、なンかおっさんが持ってイっちまっタから証拠はないケどな。」

やれやれ、と肩をすくめてみせる
表情はへらへらとしたまま

「……デ。死ぬカらヤめろッテお定マりの話?
 けド、悪いナー。
 残り時間、少ないンでネ。遊んでヤレるのは一回こっきリだし
 無駄話モしたクないンだワ」

へらへらと笑う。

「だからマあ、無駄な時間食わナいよウに……優しいアタシから情報をあゲよう。」

いつのまにか、手元に黒光りする機械が握られている。

「まずは……とっくに知ってるかもだけど、おさらいだ。
 こいつが、『真理』と通信できる機械。
 これをどうにかすれば、今回の話はお終いだ。
 けどな。覚えとけ?」

デバイスをこれみよがしに振って見せながら、
もう片方の手を握って前に突き出す。

「一つ、もしデバイスをぶっ壊してもアタシはアタシなりのやり方で『真理』を目指せる。
 納得しなきゃ、何度だって……あかねちんの期間が終わったって一人でも続けてやる。

 一つ、アタシは逃げるのは得意なんでね。気に入らなきゃすぐにでも逃げるぜ?

 一つ、アタシはオマエがアタシと同じ場所に来ないなら話を聞く気はない。」

一つ一つ、指を立てて言葉にする。

「まず、コレを飲み込め」

獣の瞳
挑むような顔
じっと見据えながら言い切った

山本 英治 >  
「出村………!」

あいつ。死んだのか。体から力が抜けた。
妹さんに、会いに行っちまったのかよ。

「そうですか」

表情を歪めて頷く。
もう時間がない。
それを大前提としなくてはならない。

相手の言葉を吟味するように聞いてから再び煙草を咥える。

「わかりました」

相手の貴重な時間を奪っている。
そのことを理解できないやつにレディと話す資格はない。

いや、レディじゃない。園刃華霧にとって、だ。
いつだって今日と明日の境界を彷徨ってきた彼女は。
一分一秒を必死に生きてきたんだ。

そのことを理解しなければ、同じ場所に立つことはできない。

園刃 華霧 >  
「良い答えだ。
 その上で、そうだな……
 アタシと同じところに来る覚悟を聞くぞ。
 責任取るって言ったよなぁ?」

にたり、と笑う。
ケダモノの、笑み

「アタシから奪おうってヤツの覚悟だ。
 正直、口約束とか嫌いなんでね。
 だからアタシからオマエに取らせる責任、一つでっかいのを先に教えてやる。
 オマエは、本当に責任とれるのか。
 此処に上がってくる気があるのかってな」

けけけけ、とひどく耳障りな笑いをあげる

「ああ、勿論。
 無理なら無理で、いいよ?
 そしたら、この『話し合い』も終わりですっきりする。
 それでも、聞くかい?」

みなまで言わず……そう『問いかける』

山本 英治 >  
相手が喋り方を変えたんだ。
だったら俺も普段通りを……敬語を捨てる。

「男が責任を口にしたんだ」
「教えてもらおう」
「無理かどうかもそれを聞いてから決める」

きっと彼女にとっての俺は。
綺麗事ばかり喋る鬱陶しい後輩にすぎなくて。
彼女と同じ場所に行かなければ。

俺の言葉は届かない。
携帯灰皿に煙草を押し付けて火を揉み消して。

「聞かせてくれ、園刃先輩」

今度は俺が問いかけられる番。

園刃 華霧 >  
「ああ……じゃあ、言ってやる。」

園刃 華霧 >  
 
 オマエ……『未来』を、捨てろ
 
 

山本 英治 >  
「未来を………?」

鼓動が早鐘を打つ。
園刃先輩が言っているのは、どっちの意味だ。

園刃 華霧 >  
「まさか、とぼけるつもりじゃないよなあ?
 英治くんが、さんざ口にしてたじゃん。」

園刃 華霧 >   
 


『親友』、なんだろ?
 
 
 

山本 英治 >  
心臓の音が痛い。
未来を捨てる。その言葉の意味を反芻する。

「未来は死んだ……あとはどうすればいい?」

彼女は言葉以外、何も遺してはいない。
捨てる……とは。

そもそも俺に未来を捨てることができるのか?
いつだって俺をその場に立たせてきた、彼女の遺志を。
俺に生きろと祈りと呪いをかけて逝った彼女を。

方法さえあれば捨てるのか?

園刃 華霧 >  
「死んだ? 冗談いっちゃいけない。
 いつでも『未来』ちゃんは生きてただろ?
 英治くんの心でさあ」

げらげらと耳障りな笑い

「いつだって、語りかけてたじゃん?
 ソイツは、英治くんの『大事なもの』なんだろ?
 なら捨てな? アタシから奪うってのは、『そういうこと』だ」

げらげら
げらげらげら

空っぽのアタシから奪うんだ
空っぽになる覚悟がなきゃ困る
それで同位置
対等ってもんだろう? 

山本 英治 >  
呼吸が荒くなる。
正直、死ねと言うなら死ぬ気でいた。
だが彼女は。園刃華霧は。

満足した死なんて満たされたもので納得はしない。
己の内に空虚を抱かない者に。話を聞く理由なんてありはしないのだ。

ここで遠山未来を否定する言葉を言えば。
彼女は俺の話に耳を傾けてくれるかも知れない。
言え。親友だって、死んだ自分より今生きている存在を優先させるだろう。

言うんだ。

山本 英治 >  
 
 
「できないよ」
 
 
 

山本 英治 >  
俺は涙が溢れた。
その場限りの嘘は暴かれた
覚悟なんて、できてはいなかった。

「俺に未来を捨てるなんてできない……」

膝を折り、蹲って涙を流した。
悔しい。苦しい。でも、園刃先輩は。
そのウツロをずっと抱えてここまで歩いてきたんだ。

園刃 華霧 >  
「…………」

涙に濡れる男を見下ろす。
そうか
   ・・
それが正常な反応だよな

「それが、答えでいいかい?
 この話、お終いにする?」

しゃがみこんで、優しく語りかける

山本 英治 >  
結局、俺には捨てられなかったんだ。
捨てられない程度の覚悟の人間に、彼女は心を開かない。

蹲ったまま、泣いたまま。
すぐ近くで囁かれる園刃先輩の声が。
ずっと遠くに感じた。

俺の思い上がりは正された。
誰かを救うなんて……俺には出来はしない。

園刃 華霧 >  
「ふぅーん?
 答えなし、か……」

まだ答えを得ていない、とも言えはする。
もうちょっとだけ待ってやってもいいか。
答えは見えてる気もするけれど……

「もうちょっと暑っ苦しい返答が来るかと思ったんだけどなあ。
 そっかあ……」

そうかあ……

また、手から、零れ、落ちる、のか

「ちょうどいいや。
 『真理で、何を取り返すつもりで?』だったっけか。
 あのときは、あんまちゃんと話してなかったよな。
 なんなら、そっちの人間にはろくに話してなかった気がするからさ。
 ちょっとだけ聞いてきなよ」

しゃがみこんだまま、泣きじゃくる男の前で語り始める。
聞いているのか、聞いていないのか……それは、わからない
別に、どちらでも良いと思った

「前にもいったけどさ。
 アタシには何も無かったんだ。
 だから、ずっと自分で何もかも手に入れてきた。
 ……つもり、だったんだよなあ。」

遠くを見つめる
家も、食べ物も、言葉も、名前も、身分も
全部、自分で手に入れてきた
――はずだった

「けどさあ。
 なんか、手に入れたつもりが、少しずつ無くなっていくしさ。
 欲しいものはなくならないしさ。
 ……なんかが、『空っぽ』な感じ、したんだよね」

これが、なんなのかは、わからない

「それに、周りはみんな、変わっていくし。
 アタシだけ、なんか変わらないし。
 置いてけぼりな感じがしてさ。
 居るのか居ないのか……よくわかんなくなるしさ」

わからない
わからない

「だから、『真理』ならマルっとその辺わかるのかなー、とか。
 全部手に入るのかな―ってな。
 そんな風に思ってみたんだよね。」

そこで、一旦言葉を区切る

山本 英治 >  
彼女が抱えていたものは、虚無。
真理に頼るだけの理由がそこにはある。

青空が嫌いだ。
塀の中にいた時に見えた、唯一綺麗なものだったから。
爛れた星空のほうが、よほど落ち着く。

あの時、未来を刺した電脳麻薬中毒者を殺した時に俺には何もなかった。
家族に勘当され、鬱陶しかった異能はこの手の中に居座り続け。
絶望は心を食み、未来は隣にいなかった。

それでも俺の心には、未来がいてくれた。

俺には救いがあった。
彼女にはなかった。
たったそれだけが……言われるまで気づけなかったのか…

園刃 華霧 >  
「なー、英治くんさー。
 此処まで来たのは英治くんだけだ。
 幌川先輩も、レイチェルちゃんも、理央くんも……
 他の誰も、来ない」

再び口を開け
静かに、言葉を続けた

「みんな、アタシを応援してくれてんのかな?
 実は、死ねって思ってるのかな?
 アタシにはさっぱりだ」

頭を振った
本当に、さっぱりだ
人の情動を読んでいるようで、芯のところは結局よくわからない

だからいつも、表面を撫でる
撫でて、引き出す

「アタシが、そういう『人でなし』だから『そう』なのかねえ。
 『どうしようもねぇ奴』だから、なのかねえ。
 そいつも、さっぱりだ」

此処数日、色々なことを考えてみたけれど
結局答えは出ない

「困ったもんだね?」

山本 英治 >  
指に力が入る。
少しだけ、動け。

足に力が入る。
少しだけ、立て。

肩に、腰に、腕に、腹の底に。
力を込めて、立ち上がれ。

「俺の思い上がりは正された……次は、園刃先輩の番だ…」

涙でぐしゃぐしゃの顔で、壁に手をついて立つ。

「人でなしを心の底から想うやつなんていない…」
「レイチェル先輩はどうしようもねぇ奴を親友にはしない」
「親友に死ねだなんて思わない……!」

まだ涙が溢れて、自分の弱さを手の甲でぐしぐしと拭った。

「どうしてそんな簡単なことをわかってくれねぇんだよ…園刃先輩……」

剛力の異能を持っていても。
拳法をいくら学んでも。
声に……力が入ってくれない時もあるんだな。

園刃 華霧 >  
「……『そんな簡単なこと』が分からなかったから、此処まで来たんだよ。」

今までの優しい声色が消えた
こちらも、あわせて立ち上がる

「この話の最初に、アタシはレイチェルちゃんを切った。
 アイツもアタシを切った。
 喧嘩の一つもあるかと思ったのに、『何もなし』だ。
 円満にね」

淡々と、言葉を述べていく
感情が消える
表情が消える

「アタシの手から、零れる前に、とは思ったさ。
 勝手に消えられるくらいなら、自分から捨てに行ったさ。
 そしたら『笑顔でお見送り』だ。」

なんで こいつに こんなこと まで

「アタシにはわからない。
 『親友』だから、送り出したのか。
 『どうでもいい』から、送り出されたのか。
 わからない、わからない」

ちがう
いうのは それじゃない

「アタシは、欲しいだけ、なんだ……」

山本 英治 >  
「園刃先輩」

自分の手のひらを見る。
何も乗らない、その手を。

「レイチェル先輩は来る」
「あのメッセージカード……好きにしろって言われたから」

「レイチェル先輩に渡してきた」

諦めの良い顔で手放した罪は。
贖えないほど重くはないはずなんだ。

「後悔してたんだ……ずっと…………」
「今度は、間に合うように……今度は、届くように…」
「祈るように、彼女は走ってる」

「欲しいだけの園刃先輩の気持ちに、親友であるレイチェル先輩が気付かないわけないだろ」
「親友って……簡単には捨てられない…………」
「捨てられないんだよ、園刃先輩………」

この手じゃ届かなかったものに。
レイチェル先輩ならきっと届く。
レイチェル先輩はきっと来る。

祈りはただ、空に。

園刃 華霧 >  
「は?」
 

園刃 華霧 >  
「今更? 今更か?
 英治に言われて?
 なんだよそれ」

声に、熱が灯る

「もう、終わった話だろ?
 なんで、今更……」

なんで いまさら

山本 英治 > 「今更なんかじゃねぇ!!」
山本 英治 >  
「まだアンタは生きてるだろ!?」
「まだレイチェル先輩は生きてるだろ!!」
「どうして……どうして諦めちまえるんだよォ!!」

山本 英治 >  
「俺がやったのはただのきっかけだ!!」
「アンタらは……きっかけもないとお互いの本心を話すこともできねぇのか!!」

壁に手をついたまま。俺は叫んだ。
弱さが熱を持って。瞳から溢れた。

「クソッ……クソッ………」

園刃 華霧 >  
「うるさい! 黙れ!
 暑苦しいアフロ!
 ふざけんな!」

相手の叫びに負けぬ
獣の絶叫をあげる


「じゃあ、あの時のアレはなんだったんだよ!
 今更なんだそれ!
 終わった話をほじくりかえすな!」

それは慟哭にも似た叫び

山本 英治 >  
「黙らねぇ!!」
「ふざけてもいねぇ!!」

ぐぐ、と呻いて。
どうしようもないまま、叫ぶ。

「終わってない………まだ、終わってない!!」
「死んでもいねぇくせに死人みたいな顔をするな!!」

ああ、もう。メチャクチャだ。
全然ロジカルじゃない。

「どうしてアンタは親友に甘えなかった!?」
「どうしてレイチェル先輩は親友に甘えなかった!?」
「なんでこんなことをしてるんだよ……なんで………」

園刃 華霧 >  
「なんでもなにも、
 アタシはこんなだからこんなになっちまったんだよ!
 分かれ、バカ!」

もう自分でも何を言っているのかわからない。
なんで、この

「クソ!
 此処まで来たからってんで、少ーし甘い顔してやりゃあつけあがりやがって……
 偉そうに、何様だオマエっ!」

もはや、ただの口喧嘩
下らない
もうやめてしまえばいいのに

山本 英治 >  
「どうしてなんだよぉ………!」
「自分で親友を捨てようとして捨てられなかったり!」
「人に親友を捨てろって言われて捨てられなかったり!」
「こんなバカげたこと、いつまで続けんだよ!!」

また涙が溢れてきた。
何を言おう。何を言えばいい。
もう関係ない。心に浮かんだ言葉、全部そのまま突っ込め!

「山本英治だよ!! 親友の名前は遠山未来!!」
「アンタは園刃華霧!! 親友の名前はレイチェル・ラムレイ!!」
「なんでこんな簡単なことを問いただしてくんだよ!?」

泣きながら、苦しみながら、叫びながら。
言葉をぶつけ合う。

園刃 華霧 >  
「死ぬまでだよ!!!」
 

園刃 華霧 >  
「アタシは、それしか……ないんだよ……」
 

山本 英治 >  
「またそれしかないって決めつけてるのか!!」

山本 英治 >  
「なんで死ぬまでとか簡単に言えるんだよ………!!」

園刃 華霧 >  
「だって、『空っぽ』なんだよ!
 『あの日』から、ずっと……!
 アタシから、零れ落ちた時から、ずっと……!!
 いつまで経っても『空っぽ』なんだよ……!!!」

叫ぶ
みっともなく

「アタシだって知りたいよ!
 いつまで、埋め続ければいいんだよ!
 いつまで、零し続ければいいんだよ?!」

山本 英治 >  
「そんなの自分で考えろよ!! 恥かいたってさ!!」

この島で空に近づいて。
叫ぶのがこんなことなのか。

「俺の手になんか残ったことがあったのかよ!!」
「命を引っ張り上げても誰も彼も家に帰っていくだけだろ!!」

「こっちは誰もいねー家にいるのがツラくてたまんねぇんだよ!!」
「でもな……俺は考えるのをやめねぇぞ………!!」
「アンタも考えろよ!! 諦めないで、答えを出してくれよ!!」

ああ、かっこわりぃ。

園刃 華霧 >  
「………………なーんだ」

園刃 華霧 > ぴたり、と言葉を止める

「ひひ。おまえ、こっち側かよ。
 そうか、そうか……そうかぁ……」

ひひ、ひひ、と笑う
ひひひひひ、と嗤う

園刃 華霧 > 「……及第点だな」
山本 英治 >  
「………何の…………」

今、何を言ったのだろう。
声が小さくて、よく聞こえなかった。
頭が痛い。叫びすぎたからだろうか。

何故、園刃先輩は笑っていた?
考えろ。考えろ。考えろ。
出した答えが的外れでも。

園刃 華霧 >  
「言いたいことは、そんだけ?」

先程の子供の喧嘩の様子は消え
落ち着いた声音に戻っている


「他にあるなら、聞いてやる。
 聞くだけな」

山本 英治 >  
「………もう、ない、です」

敬語に戻る。恐らく、俺からできることはもうない。
あとはレイチェル先輩に全てを託す。

涙を拭って、自分の足で立つ。
あとは信じる。ただ、レイチェル先輩を。

園刃 華霧 >  
「そっか。
 んじゃ……」

手にしたデバイスを持ち上げる。

園刃 華霧 >  
「んぐ」

ごくり、と飲み込んだ。

「知ってるか知らないけどさ、エイジ。
 期限は、26までだぜ?」

山本 英治 >  
「……それじゃ」

真っ直ぐに園刃先輩を見る。

「全部終わった後に、園刃先輩からその後の話を聞きます」

俺は多分、主人公なんかじゃなくて。
それはきっと、この世界で懸命に生きていくことに他ならない。
空っぽでも。誰かを信じることくらいは、してもいいだろ。

園刃 華霧 >  
「そりゃ、アタシが話せる状態だったら、の話だな?
 大勝利か、止めてるか……」

さて、どっちだろうな。
今日のところは一旦沙汰止み、なだけ。
それも目の前の暑苦しい男に免じての話。

だけど――
目的を果たすつもりなのは変わらない。
今のところは

「まあ、悪くなかったよエイジ。
 ……あかねちんなら大激怒だったかもしれんけど。」

優しいけど怖いからなあ、と笑う

山本 英治 >  
「それでも」

よろめきながら、今度は俺が去っていく。
精神力が完全に尽きた。

「アンタはあかねさんじゃない」

一歩、一歩。踏み外さないように夜を歩く。

「園刃華霧だ」

後は頼んだぜ、レイチェル先輩。

園刃 華霧 >  
「じゃーな、エイジ。
 次、会えることを期待してるよ。」

ひらひらと手を振って見送る。

「しっカしなー……
 あかねちんも言ってタけど、
 『男の子が簡単に諦めたり、ブレイクスルーしたりしようとするものを私たちは認めない……認められない』か。
 ちょっと話違ウけど、実感しタな……」

ばたり、と床に寝転んだ

ご案内:「大時計塔」から山本 英治さんが去りました。<補足:アフロ/風紀委員の腕章/草臥れたシャツ/緩めのネクタイ/スラックス(待ち合わせ済)>
園刃 華霧 >  

「……なルほど、男は馬鹿ダ。
 ま、アタシも大概馬鹿なンだけどサ。
 なーンで、ああカなー。」

寝っ転がってぼやく。

疲れた。
今日はこのまま此処で寝るのも良いかもしれない。

おやすみ、今日。
明日は……起きれるかね?

ご案内:「大時計塔」から園刃 華霧さんが去りました。<補足:着崩した制服 林檎に噛み付いた蛇が絡みついているエンブレムのついた腕章>