2020/07/28 のログ
ご案内:「異邦人街 街角」に羽月 柊さんが現れました。<補足:後入歓迎:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>
羽月 柊 >  
 
遠くで、慰霊の祝詞が聞こえる。


どれほどのことがあっても、誰が何をしても、
こうして日常はいつも通りやってくる。

あっという間の出来事だった。夢のような出来事だった。

なのに、光の柱に触れたのが、闇夜を駆けたのが、遠い過去のようにさえ思える。


時は夕刻、通常業務の外回りの帰路。
紫髪の男は自販機の前に居た。

何も考えること無く大体いつものお茶を買い、
他に買うヒトがいることを考えて、その場から立ち退くと、
ペットボトルのキャップを開けると、まず最初にその小さな皿にお茶を注ぐ。
手の平の上に乗せて、傍らの2匹の小竜たちへ水分補給。

戦いの傷も粗方癒えたが、多少傷痕は身体に残った。

なんてことない日常。

羽月 柊 >  
通り過ぎる誰かが知っていること。
通り過ぎる誰もが知らないこと。

常世島の片隅で起きた、小さな大事件。

「………慰霊祭か。」

自分も喉へ水分を流し込んで呟く。


死者を送る祭は苦手だ。

そこに死を自覚してしまうから。
もういないことを理解してしまうから。
毎年この島で行われるこの祭りに、男は参列したことが無かった。
大体は仕事を詰め込んで、見て見ぬフリを続けて来た。

……自分の愛しいモノの死を、未だ認めたくないから。


――遠くで、死を悼む声が聞こえる。

ご案内:「異邦人街 街角」にレザーズさんが現れました。<補足:長く黒い髪と黄金色か虹色の瞳。黒紫色のローブで隠した低身長の少女。>
レザーズ >  
僅かに聞こえる祝詞は清らかで、静謐な空気が広がっていくように感じる。
だから、目の前で呟く二匹の竜を連れた男性の呟きも厳かな言霊に思えた。

竜をに引き連れた面白い人―――ここ最近、何度か後ろ姿は見たことがあったから、

「――そう、慰霊祭。
 色々とあった後に素晴らしい儀式だよ」

声をかけた。
その声は、発した者の背格好からは少しおかしく感じるような、低くハッキリとした男性の声。
しかして、あなたに声をかけたのは黒紫色のローブの小さな子どもに思える。

「なにか、想う所でもあるのかな?」

興味深そうに輝く瞳で貴方を見て首を傾げる。
見た目に反した声でセリフを口にして貴方の前に近寄るだろう。

羽月 柊 >  
「……まぁ、思う所は色々と。」

ちらりと新たな登場に桃眼を横に流し、瞼を閉じる。
暑さの残る光を避けるように歩み、小さなそれの前へと歩いていく。
背に夕日を背負えば、子供のような誰かと影が重なる。

動揺するほどの事でもない。ここは異邦人の街。
異を許された場所。異のまま居ることを認められた地。

驚くことは即ち、相手への失礼に他ならない。

「少しばかり死を身近に感じたばかりでね。
 ……初めまして、で良いかな。」

一旦ペットボトルのキャップを閉めながら、
小竜を連れた男は小首を傾げた。

レザーズ >  
相手の礼儀をわきまえた対応に思わず、喉を軽く鳴らして笑う。

「……いや、失礼。
 突然声をかけたにも関わらず、手ひどくあしらわない方は久しぶりでね。
 私は礼の失した者たちに慣れすぎていたようだ」

笑う口を隠して、言葉とともに笑っていたのが嘘だったかのように切り替わる。
低い声は夕日に照らされ浮かぶ影のようにハッキリと濃く、耳に残る。
夕陽の影であっても、この者の瞳は光を得ているようにハッキリと見える色をしている。

「『はじめまして』、私はレザーズ。
 色々な呼び名を拝命しているが、初めて逢う君たちには名乗るほどでもない呼び名だ」

そう言って演じるように左手を右肩にあてて瞳を閉じて軽く頭を下げた。

「よろしければ、君たちの名前を聞かせて欲しい」

頭を上げて、その双眸で再び君たちを捉える。

羽月 柊 >  
「……レザーズ。………聞いたことがあるような。」

古い知り合いを通じて朧げに聞いた記憶だったかもしれない。
それは酷く不確かだが、裏の世界を歩くモノ達の間で囁かれる名かもしれない。
しかし、男は完全に相手を思い出すことは叶わない。

「俺は羽月 柊。この子らは護衛の竜たちだ。
 人間式の挨拶で良いだろうかとは思ったが、不快に思われず幸いだ。」

頭を下げられれば同じように左手を右肩に当て、頭を下げる。
異のモノと交流するときは、相手の動作を真似るのが基本となる。
人間社会でもミラーリングという手法だが、余程でなければ失礼には当たらないだろう。

ただし、頻繁に、またはネガティブな行動を返すと不快に思われる。

ここまで通じるのであれば、己が間違っていれば正してくれるだろう。

レザーズ >  
聞いたことがあると言われれば、何処でどんな風に、なんて語れていただろうか。
私はどのように認識されているか聞きたくなる気持ちは笑みに隠そう。

「さて、どんな『私』の話だろうか……
 羽月 柊さんにその可愛らしい子たちも、どうぞよろしく」

そう告げながら少し我慢できずに鼻で笑う。

「私は『この世界のヒト』だ。
 少しばかし珍しい姿をしているが、基本は変わりはない。
 だから、自分なりの普段の挨拶で大丈夫だ――…同じ世界のヒトでもマフィアなんかは相手の規則《ルール》でないと失礼にはなるがね?」

さて、自己紹介は済んだ。

「それで、羽月 柊さん。
 よければ貴方の慰霊祭へ思う所を聞きたいと思って声をかけたんだ」

あんな、声を聞かされて
ソソられないワケがないのだと瞳を細めた。

羽月 柊 >  
「そうか、ではそのようにさせてもらおう。
 自分を偽るのはコストの高いことだからな。」

そう男は話す。あるいは自分への自嘲すらその言葉の裏に込めて。
姿勢を戻すと、片手のペットボトルの中身をくるりと回した。

すぐ近くを青肌の女子高生と、目元の下にエラのある制服の子が通る。
スマホを片手に雑談をしながら。


「さぁ、俺も詳しいことは覚えていなくてね。
 歓楽街で飲んだ時に聞いたのかもしれないし、風の噂程度のモノだ。
 
 ……まぁ、慰霊祭に関しては、今まで行ったことがなくてね。
 何年もこの島に住んではいるが、この時期は仕事が立て込むのもあってな。
 ただ、今年は少々ヒト死にが近かったモノだから、
 どうしたものかと思ってね。」

半分嘘、半分本当。

この時期はいつも仕事を無理矢理にでも詰め込んでいる。

死へ目を向けない為。喪失を見ない為。

レザーズ >  
「そうか、
 ならきっとそれは『噂好きのレザーズ』と聞いたのかも知れない」

好きなんだ噂話が、と人差し指をくるくると回して弄ぶ。
女子高生たちの雑談する声は、生者の活気。
それもまた遠くの鎮魂を願った音と同じほどに素晴らしい。

「偽ることが大変なのなら、普段からさぞ大変なのだろうね」

そう呟く声は、確かに女子高生たちの音よりも小さなはずであったが、
羽月 柊、貴方にだけは聞こえてしまう。


「そうなのか、仕事とは大変だ。
 今更だけれど、羽月 柊さんは名前からして日本の人かな?」

羽月 柊 >  
「…………『噂好きのレザーズ』ね
 だからああいう場所で聞いたのかもな。
 そう言うからには君は何か、生業にでもしているのか。」

抽出された音に僅かに桃眼を細める。
紫を頭に冠する男は、余程では動揺しないが、
眼という器官はそんな中でも表情を露呈しやすい臓器。

夏は日差しを浴びて、豊穣の秋へ向けて、生命が謳う季節だ。
人間には少々厳しいモノもあるが、
この日本にとって、夏もまた重要な季節なのである。

「…まぁ見た目はこれでも、日本生まれの日本育ちでね。ただの人間だとも。
 この街に居るとそうじゃないように見られがちだが……。
 柊が名だ。魔除けの木であるヒイラギをあてる。

 そして人間には限界がある以上、仕事と慰霊祭どちらを優先しようかと思ってね。」

レザーズ >  
「そうですね、少し……」

可愛らしく微笑み低い声で意味深に言葉を区切る。

「自営業を。
 だから、時間は好きに組めるんです羽月 柊さん」

夏の西日を浴びて、汗一つない幼い子供の姿をしたソレは自身の瞳を桃色の瞳と同じように
否、厭らしく笑うように細めた。


「日本人にとっては、慰霊祭のような……お盆というのは大切だと聞いたことがあるのですが

 お 仕 事 、 大 変 な ん で す ね 。」


変わらない声のトーンで
特段含みはないような声色で、レザーズは言葉にする。

「――私の仕事は、噂を集めたり噂を広めたり……そう、売ったりするものです」

そう言って、黒紫色のローブの内側から一枚の手のひらサイズの紙を一枚取り出す。

「もしかしたら羽月 柊さんの欲する『噂』も集められるかも知れません。
 『噂好きのレザーズ』、お覚えいただければ幸いです」

そう言って、黒い名刺を差し出す。
表には『Lzz』、裏には何処か場所を示す簡易地図。
怪しい気配やなにか呪いのようなものはないことは魔力操作を普段からしているものなら理解出来る。

羽月 柊 >  
名刺を差し出されれば、目線を合わせるように跪く。
ひらりと白衣が空気を含んで地面を擦るのも構うことなく。

「日本人にも様々だとも。
 古い慣習を大切にするモノ、そうでないモノ。
 …仕事なんていう、日々の糧の方が大事だというモノもいるさ。」

虹色とも黄金とも取れぬ煌めく瞳が間近にある。

「これはどうも。
 何かしら必要なコトがあれば頼らせてもらうとしよう。」

男は片手のペットボトルを焼ける地面の上に置くと、
演者のような口頭で話すレザーズの名刺を両手で受け取り、
片手に持ち直すと空いた手をパチン、と鳴らす。

手品のように、人差し指と中指の間には名刺が出現した。

「ではこちらも。
 竜専門研究、羽月研究所所長をしている。」

それは、見た目は大人と幼子の、なんとも奇妙な名刺交換だった。

レザーズ >  
「そうですか、私もこの街にはそれなりに居ますが
 それぞれの文化に興味を持ったのは最近でしたので」

桃色の瞳を『見つめて』、出された名刺を貰い一度紙を茜色に照らして懐へと仕舞う。

「ええ、是非是非……
 『噂』好きなのでいつでもお待ちしております」

「さて、そろそろ夜も近い時間だ。
 最後に一つ、簡単な質問をさせてください」

「羽月 柊さん、

 "私の瞳は、何色に見えましたか?"」

そう言って、変わらぬ顔で貴方の顔を『見つめた』。

羽月 柊 >   

「…そうだな、なんとも形容し難い。」


最後の質問に、男は『桃』色を細めた。


「『視る角度でいくらでも色が変わるのに、大元の色は金色に見える』。
 
 綺麗な瞳だ。誰かに盗まれないように大事にすると良い。
 眼には、様々な"力"が宿るからな。」


爬虫類系の鱗にも似たようなモノがある。
光源によって虹色に輝くのに、本元の色は白や金色、黒色のモノがある。

"羽月 柊には"、そういう風に見えた。
ヒトは、己の知る何かに当てはめるきらいがある。


そう告げて、立ち上がる。

レザーズ >  
なるほど、と小さく頷いてから。

「変な質問して、すまない。
 ちょっとした『まじない』のようなものでね」

この目の『色』は。


「そう、悩ましく変わる……

 『人の精神の色なんですよ』。

 定まらないのに、何かはあるように見える。

 きっと、本当はやりたいことは見えているのに

 見えないふりをしているのかもしれないですね」


そう言い切ってから数歩下がって

「なんてな……そう、『ただの光の屈折現象』です」

と笑って言いのけた。


「さて、最後に久しぶりにまともに会話してつい遊ばせて貰ってしまった……
 『噂好き』なのでこうして人と喋るのも好きなんだ」

そう言って、不確かな色の瞳で笑った。

「ではでは、お仕事帰りかと思われるお疲れの所に失礼いたしました。
 お連れさまも私の瞳と同じく珍しいのでお気をつけて、羽月 柊さん。
 何か『噂』をご入用の際は是非、私にご連絡を」

そう言って軽く会釈をする。
止める言葉なければ、レザーズは夕闇に入りきっと見失ってしまうだろう。

羽月 柊 >   

「ああ、またどこかで縁があるならば。」


男はレザーズを、幼子のようなヒトを見送るだろう。


「………全く、見透かされたような気分になる。」

地面に置いてけぼりを喰らったペットボトルを拾って、
すっかり地熱で暑くなってしまったそれを飲み干すと自販機横のゴミ箱に入れる。

底の茶葉の苦みが、やけに口に残った。

「……『噂好きのレザーズ』か。
 ロアの話にちらりと聞いた気がしたが…何だったか。」

そう呟きながら、黒い名刺を捨てる事もなく仕舞いこんだ。
……もうすぐ夜が来る。

男は日常に溶け込むように、その場を後にした。

ご案内:「異邦人街 街角」からレザーズさんが去りました。<補足:長く黒い髪と黄金色か虹色の瞳。黒紫色のローブで隠した低身長の少女。>
ご案内:「異邦人街 街角」から羽月 柊さんが去りました。<補足:後入歓迎:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>