2020/07/21 のログ
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」に神樹椎苗さんが現れました。<補足:黒基調の衣服、スカート。怪我だらけの自殺癖。後入歓迎 >
神樹椎苗 >  
 殺風景な部屋。
 寮生に割り当てられた、特別変わり映えのしない量産型の一室。
 椎苗はベッドの上に現れると、そのまま倒れこんだ。

(別に、何もしてねーはずですけど。
 妙に疲労感ってのはあるもんですね)

 神の記憶、その一端を覗き見たのだから、少なからず疲労はしたのだろう。
 まあそもそも、危ない連中に見つからないようにスラムの奥まで行くのは、それだけでも十分疲れる行為なのだが。

神樹椎苗 >  
 他の学生たちは、今頃試験が終わって解放感に包まれているのだろうか。
 きっと、多くの学生たちにとって、スラムで起きた異変など、取るに足らない――目に留まる事すらない問題なのだ。
 椎苗にとっても、落第街での出来事はずっと関係のないものだった。これまでは。

(まさか、足を踏み入れる事になるとは思わなかったですね。
 ――それも、『友人』が理由になるとか、少し前のしいなら笑い話にもしねーのです)

 それだけ、この数週間が椎苗にとって転機となってしまったのだろう。
 望む望まないに関わらず、これまでにないほどに他人と関わってしまったのだ。
 それは、どのような形にせよ、椎苗の無味乾燥な日々を強引に染め上げる。

(誰も、そんなもん頼んじゃいねーのです。
 しいは、ただ、静かに、いつか死にたいと願っているだけで。
 いつか偶然にでも、本当に死ねることを期待して――)

 どんな形であれ、終われればそれでよかった。
 ただ、死に救いを求めていたのだ。
 かつて、黒き神を信じた少女と同じように。

ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」にさんが現れました。<補足:ようぢょ、突撃班、進行中>
> (コンコンと、控えめなノック)

寮故に手加減した声で

「しーなちゃんー、いるー?」

神樹椎苗 >  
(黒き神の依り代として、使われるだけでよかったのです。
 それと引き換えに、いつか、しいを眠らせてくれると)

 すぐに叶う事ではない。
 かつて死を司っていた神だとしても。
 今、この世界で神と祀られていた存在に死を与える術はなかったのだ。

(まあそもそも、しいが居なければ権能の一つもつかえねーわけですしね。
 しい自身は、アレに抗えないように作られていますし)

 そもそも、そういう思考に至らないよう、誘導すらされているはずだ。
 黒き神にも、その点はすでに指摘されている。
 おそらくほかにも、『端末』として都合のいいように操られているのだろう。

(気に入らないとは思いますが――確かに、嫌悪感すら抱けないのは不自然でしょうね)

 つくづく、自分がただの『道具』であると思い知る。
 夕刻に薄暗くなる天井を仰ぎながら、大きく息を吐いた。

 そんなところに、ノックの音と、意外にも控えめな聞きなじんだ声。

(ああ――試験も終わりましたしね)

 ぼんやりとそんなことを考えながら、起き上がろうとして――面倒になる。
 枕元にある電子端末を操作して、とりあえず部屋のロックだけは解除した。

> 「あ、おじゃましまーす」

ゆっくりと、入って、靴を揃えて

「しーなちゃん!しけんおわったからあそぼ?」

とててと歩いてベッドの側迄、近づいて

「しーなちゃん、おつかれ?」
ベッドに腰掛け

神樹椎苗 >  
 行儀よくして近づいてくる少女の足音に、億劫そうに視線を向けた。

「――あそばねーです。
 まあ、疲れてると言えなくもないですね。
 お前こそ、試験終わってどうだったんですか」

 そう、いつも通りのやり取りに、学生らしい言葉を添える。
 試験の結果など、知ろうとすればすべての生徒のデータを確認できるのだ。
 当然、少女の成績も事前に把握しているが。

> 「ぶい!しーなちゃんとソフィアせんせーのおかげでさんすうはまんてん!」

向日葵のような笑顔を向けて

「んー」

ちょっと疲れてるような友人に、いつもしてもらうばかりなので、頭を撫でようと手を伸ばし

ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」にさんが現れました。<補足:ようぢょ、突撃班、進行中>
神樹椎苗 >  
「そうですか。
 まあ、しいが教えたんですからとーぜんですね。
 あてになる先生も見つかったんなら、よかったじゃねーですか」

 その教師の名前には聞き覚えがある。
 授業もとっているが、試験を体よく放棄した教師だったはずだ。
 教えるのは――比較的上手い教師だ。

「――で、なにしてんですか」

 伸びてきた少女の手が、椎苗の頭を撫でる。
 これと言って抵抗もせず、気だるそうな視線だけ向けた。

> 「んー、うん、でも、しーなちゃんのおかげ、ありがと、しーなちゃん」

穏やかな声で優しく伝えて

「しーなちゃん、おつかれみたいだから、がんばってきたのかなって、くろいのさんと」

あの時、くろいのさんになっていたのは練習だったのかなと

神樹椎苗 >  
「礼を言われるような事じゃねーのです。
 勉強したのも、頑張ったのもお前ですからね」

 そう、椎苗はただ請われたから教えただけだ。
 それを素直に吸収し、身に着けたのは少女の努力があったからこそ。
 しかし、それにしても。

「お前、時々ですがすげー勘がいい時ありますね。
 べつにしいは何もしてねーのですよ。
 頑張ったのは、その『くろいのさん』です」

 そう、椎苗はただ見ているだけだった。
 抗えない事が分かっていたから、全てを押し付けて、見ているだけだったのだ。

> 「えへへ、きっかけはしーなちゃんだもん」
褒められて喜びながら

「いつもだったら、あげてもくれないかもしれないから、きょうはおつかれかなあって」

幼女にも自覚はあったらしい

「んー、でも、からだをかしたのはしーなちゃんでしょ?だからしーなちゃんも、お疲れ様」

優しく頭を撫で

神樹椎苗 >  
 少女の笑顔に、目を細めた。
 純粋で、無邪気で――苦しんで、悲しんできても、そう子供らしく在れている。
 その姿が眩しく、やけに目に沁みた。

「――お前は、すごいですね」

 ぽつりと。
 うっかりと呟いてしまったというように、意図しない言葉が零れ落ちた。

「そうですね――しいは、もう疲れました」

 それは弱音と云うモノだったのだろうか。
 頭に触れるあたたかさと、心地よさに気が緩んだのかもしれない。

(そういえば――こいつに会うまで、誰かに撫でられた事なんて――)

 ずっと昔。
 まだ椎苗が人形にすらなる前。
 ふと、誰かに抱かれていたような淡い感覚が浮かび上がる。
 あれは誰だったのだろう。
 世話役の気まぐれだったのか、それとも別の――。

> 「わたし、のぞみは、すごくないよ、しーなちゃんがすごいから、がんばってるの」

頭を撫でながら、歌うのはいつか、聴いたような、子守唄

「しーなちゃん、ありがと」

ゆっくり、やさしく、頭を撫でながら、幼いながらも、優しい声で

神樹椎苗 >  
「――ありがとう、なんて、もったいないのです」

 きっと、この少女に比べたら、自分はとても醜いモノに違いないだろう。
 それだけのことをしてきたし、されてきた。
 『生きている間』に、人間扱いをされたことすら、一度もなかった。

(本当に、ばかやろーです。
 お前は、しいに優しすぎるのですよ)

 少女の優しさは、なにも知らない無知ゆえだからなのだろう。
 『本当』を知れば、少女は離れていくのかもしれない。
 いや、できる事ならば。

(しいと関係ないところで、普通に生きてほしいのです)

 それはもうこの島に来てしまった以上、望めないことなのかもしれないが。
 それでも、少女にはこのまま生きて、そして穏やかに眠れるような時間を過ごしてほしい。

 きっと少女は、椎苗と違い本当の意味で、誰かを助けられるようになるだろう。
 痛みも苦しみも知っているからこそ、それでも優しくなれる少女ならば。
 そしてその時、少女の周りには多くの『幸い』があるに違いない。

(ああそれは――見て見たいですね)

 幼くも優しい、心から紡がれる歌声。
 それは無垢で、無知で――だからこそ満たされている。
 静かな微睡へ誘われるように、ゆっくりと意識がぼやけていく。

「――でも、まだ眠れねーのです」

 重たそうに瞼を開き、少女を見た。
 その瞳の色は、珍しく感情に揺れている。

「まだ、休めねーのですよ」

 そう言って、少女の手に触れて、そっと遠ざける。
 ゆっくりと体を起こし、ベッドに腰掛けた。

(しいには、やるべき事が出来ちまいましたからね)

 それまでの人形でもなく、依り代としてでもなく。
 一個の個体として、『神樹椎苗』として、すべきこと。

 助けるなど、大それた事ではない。
 ただ手を伸ばすだけで精一杯だ。
 それでもただ一人の『友人』を見届けて――眠らせてやりたいと。

 少女のように本当の意味で助けることなどできないだろう。
 ――だとしても。
 それは間違いなく、椎苗が自ら望み選んだ道。

「お前、腹は減ってないですか。
 試験をやり切った褒美に、また甘いものでも食わせてやります」

 そう言って、軋む体を動かして立ち上がる。
 全身の包帯には、ところどころ赤い色が滲んでいるが。
 椎苗の手は、少女へと伸ばされる。

> 「ん、そっか、しーなちゃん、キズは大丈夫?」

ニコッと笑う、決めているのだ、わたしはわたしの決めたものは、全部拾うと

「ん、そういうとおもった」
いつものように撫でようとした手を繋いで

「ん、たべよ、のまえに」
魔力が、失った体力が、希を通して、流れ込んでくる

「ん、げんきでた?」
少し疲れた笑みでしーなちゃんを見つめて

「えへへ、おぼえたんだ、まほー」

ニコッと笑う

神樹椎苗 >  
 ――素直に驚いて、目を丸くした。

 いつの間に、少女は魔法を使えるまでになったのだろうか。
 特別な才能はなかったが、素養はあった。
 素直な性格で、学びも早かった。
 使った魔術も初歩的な、力の受け渡しでしかない。
 けれど、何も知らなかった少女が身に着けるには、容易な努力で出来るものではないはずなのに。

「――お前が疲れてどーすんですか」

 そうして、やんわりと頭を小突く。
 魔力も傷も、癒される事はないが。
 それでも少し、眠気は覚めただろうか。

「あんまり、魔術は使うもんじゃねーのですよ。
 魔術は秘すもの。
 本来は大っぴらに使っていいもんじゃないのですから」

 と、尤もらしい事を言って、小突いた手のまま頭を撫でた。

「でも、感謝くらいはしてやります。
 お前には、いい素質がありますよ」

 異能使いとしての、魔術師としての。
 そして、誰かを助ける事のできる、優しく逞しい人間になるための。
 無垢な少女には、まさに無数の可能性があり――どれだけ計算を重ねても、答えは一つにならない。

「ほら、行きますよ。
 ちょうど夕飯にも悪くねー時間ですからね」

 そうして、いつの頃からの『いつものように』手を引いて。
 椎苗は再び、歩き出す。

> 「しーなちゃん、治らないから、ひろー、だけでも、取ろうかなぁ、て」

まだ障壁すらまともに貼れないが、これは簡単なので覚えたのだ、わかりやすく、ひとを癒せる、のだ

「あうん、ともだちになら、いいんだよ、ソフィアせんせも、そういうもん、たぶん」

小突かれながら、えへへー、と覇気なく笑い

「うん、いこ、しーなちゃん」

いつもみたいに、手を引かれて

ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」から神樹椎苗さんが去りました。<補足:黒基調の衣服、スカート。怪我だらけの自殺癖。後入歓迎 >
ご案内:「常世寮/女子寮 部屋」からさんが去りました。<補足:ようぢょ、突撃班、進行中>