2020/07/21 のログ
ご案内:「大時計塔」に水無月 沙羅さんが現れました。<補足:身長:156cm 体重:40kg 不死身少女 乱入歓迎>
水無月 沙羅 > 最近この場所へ来るのが癖になっている。
馬鹿となんとかは高いところが好きっていう話があるけれど、別に高いところが好きなわけじゃない。どちらかといえば私は高いところは苦手な方だ。下を覗けばいやがおうにも死を意識せずにはいられないから。
死にたくなるとかそういう時期も確かにあったけれど、今はそうじゃない。どこかの妖精さんに、死の大切さを教えてもらってからは死を考える時間は増えたけれど、死にたいと思った事は無い。

ではどうしてこんなところに居るのかっていうと、なるべく高い場所に来てみたかった、という単純な理由。
大時計塔は一番上まで来ればこの島を拗ねて見渡せるほどに高い。

いつの事だったか、自分を月に例えた事がある。眩しい太陽のおかげで輝ける影の存在。でもずっと隣にいる、そんな存在になりたかった。ここでいう太陽は何のことなのかは伏せておこう。

兎に角、私は月に、いいや宇宙に近づきたくなったのだ。
流石にこの島にいる間は、宇宙旅行に行くことは出来ないだろうから。

夏の夜空を見上げれば、海に囲まれたこの島からは星空がよく見える。
少しこうして手を伸ばせば掴めそうなほどに。
けれど、

「遠いなぁ……、大気圏。」

その外に彼を連れていけたらいいのに。

水無月 沙羅 > 曰く、月の重力は地球の六分の一ほどだという。
地球の重力というのは、地球との間に働く万有引力と、地球の自転による遠心力との合力、らしい。
つまり惑星が大きければ大きいほど重力は大きくなるっていう事。
万有引力の詳しい説明は、ニュートンの辞典でも調べれば出てくるだろうからそこら辺から索引してほしい。

重力が高ければ高いほど物質は重くなるし、軽ければ軽いほど物質も軽くなる。
まぁ正確には重くなるとか軽くなるというより、物体にかかる地面に押し付けられる力が減るから相対的にそう感じるだけなんだけれど。

閑話休題。

重力が低くなれば人間の体重や質量は確かに軽くなる。それと高い場所に来ることに何の関連があるのか。
さっきも言ったけれど、少しでも月に、宇宙に近づけば重力も軽くならないかな、なんていう子供じみた考え。
だってこんなに星が、宇宙が、月が近くに見えるんだから、少しぐらい重力も軽くなってくれないだろうか、そういう淡い期待。
まぁ、物理学的には全くそんな事は無いというのは分かっているけれど。

水無月 沙羅 > 「少しは頼ってくれてもいいのにね。」

今、黄泉の穴と呼ばれている場所にはずいぶん大掛かりな抗争、二級学生と風紀委員との小競り合い。というにはちょっと派手な戦闘が起きているらしい。
彼はそれの解決、正確に言うなら鎮圧に向かったらしい。その場所に発生しているという光の柱の様な現象、その調査も同時に行うつもりなんだろう。

「なーんで連れて行ってくれないのかなぁ。」

たぶん、また私のことを気にしているんだろう。傷つけたくないとか、余計な重荷を負わせたくないとか、そんな言い訳を考えているに違いない。
少しはその重荷を背負わせてほしい、と確かに言ったはずなんだけれど。どうもあの人は一人で何でも解決したがる癖がある。
忌々しいことに、私はそれに助けられているのかもしれないけれど。
多分、彼にとっては私も重荷の一つなのだ、誰かを守る、誰かを背負うという事はつまりそういう事。
過激派、なんて言われている彼には様々な重圧がかかる。
誰かを傷つけるたび、誰かを守ろうとするたびに、それはどんどん重くのしかかっていって、ともすれば潰れてしまいそうな程に。
私は、それを少しでも軽くしてあげたかった。

水無月 沙羅 > 大気圏を抜ければ、地球の重力圏内を抜ければ、重力が軽くなるというのなら。彼にかかる重圧も軽くなってはくれないだろうか、そういうおためごかし。自分が感じている罪悪感を少しでも減らしたい、そんな言い訳の産物が、今ここにいる理由。

地上から少しでも離れれば、大気圏に少しでも近づければ、星に、月に、太陽に近づけば彼の背負っている悲しみが少しは軽くならないだろうか、そんなロマンチシズム。
意味がないことだ、というのは分かっているつもり。でもそう願わずにはいられないのだ。

本来ならばここは学生は立ち入り禁止で(まぁ守っている生徒なんてほとんどいないんだけれど)、風紀委員ともなればなおさら怒られるかもしれないが、彼を一度はここに連れて二人で来てみたい、そんなことを想う。
二人で背負っていくと約束したのだから、少しでも頼って欲しいと思うのは我儘だろうか。ロマンチシズムに気が付いてほしい、そんな微かな期待を抱いて。

「あの人がそんなことに気が付く筈もない……か。」

水無月 沙羅 > 重力はあくまでも、物質に影響する者であって、概念には、人の感情には一切左右されない。
そんなことは重々承知で、それでも、そんな風に願わずにはいられない。
そうでもしないと、あの人はきっと私の知らないところで、いろいろな重荷を背負っていくのだろうから。

「まぁ、考えているだけじゃ何も始まらないよね。」

屋上に寝転がりながら星に手を伸ばすのやめて、夜だからこそ鮮明に見える光の柱を眼にやる。

「私にだって、貴方の手を引く権利はあるはずですよね。」

ロマンチシズムがそれを叶えてくれないというなら、後は行動で自分で願いを叶えるしかないだろう。
あの人の傍で、隣にいることで、その重荷を背負いに行こう。
六分の一とまでいかなくとも、二分の一くらいまでにはできるはずだから。

目指すは光の柱、そこに彼が居るというのなら、私は彼を追いかけるだけだ。

ご案内:「大時計塔」から水無月 沙羅さんが去りました。<補足:身長:156cm 体重:40kg 不死身少女 乱入歓迎>