2020/08/04 のログ

ご案内:「浜辺」に御堂京一さんが現れました。<補足:21歳/188cm72kg/緩くウェーブした暗い赤毛/サングラス・アロハ・ハーパン/乱入歓迎>
御堂京一 > 「……うし、やるか」

先日あった変な女に教えられた釣り大会。
はじめは興味が無かった、釣りなんてやった事がない。
セオリーも判らず釣りの楽しみ方というのもイマイチわからない。
大会と言ってもレクリエーション的な色が強くて勝負に熱くなるタイプでもない。
だから良いかと思っていたのだが……昨日の夜ふと思ったのだ。

あ……魚食いてえ、と。

きっと自分で釣った魚は美味かろう。
熟成?締め?気分ってのはそいつらを凌駕するんだよ。
そんなわけでちょいと入り江に折りたたみ式の椅子を設置しそいやと竿を振り仕掛けをキャストするのだった。

御堂京一 > 御堂京一には釣りががわからぬ。
京一は常世渋谷のロクデナシである。
ロクデナシをぶん殴り、猫を探して暮して来た。
けれども趣味に対しては人一倍に入れ込むタチであった。

「海と……風を、読む」

呼吸を繰り返す。
鼻からゆっくりと吸い込み腹の奥に溜め、丹田から脊柱を通し身体の中を循環させる。
そうしてゆっくりと吐き出しまた息を吸う。
呼吸の流れを、身体のリズムを自然と一体化させ溶け込んでいく。
これで魚からすれば人の形をした木石にしか感じられないだろう。
魚の警戒心を避ける、その点に関してはこれ以上なく成功していた。

そしてルアーフィッシングか何かと勘違いしてるのかってド素人は雑に竿をしゃくり誘いをかけて台無しにしていた。
プラマイ0というやつですな。

御堂京一 > 釣り判定 素人 [1D6→4=4]
御堂京一 > 「フィッシュ!」

やたらと良い声であった。
胸ポケットから紙巻のタバコを取り出し、学生時代にアホみたいに練習してきた手馴れた仕草でジッポライターを片手で扱い火をつける。
辺りに漂うのは甘い紅茶のような香り、ハーブを調合してつくられたウィッチクラフトによるものである。

口の端にタバコを咥え煙を吹かしながらいい笑顔で竿を立て、糸が左右に振られるのをたくみにいなしてリールを巻く。
相手の動きを読むという事に関してはまさに熟練といった手つきで糸がたわまないよう、張り過ぎないように受け流し。
そして経験者が見ればあっあっ!馬鹿!今リール巻くんじゃねえよ!というタイミングでガリガリと巻いていく。

「なんだよ、釣りってわりかし楽しいじゃねえか……」

御堂京一 > 「獲った!」

手応え自体はそこそこといったものでファイトにはあっさりと決着がつく。
フィッシュグリップもなければタモさえ使わず一本釣りかよといった勢いで引き上げると空中を飛んで来た魚をバシ!っと掴んで確保する。
経験者ならオイ待てェ!と言いたくなる様な行為だが手のひらには青い燐光が灯り練り上げられたプラーナの壁がヒレのトゲをしっかりと食い止めていた。

「ん!魚!」
種類がわからなかった結構大きめのアジをバケツに放り込み。
興が乗ってきた。もういっちょ行くか!と釣り竿をフルスイングしてもうワンチャレンジ。

御堂京一 > (30分後)
御堂京一 > 「すんませーん、これ釣れましたー」
大会受付にやってきた青年の顔は真っ黒に汚れていた。
だがこれは戦った男の勲章、ファイトの証であった。

『ふぐっ……アジと、タコですねー。おめ、おめでとうございます…こちらで計量しますね』
「いや、フグは釣ってねぇです」

ボバフェット!みたいな妙な息を吹き出す審査員に首をかしげながら計量を済ませ。
参加賞的な感じで記念撮影を済ませる。
持って帰るかと聞かれたのでここで食べていきたいと伝えると下拵えだけするか料理にしてもらうかと聞かれたので下拵えを頼み、BBQや浜焼きを楽しむコーナーに足を運び、ぼんやりとタバコを揺らす。
渋谷と違ってこっちはなんか明るいなあと…。

御堂京一 > 「うっし、やるか」

そんなわけで貰ってきた三枚に開かれたアジとぬめりを獲られて軽くボイルされたタコを手に簡易キッチンコーナーで包丁を手にとる。
これでも一人暮らしは長い、あとしばらく弟子入りしてたジジイがやたらと飯にうるさかったのと凝り性なのもあって料理スキルはそこそこにある方だ。
レシピをちゃんと守る程度には。

アジは塩を振って水分を出しておいたのを拭き取って網焼きで火を通していく。
その間にスキレットにバターを溶かし刻んだニンニクと唐辛子を炒め、しっかり香りが出たらオリーブオイルをちょい足ししてマッシュルームに油を絡めながら炒めぶわっと匂いが周囲に広がり始め。
軽く表面に色がついたらタコ、アジを中にぽいぽと、ハーブソルトをそれ大丈夫?というくらいにかけて追いオリーブ。

あとはしばらく待てば海鮮アヒージョの完成である。
いやもともと海鮮系の具が多いな。

御堂京一 > 「あ、うま」

ビーチチェアに背を預け、脚を組み思いっきりエンジョイスタイルでサイドテーブルに置いたアヒージョにフォークを突き刺し口に運ぶ。
自分で作った料理と言うのはある程度完成した味を想定しながら作るので感動に乏しい。
むしろ理想系に足りていない場合はそれだけでイマイチと判定してしまう。
だというのに今日のはなかなかの出来である。
アウトドア補正というやつだろか。

タコを噛み締めれば一瞬の弾力のあとにニンニクバターをたっぷりと含ませたタコ味が染みだしハーブソルトのぴりっとした味が心地よい。
アジは炭火で焼かれた皮の香りが香ばしく、パンチの効いたオイルの味に負けず、そしてその身にたっぷりと海鮮の出汁が効いたオイルを含ませこれもまた美味い。

ちょっとこってりとした口の中にキンキンに冷えた炭酸を流し込めば火照った身体にも心地良く、はぁっと吐息をこぼす。
まあ酒はあんまり飲まないのでサイダーだったりするが。

御堂京一 > 「この島、そんなに広くないんだよな……」

判っている。街が……区画がいくつもあって、山があって荒野があって、そんな島が狭いはずがない。
今も自分が根城にしている雑多な街にある澱みのようなものがここには感じられない。
少し足を伸ばせば色を変え顔を変え、この島は本当に大きい。
自分はこの島しか知らない。
そしてこの島の全てを知っているかと問われれば一割も把握出来ていないはずだ。

なのに、世界はもっと広い。
自分の知らない世界がこの海の向こうに広がっている。
自分の最初の記憶はもうこの島の中、外に居たのは本当に幼い頃で記憶の欠片さえもなくて。

スキレットの中が空になる頃には日も傾いていて。
とりあえず、いつもと同じように、昨日と同じく今日も境界の街へと足を向ける。

ご案内:「浜辺」から御堂京一さんが去りました。<補足:21歳/188cm72kg/緩くウェーブした暗い赤毛/サングラス・アロハ・ハーパン/乱入歓迎>