2020/06/24 のログ
ご案内:「特殊病棟」に追影切人さんが現れました。<補足:七分袖シャツ、黒ジーンズ、スニーカー>
追影切人 > 特殊病棟――一癖も二癖もある”問題児”な患者ばかりが集められたそこは、一般生徒の立ち入りは厳禁だ。
入れるのは正規の風紀委員や公安委員、そして教師のみ。
当然、身分チェックやセキュリティも病棟とは思えないレベルで高く――ある種の”監獄”である。
その監獄の中にあって、とある個室にてベッドに寝転がっている眼帯男が一人。

「あーーくっそ暇だっつーの。…さっさと退院させろよなぁ、ほんとに」

どうせ退院しても監視付きの生活だが、現状よりは遥かにマシであろう。
時々、窓の外から景色を見ようとする…が、鉄格子じみた仕切りでまともに見えやしない。
一見すれば無機質な白い病室のこれも、至る所にセキュリティーなあれこれが仕込まれている。

(――ハッ、つまりは監獄って訳だ…ま、そのくらいは当然だわな)

と、自嘲気味に鼻で笑いながらゴロンと寝返りを一つ。退屈は人を殺す。
それが真実かどうかは知らないが、少なくともそれに近い気分にはなっている。

ご案内:「特殊病棟」にレイチェルさんが現れました。<補足:金髪の長耳少女。眼帯を着用し、風紀委員の制服をきっちり着こなしている。外套は羽織っているが……。>
レイチェル > 特殊病棟の廊下に重々しい足音が響き渡る。

『あー、かったり~~!』
『おいねーちゃん、遊んでくれよ~~!』

淀んだ空気に靡く金色の髪。
問題児の目にはこれまた眩しい赤の制服。
檻の中に居る者達やその声には目も耳もくれず、
彼女――レイチェル・ラムレイは目的の部屋へと歩を進めていく。

彼女が立ち止まった目的の部屋。そこは、追影切人の部屋だ。

「おい追影。起きてるか?」

軽く二度戸を叩く。

追影切人 > 「――あぁ?こんな時間に面会があるとは聞いてねーっての。さっさと帰――」

最初こそ億劫そうに、2度のノック音と声に答え掛けたが、途中でピタリと動きは止まる。
彼にしては珍しく、無言でゆっくりとベッドから起き上がり…ふぅ、と無意識に一息。
聞き間違いでなければ、”あの女”が今、あの扉の向こうに居るのだろう。

――約3年前、この左目を潰し己を捕縛した張本人たる強い女が。

「…あーー今の無し無し。さっさと入れよ」

と、努めて冷静に、かつぶっきらぼうにそう述べて彼女を中に招こうとする。
そういえば、ドクターが昨日意味深に笑ってサプライズがどうのとか言ってた気がするが…。

(いや、サプライズ以前に新手の嫌がらせか?あのクソジジィめ)

と、担当医に舌打ちをしつつも、その姿をはっきり確認しようと扉のほうを隻眼で凝視しており。

レイチェル > ドアを開けて現れたのはかつて風紀の荒事担当と呼ばれた刑事課の女、
レイチェル・ラムレイその人であった。

「……やれやれ。せっかく来てやったのに、門前払いされちゃかなわねぇっての」

レイチェルは腰に右手をやれば、困ったように穏やかに笑ってみせた。

「大丈夫かよ? 悪ぃな、本当だったらもっと早く来てやりゃ
良かったんだが、あれこれ仕事が舞い込んじまってな」

そう口にしながら、ベッドの上の追影の顔を覗き込むように
ぐっと上半身をベッドへ近づけて、腰にやっていた右手を自らの顎の下へ。
仕事と言っても、かつてのように落第街を見回ったり、違反部活とやりあったり、
などといった荒っぽい仕事ではない。書類の山を片付ける仕事である。


「しかしお前、変わってねぇな……」

呆れたように、しかしどこか嬉しそうにそう笑いながら、
レイチェルは姿勢を戻してベッドの横へ立つ。

かつては刃を交えた間柄だが、今では不思議な縁がある。
腐れ縁、というやつだ。

追影切人 > 「…つーか。テメェ、いきなり現れんじゃねーよ。素で驚いたわクソが」

と、毒舌口調は変わらないが、彼女の姿を見れば何処か懐かしそうに目を細める。
左目の恨み?そんなものは”最初から無い”。アレは強い女とタイマンして負けた…その勲章だ。
それくらい、昔のコイツは強かったし、敵わないと俺がはっきり意識したのはこの女くらいだっただろう。
――まぁ、こっちもただでは無様は晒さない。きっちりこの女の銃を壊してやったが。

「…って、おいこら覗き込むな近ぇっつーの!!テメーのその変な距離感相変わらずだなオイ!!」

と、顔を覗きこまれれば無意識にやや後ろに顔を引く。上半身が近付くと、自然と目に留まるのが…まぁ、うん。

「――テメェは変わったな…前はもっとこう、尖って鋭かった感じだが……つーーか」

そこで真顔で右手を軽く持ち上げて…ビシィッ!!と、擬音が付く勢いで彼女のソレ――大きい母性(ビッグマム)を示して。

「……テメェ、3年前より乳がデカくなってんじゃねーのか?…レイチェルよぉ」

と、オブラートに包む、なんて事はまずしない馬鹿は堂々と彼女に告げるのである。
まぁ、彼女もこういう所は多分分かっているのだろうが…デリカシー?そんなものはコイツには無い!

レイチェル > 悪態をつかれれば、はぁ? と。
柳眉をきゅっと縮こませて、鋭い目で睨みつける。

「別にそのくらい良いだろうが。ノックだってしたじゃねぇか。
 それともアポでも取れってか? お前、ベッドの上だっての
 にそんなに忙しいのかよ?」

実のところ、腐れ縁の見舞いに行くのに電話をかけるのは、
何となく気恥ずかしかったのでしなかっただけなのであるが。
腐れ縁。そう。3年前、暴れに暴れていたこの男と対峙し、
相手は片目を、レイチェルは愛銃のマグナムをそれぞれ失っていた。
力を尽くした戦いだった。まさに強敵。戦えば戦うほど、そう感じる。
レイチェルにとって目の前の男は、そんな男だった。

「変わった、ねぇ。ま、確かに色々あったからな……」

病院の窓の外、風に揺れる木の葉を見た一瞬。
過去の記憶が蘇る。
様々な戦い、親友との別れ、そして――
と。
遠くを見つめる瞳は、目の前の男の右手を見やる。


「……入院期間を延ばしてやってもいいんだぜ?」

と、こんな台詞を目を閉じた状態で、穏やかな笑みを形作った口元で語るレイチェル。

追影切人 > 「あぁ?暇に決まってんだろーが馬鹿かテメェ?大体、テメェ顔を見せるならもっと早く見せやがれやコラ(意訳:暇だったけど、お前が来て正直嬉しいです)」

と、悪態(?)を返しつつ、ともあれ唐突な再会もまぁ…悪くは無い。
少なくとも、”どっかのドーナツ泥棒”や”面倒見の良さそうなナイス乳の監視役”と同じく退屈はしない。

――否、単純に昔も含めればそれこそ付き合いは一番長い事になるのだろう、おそらくは。
――腐れ縁、そう呼べるのかもしれない。男はおそらく素直に認めないだろうが。

「――色々ねぇ。ま、俺はご覧の有様だが…テメェはテメェで”色々あった”んだろーよ」

彼女の視線が一瞬、窓の外を見遣る。そこに何を見たのかは分からないが男は静かに口にする。
この男なりに彼女の事は一目置いているし、正直言えば”尊敬”もしている。
ただ、素直に口に出すのは何かムカつくので、絶対に言うまいと決めているが。

「――やってみろ、テメェには借りがあるからな。リベンジっつぅのも悪くねぇ―――なんて、な?」

と、その右手がブレるように霞んだ。それが攻撃動作ならレイチェルなら反応はするだろう。
だが、殺気も敵意も、ましてや男が醸し出す”刃”のような空気が無いなら?
右手は彼女が羽織っている外套――そこに一瞬で手を掛けて奪い取ろうと。
狙いは最初から彼女ではなく、その外套…しかも攻撃の気配が一切無いそれ。
――下着泥棒、ならぬ外套泥棒である…何故やったかって?

…明らかにコイツの外套で隠した部分に違和感を感じたからである!!

レイチェル > 「だから言ってるだろ、仕事が山積みだったんだっつーの。
 ったく、書類仕事が多すぎるんだよな」

勿論、風紀には事務員が居る。
しかし、殺人的な量の書類全てを事務にそのまま投げつけ、任せてしま
う訳にはいかない。だから、少なくともレイチェルは事務と連携し、
やれる分だけの書類は片付けることにしている。

「ま、生きてりゃ誰だって『色々』あるもんだ」

目の前の男も、そこまで変わっていないように見えて
何処か変わっているところがあるのだろうか。そんな思いが脳裏を過る。

と。
突然霞む追影の右手にレイチェルは目を細め。
その眉は再びきゅっと寄せられ。
放たれた言葉は次の一言だった。

「おい、バカっ!!?」

次元外套《ディメンジョンクローク》が掠め取られる。
それが意味するところはつまり――

ガラガラと音を立てて、様々な飲料入りペットボトル、
紙袋、筆記用具、果ては銃器までもがベッド上の追影へと雪崩込む!

追影切人 > 「あ?書類仕事?テメェは確かバリバリ前線に立って、俺の時も真っ先に首を突っ込み――ああ、そういう事か」

こいつが書類仕事ぉ?と、露骨に変なものを見るように隻眼が胡乱げに細められる。
が、あれから3年も経過しているのだ。昔の尖った空気が鳴りを潜めたのは、つまり。

「――ハッ、”後進の育成”ってやつか?テメェが裏方業務に回るなんざ似合わねーったら、ありゃしねぇ」

完全に前線を引いた、とは限らないがそれでも彼女の発言からして、その仕事の大半が書類仕事なのだろう。
と、なれば実働任務は今の彼女は殆ど受け持っていない、という事になる。

「――ま、俺から言わせりゃあ…テメェは色々あっても、根っこは多分変わってねーよ。
あん時みてーに…いや、もしかしたら今の方がむしろ――」

と、言い掛けたが…はっ!と笑って首を緩く横に振った。こういう戯言は俺の領分じゃない。
そして、外套を剥ぎ取ったはいいのだが――その後の結果がこれである。

「って、うぉぉぉぉぉぉい!?何で無駄に収納してんだテメェ!!!」

飲料を右手で無理矢理全部重ねるようにキャッチし、文房具やら筆記用具は左手で纏めてキャッチ。
銃火器は…ぐぉっ!?と、うめきながらも膝の上で全部キャッチして一つも床には落とさない。
考えたら律儀に全部キャッチしなくてもいいのだが、この辺りは無意識である。

で、文句を言おうとして顔を挙げるのだが―――ん?)

「……。」

無言で諸々をベッドによいしょ、と置いて。

「……。」

一度己の右目を擦って。ついでに滅多に外さない眼帯を外して金色の義眼を露にして。

「………。」

義眼をコンコン、と叩いて不調ではないのを確認してから改めてレイチェルの姿を見た。

その姿は―――

レイチェル > 「いつまでもオレが前線張る訳にもいかねーだろ。
 新しい人材を育てていかねーと、風紀に未来はねぇ。
 それに、オレは風紀に十分育てて貰った。
 だから、今度はオレが風紀を育てる番、ってわけだ。
 勿論オレ一人じゃねぇ。皆と一緒にな」

ってまぁ、臭いこと言っちまったな、などと。
そんなことを呟きながら、恥を振り払うように右手首
をふっふっと、空中で振って見せる。


「そりゃ使う物は収納するに決まってるだろーが……!?」

勢いよく雪崩堕ちていく様々な物品。
恥ずかしい物は入ってなかったよな、とひやりとしつつ。
器用に全て受け止める追影を見れば、少し感嘆の息を漏らし
かけるが。そんなことよりも。

「……」

しまった、と目を横に。視線をずらして、腕を腹部へそれと
なく移動させる。

「……」

つい先日、久々に襲撃を受けた際に制服が破れてしまい、
手元に残っていた制服と呼べるものが風紀の制服のみで
あったがために、無理やり着ていたのだが。

「…………」

そう。その義眼には。
あまりにサイズが大きくなりすぎて、
さっぱり着られなくなった風紀の制服を、
何とか無理やり着ているその姿が映し出されるだろう。

追影切人 > 「……あーー何ていうか、アレだ。時の流れっつーの?それを今すげぇ感じたわ。
…まぁ、3年も経過してりゃ以前と同じっつー訳にもいかんわな。人員の入れ替わりもあんだろーしよ」

何とも言えない表情を浮かべたのは、学生生活らしいものをまだ3年しか積み上げてないから。
――彼女に倒され、捕縛されて。色々あったけれどそこから初めて彼の学生生活は始まって――獣から人になった。
勿論、3年前と劇的に何かが変わったという事は無い。
デリカシーは無いし、ブレードハッピーで、割と後先考えない馬鹿のままだ。

彼女が照れ隠しなのか、手首を軽く振って見せる様子を眺めて…「テメェだけ先に行っちまってずりぃわ」と、小さく呟いた。

「――あーー…取り合えず、まぁ色々と言いたい事はあんだがよ?」

んーーと、視線を一度逸らす。が、直ぐに眼帯を外したのでオッドアイになった瞳でレイチェルの全身を眺める。
――義眼の録画機構作動、自動録画モードオン。検閲機構…エラー発生、エラー、エラー…。

(じゃかましい!これはそうするべきだろうが!!分からんが何となく!!)

と、義眼からの検閲エラーを放置して録画敢行中。腹部は…腕で隠してるが臍だしルック状態。
――と、いうかファスナーがおかしい。明らかにアレは乳の圧力でああなっているのでは?
と、思っていたら股間がちょっと疼いた。いや、ちょっと所じゃないけど今の状態を説明したら羞恥プレイだからカットだ。

(いやいやいやいや、男なら勃つだろこりゃあ!コイツ、こんなエロくなってんの!?
…いや、そもそも何で丈が合ってねーんだ?いや、まぁ眼福だからバッチリ拝むけど、むしろ保存するけど。
あと、丈!上もだけど下もだよ!つーか明らかにパンツの一部見えてんじゃねーか!ありがとよ!!)

と、心の台詞を一気に捲くし立てながら…やがてゆっくりと頷いて真顔で述べる。

「レイチェルよぉ……流石にそれは誘いすぎじゃね?幾ら俺でも反応せざるを得ないっつーか。
いや、普通にエロ可愛いんだけど。いや、むしろちょっと場所が場所じゃなければ連れ込みたいくらいんだけど!
まぁ、本音はそれとして建前だけ言わせて貰うと…色々と最高ですありがとう」

と、重々しく頷いた。本音が凄い駄々漏れであるが…仕方ない、これは本音が出るだろうそりゃ。

レイチェル > 「まー、最近全然会ってなかったからな。
 そいつはしょうがねぇってとこだぜ」

目の前の男も変わっていないように見えたが、
昔に比べれば流石に大人しくなったようには
見える。
彼も彼で、色々なものを積み上げて
きたのだろう。そんな時の流れもひしひしと
感じていたのであるが。


じぃ、と自らへ向けられる視線。
追影のオッドな瞳が光れば、レイチェルは目を見開く。
間違いない、レイチェルとて片目に機械眼を埋め込んでいる。
相手が何をしているかなど、しっかり伝わるのだ。

「そういうつもりじゃねーよ! っていうか、おい、
 なに『録画』してやがんだっ! てめ……」

右腕を義眼へ伸ばそうとした、その刹那。


びり。

「……あ?」

刹那。決して聞こえてはいけない音が、レイチェルの胸部
から聞こえてしまった。
それは、最後の防衛を任された砦が呆気なく
崩壊を迎えた音であった。


「…………」

落ち着いた表情も、流石にこの事態を受ければ赤に染まらざる
を得ない訳で。
レイチェルが取った選択肢は、たった一つのやり方だった。

「……時空圧壊《バレットタイム》」

彼女が異能の名を唱えて拳を握った瞬間、
周囲の『時間』が尽く粉砕される。
レイチェルの異能は、時空の法則を破壊する。
周りの全てが減速を始め、レイチェルのみがこの世界で
唯一正常に動ける存在となる。

そうして、そこから先の彼女の動きは素早く、
どこまでも無駄のない効率的な、機械のような動きであった。


すっと。

次元外套を取り戻し。

さささっと。

銃器や文房具を回収し。

ぱさ、と。

外套の中に入っていた紙袋を追影の顔の前へ投げつければ、

ぱんぱん、と手を叩いて彼へと背を向ける。


「……時間切れ《バレットオーバー》だぜ」

唱えれば、周囲の時間が元に戻る。
同時に、追影の顔面に投げつけられた紙袋も
結構な速度で動き始め――

追影切人 > さて、久々の再会なのだが色々と端折ると…コイツの明らかに丈の合っていないエロ風紀モードを録画中だ。
本来なら、義眼に仕込まれた検閲機構で録画は不可能。だが、そこは気合で何とかした。
人間、気合と根性があれば理不尽の一つや二つ起こせるものだ…多分。
まぁ、それはそれとして録画は滞りなく続行中。が、流石にレイチェルに気付かれたらしい。

「あ!?不可抗力だっつーの!(くそ、そういやアイツも片目がアレなんだった!)」

と、内心で舌打ち。ただのエロ小僧と化しているが、これはこれで意外と珍しいのだ。
それより、こちらに右腕を伸ばした義眼をシャットダウンしようとする相手に抵抗しようとした矢先、何か布地が破れるような音が――

「(――ナイスだっ!…いや、待て確かレイチェルにはあの能力がある。アレ使われたらどうしようもねぇし、こうなったらその一瞬に掛ける!一瞬でいいから全力出せや俺っ!!)」

そして、完全に砦が崩壊した瞬間、義眼をフルスペックで起動。
追影の純粋?な思いに義眼が反応したのか、検閲機構を通り越して一瞬を引き伸ばしての撮影モード。
完全に最後の”砦”が崩壊した瞬間をバッチリ激写…と、同時に彼女のバレットタイムにより映像が強制遮断状態となり。

「――――あ?…うぶっ!?」

気が付いたら、バレットタイムにより彼女の身支度は滞りなく終了していた。
ついでに、こちらに投げつけられた紙袋を顔面キャッチ。思わず顔を抑えつつも、紙袋をキャッチ。

「いってぇなテメェ!!つーか、あの能力使いやがっただろ!”感覚で分かる”んだからな!
――クッソ、一番肝心な所だったのに…!!」

割と本気で悔しそうにしつつ、紙袋は律儀に膝の上に乗せながら眼帯で左目を覆い隠した。
ちなみに、最後の一瞬、バレットタイムが発動するほんの一瞬前の撮影画像…砦が崩壊して、まぁ…うん。
そんな状態のレイチェルが一瞬だけ映った画像はバッチリ保存されていた。

(これがバレたら流石にやべぇな…最悪、義眼ごと没収されて細工されかねねーし…)

と、いう訳で最後の一瞬の激写については黙っておく事にした。
バレットタイム…過去にそれで痛い目を見た事もある。勿論、その時はこちらも時間を”斬った”りして対抗したが今の状態では不可能。

(やっぱ能力とか封じられてるとこういう時に面倒だな…ったくよぉ)

と、心の中でボヤくが、そもそもあれこれ斬るこの馬鹿も大概な訳だが。
紙袋を一瞥しつつ、それから改めてレイチェルに視線を戻す…がっちり外套着込んでいやがるクソが。

「――ま、レイチェルのエロい姿見られたから仕方ねぇ、今回はここまでにしてやる。」

よく分からん勝負に負けたような負け惜しみ台詞であるが、勝負には負けたが或る意味で勝った。
え、画像とか映像はどうするかって?…聞くまでも無いだろう、むしろ使い方なんて決まっている。

「まぁ――テメェの”風俗”委員みたいな格好についてはまた今度追求するとして、だ。
ま、テメェが何だかんだ”相変わらず”って事がなんとなーく分かったわ」

と、素直にそんな言葉を述べて笑みを浮かべた。ああ、根っこはやっぱ同じだわコイツ、と。

レイチェル > 「……オレはもう帰る」

外套をしっかり着込んで、自らの胸を抱きかかえるように
両腕を回しているレイチェルは、そのまま追影の方を見る
ことなく2,3の歩を進め。

カツン、と靴音を立てて立ち止まれば、くるっと一瞬追影
の方を振り向いて、ほんのり赤い頬はそのままに、
睨みつければ小さく呟く。

「ところで、それ。絶対消しとけよ……!」

一瞬のフルスペック起動を妨害することは
できないまでも、認識はしていたらしい。

追影が危惧していた、義眼を没収といった最悪の事態は
防げたが、代わりにとんでもなく見下されているような
視線が突き刺さることになった。これだけで済んだのも
やはり『時の流れ』のお陰かも知れない。

そうしてふぅ、と深く大きな息を吸った後、
落ち着いた声色でレイチェルは最後に言葉を付け加えた。

「気になったこともあったんでな。色々聞こうかと思った
 が、ま、退院してからじっくり聞かせて貰うとするぜ」

最近暴れまわっている怪異の情報など、調査しようかと思
ったのであるが、今は機が悪い。
じゃあな、と呟けば彼女は病室を去っていくことだろう。



紙袋に入っていたのは、猫の顔の形をしたクッキーであった。

無論、その顔面は無惨にも真っ二つであったが。

追影切人 > 「何だよ、もう帰んのか?…なんてな。ま、暇潰しにはなったし…イイもんも見れたしな」

いやぁ、眼福だなーこれ、と思って歩を進めて病室を後にしようとする彼女を見送る――

筈だったのだが、いきなり靴音が止まった。かと思えば一瞬だけこちらを振り向くレイチェル。

「……あ?何のことだよ?(バレてんじゃねーーかクソがっ!!)」

これは仕方ない、映像記録だけ消して最後の奇跡に一枚だけは死守する方針で行くか。
当然、それが一番のセクシーショットなので何としても守らなければならない。

取り敢えず、レイチェルの認識能力は相変わらず…いや、むしろ昔より鋭くなって無いかその辺り。
義眼没収は免れそうだが、代わりにとんでもなく冷たい視線が――うん、まぁまだマシだろうこのくらいなら。
レイチェルが本気で怒っていたら、まず義眼がそもそもボッシューとされていただろうし。

「――あーーどうせ”黒触姫”の事だろ。その辺り、本部にも一応ぶちまけたが。
――お前の事だからどうせ上からの報告より、直に俺に聞きたい、って事だろーよ」

流石にそこはさっきまでのエロ小僧ぶりは鳴りを潜めて、やや苦笑気味に肩を竦める。
紙袋の中身をふと漁れば、猫の顔の形をしたクッキー…が、真っ二つになっていた。

「――ま、調子乗りすぎたのは確かか。…んでも、エロ可愛いっつーのは本気なんだがなぁ」

と、そこは普通にぼやきつつも、彼女が立ち去って静かになった病室でぽつんと一人。
割れたクッキーを齧りつつ「あ、美味い」と呟いていたとか何とか。

後日、レイチェルの元に短く『クッキー美味かった。ありがとよレイチェル』と、短い伝言が届いただろう。

ご案内:「特殊病棟」から追影切人さんが去りました。<補足:七分袖シャツ、黒ジーンズ、スニーカー>
ご案内:「特殊病棟」からレイチェルさんが去りました。<補足:金髪の長耳少女。眼帯を着用し、風紀委員の制服をきっちり着こなしている。外套は羽織っているが……。>