2020/08/06 のログ
ご案内:「訓練施設」に武楽夢 十架さんが現れました。<補足:黒髪赤目/動きやすい半袖半ズボンのトレーニングウェア姿/細身の青年>
武楽夢 十架 >  
――設定構築例:集合住宅地。
――条件:ランダム生成。

――AIマップ生成……魔導錬金儀式、陣地形成準備。

――カウント、5・4・3・2・1……。


――顕界。
 

武楽夢 十架 >  
気候想定、日中で暑くもなく寒くもないある意味理想的な環境。
先程まで殺風景だったドーム状の室内にホログラムでなく形成された街並みは確かに今ある『実物』だ。

一般住宅から、木造だったり鉄筋コンクリート造のアパートだったり、自動販売機やらコンビニかと思われる建物まで精製されている。
味気なさを感じるのは、作られたのは箱のみで中身がないというのと細かく複雑な部分は構築されていない点になる。
つまり、室内に電気の類なんかはないという点だが、そこは内部に電灯代わりの発光石が埋め込まれているため真っ暗ということはない。

適度にリアル。 適度に模型のようなリアルらしからぬ点がある。

授業以外で来たのは初めてで『サバゲー好き』とか自称する先輩が市街戦するのに超最高とか言ってたのを思い出して利用しようと思った。

手首足首、よし。
身体の筋肉に異常はなさそう。
体調良し。


「やるなら、怪我しても大丈夫な場所でってね」

今日は、パルクールの訓練に来た。
走る、跳ぶ、登る。 移動する事に重点を置くスポーツ。
それを実戦で使えるようになるべく。

武楽夢 十架 >  
先日、家の近くの異邦人街でやってたら危うく事故しかけたり、人の家の窓に飛び込みそうになったのは冷や汗をかいた。
そういう事があったから、こういった場が借りれるなら借りようという話。

身体が何処まで動かせてどの動作が難しいか理解していかないといけない。
単純なトレーニングでは意外と、何を何処まで出来て何処からが無理なのかという限界点を測りきれない。

これは、そういう自分の身体の機能性、体力、バランス感覚、空間認識力、敏捷性、コーディネーション能力、正確さ、コントロール、創造的視点などを鍛えるのに向いていると僅かな時間だがやっていて理解できてきた。
やっていることは、自分の肉体への性能確認試験《ベンチマークテスト》だ。

走り、背より高いが手が届かないわけじゃない塀の上を掴み、勢いを生かして塀の上に乗り、塀の上に足を載せた時点でその場を蹴って家の庭先へと入り込む。
動を殺さず勢いとしつつ先を常に見て、行動を想定。
自分なら行けるかと考えながら、わからない場合は先ずは試してみる。

家の裏手にある倉庫の出っ張りに手をかけて身を浮かし家の壁を蹴り、勢いをつけて倉庫の屋根に上がる。
異能でやや身体能力強化をしているとはいえ、こういう動きを出来ると知っていくのは大切だと楽しくなっていく。
自然と口角が上がる。

「よし……」

自分の場合は強化《ブースト》によって本来肉体が出来ない動きを補助しているから、後々に反動が来るためそこまで無茶はできない。
しかして、一月ほど前から訓練し始めたにしてはそこそこ動けるようになってきたか、と自画自賛。

最初はそれこそ塀に突っ込むだけになったりだとか、着地に失敗してしばらく丸くなって呻いた事もあったし、掴もうとした棒にラリアットされたこともあった。

「取り敢えず、失敗しても急所は守れるようにはなってきたし……」

顔、胸、腹、股は自重や加速がついた状況でぶつけるとクソ痛い。

武楽夢 十架 >  
少し移動して、アパートやマンションが連なるような場所へ行く。と言ってもそこまで広いわけでもなく2、3棟あるくらいだ。
塀から、部屋のベランダに飛び掴んで一度ベランダの中へ潜り込み。
一度丸めて収縮した筋肉をバネのように伸ばす勢いで上の階へと手をのばす。小さなボルトネジの頭さえも利用して瞬間的に登っていく。
少し目を離せば、屋上までも意外とすぐに辿り着く。経路のプラントしてはまっすぐに登れないようならば側面にある横の窓枠を踏み台にすれば屋上までいけるな、と踏んでいた訳だが思ったよりも今回は楽に行けた。
住居の建築物の構造っていうのは異邦人街以外ならそこまで大きく変わりはしないので、応用が効く。

「さて、試してみるか……」

隣の屋上までやや距離がある。
跳んでギリギリ届くかどうか、だ。
身体強化で自身の体内を無理に動かして跳べばまあ、そりゃあ、届く。
しかし、あまり負荷がない状態で無理を最小限にやれるかどうかだ。

助走をつけて隣の屋上目指して跳んだ。

武楽夢 十架 > しかし、足は―――どう考えても隣の屋上には届かない。
武楽夢 十架 >  
当然だ。
そもそも『足が』届く想定ではない。

屋上の端を手が掴む。
足は勢いで叩きつけられそうになる身体をそうなる前に弾くように、建築物の壁を蹴る!

上へ。

―――よし、行けた!



そういう途中での油断がパルクールにおいて危険である。

武楽夢 十架 >  
掴んでいた手が、

        汗 で
            ―――滑る。

武楽夢 十架 >  
体勢は崩れる。

――動作制御した訳ではない動きを素人が再制御するのは不可能に等しい。
――このまま落下すれば背中、最悪頭からの落下。死亡ないしは重症。

僅かに漏らした間抜けな声こそ、最後の遺言に――、


"外"ならなっていた。

ここは学園の訓練施設だ。

この施設内での殺傷や重症を負わす事は、禁止されており
ドーム状の所以というのもあらゆる方向から対象の状態を管理するためであるかと思われている。

つまり。

―――利用者保護術式作動。 落下地点素材を変質化。

舗装された道は、瞬く間に正方形のスポンジの海へと変化した。

武楽夢 十架 >  
「……パルクール中は一連の動作が終わってから喜べ、だ」

やっちまったなぁと苦笑しつつ沈んだスポンジの海から起き上がる。
あー、うん。 普通の人は四階の高さから頭から落ちたら大変だよなぁ。
この学園にいる人達みてると自分も平気なんじゃないかって錯覚しそうになるけど。

武楽夢 十架 >  
一度、入口付近のスタート地点までとぼとぼ歩いて戻ってくる。
青年の使う身体能力強化は自身の体内の血液を完全に支配下に置いている。
それを利用したやや無茶な肉体駆動。
血液の循環は自然と早まり、少し動くだけでもすごい発汗量となる。

汗というよりはシャワーでも浴びてきた、というレベルであるし
発熱した身体から出る汗は少し湯気のようにもなる。

異能による完全制御解いた瞬間、これなのであまり長時間使えたもんじゃないな、とは本人も理解している。

「……塩飴と水が美味すぎる」

バスタオルを片手で汗を拭いながら一口一口水分を補給する。
農業してるときとは全く異なる疲労感だ。

ご案内:「訓練施設」に御白 夕花さんが現れました。<補足:肩まである白い髪、紅い瞳。制服姿、鞄に盗聴器付き>
御白 夕花 >  
あなたが水分と塩分を補給していた時、入口の扉が控えめに開かれた。
休憩中でなければ気付かなかったかもしれないほど静かに、恐る恐るといった様子で一人の少女が現れる。
見覚えのある白い髪と紅い瞳。セーラー服に身を包んだ小柄な姿。

「し、失礼します…………あれっ、誰か使ってる……?」

───御白 夕花。
『トゥルーバイツ』の元構成員にして、現在はあなたと同じ裏切りの黒に所属している。
ヴィランコードは保留中ということも含め、あなたは彼女をよく知っている。
なにせ勧誘したのは他ならぬ《ヴラド》なのだから。
逆に、彼女の方はあなたを知らない。"武楽夢 十架"としてのあなたを。

武楽夢 十架 >  
おや、と思わず首を傾げた。
現れた顔は知っている顔。

「どう――……」

どうした、と声をかけようとして彼女が未だ『自分』のことは知らないのだと思い出す。

そう気づくとタオルを首かけて、水の入ったボトルを片手に柔らかな笑みを浮かべて声をかける。

「どうかしたの?
 ここは一応、使用中だけれど」

年下の後輩に接する時と同じように対応する。
青年はすごい汗をかいているが、思ったより臭いとかそういうのはない。
普段から背をかく人の汗というのは、普段動かない人の汗と違って無味無臭に近いものだ。あくまで近いだけではあるが。

御白 夕花 > (ここから一人称視点)

「あっ、えと……その、私も訓練というか……検査というか……
 でも誰か使ってるとは思ってなくて……すみません!」

ぺこぺこと頭を下げて、訓練の邪魔をしてしまったことを謝る。
けっこう汗をかいてるみたいだし、さっきまで運動していたんだろう。
そのわりにはあんまり臭いがしないのは、不思議だ。

「す、すぐに出ていきますからっ!」

ここに来たのは私の意思じゃなく、保護対象としての決まりだけれど……
流石に日を改めた方がいいかと思って、慌てて出ていこうと。

武楽夢 十架 >  
少女の慌てふためく姿を見て思わず笑ってしまうのは上級生ゆえか年上ゆえかまたは両方か。

「いや、そんなに気を使わなくてもいいよ。
 俺は趣味で借りてたようなもんだから検査……『なんか』の確認をしたいなら譲るよ?」

そう首を傾げて聞く。
自分の場合は危険なことを避ければ別にここでやる必要もそんなにない。
まあ、近隣の人たちに丸い目で見られたり隣人の蛇人たちが真似して戯れて来たりするくらいだ。

「それに夏休みだから暇つぶしに使ってる学生も多いし、今から待ちっていうのも面倒だと思うよ」

今から予約してお一人様の訓練施設の空き待ちっていうのも中々あれなところだろう。

「ま、俺がちょっとシャワーしてからになるから待つのはそんなに変わらないかも知れないけどね」

そう言って冗談めいた笑みを浮かべて言った。
正直、『前』にあった時の冷たい声の『時』とは別人にしか聞こえない声だろう。

御白 夕花 >  
「うぐ……でも確かに……」

予約について言われれば何も言い返せない。
てっきり学校側で用意してくれてると思って、何もせずに足を運んだのがいけなかった。
早とちりを笑われているような気がして恥ずかしくなる。

「そ、そんな急いでるわけじゃないですから!
 使わせてもらえるならシャワーくらい全然待てますっ」

ただでさえ後から来て図々しいのに急かすような真似はできない。
それにしても、この声どこかで聞いたような?
でも、こんな爽やかに笑う知り合いなんていないし……
かと言って「どこかで会いましたっけ?」なんてナンパみたいなことも言えない。

「えと、んっと……趣味って言いましたけど、どんな事してたんですか?」

結局、ものすごく遠回りな問いかけになった。

武楽夢 十架 >  
「なら、ちょっと待ってもらうね」

未だ学園に不慣れなのか、まあ、そういう後輩の姿というのは中々どうして可愛らしく思えるものだ。
そんな事を思っていたところにやっていたことと問われれば、素直に。

「パルクールっていうやつ。
 簡単に言えば、障害物競走みたいの……かなぁ?」

障害物はあれ、と未だ出たままの灰色の住宅地を指差す。
顎に手を当てて、上手い表現はないかと唸る。

「やってみると全身使って動くし結構ストレス発散にも、なるかな」

多分と首を傾げる。
きっと運動好きなら、そう。
そうじゃないなら、苦痛かもしれないかな、と。

悩ましいところだった。

御白 夕花 >  
「分かりました。そしたら、この辺で待ってます」

頷いてから、質問の答えを聞いて指差した方を見る。
灰色の街並み───あれを使った障害物競争って、どんな感じだろう。
いまいちイメージが湧いてこなくて首を傾げた。

「わ、私あんまり体を動かすのは得意じゃないので……」

それは嘘。むしろ運動神経は高い方だと思う。
異能と一緒に"そういう体"にされたのだから当然だ。
……だからこそ、なるべく人並み外れたことはしたくない。
それこそ検査でもなかったら異能だって使わずにいたいくらいだ。

武楽夢 十架 >  
「ふーん……」

いや、お前俺より強いじゃーん!という内心はともかく。
これはあまり良くない傾向じゃないかとは、仲間としても普通に先輩としても思うわけだ。

「動かすのは得意じゃなくても、自分が何処まで動けてどう動けないのかは定期的に確認しておくといいよ。
 身体って、気がつく少しずつ思い通りに動いてくれなかったりするからね」

例えばと語るのは、ボールを投げたときに何処まで投げれると思っていたかみたいな話。
投げる前に考えていた場所までボールは投げれたかどうか、またはその予想を大幅に超えたりしたことはないかって話。

「そういうイメージとのズレは、自分を識ろうとしないと直せないんだ。

 だから、不用意に恐れるな」


試すことを。その事実を。それがある今を。
とお節介ながら考えてしまうのはどういう視点だろうなと苦笑した。
少しだけ少女へと近づいて、視線の位置を合わせて一度微笑み口を開く

「自分をちゃんと識れば、得手不得手はともかく『楽しみ方』っていうのは見つけられるようになるよ、きっと。

 事情は『知らない』けど、やるなら前向きに、だ」

と告げて、姿勢を正す。

「嫌な事だと思ってやるよりは、その方が気楽だろ?
 本当に嫌なことなら、死ぬわけじゃないしサボるのも悪くない」

なんて茶化すように続けて言った。

御白 夕花 >  
"そっか、なら仕方ないね"くらいの反応を想定していたら、予想外の言葉が返ってきた。
目線が合わせられて、赤い瞳が私を見据える。
どこか既視感のある光景。

「自分を識る……」

───今の私に何ができるのか。
それは、解き放たれた日からずっと自問してきたこと。

「前向きに……そう思ってもなかなか、難しいです。
 目を背け続けるのもよくないってことは分かってるんですけど……」

苦手意識っていうのはそう簡単に払拭できるものじゃない。
前向きな行動を起こしたくても、過去の記憶が邪魔をしてくる。
詳しく事情を話すわけにもいかず、その笑みから逃げるように目線を泳がせた。

武楽夢 十架 >  
「そうそう、自分について考えてみる。
 『自分探し』なんて言葉があるように、大変ではあるけどね」

俺だって自分のことはちゃんと分かってないさ、なんて嘯いて笑う。

「向き合うか、今は逃げるか。
 そのどちらも悪いことじゃない。 だって自分を守る行為だからね」

そうであって当然なのだ。
嫌で恐れていることを仕方ないとやることは、ただのストレスだ。

「今が無理なら、明日難しいと思わないようにするにはどうしようか。
 乗り越えるために、歩く道を少しずつ一つずつ考えればいいんだよ。
 俺はあんまり足を止める事を知らないから行動する事を考えちゃうけどさ」


けど足を止めて、休むのも悪いことじゃないよなと小さく呟いて。


「『悪い』先輩からはそんな事しか言えないかな」

そう言ってから赤と紅を重ねてから微笑んで、声をかけられなきゃシャワールームに向かい始めるだろう。

御白 夕花 >  
「……そうなんですか?」

俺だって、と言われてちょっと意外だった。
私が弱いだけで、他の人はみんな自分というものを持ってるものだと思ってたから。
だからこそ余計に焦っていたのもあって、少しだけ安心する。
逃げることと向き合うこと、どちらも自分を守る行為……そんなこと、考えもしなかった。

「今が無理でも、一歩から……わかりました。やってみます」

そう考えると、私の悩みなんて夏休みの宿題みたいなものかもしれない。
一気に全部終わらせるのは難しいし、かと言って何もしないでいると困るのは自分。
彼の言う通り、少しずつ進めていくのがベターなんだと思う。
言うほど簡単なことじゃないのは分かってるけど、少しだけ迷いが晴れた気がした。
頷いて、シャワールームに向かう背中を見送る……去り際の言葉に首を傾げて。

「悪い……? いい人だな、としか思いませんでしたけど……」

やっぱりどこか既視感を覚える。
けれど汗かいてるとこ引き留めるのも悪いと思って、戻ってくるのを待つことにした。

武楽夢 十架 >  
少ししてシャワールームから戻ってきて、さっぱりした様子。
ついでにロッカーにしまっていたと思われる荷物も持ってきているようだ。

「おまたせ。
 それじゃ、まあ、ゆ……あー」

思わず名前を呼びかけて、誤魔化すように後頭を掻いた。

「……今更だけど、俺は農業学科三年の武楽夢 十架。
 君は?」

すっげー今更感あって白々しいと思ってしまうのは、知ってるが故か……。
と内心では遠い目をしてしまう。

御白 夕花 >  
戻ってくるのを待つ間、自販機でジュースを買って飲んだりして時間を潰していた。
もう一つの宿題───裏切りの黒としての活動名が未だに決まらない。
他人に付けられた名前ばかりなのも嫌だと思って、自分で考えてきます! なんて息巻いてしまったせいではあるけれど。

うんうん頭を悩ませていると、名前を呼ばれた気がして顔を上げる。
そこにはシャワー帰りの先輩がいた。
お互いにまだ名乗ってないし……気のせいだったのかな?

「あっ、えと……普通科一年の御白 夕花です。
 色々とありがとうございました、十架せんぱい」

やっぱり、聞いたことのない名前。
初対面の人からアドバイスを貰ってしまって頭が上がらない。
最初に言葉を交わした時と同じように、ぺこぺこ。

武楽夢 十架 >  
「夕花ちゃんね」

そう言って、訓練施設を見ればまだ設定状態を維持したままであることに気づいて、
まだ利用者権限やら後始末をしてなかったことに気づいた。

「システム呼出、構築設定初期化。
 利用者権限変更、一年の御白 夕花へ譲渡」

少し声を張り上げて、
音声認識でこの部屋のシステムへと命令を伝える。

――設定構築:集合住宅地の除去を実行。
――利用者、武楽夢 十架より御白 夕花へ権限を移行。

そう機械音声が響くと灰色の町並みが解けるように床へと消えていく。
映し出されていた日中の青空のような天井も眩い電灯の照明が照らす天井へと変化する。
十分とかからず、作り出されていた世界はなにもない殺風景な空間へと戻っていった。

「また機会があればよろしく夕花ちゃん。
 街で会うことがあればなんかお菓子でも奢るよ」

なんて笑顔で手を振って訓練施設の出入り口へと向かった。

御白 夕花 >  
十架さんの掛け声ひとつで灰色の街並みが消えていく。
元の姿……真っ白な天井に戻っていく様が、少しだけ勿体無く感じた。
無機質なこの空間は、昔いた施設を思い出してしまうから。

「い、いえ……そんな、奢りなんて。
 でも、また会った時はよろしくお願いします」

ぺこりと一礼して、今度は出入り口へ向かうのを見送る。
ひょっとしたら十架さんに名残惜しそうな顔を見られていたかもしれない。
気を取り直してトレーニング用のホログラム装置に向き直った。

「えと……システム呼出、構築設定は───」

数分かけて元に戻した街並みが、再び展開されていく。

ご案内:「訓練施設」から武楽夢 十架さんが去りました。<補足:黒髪赤目/清潔そうなシャツとズボン/細身の青年>
御白 夕花 >  
風紀委員会から要求されたのは異能のデータ提出。
そのために壊れることのない訓練施設を選んだわけで、別に運動しに来たわけじゃない。
……だけど。

「不用意に恐れるな、かぁ……」

最近、似たようなことを誰かに言われたような気がする。
ずっと感じていた既視感の正体はそれかもしれない。
考えても答えは浮かんでこないけれど、今は分からないままでもいいかと思考を切り替えて。
───まずは軽く体を動かしていこう。
制服姿のまま駆け出して、ちょっとした垣根を一足で跳び越えた。

ご案内:「訓練施設」から御白 夕花さんが去りました。<補足:肩まである白い髪、紅い瞳。制服姿、鞄に盗聴器付き>