2019/09/18 のログ
ご案内:「保健室」に水鏡 浬晶さんが現れました。<補足:気怠げ美人な保健委員。>
水鏡 浬晶 > 「………………。」

嫌味に白いカーテンが、吹き込む風にひらりとはためく。
ここは常世の癒しの場所、学園内部の保健室。
うっすら漂う消毒薬や包帯の香りが、新鮮な空気に掻き回されて消えていく。

そんな清潔な場所で、机に突っ伏して寝ている者が居た。
彼は浬晶。ビジュアル以外はごくごく普通の、ただの一般高校生である。

ご案内:「保健室」に春寺谷 れもなさんが現れました。<補足:蒼髪のちょいギャル>
春寺谷 れもな > その保健室に、女子生徒が窓から侵入してきた。
何か紙束の入ったもっさりとした袋を抱えている。
突っ伏して寝ている存在を目にすると、その夕焼け色の瞳をニヤ~っと歪ませた。

「今日も寝てる~~」

挨拶にもならぬ言葉を口にしながら、保健室に無事侵入し終えた。
焚き火の準備をしている。

水鏡 浬晶 > 「………………。ん…うー……」

起きない。…時折、悪夢か何かでも見ているように身体を捩ったりしているが。
ついでにうなされている。

「…………ぅ゛……ぅわ……何やってんの春寺谷……」

どうやら紙の擦れる音で起きてしまったようだ。
めちゃくちゃ具合が悪そう。……あるいは機嫌が。

春寺谷 れもな > 「あ、起きた。今日は起きるの早いね~」

金属の板と棒を組み合わせ、小さな焚き火釜を作る。
「エンチャント!」という声が響くと、その焚き火釜はピンクでラメラメした物体に変化した。
これは魔法少女焚き火釜である。効果?効果は……なんか可愛い。

「今日も先輩の下駄箱にいっぱいお手紙入ってたんだよ。
 そうしたらね、なんかお芋食べたくなっちゃってね、じゃあ焼こっかなってね」

だから保健室にヤキイモしにきたそうです。

ご案内:「保健室」にカラスさんが現れました。<補足:黒髪赤眼の青年/外見年齢16歳167cm/1年生。黒い耳羽根と腰翼。首には黒くて大きな首輪。>
水鏡 浬晶 >  
「……ガサガサうっさかったから……
 またすんのそれ。ほんと屋内でやるのはやめとけ…?」

やたらと手際よくボンファイアを組んでいくJKを見つつ、重苦しい溜息を垂れ流す。
この呼吸だけで爽やかだった空間の湿度がちょっと上がった気すらする。

「……ああ、助かる。それは助かる…どんどん焼いていいぞ。
 諦めればいいのにどいつもこいつも……」

ブツブツ言いつつ乱れた髪を掻き上げて整える。
……やたらめったらと美人だ。
女性とも男性とも取れるし、女性とも男性とも言われれば信じてしまいそうな…
不思議で奇妙な、しかし美しい顔立ち。

春寺谷 れもな > 「ちなこれ中身って読んだことあるの?アキ先輩。
 めっちゃブツブツなんかゆってるけど聞こえてる?おーいおーい」

しゃがみこみながら火を窯の中に閉じ込め、手紙をどんどん焼いている。
途中で髪が邪魔に思えたのか、ツインテールをポニーテールに直して行動を再開した。
顔横に生えている赤毛を指でくるくるといじりながら、時々水鏡を見上げる。

カラス > 極力控えめに保健室の扉を開く音。
靴の音ではない足音がする。

「わ、わ……ぇ??」

そりゃあもう保健室でヤキイモをするような光景は、
目を疑ってしかりなのだが…。

僅かに怯えたような声の主に視線を向けるならば、黒。
黒髪に赤い瞳。耳や腰から生えた翼をなるべく小さく畳んでいる。

春寺谷 れもな > 蒼髪をざつなポニーテールにまとめた女子生徒、
もといチキンレース焚き火首謀者が、新しい来訪者を見上げた。

「やっほー。まだお芋焼けて無いよ~」

だって今、まさに突っ込んでいるところだから。
アルミホイルに包まれた短いサツマイモが、羽根を動かす魔法少女焚き火釜のなかへ消えていく…。

水鏡 浬晶 >  
「………やぁ、ここは保健室だよ。先生ならどこか別の場所じゃないかな。」

RPGの村人みたいな言葉を吐きながら、侵入者に目を向ける。
しかしそれもつかの間、深海のように陰鬱で美しい蒼の瞳は、あっさりと視線を外して伏せられた。

「無いよ、読んだことなんて。
 …どうせ読んでくれましたかとか聞きに来るだろ。
 その時に読んだって答えたら面倒だから、嘘も本音も言わずにはぐらかすんだよ。」

……相当に下駄箱の手紙に嫌な思い出があるようだ。

春寺谷 れもな > 「ねがちぶ~。恋の熱量は焼き芋の熱量に勝てなかったわけだね!」

焼いているのは本人では無く、赤の他人が勝手に燃やしているだけなのだが。
そんな他者への迷惑及び情報伝達の破壊を行っているにもかかわらず、女子生徒はニコニコしている。
お芋はいつ焼けるだろう。前にやったときは芋が大きすぎたので、今日は小さめの物を買い出してきたのだが。

ピンクでラメラメの物体をいじりながら、来訪者を見る。

もう一度見る。


「えっ、羽根?てゆか翼?もしかして堕天使?」

カラス > 焼けてないよーではない。無いのだが。

「保健室って火大丈夫でしたっけ…?」

困惑の青年は、ぽてぽてと緑の鱗に覆われた足で白いベッドまで行くと腰かける。
そう、休む目的で来たのだ。


「え、あ、いえ、天使なんてすごいモノじゃないです…。」

ぽんぽん出てくる言葉に押されるまま首を横に振った。

水鏡 浬晶 >  
「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったらまぁ、大丈夫じゃないと思うよ。
 なんとかなるんじゃないかな、知らないけど。見て止めなかったからにはキミも共犯だよ。」

クズ発言だ。
相変わらず机に突っ伏したままぶらぶらと足を揺らす青年…青年?は、なんやかんやで芋が焼けるのを待っている。

「どーせ顔に飽きりゃポイッと投げるんだからいいんだよ。そんなもんだよ、男も女も。
 そんな一過性の燃料なんか放り出しとけばいいのさ……どーせ顔がいい声がいいしか書いてないんだから。
 ところでココア飲む人は手ェ挙げて。」

のそりと立ち上がり、薬品棚の奥からココアの袋を引っ張り出した。

春寺谷 れもな > 「堕天使じゃないの?でも羽根綺麗な黒だよね~。
 異能とか?それとも魔法かなぁ………あっ、ココア。ココア飲む。砂糖3つ!」

顔の横で両指を3本立て、水鏡にアピールしている。
そのアピールをしたまま、ココアを練る彼の言葉にまた出たよくらいの顔をしながら、黒い来訪者に

「アキ先輩ね、このこれこの美人さんね?めっちゃねがちぶでしょ。
 でも顔と声が良い事は分かってるっていう発言してるのヤバいでしょ?おもしろいよね~。
 ラブレター勝手に焼いてるのに怒らないって時点でヤバニャだけど」

カラス > 「えっぇ……。
 でも俺、止められる力とか無いです…。」

あっという間に共犯者の出来上がりだぞ。
しかし、本人曰く止められないらしい。外見は人ではないのに。

ココアまで出てきた。青年はどうも億劫なのか手を上げていないが。
保健室(?)というよりは、家の中か何かである。

それにしても聞いている限りと燃えているそれはどうみても…。

「異能というか、生まれつきみたいなモノですけど…。
 お二人は、恋人なんですか?」

ラブレター焼いてるんだからそうなのかなと言わんばかりである。

春寺谷 れもな > 女子生徒、魔法少女焚き火釜の前で大爆笑である。

「どこを(にゃははは)どうみたら(あはははは)(げっほ)」

お腹を抱えて笑っている。
やかましい。

「違う違う、私は後輩。この人は先輩。保健室にサボりに来たらいたから、知り合ったみたいな?」

だっけ?どうだったっけ?
この女子生徒は途中から首を傾げてしまった。
傾げたまま、黒い来訪者を見ている。理由知ってる?くらいの顔で。

水鏡 浬晶 >  
「はいはいココア3つ…?あれ、砂糖……どうでもいいや砂糖3つココア3つね。
 ココアは芋と合うからな。」

死ぬほど適当な上に人の話を聞かない。
そのうち甘く香ばしい香りがふんわりと漂ってくる。

「対外評価だ対外評価。ぎゃーぎゃー周りが騒ぐからそういうもんだと思ってるだけ。
 ラブレターとか貰っても嵩張るだけだし。
 …あ。春寺谷、ココア2杯飲む?」

そんな事を言いながらホカホカココアを机に置く。そこでようやく、注文を間違えたことに気付いた。

「……は?……恋人ぉ?コレと?
 はは、笑える。保健室に火種持ち込んでボンファイアする女と恋人って。
 顔と体と同じくらい頭と性格も良かったら分からなかったけど。」

カラス > 「あ、違ったんですか…?
 てっきり燃やしてるモノと仲が良いように見えたので…。
 俺はあまり学校に来ないですし…。」

あわあわとして耳羽根がぴこぴこ動いている。
盛大な勘違いだ。体調の悪さがどっか行ってしまった気もする。
理由は知ったこっちゃないである。ええ、そりゃもう。

「後輩先輩…えーと…。アキ先輩で、春寺谷先輩?」

2人を交互に見る。ぱっと見で学年が分かるなら良いのだが。

春寺谷 れもな > 「体と顔がいいなら実質3分の2は良いってことじゃん!
 やったー半数以上が可!…あ、そおだ、ココア1つあげればいいんじゃない?ねえ、飲むでしょ?」

と、水鏡の言葉に返しながら、途中で話がぶっとぶ。
黒い来訪者にマグカップを指さして、ねえ飲むでしょ?飲めば?とピーチクパーチク騒ぐ。
さらに、ぼちぼちと焼き芋も出来ている。ココアもある。何より焚き火の目撃者である。
逃がしてはならない。賄賂を渡して共犯者に仕立てねばならない。

「うん、春寺谷れもな。私ははるしや・れもな~。でも1年生だよ?堕天使ちゃんくんは?」

そう名乗った女子生徒は小柄だが、女性として育つところはきっちり育っている。
有り体どころかストレートに申し上げれば、ぼんときてきゅっとしてそうでぼんである。

水鏡 浬晶 >  
「違う違う。まぁ腐れ縁っていうか、悪友っていうかそんな感じ…か?
 ぶっちゃけ分かんないや。」

揺らめくような笑顔を見せながら、ココアを啜る。
甘い。死ぬほど甘いが、それがまた美味い。焼けてきた芋もちまちまと食べていく。

「春寺谷のそのポジティブさは見習いたいと思うこともあるよ。
 ……ん?手を挙げなかったから飲まないと思ってたけど…せっかくだし飲むかい。」

そっとマグカップを差し出す。嫌なら良いけど、と注釈を付けながら。

「…ああ。俺は浬晶。水鏡浬晶……まぁ、アキって呼ばれてる。
 男か女かわからないから、当たり障りない渾名が付いちまってさ。」

カラス > 見た目も賑やかだが言葉も賑やか、押しが強い。

「え? あ、は、はい…。」

押し切られるままにココアを受け取った。共犯者の完成だ。
いいのか青年それで。
良くないと言えば良くないのだが、
否と言える度胸が青年には無かった。残念。

「お、俺はカラスって、呼ばれてます…。1年生です。」

膝上に腰から生えた翼をまとめ、
ひざ掛けのようにしてその上に腕を乗せている。

春寺谷 れもな >  
「アキ先輩のワンポイントはね、美人の笑顔でも言ってることがわりとゲスかったりするとこだよね。
 カラスちゃんくんは1年生?ってことは私と一緒じゃ~ん!よろしくね?」

ココアをちょうどよく冷ますまでに、焚き火釜から芋をぼろぼろと出してはテーブルの方へ置いている。
最初に出来た芋は既に水鏡に食べられていた。なんてことをするんだろう。
お芋にはバターが付かなければ完成しないというのに、せっかちさんなのだろうか。そうに違いない。

れもなはしわくちゃの顔をした猫が描かれたポシェットからバターを取り出した。

「今日も先生にバレずに焚き火が出来ました!いただきま~~す」

水鏡 浬晶 >  
「春寺谷のワンポイントはね、おつむの出来具合かな。
 ……そうか、カラスくんは1年か。まぁ、頑張りなよ。面倒事に巻き込まれないようにね。」

この学校はクセもパンチも強いからね、といいつつ芋をもそもそ。
若干実感が籠もっているのは気のせいだろうか。

「うわ、お前それポシェットに直にバター入れてんの…?
 あ、俺にも頂戴。後でチョコボールあげるから。」

カラス > 「でも仲は良さそうに見えますねお二人…。
 面倒ごと……。」

そう言ってカラスは小さく笑った。
水鏡の美貌については、綺麗だなとは思っているのだが、
種の違い故か、いたって普通に接しているつもりのようだ。

ココアを啜り、芋も貰っている。餌付け中。

ところで既に面倒ごとに巻き込まれているのでは?
まぁこの学園では面倒ごとのうちに入らない気もするが。

「ここ最近はお休みだったので、えーと、
 俺は一応キメラです… 一応ですけど…。」

春寺谷 れもな >  
「ううん、さっき休み時間をフルに使って買って来たやつ。ほら、パッケージあるでしょ!
 ポシェットはバターとかアイスを保冷しておくために作ったの」

お手製の保冷ポシェットだ。つまり、ガワのアップリケは自作なのだろう。
大変悲しい事に、このれもなに絵心は無いようだ。

「お休みだったの?カラスちゃんくん。羽根のキューティクル気になっちゃったみたいな?」

水鏡にバターをおすそ分けしながら、カラスにもバターの有無を聞いた。
一定量ごとに包装されている、使い勝手の良いバターである。手も汚れず安心だ。
とろりと溶けるバターと、よく焼けたホクホクのお芋は最強のコンビである。

ただし燃料はラブレターだ。何度でも確認すべきことである。

水鏡 浬晶 >  
「年頃の女子がなんとも色気のない買い物だこと…ってそれ保冷できるのか。便利だな…
 俺も今度似たようなの店売りしてないか探してみるか…」

ほぅ、と一息ついて熱い吐息を宙にくゆらせる。
その直後、吹き込む風で汗が冷めれば再び芋、ココア、芋。
……ポシェットの絵には、だいぶ怪訝な目線を向けた。

「まぁ別に嫌いってわけでもないし、知らない相手ってわけじゃないし。
 ……キメラ。へぇ、そんなのもいるんだな。まぁ魔獣が居るんだし、今更か。」

春寺谷 れもな >  
「えっ?!誰がキメラ?アキ先輩?」

今さらの反応である。

水鏡 浬晶 >  
「人の話聞けよキメラなのはカラスくんだよ芋女。」

辛辣。

春寺谷 れもな >  
「あっ、カラスちゃんくんかぁ。納得~~。
 アキ先輩は芋食べてる美人じゃないですか~。あれ?言葉の響きが良い……この差は一体……」

バターの欠片を口に放り込み、怪訝そうな顔でココアをすすった。笑顔になった。

カラス > 「はい、お父さんが身体の調整がしたいからって…あはは。
 先輩は確かに、人間の中では突出して美人さんですね…。」

2人のやり取りに思わず笑ってしまった。
おどおどしている様子だが、笑う時はあるのだと。

「キメラ、合成獣と言ったら、分かります…?」

そういえばさっきおつむがどうとか言っていた。
伝わってるのかちょっと不安になった。ココアを啜る。 

春寺谷 れもな >  
「キメラくらい分かるよ~!
 ちょっと話聞いて無かっただけだもん。大丈夫、いまは平気!
 それから、チョコボールは後でちょうだいね、先輩ね」

若干の危うさが、言葉の端々に感じられるかもしれない。
もぐもぐと口を動かしながら、カラスを上から下まで眺めて、そのつま先を見つめる。

「でも何とのキメラなの?お父さん?もキメラだったりする?」

水鏡 浬晶 >  
「ふぅん。…よくわからないけど、頑張れ。
 …よく言われる。」

その言葉に嫌味臭さはなく、むしろ自虐も浮いている。
少し不安げで怖じ気た笑顔ではあるものの、まぁ笑える心はあるのだと少し思った。

「心配されてるぞ春寺谷。」

こっちはちゃんと茶化している。ちゃんと茶化すとは何かと思えるが、まぁ茶化している。
ココアはとても甘い。

カラス >  
「お父さんは人間です。
 竜の研究をしてて…その、俺はいろんな竜と鴉のキメラ、です。」

ぽろぽろと情報が零れていく。
竜というには竜らしさはほとんど……緑の鱗に包まれた足ぐらいか、
それぐらいしか今の所は見当たらない。

何とのキメラ、という部分には、笑顔がすっと引っ込んでしまったが。
甘いココアを啜れば、表情を戻して

「お二人は、人間の方なら、異能か特殊能力をもってるんですよね…?」

春寺谷 れもな >  
「心配しなくてもだいじょーぶなのに……。
 ん、竜?え、竜ってドラゴンだよね?だから足元オシャレなんだね~~!」

爪とかデコりがいありそう~~とキャッキャしている。
カラスの笑顔が引っ込んでも、ニコニコしたままだ。ついでに芋もかじっている。
でもマニキュア沢山使いそうだなぁとか、そういう心配事ばかりをつぶやいてるのが聞こえるだろう。

「片足でマニキュア一本使うかな…?え?うん?」

「あ、異能あるよ!もう見てるかもだけど!」

と、れもなはピンクでラメラメな焚き火釜を指さした。
中の炎はすっかり消えて、灰の代わりに花びらのようなしゃらしゃらしたものが詰まっている。
なんだかよくわかんねえ物体だな、という感想もやむなしではある。

水鏡 浬晶 >  
「そういうところが心配されてると思うんだけど。
 ……へぇ、竜。珍しいね。だから何だってわけじゃないけどさ。」

ずずず、とココアを啜り、芋の最後の一口を口に放り込む。
なんだかんだ焼き芋は美味い。秋の味覚の真理である。

「…あぁ、異能?まぁあるけど大したもんじゃないよ。
 こんな風に、ちょっと触れてる液体を操作できるだけ。」

そう言って、飲みかけの冷めたココアに指を突っ込む。
……指を引くとココアは、まるでゼリーのように指が突き刺さったまま引き抜けた。
そしてそのまま、ココアの塊を口に含む。若干艶めかしい。

春寺谷 れもな >  
「今日のサービスシーンが出た」

アルミホイルをくしゃくしゃ丸めながら回収しつつ、水鏡を見上げて言う。

水鏡 浬晶 >  
「何の話だよ」

指をティッシュで拭いてからゴミ箱にシュート。


入らなかったので拾って捨てた。

カラス >  
彼らに偏見類が無いことに内心、心底安堵する。

「異能……春寺谷さんのは、えっと…?」

確かになんだこれであった。
どういう異能なのかぱっと見では分からない…。
いや、説明されても理解が難しいかもしれないが。

「お二人とも、ちゃんと使いこなしてるんですね。」

わぁ、と水鏡の行動を見ている。
羨ましいな、という表情をしている。

春寺谷 れもな >  
さあ、何の話でしょうとばかりにトボけながら、焚き火釜を持ちあげる。
小さくピュルリン☆という音がした。気のせいでは無い。

「かぁいーでしょー。そこそこ使えるようになったからこそ、なんだけど~…。
 カラスちゃんくんは魔法少女知ってる?アニメとか漫画とか見てる?」

焚き火釜をおろし、そなえつけの箱からペンを勝手に拝借。
それを片手にふにふに振りながら。

「私の異能は物質への効果付与ってやつらしーんだ。
 世間で言う魔法少女と呼ばれる概念?にそったデザインと効果になるように、物質に一時的な上書きを行うってヤツ!」

カラス >  
「魔法少女……???
 家に小説や本はありますけど…。」

さっぱり知らぬ顔である!!

水鏡 浬晶 >  
「すっとぼけてんなぁ……まぁ俺のは汎用性高くて便利だからね。
 クソマイナーなやつ引いた奴はまぁ、頑張ってくれって感じ。」

水を操作してマグカップを洗いつつ、さらっと毒を吐いた。

「…お前、そんな結構な能力だったのな。物質の概念改変とか…
 ……あ。」

ちらっと窓の外を見る。

「悪い、俺は先に帰る。じゃあね。ごゆっくり。」

そう言って逃げるように保健室を出ていく。
彼は見た。先生が一人、部活で怪我をしたらしい女生徒を連れてくるのを……
つまり、芋バレ(焼き芋がバレること)間近であった。

要は蜥蜴の尻尾切りである。クズだ。

ご案内:「保健室」から水鏡 浬晶さんが去りました。<補足:気怠げ美人な保健委員。>
春寺谷 れもな > しゅしゅしゅと逃げていった水鏡の後姿を見送って、数秒。

「はれ?チョコボール、チョコボールは?!…あああ、もらいそこねた…」

貰い損ねたお菓子に思いをはせつつ、しょぼしょぼとカラスに向き直る。
手元で焼き芋後のゴミをささっとまとめて小さい袋につめ、こっそりとゴミ箱に捨てた。
なお、それが先生にバレたかは別である。どちらにせよ、れもなはケロっとしてるだろう。

「……ええとなんの話だっけ?魔法少女、あれ?魔法少女知らないかあ!」

カラス >  
「あ、はい、お気をつけて…?」

この後もしかしたら巻き込まれるかもという考えは無い。
全く無い…そして魔法少女の知識も無い。
逃げるように去って行った水鏡に首を傾げて耳羽根がぴこと動いた。

ところでココアを飲んでいたマグカップはどうしようか。


「魔法を使う女の子って、別に珍しい事じゃ無いですよね?」

サブカル知識が無く、しかもこの世界では珍しい存在ではない。
大変容後のここ日本ではよくあるお話。

春寺谷 れもな >  
「今はね!そう珍しくないんだけどさ。
 アニメや漫画、ライトノベルとかゲームとかのサブカルチャーってやーつ。
 あれらでは"可愛い衣装に変身して魔法を駆使する女の子"のジャンルがあるんだよ~。
 
 異能や魔術みたいな複雑な制約はナシでね、魔法もキラキラぴかぴかしてるの。
 私の異能はその変身する魔法少女を能力として付与できる。

 だから~、このペンも~……『マジック☆エンチャント!』」

ぱっぴゅーん!と空気がポップコーンのように弾ける音がする。
れもなが持っていたペンに、どこから沸いたか細切りのリボンやガラスのようなハート、
何故か懐かしさとワクワクを感じさせるような光の粒がきゅりり~んと集まり――

「はい、この通り!みたいな?」

ただのペンは魔法少女属性が付与された、太陽色の可愛いペンとなった。
ほとばしるインクを表現しているのか、ペンの周りはしゅるしゅるぽわぽわと光の液体じみた光がくねる。
ペン先には金の金具に収まった赤い宝石が輝いていた。

カラス >  
カラスに馴染みが無いのはさておき
とても馴染み深く懐かしい、由緒正しき魔法少女ペンになった。
日曜の朝にやっている感じの見た目である。

「すごいキラキラになりましたね…?
 これ、ずっとこのままなんですか?」

膝にあった黒翼がベッドの方へ周り、
翼の幹の部分で身体を支えるようにして、
覗き込むように身を乗り出す。

春寺谷 れもな >  
太陽色の魔法少女ペンは、微かにオレンジの匂いをさせている。
カラスがよく見えるようにとれもなが差し出せば、小さな花弁がほろほろと宙へ消えた。

「でしょでしょ!キラキラのつやつやペンになったよね!
 ずっとこのままだったら良かったんだけど、私が寝るか気絶するかするとダメなんだぁ…。
 ポン!って戻っちゃう。私が解除!ってやっても戻るんだけどね~」

カラス >  
差し出されたペンを指先でつつこうとする。
僅かに爪が長い。

「意識を保っているのが条件なんですね…。
 これを持ったら、魔法が使えるんですか?」

素直な魔法では無い分興味津々である。

しかし、二人には先ほど水鏡が目撃した先生が迫っているのだった。

春寺谷 れもな >  
「ううん、魔法を使えるようにするには決めセリフが必要なんだ。
 これはペンだからどういう色のビームになるかなぁ……」

試してみようかと決めセリフを考えていた時、れもなの何かの足音を聞く。
あ、これは誰か来たなと流石に察したのか、ペンを武器化するのはやめておいた。

「姿を変えるだけならエンチャント、武器化するなら決めセリフまで。
 それが私の異能発動の条件かな?あ、触って無いとダメっていうのもあったや…。
 見たかったらそのうち見せてあげるよ~~。スマホある?連絡先交換する?」

カラス >  
「台詞…??」

と、首を傾げた辺りで、確かにこちらも足音を聞いた。
そういえば自分は休みに来ていたのだった。

とはいえ、温かい飲み物と会話で随分と緩和されたのだが。

「あ、はい。持ってます…。
 結構条件のある能力なんですね。素直な魔法と違って…。
 不思議だなぁ…。」

不思議であるからこその魔法魔術ではなく異能なのだが。
ズボンのポケットからごそごそとスマホを出してくる。
長い爪で少し操作しづらそうだ。
ちらちら見える画面を目で追うなら、登録数は少ない。

春寺谷 れもな >  
「お、あるねあるね~~。てゆか指の爪も長いじゃん!うらやましー。
 私ちょっと丸っこい爪でねー、カラスちゃんくんみたいにシュっとした爪にするの大変なんだよねー」

画面見せてくれたらこっちから設定やっちゃうよ?と自分の端末を出す。
言いながらカラスの操作をソワソワ見ているので、勝手にスワイプスワイプしそうであるが。

さらに。
先生と生徒が入ってくる分には気にしない。ココア?飲んだけど作った人は自分では無い。
手当に忙しいようだし、何か深い追及が来る前に逃げておこうかな…とは考えている。
カラスと連絡先を交換したらバイビーの気持ちだ。

カラス >  
「え? あ、俺は切っても切ってもこの長さが一番短いみたいで…。
 ええと、じゃあ、お願いします…。」

たどたどしい使い方なので、最終的に操作は春寺谷任せになった。
アドレス帳を覗くなら、学校の先生数件と「おとうさん」の登録が見れる。

春寺谷 れもな >  
そういえば、おとうさんの外見を聞きそびれたなと考える。
キメラがキメラを育てたりするのだろうか。
ただ、なんだろうか、このカラスという存在は、どうにも笑顔が消えやすい話がいっぱいありそうだと、れもなは思った。
距離感がわかったら、またそのうち聞こう。先生がココアの匂いがするって周り見てるし。

「ほいほいほいっと、はい!れもなで入れたから~。
 勝手に先輩のも入れちゃおうかな?って、とりあえずメルアドだけアキ先輩のも登録しといたよ~~」

これが個人情報の流出である。

カラス >  
確かお父さんは人間だとカラスは言っていたので、
それ以上の情報は現在の所無い。学園内にいるのか、そうでないかさえも。

怯えたような表情、つまりがちな声、遠慮の塊のような心。
春寺谷の予想は当たっているのかもしれない。


「あ、ありがとうございます。」

同年代のアドレスの登録が増えたことに、
声色が嬉しそうだった。僅かに笑っている。片方は勝手な情報漏洩であるが。

先生の足音が近づいてきている。

春寺谷 れもな >  
「じゃあ、体調?いいときにメルメルって~~。
 体調悪くしやすいみたい?だし。私もそろそろ逃げるから、お大事にね!」

そう言いながら先生と生徒に気取られないようにマグカップを2個、そっと流しに置く。
ペンの魔法少女付与を「キラキラおしまい!」と解除し、元あった場所へスポンと差し戻した。

「じゃあねカラスちゃんくん!風邪ひかないでね~~」

カラス >  
そうだ、そういえば色々と怒られる要素が満載だった。
とはいえ少し体調が上向いたのもあってか、
彼女を引き留めて怒られることも無いなと思ったのか、
それとも彼女の賑やかさに押されたのか。

「あ、はい。ありがとうございます。お気をつけて…。」

そう言って彼女を見送ったのだった。

ご案内:「保健室」から春寺谷 れもなさんが去りました。<補足:蒼髪のちょいギャル>
カラス >  
そうして、先生に見つかったのはカラスだけである。

お咎めがあったかどうかは、彼の性格を先生が鑑みたかどうか…。
とはいえ、体調が良い訳ではないことで、
それもいくらか緩和されることだろう。

――こうして、新しい出逢いがまた、始まったのだった。

ご案内:「保健室」からカラスさんが去りました。<補足:黒髪赤眼の青年/外見年齢16歳167cm/1年生。黒い耳羽根と腰翼。首には黒くて大きな首輪。>