2020/08/15 のログ
ご案内:「異邦人街」に武楽夢 十架さんが現れました。<補足:黒髪赤目/橙色のツナギの上半身を腰に巻いてるシャツ姿/細身の青年>
武楽夢 十架 > 肌を焼く茜色を横にして、一度荷車を道の端で止める。
今日はいつもの落第街のスラムで炊き出しをした帰り道。
毎度の事ながら落第街と呼ばれる領域を出るまでは皆、人がいいことに護衛だと付き添ってくれたりする。

そんな彼らの優しさに守られて一人でありながら、それなりの活動が出来ている。
……ま、『組織』の人の護衛がない訳じゃあないんだろうけど。

しかし、一気に帰ろうにも夏はキツい。
行きと違って嵩張る大量の食材がある訳でもないが、何かを引いて歩くってだけで結構体力を使う。

「なんでか、前より使い勝手は良くなったけど……」

色々あった『七月末』。
一度キッチリ『殺されたり』、中々得難い経験をしたものだった。

その結果、『死んでから』起きたときには異能が『使い勝手は良く』なっていた。

主に、操れる量が増えて、認識できる範囲が広がった。
他にも、細かいところは色々あるが、何かあの時に『欠けていた』ものまで……。


「しかし、余ったな……トウモロコシ」

単純に持って行き過ぎた。
いや、今年の一年が気合入れて数を作りすぎた結果、部員内で処理しようってなったので貰ってきた……
のだが、他にも食べるモノあるなか何本もトウモロコシを食べる人はそんなに居なかったので余った。

ご近所さんに配ろうかな、なんて考えて水筒の水に口をつけてポケットから携帯端末を取り出す。

武楽夢 十架 >  
携帯端末で情報を眺めるのはいい暇つぶしになる。
中でも、学園の講義の内容のアーカイブなんかは面白いのもあっていい。

色々な講義が連なる中で、ふと目にとまる文字があった。

―― ヨキの授業を受講していない者も参加は自由。
―― 一緒に絵を描いてみたい者は、以下の準備を!

思わず、眉を顰めてしまった。

「結局調べてなかったが……この人ほんとに教員だったのか……」

思わず、水筒を落としそうになった。
自分が今どういう顔をしているかは想像に難くない。 苦虫でも噛み潰したような顔をしてそうだ。
なんというか、苦手な類の人だった。

そんなことを思った。

芸術ね、芸術……最近、芸術方面の人と少し縁があるもんだなとは面白くはあるが。

端末にメールが一通届いているのに気がついた。

「え、釣り大会で同点上位か……先輩たちは、なんか漁扱いされて失格したとか言ってたし嬉しいような……
 嬉しいか……まあ」

トロフィーと少額ながら商品券か。
悪くないな、と画面をみて柔らかく微笑んだ。

武楽夢 十架 >  
そうだ、と思いメールアプリを立ち上げてポチポチと画面に打ち込んでいく。

「よし、送信と」

相変わらず、知ってる連絡先は少ないし交友関係は部活動のメンバーばっかりだなぁとは思いつつ。
この溢れんばかりのトウモロコシを送る先を一つ思いついてメールしてみた。


「今夜も冷房なしじゃ寝苦しそうだなぁ……」

思わずそう愚痴りたくもなるような、夕陽の暑さにため息一つ。

武楽夢 十架 >  
夕陽も空の向こうに消えて地面や建物に、夏の熱だけが残る。

「さて、のんびり帰るか」

しばらくは、トウモロコシが常に食卓に姿を見せそうだ……。
そんな杞憂があった。

荷車は揺れる。

ご案内:「異邦人街」から武楽夢 十架さんが去りました。<補足:【乱入OK】黒髪赤目/橙色のツナギの上半身を腰に巻いてるシャツ姿/細身の青年>