2020/07/26 のログ
ご案内:「【イベント】常世島共同墓地」に山本 英治さんが現れました。<補足:アフロ/喪服(乱入歓迎)>
山本 英治 >  
俺の親友、遠山未来の墓は二つある。
一つは俺たちの地元に遺骨と共に。
一つは名前だけ刻まれてここに。

「よ、未来」

軽く手を上げて。最近、忙しくしていたせいで。
少し、砂埃に塗れてしまったようだ。

「すまないな、すぐ綺麗にするよ」

優しく語りかけながら、丁寧に墓石を掃除する。
水をかけて、柔らかい布で拭って。
もう、それくらいしか親友にしてやれることがないから。

どこまでも憂鬱な青空の下で。蜩の声だけが響いている。

山本 英治 >  
ここに来る途中で、遠山のおじさんと……
未来の父親と会った。
あの日、未来は通り魔に刺された。
その犯人を殺したことで娘の死の真相を知る機会すら奪った俺に。
おじさんは複雑な感情を抱いているらしい。

「未来、すまない……今日はおじさんも来るはずだったんだが」
「俺に怒って帰ってしまったよ………」

寂しそうに笑って、墓石を掃除する。
彼女には謝らなければならないことばかりだ。

「未来も父親に会いたかっただろう?」

未来の両親は。失意を抱えて今も本土で暮らしている。
たまに島に来て墓石を掃除しているらしい。
俺は彼らの絶望と向き合うことを放棄した卑怯者だ。

山本 英治 >  
墓掃除を終えて、線香の用意を始める。
家に仏壇がないし、束を一つ使い切らなければならないのがなかなか難しい。
線香ってのは、すぐに湿ってしまうからな。

「未来、色んなことがあったよ」
「悪友ができた。角鹿建悟って言うんだ」
「カタいところがあるやつで、何度かナンパに連れ出してるんだけど」
「これがまた成功しない………あいつのほうがまだ芽がある」

「小さな女の子の命を守ることができたよ、ニーナっていう子さ」
「彼女……なんか一度死んだことがあるらしくて」
「その辺り、気になるんだけど………事件が忙しくなって聞けてない」

線香に火を灯して。
さぁ、次は樒の準備だ。

ご案内:「【イベント】常世島共同墓地」に日月 輝さんが現れました。<補足:身長155cm/フリルとリボンにまみれた洋装と靴/目隠しをした少女>
日月 輝 > 青い空。
白い雲。
何処かで蝉が鳴いている。
風に木々が揺れて、少し遠くに潮騒が鳴る。
そういっただけの静かな場所。

墓所は静謐にある。
ただ、景観は他所とは異なるものだった。

様々な人が、様々な様式で、様々な埋葬をされているのだから
和洋折衷なんて言葉に収まる訳も無く、お墓の博物館めいている。

「随分と広いこと……」

言葉の通りに墓所は広くて、色々があった。
訪れる者もいないのか西洋様式の荒れた墓石。
綺麗に整えられ、線香の煙も新たな東洋形式の墓所。
一見すると面妖な木製の墓には、錆一つ浮かない剣が突き立っていたりもする。

「あの、少しお時間宜しいですか?」

目的のものは見つからない。だから、道すがらに見かけた男性に後ろから声をかけた。
入道雲のような髪型が中々キマっている。そんなことも思う。

山本 英治 >  
「羽月さんっていう……研究者の方にお世話になってるよ」
「一度、命も救ってもらった。お礼、言わなきゃいけないなって思ってるよ」
「……なんでか知らないけど、滅多に同じ場所に二人はいない空間に二人でいたんだ」
「それが気になるよ、未来」

樒を切って揃えて、備える。
思ったより、水が足りないかも知れない。

声をかけられて振り返る。
アイマスクをした、少女。
深い緑の髪が美しい。

「はい、なんでしょう」

立ち上がって彼女に微笑みかける。
墓地で見るには、服装が華美だが。
それがかえって異界の存在を思わせる。

日月 輝 > 語り掛けながらに入念に掃除をしている彼。
誠実そうに見えたから声をかけた。それも事実。
思い出を偲んでいるだろう一時に水を差す。それも事実。
迷惑そうな顔だってされようものだけど、果たして彼は親切だった。

「お忙しい所に御免なさい。ええと……推定された方々用の墓所を探しているのだけど」

御存じですか?と首が傾ぐ。そういったものがあるのかも判らないことを訊ねる。
推定された死者。MIA。公安委員会や風紀委員会、治安維持機構の方々にままあること。

あたしがそういった場所を訪うには理由があった。
不可思議な森の中で遭遇した怪異。
清潔感のある黒髪のツーブロックは記憶に残る者。
『西塔 繁』と記された学生証。
夢のようで夢ではない事実に、少しくらいは何某かをしても良いだろうと思ったから。

「……御家族ですか?」

二つ目の問い。
丁寧に整えられつつ墓所は、青年に近しい誰かが眠っているのだろうと思われたから、つい。

山本 英治 >  
彼女の問いに少し悩んで、顔をある方向に向ける。
俺の故郷では墓地で何かを指してはならないことになっている。

「多分、あちらだと思うのですが」
「何分……広い墓地ですので。少しお待ちいただけたら」
「俺が探すのを手伝いますよ」

目の前の墓石を見下ろす。
汗が流れたのでハンカチで拭う。

「親友です」

そう答えられることの、なんと心が救われることだろう。
親友だ。誰に何を言われても、捨てられるはずがない。
遠山未来は、俺の親友なんだ。

墓石には、遠山未来と個人名が刻まれている。
彼女だけの墓。遺骨もないため、永久の孤独がここにはある。

日月 輝 > 彼の向く方を視る。
やはり様々な墓所が在るという事しか判らない。

「わ、本当ですか?すみません助かります。余り墓所には明るくなくて」

あたしはこの島に来て日が浅い。知り合いが眠る墓も無い。
男性の好意は素直にありがたくって、言葉が少し跳ねてしまう。

「……親友。ですか」

それから少しだけ言葉が下がる。
遠山未来と彫られた墓石から眠る故人を推し測ることは出来ない。

「園内を歩き回っている時に色々なお墓を視たのだけど……」
「荒れているものから整えられているものまで色々があって……うん、でも、そうね」
「綺麗なお墓だと思うわ。だから、素敵な方だったんでしょうね」

ただ丁寧に整える誰かが居る。
親友だと言う誰かが居る。
それだけでも、生前の故人の人柄はそれとなく予想する。

山本 英治 >  
蜩が鳴き続けている。
青空の向こうで、太陽は輝いている。
陽光は深く……墓地に影を残している。

「いえ、俺は風紀ですので。困っている人を放ってはおけません」

樒のバランスが悪いかな、と手を伸ばして。
線香の香りが鼻孔をくすぐった。

そして、彼女の言葉に。
どうしてだろう、どこか俺は懐かしいものを感じたんだ。

喋り方も容姿も全然似ていないのに。
彼女の感想には、遠山未来を感じる。

「明るくて、透徹した雰囲気の」
「秋の日差しのような少女でした」

青空を、今は仰いで。
夏の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

日月 輝 > 会話を交えながら墓石に近寄る。上から下に、下から上にと磨かれた所を見て唇を緩める。

「綺麗で可愛らしい。うん、そういった感じ。……ちょっと不躾な言葉かしら。御免なさいね」

そうして悪戯を咎められた子供みたいに舌を出しかけて──止める。
彼が深く呼吸をして、言葉を選んでいるのが解ったからでもあるし、風紀の人だと判ったからでもある。
つまりは、その口から語られる故人は、親友は、そういった物事に巻き込まれた誰かだと予想する。

「……秋かあ。秋、いい季節よね。といってもあたしは全部好きだけど」
「春に闌け、夏に清く、秋に揺れ、冬に耽りてなんとやら」

ハンドバッグから線香とマッチを取り出して、火を点けて墓所の作法に則って拝む。
それが済んだら大柄な彼を見上げて、意地の悪い魔女みたいに唇を曲げた。

「ふふ、遠山さん。今頃誰!?とかびっくりしていたりして」

山本 英治 >  
「そういう感じですよ」
「亜麻色の長髪を……今でも思い出します」

謝らなくていいです、と小さく手を振って。

「良かったな、未来……線香、俺以外からももらえて」
「ははは、風紀という外に出ることの多い委員の関係上」
「春か秋が好きですかね……」

彼女と同期するように、俺も手を合わせる。
死者を想う。でも、いくら想っても。
死んだ人は死に続けるだけ。それがわかっていても、俺は。

「……かも知れませんね」

目を細めると、涙が流れた。
それは自分でもどうしようもなく。

「失礼」

そう先に言って涙を拭った。何度来ても、悲しみは薄れてはくれない。

日月 輝 > 「亜麻色の……」

目隠しの裏で瞳を閉じる。瞼の裏には誰も浮かばない。
けれど、隣で手を合わせる彼は違う。思い出はきっと其処にある。

「初めまして未来さん。あたしは彼の新しいガールフレンドでーす──というのは冗談として」

穏やかな空気。停滞して、心地良い空気を掻き混ぜるように抑揚を跳ねさせて空咳をする。
ハンドバッグから魔術研究科配布している耐熱護符を取り出して、彼に差し出す。

「それじゃあささやかに快適な夏をあたしから。……と言っても普通に配られてましたけど」
「これ、便利ですよ。あたしも今付けてますけれど、汗一つかいていないでしょう?」
「これから案内をお願いしてしまうのだから、御礼のようなもの。みたいな」

全身フリルとリボンだらけの恰好を示すようにして得意顔。
泣いている彼のことなんて見ないフリをする。失礼だなんて言葉も潮騒と蝉の声に紛れた。そういうことにするわ。

「……それで、風紀委員の方なんですよね。それならあたしの話はある意味早いのだけど……」

ハンドバッグから学生証を取り出す。
常世学園の3年生『西塔繁』。清潔感のあるツーブロックの黒髪の男子の写真が載った物を彼に見せる。

「この方、御存じですか?」

あたしが不可思議な森で遭った、怪物と成り果てた誰か──が持っていた学生証だ。

山本 英治 >  
「……そんな冗談、未来が困惑しますって」

いや、喜ぶかな。驚くかな。どうだろう……
俺は未来の全てを理解しているわけではないから。
護符を受け取ると、目を丸くして。

「こんなのあったんですね……俺の今までの苦労は一体」

言いながら喪服のポケットに忍ばせると。
確かに、涼しかった。

「ありがとうございます……あ、俺は英治です。山本英治」

涙をぐしぐしと拭って。
正義を信じて、傷ついてきたけど。
親友の前では、弱さが出てしまう。

差し出された学生証を手に取り、首を左右に振る。

「お力添えできず申し訳ない、知らない方のようです」
「俺も一年ですからね……三年生は、色々と知らなくて…」

最後にもう一度、未来の墓に手を合わせて。

「探すの、手伝いますよ」
「一人より二人が良いし、俺はこの墓地慣れてますし」

そう言って穏やかに笑った。

日月 輝 > 「夏の天気のように判らない。という事でひとつ」

困惑するのかもしれない。
喜ぶのかもしれない。
驚くのかもしれない。
怒るのかも?それも判らないし解らない。
でも、護符を受け取って瞳をまあるくする彼の中に遠山さんは生きている。
そういったことが判る。それはなんとも好ましくて、言葉が揺れる。

「山本さんね。あたしは日月輝。お日様の日にお月様の月でたちもり。それに輝くであきらって読むの」

自己紹介も和やかで、山本さんが知らないと言うなら少しだけ安心もしたわ。
知り合いであったなら、学生証の彼を説明するのに言葉を選ぶ必要があったに違いないのだから。

「助かります。あたしったら運がいいわ。
「ええと、推定死者……MIAと言うのだっけ。そういった方用の合同墓所みたいなところ……なのだけど」

行方不明で、きっともう死んでいる人達を祀る所。
どうしてそんな人間の学生証を?と問われたら些か都合が悪いのは否めない。
ともあれ、今は穏やかに笑う山本さんと一緒に道を歩く。

山本 英治 >  
「これは一本取られました」

未来。俺の親友よ。俺は足掻いているぞ。
お前が生きてって言ったから。俺は生きているぞ。
だから、未来………輝さんの冗談にも、何か言ってくれよ。

「わかりました、輝さん。天体の光のような、素敵な名前ですね」

二人で墓地を歩く。
途中、携帯デバイスを起動しながら。

「あ、ここですね。MIAの合同墓所」

運が良いのか、悪いのか。数十分歩いて見つけた、そこは。
とても寂しい場所だった。とても悲しい場所だった。

日月 輝 > 「ふっふっふ。でしょう。あたしは輝く女。カワイイの体現者……」

墓地を行きながらに言葉が交じる。
褒められたらそれはもう得意気に言葉は踊り、足取りが歌うように回る。

「……じゃなくて、ええと。あたしも一年生なので、山本さんも言葉、改まらずとも大丈夫ですよ」

それを正して言葉を正して山本さんにお伺い。
風紀委員とあって丁寧な方なのかもしれないけれど、同学年であるなら畏まることもないのかなと思うから。

「……此処が、そう」

そんな他愛の無い会話が続いた先は寂し気な所。
荒れ果てているわけじゃあ無い。
誰かが整えた痕跡は確かにある。
でも、それは遠山未来さんのお墓のように、誰かが心を砕いたものではなくて。
そうしなければいけないからそうした。そうしたものを感じさせる所だった。

「沢山、あるのね」

大きな墓石には敬称略で名前が刻まれている。
日本の、海外の、恐らくは異世界と思しきもの。
様々な名前があって、その内の一つにはマジックペンで「まだ生きてる!」と書き殴られていた。
隅には、真新しく彫られた西塔繁の名。

「……ご冥福を祈るべきなのかしら……ねえ、山本さん。これは夢みたいな話で誰にも言っていないんですけど──」

笑わないでくださいね。
そう前置きして口を開く。
先日、自宅の玄関を開けた途端に奇妙な森に紛れ込んだこと。
そこでは人を用いた怪物達が口々に死を願いながらも襲い掛かってきたこと。
あたしは、異能の力でもってそうした森を駆け抜けたこと。
最後は光に触れて、玄関に戻って来たこと。
夢かと思ったけれど、手には差し出した学生証を握っていたこと。
怪物の中に、学生証の彼がいたこと。

「……どう思います?」

隣の山本さんを見上げた。

山本 英治 >  
「そうかい? それじゃ、遠慮なく」
「カワイイを体現するのも大変だ、梅雨明けの夏日に護符を使ってその洋装なのだからね」

並ぶ墓石は、それぞれが悲しみに満ちていた。
仕方がなかった。だから死んだ。
そんな悲痛が目に見て取れる。

「……死んでいい命なんて、あるのかな…」

そんな益体のない言葉でも、口にしなければやってられない。
悲しみを削り出したものが、墓として並んでいるように感じた。

「それは………」

怪物、それは。あの世界だ。
俺と羽月さんがいた。あの世界のことだ。

「俺も同じ場所にいたよ、異能を使って切り抜けたけど」
「多くを殺して、生き残ってしまった……」

手に持っている桶から、西塔繁の墓に水をかけた。

「きっと彼らも。西塔繁さんも。生きて帰ってきたかったんだ」

真新しい墓だから、砂埃を払う程度になるけど。
墓掃除を始める。俺がそうしたいと願ったから。

「でもできなかった」

日月 輝 > 「あたしはあたしの為にカワイイんですもの。だったら頑張らなきゃ」
「月並みだけど……生きているんだもの」

頑張って、生きて、死に満ちた森を駆け抜けた。
山本さんの命の優先度を問う言葉に、命に貴賤はきっと無いと想いを込めて呟く。
人の命を奪うのは良くない。どんなにキレても、それはすまいとあたしは決めている。
でも、森の中では、無我夢中で西塔繁の形をしたものを蹴り抜いた。
それでもあれは生きていて、呪うように懇願してきた。
目隠しの裏で瞳を閉じる。──幸い、瞼の裏に誰かが映る事は無かった。

「……そうなの!?」

横合いからの言葉に身を乗り出す。
同じように異能を使って切り抜けたと言う彼に驚く。
夏夜の夢の如きものが結ばれて、形になるならこうもなる。
妖精の仕業であるなら、あたしはきっとその妖精を引っ叩いたに違いなかった。

「……あたしが見た時は。彼はもう手遅れだったわ」

墓掃除を始める後ろ姿に言葉が放られる。
縫い合わされた瞳。
削ぎ落された鼻。
耳まで裂けた口。
損壊した右腕に歪に括られた刃物。
誰かに弄ばれた末路。

「……頭を砕いても、見る間に治って。ああ、御免なさい。貴方も巻き込まれたんだものね」

言葉を切って、山本さんに並ぶ。
ハンドバッグからタオルを取り出して、真新しい墓石を拭う。
ただの自己満足。でも、自己満足って大事だもの。

「この島。良くも悪くも不思議なことばかり。晴れているのに豪雨になったり」
「玄関を開けたら不気味な森だったり……折角の夏休みだもの。これから楽しいことだってあっていい筈なのにね」

大きくため息を吐く。

山本 英治 >  
「……ああ、生きてるんだからな」
「生きてるなら、生きてるなりに動かないと」

死人のように生きることを、決して親友は許してはくれないだろう。
どれだけ殺めても。
どれだけ痛んでも。
どれだけ苦しくても。
生きろと親友が言い遺したから、俺は。

「ああ、島に歪みが発生していて、突然その空間に繋がることもあるらしい」

墓を拭う。全部の墓は掃除できない。
それでも、自己満足のために。俺はこうしたかった。

「手遅れだった。殺してくれ、痛い、楽にしてくれって…」
「だから、殺したのかと考えると。苦しい」

墓掃除を手伝ってくれる隣の少女に、微笑んだ。
日月 輝。カワイイを追求していて。優しくて。変わった服装で。生きている。

「あるさ、楽しいこと」
「あるとも………見つけるとも」

そう自分に言い聞かせて、立ち上がる。
よし、綺麗になった。

日月 輝 > 「そうそう、その通り。でも休むのは死んでからでいい──なんてワーカーホリックは駄目よ」
「風紀委員って忙しそうだけれど、休む時には休んでいきましょ」

島に歪みが生じていると言われて唇を尖らせる。
手遅れの話になってもそうしたまま、冬のように微笑む彼を見る。

「昏い話をして御免なさいね。でも、あんな森があたしだけのものじゃあなくってよかった」

立ち上がる山本さんと入れ替わるようにしゃがみ、墓石に学生証を置く。
名前しか刻まれていない墓石に、彼がこの島の学生であった痕跡を刻む。

「よしっと。……うん、それじゃああたしは用事も片付けたし帰ろうかな」
「山本さんはどうする?」

満足そうに唇を歪め、問う。

山本 英治 >  
「ありがとう、輝さん」
「それじゃ、早速休ませてもらおうかな」

喪服のポケットに手を突っ込んで。
茜色が混じってきた空を見上げる。

「アルキサボテンって知ってるかい?」
「二本の足で歩くサボテンなんだけど……なかなかその料理が美味くてね」

最後に、綺麗になった墓石に手を合わせる。

「隣に君みたいな綺麗な子が一緒に居たら、もっと美味しいと思うね」
「どうだい? 一緒に異邦人街でサボテン料理でも」

そう言って歩いていく。
帰り道にふと、見た親友の墓は。
綺麗な蝶が。音もなく佇んでいた。

日月 輝 > 「ええ、早速夏休み──はい?」

アルキサボテン。なあにそれ、と言いたげに言葉の最後が跳ねた。
聞けば異邦人街にそういったお店があるのだという。

「そんなお店あったんだ……この島……良くも悪くも不思議だらけね……」

揃って手を合わせ、揃って道を歩く。
潮騒の音は遠く、緩やかに言葉が交ざる。

「でも、そうね。面白そうだし御一緒させていただこうっと」
「隣に素敵な髪型の人がいるのなら、きっと美味しいでしょうから」

アフロヘアーの維持にどれ程の努力が必要かを知っている。
あたしがカワイイに心を砕くように、彼も示す何かに心を砕いている。
サボテン料理の感想は、きっと日記の一頁。父母に送る便箋の一幕かもわからない。

ご案内:「【イベント】常世島共同墓地」から山本 英治さんが去りました。<補足:アフロ/喪服(乱入歓迎)>
ご案内:「【イベント】常世島共同墓地」から日月 輝さんが去りました。<補足:身長155cm/フリルとリボンにまみれた洋装と靴/目隠しをした少女>