2020/08/03 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神代理央さんが現れました。<補足:大きめのTシャツ/スキニーデニム/金髪紅眼/顔立ちだけは少女っぽい>
神代理央 >
神代理央は謹慎中である。
形式的なものとはいえ、一応本庁への登庁は控える様に命じられており、警邏のシフトにも入っていない。
自宅で事務仕事は行っているものの、夏季休暇という事もあって火急の書類が溜まっている訳でも無い。
ならばどうしようかと、暫し悩んだ末に。
歓楽街第一分署――所謂『常世渋谷分署』のエリアを視察に行こうと思い立ったのが朝方の事。
謹慎中だし、普段の堅苦しい恰好では目立つか、と家中探し回って"常世渋谷っぽい"服装を引っ張り出し、いざ訪れた流行の最先端。
「……人が…多い……」
グロッキーだった。
夏季休暇舐めてた。何かよく分かんない服装の若者がいっぱいいる。
己の服装に視線を落とす。無地の白いTシャツに鮮やかなスキニーデニム。
質は良いものだが――この街では、なんというか、ダサい。
「……服、いるかなあ…」
恋人と出歩くに、ダサいなどと周りの人間に思われたくはない。
"今時"の洋服がいるだろうか、とちょっと悩みながら、ストリートを彷徨う金持ちのボンボン。
神代理央 >
とはいえ、そういったファッションに詳しい訳でも無い。
人込みをすり抜ける様にどうにか歩道の端まで辿り着くと、端末を開いてそれっぽいワードで検索してみる。
教えてグー〇ル。
「……コーチジャケット…ジョガーパンツ…プルオーバー…」
何語だ。
せめて日本語にしてくれ。
というか画像を見た感じなら今のファッションで良いのではないだろうか?
駄目か。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に高坂 綾さんが現れました。<補足:ショートパンツ(ハイウエストデザイン)/Tシャツ(黄色)/羽織った白のロングシャツ/ヒールの高いサンダル/スカーフがあしらわれたバッグ/度の入っていない小さめ眼鏡/赤いリボン>
高坂 綾 >
「あの」
思わず声をかける。
常世渋谷にTシャツにスキニーデニムで来るのは余程の事情があるに違いない。
その上でファッションを口にしながら調べ物をしている。
何かあるに違いない。
「何か探しものでしょうか?」
よく見たら無地の白Tシャツだった。
端正な顔立ちなのにこのSOZAI、マヨネーズがぶち撒けられている。
せめてこう……なんかこう………あるはず……………
メンズファッション詳しくないけど……
神代理央 >
「……む?」
投げかけられた声に、不思議そうに視線を向ける。
視界に映るのは、何というか…こう、常世渋谷っぽいおしゃれな女子。こういう女子を何というか、同僚が口にしていた単語を覚えている。
ウェーイパリピ。
SNS映えとかいう良く分からないものを追求する伝道師とかなんとか聞いた事がある。
高い美意識と共感性を持ち、琴線に触れたモノを写真や動画で直ぐに拡散し、世界に平和を広めようとしているのだとか。
その上で、投稿したモノへの評価の数次第では死に至る事もあるという。恐ろしい事だ。
「…探し物、というか。この常世渋谷に相応しい衣服が欲しいなと思っていたんだが…。如何せんそういうのは知識が無くてな。
どうしたものかと途方に暮れていたところだよ」
――この街では、もしかしてファッションに疎い者に職務質問とかしたりするのだろうか。
だから分署の連中も、制服ではなく私服…!
同級生の一人が言っていた。
『常世渋谷は【MEN’S BON-BON】や【ERON】を読み込んで取り入れていかないと死ねるよNA!』
つまりはそういうことか、と。
ちょっと警戒した様子で少女に視線を向けているだろうか。
高坂 綾 >
「……あなた…………」
震える。なんで警戒されてるのか。
私だって常世渋谷に来るまでにしもむらからUNISIRO、そこから異邦人街ファッションと段階を踏んだのに。
いやでも私も逆の状況だったら警戒する。
それでも言わなければこの悲劇は終わらない。
「初対面で言うことじゃないかも知れません…」
「ヒノキの棒でラストダンジョン前の街によく来られましたね…?」
目眩がする。私だって今年の三月までど田舎で垢抜けない服装をしていた。
だからこそ、言わなければならない。
「人は変われます、今すぐ変わりましょう、私が服を見立てます」
「というか、その顔面偏差値の高さでヒノキの棒振り回しているのを見ると心が折れそうです、ガチで」
『小説家になれ!』の大好きな作品にそういうのある。
レベルが高いので初期装備でラストダンジョンに挑んでみた。(タイトル)
「今すぐそこのメンズファッションの店へどうぞ」
据わった目で指差す。EX-COLLECTIONの専門店。
あれならばこの人の戦闘力に見合った装備になるはず。
神代理央 >
「何かこう…今時のRPGは異世界転生してから最初の街からラスボス直して無双するのが流行?と聞くし…」
「勇者に過剰な装備を渡すと国庫の負担になるから教育上良くないって言うし…」
ヒノキの棒て。
人が家中探し回ったとこしぶっぽいファッションをヒノキの棒て。
自覚はある。自覚はあるがこの無地のTシャツだって高いのだ。
その辺の布切れより高いぞ。ドワーフを主食にするハイデビルシープの毛から作られてるんだ。化学繊維の方が着心地良いけど。
「新興宗教の勧誘か何かか?そんなに急に変化を促さないで欲しいのだが?」
「……ヒノキの棒…。いや、ヒノキの棒だって価値はあるし…酒場で仲間無限に増やして剥いで売れば金策になるし…」
神代少年はドラ〇エ派である。
Ⅲは感動する程面白かったが個人的にはⅤも一押しだ。
「……まあ、見立ててくれると言うのなら、有難く提案は受け入れよう。素人が攻略本も無しにラストダンジョンを攻略出来る訳など無いしな」
とはいえ。彼女の提案は渡りにタイ〇ニック。
ファッションなど『取り敢えず高いブランドのスーツスタイルで揃えとけばいいじゃん』で通してきた己に取っては、得難い増援になるだろう。
警戒心を解き、ちょっと安心した様な笑みと共に彼女の提案に同意する。
良く考えたら安心する要素無い様な気もするが。
高坂 綾 >
「最強無敵になりたいなら装備くらい吟味してください」
「勇者なら勇者なりの格好をしてください」
「イケメンにはノブリス・オブリージュがありますよ…」
「ファッションに常に気を使うという高貴な義務が…」
私が女じゃなかったら焦燥感で顔を掻き毟っている。
それくらいの衝撃はあった。
無地の白Tて!! 例えヤサイ人の戦闘服であっても赦されない!!
「あなたが装備を剥いで別れた仲間は一人一人が個性を持った一つの人格なんですよ…?」
いや、プレイスタイルで説教をするのは良くなかった。
それはそうと早速行かなければ。
店に入ると店主が私の据わった目つきに短くヒッて言った。
失礼な。邪魔をしなければ命まで取りはしないのに。
「白の標準よりちょい長めのTシャツ、肌触りが良いタイプと見ました」
「ならばこれです、ブルー・グレーのサマーニット」
適当にサイズを見繕って彼に合わせる。
「ニット特有の編み目が上品な印象を与えてくれるので、大人っぽく見せたい時にピッタリ」
「麻とアクリルの混紡だから重ね着OKの清涼感…」
「ブルー系のカラーは今年のトレンドなのでそのTシャツの上から着るだけで」
「あなたのファッション性能が三倍になります」
口の端を持ち上げて笑う。
あ、いけないこれ悪魔がするタイプの笑みだ。
「とはいっても抜け感が過ぎるので常世渋谷の定番ファッションに過ぎません」
「今すぐ買ってこの場で装備できる鎧です」
神代理央 >
「あ、ああ。分かった。うん。何というか…すまない」
ノブリス・オブリージュて。
此の街は洋服一つ選ぶのにもそんな義務が発生するのか。
というよりも、私はイケメンではない。だからその義務を背負いたくはない…が。
恋人の横に立つ時に、人に笑われる様な服装はしたくはない。
「…名前を『あいう』とか『とうぞく15』とか『オーブようのしょうにん』とかにしてたのは申し訳ないと思っている…」
でも序盤の金策になるし。致し方ないし。
ともあれ、彼女と共に訪れたアパレルショップ。
やたらと店主が怯えている。…そんなに酷い恰好だったのだろうか…。
「さまーにっと」
サイズを合わせられ、取り敢えず受け取る。
「今年のトレンド」
「定番ファッション」
「今すぐ買ってこの場で装備」
最後の言葉だけ親近感がわく。というかサマーニットってなんだ。
ニットはニットだろう。ウィンターニットとは言わない癖に!
「……えーと。取り敢えずそれを買って着ればいいのか?
予算は余り気にしなくていいから、こう、良い感じにして欲しいんだが」
良い感じ。クライアントから言われると殺意が沸く言葉だが、他に言い様が無い。
藁にも縋る、という程では無いが、頼りになるのはこの少女だけ。
困った様に眉尻を下げながら、御願いしてみるだろうか。
高坂 綾 >
「ははぁん、予算潤沢……さてはデート用の服を探しに来たとか?」
「ならばこちらも全身全霊でいかなければ礼節に欠くというもの…」
私の体からフォトジェニックオーラ(写真映闘気)が発生する。
田舎者から脱却するために死ぬ気でファッション誌を読み込んだ者が稀に纏う闘気だ。
「はい、これを買ってそのTシャツの上から着てください」
「次はこのリラックスリネンシャツはどうでしょう?」
コンパクトな襟のこの白リネンシャツは黒のスキニージーンズと合わせても抜群。
とはいえ……多少、白黒になりすぎないために工夫は必要。
「次はこのブルー系のストライプシャツです」
「リネンシャツと合わせてデート向けセット装備と考えてください」
「飛竜くらいなら狩れます」
その上で足元を見る。
超、良い靴履いてるなぁ。
でもここは常世渋谷なのだから。
「次に、靴ですが……着ている服が鎧なら靴は武器と言えるでしょう」
「足元を見る、というと悪印象のある言葉ですが…靴を見ない人なんています?」
「今までの装備を踏まえてレザースニーカーを白か黒から選んでください」
そう、これは試練。人が持つ可能性を探る大いなる試練なのだ。
フォトジェニックオーラが私の周囲に陽炎として景色を歪ませる。
「どちらを選んでも大人カジュアル好印象スタイリングコーデの完成です」
神代理央 >
「…おお、良く分かったな。うぇーいぱりぴな人間とは、観察力も優れているのか」
「…その、気合を入れて頂くのは大変ありがたいのだが…うん…」
ちょっと怖い、とは流石に口に出せなかった。
何この子。SNS映えとは、かくも強者の如きオーラを必要とするものなのだろうか。
『落第街で可愛い犬を見ました』とかでこつこつイイネを集めちゃ駄目なんだろうか。駄目なんだろうな。
「あ、これ良いな。余りラフ過ぎる服装は確かにどうかと思っていたんだ」
色々なコーデに合いそうなリネンシャツ。
小さな襟が程良くカジュアルらしさを出している。
此の侭モノトーン系統で攻めるのかと思えば、SNS闘士はまだ止まらない。
「ふむ。これで一式、という訳か。単体でも使い勝手がよさそうだが、合わせる事によって魅力が増しているのだな」
「…飛竜は狩れないだろう。一体君の中で私は何処にデートに行く事になっているんだ?」
時折発言が愉快になるなこの子。
とか思いながら、吟味される足元。
このコーデで行くと、今履いている靴は確かに堅苦し過ぎる。
かといって、スニーカーとか持ってないしな…と思っていれば。
救いの声は、当然の様に投げかけられる。
「…ほう、レザースニーカー。スニーカーに対するイメージが変わるな。良い物だ」
「無難なのは黒であろうが…。リネンシャツと色を合わせて上下の統一感をある程度は出したい。白にしておくとしよう」
「大人かじゅある好印象すたいりんぐこーで。
……何だか良く分からんが、確かに最初と比べると大分良い恰好になりそうだ。というか、買って着ようと思う。
今の恰好が恥ずかしくなってきた。うむ」
単語の意味は分からずとも、彼女が選んでくれたコーデ一式は此の街を歩くのに相応しいモノ。
己の趣味に合わせた様に程良く綺麗めコーデで整えられているのも良い。ラフ過ぎる格好は、ちょっと苦手だし。
るんるん、と言った様子でポケットのマネークリップから無造作に取り出したのは、鈍く黒く反射するカード。
限度額?いっぱいだよいっぱい。
高坂 綾 >
「パリピではないですぅ……『大人の余裕』をテーマにしたコーデなだけですぅ…」
「えっ何か?」
顔が怖かっただろうか。
いけない。これではSNS映えから遠ざかる。
フォトジェニックオーラをコントロールして小さく蒼い炎をイメージする。
「これらを黒スキニーと合わせればIラインシルエットという縦に視線が巡るタイプのコーデになります」
「男性的、かつ知的で大人なイメージを出していきましょう」
顔が女性的だから、とは言わなかった。
さすがにそこまで頭のおかしいヤバい女にはなりきれない。
というか初対面の相手に声をかけて服を選んでいる時点で十分ヤバい。
「髪型も良いスタイリストさんがついてるみたいですし、十分かと」
「飛竜はモノの例えですよ、例え話です」
唇に指先を当ててクス、と笑って。
それから向かいの靴屋を指差す。
あの店でD-Extractのスニーカーが売っていたはず。
「レザースニーカーはちょっと窮屈らしいので」
「店員さんに言って爪先に指一本分の余裕があるものを選んでください」
さすがの私も男物のレザースニーカーは履いたことがない。
「今の格好だと少々勿体ないかと思ったので……差し出がましい真似をしてごめんなさい」
そして出されるブラックカード。
オオウ、ブルジョワジー。
「後は腕時計を『できるだけ目立たない』革のベルトのものをつければサイドウェポンは万全です」
「まぁ……見るからに資金は潤沢そうなので装飾品の心配はしていません」
ヨシ! 彼もいつか出るのだろう……フォトジェニックオーラが。
神代理央 >
「む、違ったのか?風の噂ではこう……意味もなく夜のプールに集まったりとか、観光名所で風景より自分の顔の方が面積多い写真撮ったりとか……君も、そういう感じなのかと思ったのだが」
常世渋谷にいる女子って皆そんなものだって同僚が言ってた。
「…いや、別に何でもない…気合が入ってるな、って思っただけだ…」
纏うオーラが小さくなった…様な気がする。
というか何で服屋でオーラを放つ必要があるのでしょうか。
これが現代社会の闇。SNSに踊らされた若年層の末路…。
違うか。
「ふむ。視線の誘導、というのは大事と聞く。百貨店の商品陳列も、視線の巡る順番を考えていると聞く故な」
「男性的、知的……うむ。素晴らしいイメージだ。見る目があるじゃないか」
そのイメージを選ばれた理由なぞ露知らず。
求めていた己のイメージを的確に表現されれば、機嫌も右肩上がり。今なら違反生にも優しく出来そう。ぶっころがはんごろになるくらいには。
「……むう。ぱりぴの例え話は良く分からんな。やはり若者の流行というのは押さえておくべきなんだろうか」
己の中では、小さく笑う眼前の少女=パリピである。
その認識が正しいのか正しく無いかはさておき。
「爪先に指一本分、か。成程、了解した。そういうサイズ感も大事なのだな」
ふむふむ、と耳を傾けるその姿勢は宛ら講義を受講する学生の如く。
ゲーム初心者が上級者に装備一式のイロハを教えて貰う様なもの。
というか実際そんな感じ。飛竜狩りに行くらしいし。
「いや、構わぬよ。むしろ此方こそ、色々とアドバイスを貰って助かった。私一人では、此処迄スムーズに服を選ぶ事など出来なかっただろうからな」
にこにこと笑いながらシュババ、とやって来た店員に商品をドン!
カードをぽい。
忍者の様な俊敏さで会計にシュバる店員を横目に、彼女にぺこりと頭を下げよう。
本当に助かった。此の侭ではヒノキの棒でデートに行くところだった。
「出来るだけ目立たない…。成程、気負い過ぎぬ様にしなければならないという事か」
「潤沢、という程でも無いが…まあ、気にしなくても大丈夫くらいのものだ。それに、金があったところで君の様に洒落た服装が出来なくては、此の街では意味が無いだろう?」
フォトジェニックオーラを纏う修行は始まったばかり…。
今日買ったコーデを自撮りしてアップロードしても、きっとイイネ!はそんなにつかない…。
けれど、登り始めたばかりなのだ。このフォトジェニック道を…。
「……ああ、そう言えば。
凄く今更だが、私は二年生の神代理央、という。色々と付き合ってくれた君に、名前も名乗らぬのはな」
本当に今更だ。
高坂 綾 >
「ナイトプール! なんたる破廉恥な概念…」
「私は自分らしく着飾ることを覚えたおしゃれ一年生ですよ」
自分も失礼なことを言ったけど相手も失礼だなぁ!!
イーブン!!
「それはもう。常世渋谷でトレンドを追うというのは命懸けですから」
大げさ。大げさだったわ。
でもそれくらいの覚悟でファッションを覚えてほしい。
せっかくキレイめな顔立ちをしているのだから。
「この上で装飾過多になるとどこに目を向けていいのかわからないコーデになりますからね」
「阿呆のコーデは阿呆としか見られません、デートなら尚更です」
さすがに目の前の彼が変なTシャツを着るとまでは思っていないけど。
「だからパリピじゃ………」
もうなんか抵抗する力も弱くなってきた。
もうパリピでいいのかも知れない。パリピ忍者。
「コーデで威圧感を出したら女の子が可哀想ですよ」
「お金持ちだからこそ最良最善を選ぶ気遣いがあるべきです」
相手が名乗るとくす、と笑って。
なんだ、先輩じゃないか。
「一年の高坂 綾と言います」
「これで知り合いですから、次に常世渋谷に白Tで着てたら叱っちゃいますよ?」
冗談めかして言って。
それから外に出ながら小さく手を振った。
「デート、楽しんでくださいね神代先輩。それじゃ!」
熱気の迸る外に出ながら私はこうも思ったのだ。
彼がファッションを改めても、第二第三のファッションモンスターが現れるに違いないと。
私の戦いはこれからだ!!
神代理央 >
「え…ナイトプールって破廉恥なのか…。そうか…」
良かった。彼女を誘わなくて良かった。
また一つ賢くなった気がする。不要な知識とか言わない。
「…常世渋谷は中々に恐ろしい所だな。いや、最初声を掛けられた時は、結構真面目に服装の偏差値の低さを責められるのかと思ったぞ」
此方は至って大真面目。
こういう時こそ、制服のありがたみが分かる。
常世渋谷を制服でうろつくのは中々に勇気がいりそうだが。
「シンプルイズベスト、という事か。参考になる」
「デートなら尚更……なるほど。気を付けよう」
彼女が話しかけなければ、この常世渋谷は完全にデートコースから外れていただろう。
しかし、新たな装備を得た今ならば、彼女を此処に誘う事も出来る筈だ。多分。おそらく。きっと。もしかしたら。
「パリピではないのか。では…うーん……お洒落な女の子?」
ネーミングセンスなど無い。
普通に普通の感想しか出てこなかった。キャピキャピガールとか言わなかっただけ褒めて欲しい。
「…そうか。確かに威圧感を出すのは厳禁だな。相手の事をファッションからも思いやらねば…」
「いやはや、常世渋谷の女子の意見は本当に参考になる。皆、君の様に親切であれば良いのだが」
と、小さく笑い返して。
「…フフ、そうだな。次会う時は、高坂に及第点を貰える様な男子を目指すとしよう」
「ああ。高坂のおかげで少し自信がついた。今度会う時は、是非何か礼をさせてくれ」
と、立ち去る彼女を手を振って見送った。
親切な女の子も居たものだ。ああいう子を守るために、仕事を頑張らないとな、と決意を固めつつ。
外に出ていく彼女を見送るタイミングで、シュババと現れる店員。
予想よりちょっと増えた手荷物。
「……分署に行くのは、また今度で良いか」
流石にショッピング帰りです、みたいなノリで訪れるのは良くないだろう。
何より、白Tで訪れたら分署の奴等絶対笑う。それはなんかおこ。
というわけで。
ファッションのひよことなった少年は、鼻歌交じりに帰路につくことになる。
此れが休日というものか――と、休日ではなく謹慎中の少年は、実に満足していたのだとか。
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から高坂 綾さんが去りました。<補足:ショートパンツ(ハイウエストデザイン)/Tシャツ(黄色)/羽織った白のロングシャツ/ヒールの高いサンダル/スカーフがあしらわれたバッグ/度の入っていない小さめ眼鏡/赤いリボン>
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から神代理央さんが去りました。<補足:大きめのTシャツ/スキニーデニム/金髪紅眼/顔立ちだけは少女っぽい>