2020/08/23 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に武楽夢 十架さんが現れました。<補足:黒髪赤目/街にいても違和感のない洒落た服装/細身の青年>
武楽夢 十架 > 雨の降る常世渋谷の昼過ぎ。

――常世渋谷で雨だとしても、すぐ隣の歓楽街・異邦人街も雨だとは限らない。

そういう都市伝説のような話がこの街にはある。
曰く、日本国にある本物「かつて」の渋谷に繋がっており空はその影響を受けているのだとか。
超常気象研究をしてるとかいう研究チームの話では局所的に発生した雨雲であり、そのような「過去」に繋がるようなエネルギー力場の存在は観測していないとしている。
最も、その調査も有志の学生研究チームの結果なため、出来れば多くの研究機関との強力の上で再調査が望まれる。

故に、街は境界。

全ては一つの大きな都市伝説に収束していく。

そんな過去の残照を、ここで見せられている泡沫の夢のような街とはかつての誰がいい始めたのかは不明。
しかし、常世学園草創期からこの街は続いている。 夢にしては長過ぎる。

「――だとしたら、この街は過去を知り生きる者たちの祈りによってあって。
 雨は、失われた景色への嘆き……だとしたら―――ああ、いや……待ち合わせ時間か」

横断歩道の切り替わりを知らせる電子音が涙する街に響いて、止まっていた人の流れが再動する。
常世渋谷駅の構内で購入した透けているビニール傘を手に白線の上を歩いて向こう側へと渡る。

「よう、《鳩》。 雨の日は元気がないな」

今は利用されていない過去に存在したメガバンクに似た名前の看板を掲げたままのビルの軒下に隠れるように立つ者/《組織の仲間》にそう声をかけた。

武楽夢 十架 > 邂逅はそんなに長くなく、僅かな言葉と身振り手振り。
主に常世渋谷から落第街を監視するのが、十架と同じように街の中から情報を仕入れる《鳩》の仕事だ。
《鳩》はあまり、他の幹部と今の所接触があまりないようだというのと、普段は厚着だったり素顔を隠しているので性別は不明。
同じ組織の奴を相手に下手な探りを入れるのは、十架の趣味でもない。

「あれだな……姫様も似たの使ってたけどメッセージ系の魔術……ちゃんと覚えてみようかな」

メッセージ系の魔術とは『メッセージカード』や『メッセージボード』なんて通称で呼ばれる魔術で、魔術により立体画面のようなものを作り出し文章を記載し保存する魔術。 自分という記憶媒体に保存するか魔石になんかの魔術媒体に刻むことで外部保存する魔術だ。 極めれば記憶している目に見た映像を挿入し保存することも可能らしいが、生半可な魔術師には出来ない技術だとか昔世話になった講義の先生が言っていた。

「さて、どうしたもんか……」

ほんの僅かな時間のためにこうして動き回る事は珍しくはないが、用を終えれば暇になるというもの。
買い物に歩き回るのもいいが、その辺の喫茶店に足を伸ばすのも悪くはないか。

さして、広くもなく雰囲気はあるが人影のない喫茶店。
いつだか《鳩》とはじめて顔を合わせた際に利用した店が目に入る。

気がつけば、どんな店だったかと記憶を探りながら足を伸ばしていた。

武楽夢 十架 > 傘立てにビニール傘を落としては、足元に目をやり、ズボンの裾が濡れている事に気づいて少し眉間にシワを寄せた。
木製の程々に装飾された戸を引いてみれば、扉の上に付けられた鐘が鳴り響く。

店内は、焦げ茶色をメインとした夜は、品揃えを変えればバーにも使えそうな雰囲気の良い店内。
装飾として展示される洋書だったり辞書のような本がこの場の空気をより楽しませようとしている。
狭い店内ではあるが、それが逆にいいなとあの頃とは違いのんびりと店内を見回して思った。
僅かに人はいるが混んではいない。 もしかすると《鳩》のお気に入りの店の一つなのかも知れないな、なんて勝手に思った。

カウンター席よりテーブル席のソファーがある方が個人的には一息つけて嬉しいが……と店内に視線を改めて巡らせる。

武楽夢 十架 > どうやら、テーブル席は空いてるようだ。
店員さんとしてはお一人様にはカウンター席が嬉しいかも知れないが、悪いなと思いつつそんなに柔らかくもなく程よい硬さのソファーに腰を下ろして一息。

「いらっしゃいませ、こちらメニューです。 今はランチメニューもご利用いただけますので宜しければ御覧ください」

店員さんが水とメニュー表をテーブルに置いて、最低限伝えると軽く腰を折って去っていく。
店内に僅かに流れる音楽は、落ち着いてはいるが決して静かすぎないB.G.Mで、のんびりとした一息つかせてくれそうな空気に心が解されていくようだ。

メニュー表を開けば、
最初に並ぶのは、珈琲を先頭にして区切るようにドリンクと銘を売ってドリンク郡が並ぶ。
珈琲にはどうやら並々ならない情熱がありそうだ。

武楽夢 十架 > 『陽月ブレンド』という店名らしい名を冠した珈琲を先ずは決定。
ちらりと、メニュー表に刻印された文字をみれば『陽月ノ喫茶 Menu』と文字が並んでいた。

「お待たせしました」

という声がカウンター席の方でして思わず目を向ければ、デミグラスソースのオムライス。
あれは美味しそうだ。
しかし、ランチメニューも考えればセットでお得なのはパスタやフレンチトーストをはじめとした甘味。
懐に余裕はあるとしても、コストパフォーマンスがよいメニューには心奪われてしまう。
それに、わざわざ写真付きで掲載されているペペロンチーノ。
常世島の獅子唐を使ったと書かれたこのメニューは、たまには自分の作った野菜を美味しく調理されたものを食べてみたいという気持ちが勝ってしまった。

「すみません」

そう声をかけて、注文を置いて裏へと戻ろうとする店員に声をかけた。

武楽夢 十架 > 注文をして待ち時間。
外食でよくあるこの時間。
いつもなら、携帯端末を手に情報を眺めては色々と考えるとところではあるが、
今日は、この店の空気に浸るのも悪くもない。

激しい雨だった訳でもないが、手足の先は濡れてしまい不快だったが、空調の効いた場所に来るとやや寒く感じるものだ。
しかし、店内に漂う珈琲の香りと厨房からやや聞こえてくる調理音がこれまで感じていた不快感を払拭してくれている気がする。

思わずこの空気に満たされ、目を閉じた拍子に意識まで手放すところだった。
そう、頭を振っているところに店員さんがやってきた。

武楽夢 十架 > 面白いことに珈琲の香りが目の前にあると不思議と目が冴えてくるようだ。
思わず、何も考えずに手を伸ばして一口。

あ"ー……なんて声が漏れそうになるのを堪えて笑みを浮かべて珈琲の入ったマグカップをテーブルに戻す。
今度からここで待ち合わせにしないだろうか。
アイツの事だから毎回別の場所指定なんだろうなぁ、とか考えつつフォークを手にとった。

ペペロンチーノは、綺麗に小高い丘という風に皿の上にあって、中央にはバジルと共に赤い獅子唐が一本。
しかし、本命の辛味はコイツじゃないことは視えている。
黒い輪切りにされた獅子唐。 コイツのほうが危ない。
森の中に隠れる殺人鬼だ。

武楽夢 十架 > しかし、皿の上ではすべてが平等。
細切りにされたベーコン、君の甘さが救世主だ。
熱していたのか料理の熱でかオリーブオイルの風味も感じることが出来る。

美味い。

ここは、いい店だ。
これまで余り来てなかったのが惜しいくらいだ。
二年ほど前に来た時は正直飲み食いしたものに味を感じてなかったから、勿体なさを感じるな。

武楽夢 十架 > 悔やまれるのは、これだ。
こういう喫茶店の軽食は、小腹を埋める程度の量しかない。
これだけ食欲を刺激する味をしていながら。
しかし、ここでガッツクのはお店の雰囲気に浸る自分という幻想を壊してしまう。
ここは珈琲で……。

ああ、そういうことか。

上手く出来ている。
ペペロンチーノの油で包まれた口の中が珈琲で濯がれていくようだ。
この口の中の味の切り替わりを味わってしまうと満足していないとは言えなくなってしまう。

くやしいが、ここはご馳走様だ。
お腹の不満が満たされてしまった。

武楽夢 十架 >  
冷めきる前に珈琲を飲み終えて、一息。

カウンター席の人が煙草をふかしているのを見て、
この雰囲気でこの食事の後に更に口だけで言わず肺の中まで香りを変えるとはなんとも冒涜的だ。

「ごちそうさまでした……」

常世渋谷の隠れ名店、陽月ノ喫茶。
見事なお手前でした。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から武楽夢 十架さんが去りました。<補足:黒髪赤目/街にいても違和感のない洒落た服装/細身の青年 【乱入歓迎】>