2020/08/27 のログ
ご案内:「第一教室棟 ロビー」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/某有名オンラインRPGのロゴ入り黒Tシャツ、グレーのつなぎ、焦茶の革サンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 炎天下の昼間。
折り畳み式の日傘を差したヨキが、ロビーへと入ってくる。
手に提げたビニル袋を見るに、買い出しから戻ってきたところらしい。

日傘を畳んで、手近なベンチに腰を下ろす。
凍らせて持ち歩いていた麦茶のペットボトルは程よく溶けて、流し込んだ喉をすっきりと冷やしてくれた。

「ッはあ……生き返る……」

Tシャツの襟元から風を仰ぎ入れながら、心地よさそうに一息。

ヨキ > 汗を拭き、空調の風に当たっているうちに身体がだんだんクールダウンしてくる。

「……ふう。さてと」

ロビーには他にも歓談に興じる生徒たちが数組あって、和やかな空気の中にある。
傍らのビニル袋の中からツナマヨネーズのおにぎりを取り出して、包装を剥がす。

今日はここで昼食を摂ることにしたらしい。
海苔を齧る、小気味よい音。

見知った生徒が、ヨキに向けて挨拶しながら通り過ぎる。
手を振り返しながら、大きな口でおにぎりを食べる。

ヨキはどこにでも居る。生徒の側からもすっかり慣れた光景だ。

ヨキ > 端末があれば画面を見てしまうし、ノートがあれば書き物を始めてしまう。
それらの仕事から離れて一息つくのに、このロビーは丁度良かった。
頭の中で、絶えず考え事をしていることには変わりないのだが。

ヨキセンセーこんにちは。

聞いて聞いてあのね。

こないだのことなんだけど……。

ちょっと聞いてよひどいんだよ!

ありがとーヨキ先生!

行き交う生徒たちが、代わる代わるヨキに声を掛けてくる。
ヨキはそんな風にして、誰の悩み事や相談もよく引き受けた。

無論のこと、おにぎりの減りは遅い。

ご案内:「第一教室棟 ロビー」に羽月 柊さんが現れました。<補足:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>
羽月 柊 >  
ヨキに近づく生徒、遠巻きに見る生徒。
誰もが彼を知っているという訳ではないし、関わらないこともある。

表にも裏にも関わるということで、彼を敬遠するモノもいるだろう。


生徒の数がまばらになる頃、彼らに混ざるように、白を二つ連れた男。
時折羽月先生、と男に声をかける生徒がいる。

時々立ち止まって、顔見知りになった生徒と言葉を交わす。
まだ己の授業を持っていないにせよ、学園に教師として来るようになれば、
こうして生徒との会話をする場面も出来るようになった。

その生徒との会話が終わり、学園に何かしらの用事があったのだろう男は、
ロビーを通り過ぎようとして…友人の姿を認める。


「…あぁ、ヨキ。君か……相変わらず賑やかだな。」

……今回は、柊の方から声をかけた。
今までは、相手の方から声をかけられることが多かった。

ヨキ > 波が去ったところで、残りのおにぎりを食べ終える。
麦茶を飲んでいる最中、知った顔がやって来ることに気が付いた。

「おお、羽月」

片手を挙げて挨拶。
ベンチの上で荷物をまとめて座る場所を少しだけずらし、隣に相手が座れるだけのスペースを空ける。

「ははは。センセー冥利に尽きるというものだ。
好かれるうちが花さ」

友達と仲直りした話だの、彼氏がしょーもない話だの、あれこれ持ち込まれたにも拘わらず、ヨキは楽しげだった。

「それで、君の方は?
あれから体調はどうだ。心配しておったのだぞ」

“あれ”。
この二人しか知る由のない、狂騒の一夜。

羽月 柊 >  
僅かばかり男も普段のしかめ面というよりは、
愛想が良くなったのかもしれない。

近くまで歩いて行けば、相手が場所を作ってくれたことが分かり、隣に腰かけた。
白衣の裾を相手に引っ掛けないように自分側に寄せる。
小竜たちも肩なり膝なりに留まって、休憩。

「…そうだな。俺みたいな偏屈モノにも、声をかけてくれる生徒が出来て来た。
 ここの所は臨時図書委員の手伝いで、顔見知りの生徒が少し出来たな…。」

友人の彼のようにはいかないが、
男もまた様々に生徒と交流が出来始めている。
その語調は、楽し気なヨキと同じとまではいかずとも、悪く思っている訳ではなかった。

通り過ぎていく生徒が一人、小竜たちに声をかけた。
愛らしい見た目の彼らを好く生徒もおり、
男に確認を取ると、小竜たちはは少し遠くへとその生徒と共に戯れに行く。


それを見送ると、

「………あぁ、あぁ…。
 …今の所は、特に何かという訳じゃあないな。
 あれの依存性やら、反復性がどうとかはまだ、わからん…。」

…"あれ"。
そう言われてしまえば、視線が僅かに泳いだ。

「……自分の記憶力は、どうやら良いらしい。」

そう告げる。

ヨキ > 羽月の近況に、我が事のように顔を明るませる。

「ほう、それは良かった。
せっかく教師として舞い戻ったのだ、良いことがなくてはな。

君は真面目だし、小竜たちも人懐こいし。
何より竜の研究者など物珍しかろう。
生徒らにとっても、新鮮だろうさ」

このまま君にも馴染みの生徒が増えてゆくだろう、と。
柊が己の教え子であるかのような顔で、目を細めた。

小竜たちを見送って。

視線が泳ぐ柊の横顔を見ながら、他愛ない世間話でもするように。

「ふ、ははは。なるほど、なるほど。
刺激的な夏の思い出になったのう?

これから先、何もなければよいが。
またもし手が足りなくば、ヨキを呼ぶがいい。助けになってやるでな」

にやりと笑った。

羽月 柊 >  
柊の変化というのは本当に目覚ましい。
僅か二か月半。それだけで、まさか男がここまで変わろうとは。

「あぁ、なんならセイルとフェリアを目当てにする子もいる程だ。
 俺が連れ回す分、見目にはなるべく気を使って来たが、
 籠に入れずに校内を飛び回れるようになるとはな。

 …かつての自分とはいえ、彼らの好奇心には感服するところがある。
 以前は職員として稀に学園を訪れることもあったが、
 教師になると視点が全く違うな。」

いくら道筋があったとはいえ、自分から望んで飛び込んだ。
その決定をしたのは、成り行きでもなんでもなく、間違いなく己の意志だ。
この常世学園という舞台に、昔とは違う役割(ロール)で再び立つと決めた。

遠くで戯れる彼らを見やる。
成人となんら変わらない知能を持つが、それでも彼らは異種族同士。
事故の予兆でも起きればすぐに対処できるようにと、右手の中指と親指は常に擦り合わせていた。

それは、話をしている間も続けていて。


「色んな意味で刺激的すぎる…。」

今までのことにしても、"あの日"の出来事にしてもだ。


ちらりと相手の方を見て、…その口を見て。
改めて恥ずかしさを思い出して、空いた手で口元を覆った。

「……そこそこ君の返答に予想が出来るモノだが、
 嫌とは思わんのか? 三十路すぎた男だぞ…こっちは。」

ヨキ > 「時が経てば、彼らの流行りも在りようも変わってゆく。
だが君の言うとおり、『好奇心』だけはいつの世も変わらぬよ。
ヨキは彼らと居て退屈しないし、退屈させたくないと思う。

貴重な青春の日々を使ってまで、この学園に通っておるのだ。
教師は責任重大であろうよ」

そう話している間にも、麦茶を飲み、身振り手振りを交えて話す。

あの唇で。その指先で。

居心地悪そうな柊の様子に、何でもないことのように応える。

「……うん? ははは。自分からするかと言われたら、断じてノーだ。
だが友人のピンチとあらば、ヨキは迷わぬよ」

気さくに肩を竦める。

「そういえば、君と言えば――話は変わるが。

葛木一郎君。
教師になってから、彼には会ったかね?
人伝に聞いた話だが、人捜しをしておるそうではないか」

羽月 柊 >  
「自分が通っていた頃からは、確かに様相は変移している。
 組織や仕組みそのものは激変の渦中というよりは落ち着きも見えるが、
 確かなモノが出来たとて、彼らやはり、成長しゆく子供たちなのだな。
 まぁ、成長するのは俺たち教師とて、そうなんだろうが。

 ……責任重大か。権限が"外"ほど無いとはいえ、そうだな。」

なんてことのない会話。
友人を解消する気にはならなかった。それこそ起きた事に対する逃げだと思った故に。

だから忘れられなかった。
相手にだけ記憶を押し付けて、自分が、自分だけが、
のうのうと覚えていないなんていうのは、嫌だったのだ。

それでは友人になった意味が無い、と。


「……本当に君というのは………。
 メリットが無いことを、簡単に言ってのけるのだから困る…。」

そう言いながら口元を覆っていた手を離して、手元の鞄を開く。
目的のモノがある場所が分かっていると言わんばかりに中身を見ず、
軽い金属音と共に何かを出してくると、無言で相手の前に差し出した。

それを受け取るならば、ストラップにねじまきがついた小さな箱。…"あの日"の鍵だ。

ヨキ > 「ヨキは生徒であったことがないからな。
彼らの命を擦り減らすような日々を、外からしか知らぬ。
それでも、見ているだけではらはらする――子供たちは、常に何かに必死だ。

教師はいつでも手が足りん。
だからこそ、“生徒として”この学園を知る君が教師として戻ったことは……喜ばしい」

ふっと笑う。
“あの日”に垣間見せた獣性も、今日この時の穏やかさも、同じヨキだ。

「メリット?」

は、と鼻で笑う。

「友人関係に、メリットやデメリットが要るものか。
何が起こっても受け止められる自信があるから、友人なのだ」

不敵な笑みと共に、差し出された鍵を受け取る。

「――何だ。ヨキにこれを預けてくれるのか?」

羽月 柊 >  
「…生徒であったことは無い、か。
 立場が一つ変わるだけで、視点というのは全く違うからな。
 かつての生徒としていえば、子供の頃はやはり視野は狭くなりがちだ。
 それは知識的にであったり、見解であったり、環境であったり様々だが…。
 まぁ、学ぶことの多さを考えれば…故に、目前のことに必死に…"なっていた"。

 …しかし、同じとはいかずとも、彼らの隣で苦楽を共にした君が、
 全くもって外側ではない…だろう?」

この常世学園の教師の立場は、少々変わっている。
自分たちはある意味、生徒と生徒に挟まれた存在だ。

立場が上の"生徒"には、逆らうことは出来ない。
そういったモノは、己らにとって上司にすらなり得る。

故に、確かに彼らを導く存在であっても、
通常の島外の教師よりも……生徒に近いのではないかと。

今は同じ教師として、己を外側だという彼に何かしら思う所を覚えて、そう言った。


今の男は"あの日"見せた何もかもを捨てた彼ではない。
いつもの常に思慮を続ける…研究者。


「……そうか。君がそう言うなら、俺もそう在れるように努力する。
 ただなんというか、何度言われてもこちらが申し訳なくてな………。」

一方的に寄り掛かっているようにすら思えてならないのだ。
だから、返せる限り返したくなる。

そうして、少し声量を落とすと、ヨキに何か男は伝えている。

羽月 柊 >  
鍵について伝えた後に

「……それにしても、葛木一郎か。
 教師になってからは…逢えていないな。
 てっきり夏季休暇中は帰省なりしているとばかり…人探し?」

己のターニングポイントの一つとなった青年の話に首を傾げた。
『真理』を求める事件の中で出会い、唯一拾い上げた写し鏡の彼。

ヨキ > 「そうだな。部外者よりはよほど近い。
さりとて――子供ならではの焦りと熱は、本人にしか判らぬものだ。

ヨキは人の姿を取ったときから、ずっと大人としてこの街に交じっていた。
自分にはなかった子供の時分を、間近に感じ取り、学ぶために。
それが教師をやっている理由のひとつだと、そう思うよ」

二人から離れたテーブルで、おしゃべりに興じる生徒のグループ。
それを遠くに見ながら、目を細める。
その眼差しは、子どもを羨むようにも、あるいは見守る親のようにも見える。

受け取った鍵を手のひらに包み込み、視線を落とす。

「ふふ……まったく君は真面目だよ。
それなら存分に、君の思うとおりにヨキに尽くしてくれればよい。
だがどうしたって、ヨキは自由だ。ただ在るがまま生きているだけなのだと、気楽に思ってくれ」

耳打ちされた内容に頷いて、鍵を丁重に仕舞い込む。

「ああ。同じ風紀委員の友人を捜しているそうだ。
ヨキも詳しくは聞けておらぬでな、本人に確かめた方が確実だ。

斯様な閉じた島とはいえ、これだけの広さと人だかりだ。
行方が知れずば、一苦労だろうて」

羽月 柊 >  
いつまでも気恥ずかしさに目線を逸らしている訳にも行かず、ヨキの表情を改めて見た。

「…難儀だな、君も。
 俺からの言では、保証にはならんかもしれんが、
 君は子供たちと一緒に楽しみ、学んでいるように見えるとも。
 俺が雑踏と切り捨てていた所にまで手を伸ばして、その全身でな…。

 ……上手いこと言えればいいのだがな、なんといえばいいのだろうな…。
 まぁ、大人である俺たちには、一定の責任やらから逃れられんのは事実だがな…。」

傍ら、セイルとフェリアたちは、
リザードマンの生徒がやってきて、遊んでいた生徒と共に会話を繰り広げていた。

彼らも今は己ら教師に近い立場で生徒と接している。
……ある意味、ヨキと似た部分はあるのかもしれない。
柊と共に在る故に、異邦の出ながら付加された立場。


「頼りっぱなしは性分じゃあないんだ…。
 今まで接してきて君がそう言うのも、なんとなく分かって来てはいるんだがな…。」

きっとこれは見栄でもあって、意地でもあって、捻くれている所で…。


「…同じ風紀委員の、か…風紀委員に復帰したんだな。
 色んな意味で風紀委員に知り合いはいるが、逢えるなら…そうだな。
 
 ここは学園とはいえ安全じゃない場所は点在する…葛木を探してみるよ。
 教えてくれて感謝する、ヨキ。

 ……"俺が居る"と言ったのを、向こうが覚えていてくれれば早いんだが。」

友人を探して駆け回っているのなら、すれ違いになっているのかもしれないと思いながら。

ヨキ > 「ふふ、ありがとう。共に楽しもうと……そうしようとは努めているさ。
今更生まれを嘆いたとて、詮無いこと。
だからこそ、ヨキは何事にも全力でありたい。
幸いにも、子供のようなヨキを支えてくれる友人にも恵まれたことだしのう」

笑う。
へそのない異形の腹。母のない証。柊はそれを目にしている。
穏やかに話しながら、傍らの友人を見た。

「これからはヨキと君とで、互いに支え合うがよかろう。
もはや遠慮も要らぬ仲だ。

――ヨキからも、葛木君の話を聞いてみるとしよう。
生徒の困りごととあらば、放っては置けん」

さて、とベンチを立つ。

「ヨキはそろそろ、仕事に戻らねばならん。
くれぐれもまた倒れることのないようにな」

去り際に、思い出したように。

ごく自然な仕草で、投げキッスをひとつ。

にやりと笑って、ロビーを後にした。

ご案内:「第一教室棟 ロビー」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/某有名オンラインRPGのロゴ入り黒Tシャツ、グレーのつなぎ、焦茶の革サンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
羽月 柊 >  
知っている。
似ているようで違う、傍らの友人を。
触れ合った、"隣人"で在る彼を。

生まれついて何も持たなかった無力な人間は、知った。
魔術を習得しても、異能を持ってもなお、無力なことにそう変わりはしない。
この世の全てに…男は抗えはしないのだから。

故に、柊は静かに語る。

幾年もの年月を経て、久しぶりに素直に友と呼べる相手に。


「生まれも経た年月もどうこうは出来んが、
 そうだな…互いに無理をしない範囲で……支えて行ければ良いと思う。
 君が全力というのなら、俺は…少しばかり後ろから。
 
 ……助かる、ヨキ。
 こちらも何か分かれば、そちらに連絡しよう。」

立ち上がった相手に頷く。

と、悪戯に投げキッスを受けて、視線を泳がせて頬を掻いた。
空いた手のほうで、小さな動作で別れを告げながら。

「……全く、本当に他人の心を動かすのが上手い…。」

ぼやいた声は、ヨキにはもう届かない。


それからしばらくの間、男は生徒と戯れる小竜を見守っていた…。

ご案内:「第一教室棟 ロビー」から羽月 柊さんが去りました。<補足:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>