2020/08/28 のログ
ご案内:「落第街大通り」にヨキさんが現れました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒半袖Tシャツ、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ヨキ > 夜の落第街大通り。
晩夏の夜風が吹く往来を、ふるさとのようにのんびりと歩く教師がある。

今日も今日とて、ヨキは教え子を訪ねて歩く。
見知らぬ者と知り合っては、新たな教え子が出来たと喜ぶ。

勝手知ったる身に付け入るほどの隙はなく、けれど誰もを跳ね除けるほどの警戒はなく。
声を掛けてくる者、遠巻きに見過ごす者。住人たちの反応はいつも様々。

ご案内:「落第街大通り」に雨見風菜さんが現れました。<補足:白い薄手のパーカーにミニスカート。そして赤い首輪>
雨見風菜 > そんな彼が正面を向けば視界に入る店から、風菜が出てくる。
アルバイトを終えて帰宅しようとしていたところだ。
というか、視線が合った気がした。

(相談に行こうかなと思いましたが何故このタイミングで会うんですかね!?)

ヨキ > 真正面に見知った生徒の姿を見つけて、おお、と笑い掛ける。
手を挙げて、気楽な調子で挨拶。

「やあ。雨見君、こんばんは。
君が斯様な場所へ出入りしているとは思わなんだ。
アルバイトでもしておるのかね?」

歩み寄り、相手の傍らで足を止める。
風菜が出てきた店の看板を、ここは何の店だったかな、と見上げる。

雨見風菜 > 喫茶店『デイドリーム』。
従業員へのセクハラが許されている喫茶店だ、というのは落第街の中では割と知られていたり知られていなかったり。

「ヨキ先生には隠し事しても暴かれそうですし。
 ええ、アルバイトしてまして、今日は今終わったところなんです」

観念して苦笑い。

ヨキ > 見上げた看板の店名に、得心がいく。

「ああ、『デイドリーム』。
君なら学生街のカフェでも問題なく雇ってもらえるだろうに。

ここに勤める理由は訊かぬし、誰にも言わぬ。
だが客から困った目に遭わされれば、すぐに相談したまえよ」

その言葉は、店の性質を知っているからこそ。
人差し指を立てて、内緒のジェスチャ。

「夏休みとあらば、人の入りも多かろう?
今日も一日お疲れ様」

雨見風菜 > 「店長がいい人なので、多分ヨキ先生に相談する前に解決すると思います」

内心、理由を聞かれることがないのは良かった。
そして困ったことがあれば相談してくれ、というのも安心できる。

なお、ウェイトレスには『セクハラされる』ということを明かして面接しているので問題ない者しかいないのだが、
そんな内部事情は他ならぬ本人たち以外にはわかるものではない。

「労いありがとうございます。
 ええ、席は少ないとはいえ多いですね」

そして風菜はここのバイトを満喫していたりする。
もしかしたら看破されそうな笑顔を出してしまうが自覚はない。

「……実は、ヨキ先生に相談したいことが」

ヨキ > いい人。風菜の言に、安心したように。

「それならよかった。ふふ、ヨキが出るまでもなさそうだな。
この落第街では、碌な目に遭わぬ者も少なくないからな。
君が問題なく仕事出来ているのであれば、それ以上言うことはないよ。
夏休みももう一息だからな、今のうちに精々稼いでおくがよいぞ」

にっこりして、胸を撫で下ろした。
続く言葉には、目をぱちくりさせて。

「ヨキに相談? ああ、何でも言ってくれたまえ。
往来の只中では話しづらくはないか。場所を変えるかね?」

雨見風菜 > 「ええ、異能や私の体調に絡む話なので。
 どこか他の人に聞かれない場所……」

周辺を見回してみて、ぱっと目に入ったのは個室のあるバー。

(……先生が生徒とバーに入るって、落第街とはいえ大丈夫なんでしょうか)

と、そこに入るかどうか悩んでしまう。

ヨキ > 「それなら……」

風菜に合わせて周囲を見遣り、相手が目を留めた先と同じバーが目に入る。

「そうだな。
あの店なら個室があるし、話を聞かれることもなかろう。
店には悪いが、ノンアルコールで許してもらおう」

まるでファミレスに入るような気さくさで、行先を決める。
おいで、と風菜を案内し、店へ向かう。

「相談するようなことになったのはいつからだね。
もしやずっと悩んでおったりしなかったか?」

異能そのものの内容には触れず、歩きながら風菜に問う。

雨見風菜 > 自分が悩んでいたバーに誘われて。

「え、ええ。
 そうですね、そうしましょう」

まるでファミレスに入るような気さくさに、悩んでた自分が馬鹿みたいに思えてしまった。
まあ本人が問題ないなら問題ないでいいだろう。

「実は今月はじめから悩みの種がありまして。
 バーベキューのときは楽しむ場なので言い出せなかったですし。
 ……まあ、それ以上にはっきりしたのが今朝方でして」

ヨキ > 「ほう、そうだったか。それは大変だったな。
バーベキューのときは無理をさせていなかったろうね?
気付いてやれなくて済まなんだ。

……ふむ、今朝か。
それなら、今晩このタイミングで会えたのはよかった。
誰かに相談出来れば、気が楽になるだろうから」

間もなくして。
到着した店の入口で、店員に酒を頼まないことを相談する。
様々な体質の住人があるこの常世島のこと、問題なく個室へと通された。

薄暗く、雰囲気よく整えられた一室。
鞄を下ろしながら、風菜と向かい合う形で席に着く。

「支払いはヨキが持つよ。
仕事帰りとあらば、腹も減っていよう。好きなものを頼むといい」

雨見風菜 > 「いえ、別に無理してはいませんでしたよ。
 悩んでるのもまあ、深刻に悩んでるわけではないですし。
 でもまあ、頼りになる先生に相談したいのはありましたね」

そうして、個室席に通されてヨキ先生の申し出を聞けば。

「わかりました、お言葉に甘えますね。
 では……オレンジジュースにシーザーサラダ、レバニラ炒めにご飯にしましょうか」

少し恐縮しつつ結構頼む。
とはいえ無遠慮というわけではないが。

ヨキ > 「よかった。学園には、無理を押してしまう者も少なくないからね。
ヨキを相談相手に選んでくれたこと、嬉しく思うよ」

ふっと笑う。
風菜が選んだメニューを聞くと、ふむ、とメニューを見遣って。

「それでは、ヨキはこのレバーペーストと……アヒージョにしようかな。
それと、モヒートをノンアルコールで作ってもらおう」

店員を呼び、二人で選んだとおりの品を注文する。
店員が去ると、さて、と居住まいを正して。

「異能と、体調の話だったか。
して、具体的にはどんな状況に?」

雨見風菜 > 「バーベキューのときに、異能が新しく発現したとは言いましたよね。
 それと同時期に……」

一瞬、これを男性相手に言って良いのかとちょっと考えるが。
でもヨキ先生を相談相手に選んだのは自分だ。

「母乳が出るようになったり、今月に入って気付いたのですが生理が来なくなってまして」

そこまでが第一段階、というように一度話を区切る。

「それで先日、とある方と会ったときにちょっと立ってられなくなりまして。
 それでまた別の異能が発現してたようで、今朝方に異能の意思、とでも言うんでしょうか。
 まあ、私に新たな異能の内容と、体調不良の原因が夏休みに入ったときに発現した方の異能にあることも明かされまして」

ヨキ > 唇を引き結び、相手の言葉に聞き入る。
視線は真っ直ぐに風菜を見ている。

「……ふむ、まるで子を成した母体のようだな。
それはなかなか、他の相手には切り出しづらいだろう」

テーブルの上で十指を組み合わせ、頷きながら。

「新しい異能、か。
短期間に大きな変化が重なれば、身体に負担が圧し掛かるのも無理はないな」

どうぞ続けて、と話の先を促す。

雨見風菜 > 「……ええ、一番新しい異能が簡潔に言ってしまえば『母となる』異能でして。
 色々と条件があるのでそうそう使えるものではないんですが」

流石に詳細内容は明かせない。

「……ちょっと、不安になります。
 困っている人の力になりたい、助けることができる。
 でも、それはその時しか助けず、その後ほったらかしにしてしまうんじゃないかって」

ヨキ > 「『母となる』……」

しばし押し黙る。
その間に少しずつ、ドリンクや料理が運ばれてくる。

自分のグラスを取って、小さく首を振る。

「不安になるのも致し方ないことだ。
『母』とは本来、父親の協力あって初めて一歩を踏み出し、それでいて不安の尽きぬもの。
独りでそのような力を得たとなれば、持て余しても不思議はないよ。

だがね……異能を使わずとも、『助け続ける』ことは出来る。
このヨキが、異能を使わずに言葉だけで君の相談に乗っているように。

君に『困っている人の助けになりたい』という気持ちがあるのなら。
異能を使おうと使うまいと、そう努めることは出来るのではないかな」

乾杯しよう、とグラスを軽く掲げた。

「改めて、お疲れ様」

雨見風菜 > 運ばれてくるドリンクや料理類を見ながら。

「……そうでしたね。
 確かに、異能でできる助けならば異能を使えば手っ取り早いでしょう。
 でもそれにデメリットが付くなら、無理にそれを選ぶことはないですもんね」

ヨキ先生の、乾杯の誘いに応じてグラスを軽く掲げる。

「ええ、ヨキ先生も見回りお疲れさまです」

ヨキ > 「ふふ、ありがとう」

乾杯を終えると、モヒートを一口。
酒気は含まれていないが、ライムとミントの爽快感が心地よい。

「それでも、君が使う異能は君だけのものだ。
異能を使わねばならぬと思ったときには、迷わず使うといい。

それと、気掛かりなことは……君の異能に、副作用はないのか。
使うことで、あるいは使わずに居ることで身体に負担が掛かるようなことは?

強力な力ほど、代償が恐ろしいからな」

雨見風菜 > こちらもオレンジジュースを一口。
オレンジの甘酸っぱさは風菜の好きな味だ。

「ええ、使う必要があれば」

『糸』も『触手』も、他人の傷の手当には手っ取り早い。
今のところそうそう使うような場面もなく、むしろ出番がないほうが良いのだが。

「副作用、ですか。
 異能の意思は二つ目の異能の……今起きている以外の副作用、それ以外の代償はない、と言っていました。
 それに、使っていても使わなくても特に変わらないですね」

ヨキ > スライスされたバゲットにレバーペーストを付け、さくりと一口。
咀嚼しながら、美味い、の意を込めて頷く。

「それならいい。
人に言えない異能の副作用が重たくなれば、相談もしづらいだろうからね。

それで、ヨキに相談したいことというのは、新たな異能と付き合っていくという『不安』が大きいところかね?
せっかくの機会だ。ヨキに話せることならば、何でも言って欲しい。

異能と付き合っていかなくてはならないのは、他でもない君なのだ。
とことん話には乗るとも」

雨見風菜 > こちらはまずはシーザーサラダを食べる。
野菜を最初に食べる習慣だ。

「ええ、一番新しい異能を使ったあとのこと、どうにも不安でして。
 副作用とかはなくても、やっぱり『母として』責任が取れるのかどうか」

レバニラ炒めのニラやもやしをレバーで包んで食べる。
そしてご飯。

「ええ、よろしくおねがいします、ヨキ先生」

ヨキ > 「君の言う『責任』が、今聞いた話だけではどうにも判断が付かなくてね。
ヨキに明かせる話は、他にはないのかね?
情報が少ないと、ヨキも相談に乗りたくとも乗り切れなくてな」

眉を下げて笑う。
少しずつ食べ進めながら、時折グラスを傾けて喉を潤す。

「推測だけで断じることは、したくないんだ。
君にはどうか、少しでも晴れやかになってほしいからね」

雨見風菜 > 「そうなりますと……やっぱり全部明かしたほうが良さそうですね。
 『人間じゃない相手を、同意の上で人間として産み直す』ものなんだそうです。
 赤ん坊のままではなく、16歳くらいまで急激に成長もするんだとか」

こちらも少しずつ食べ進めながら。
喋るときに口の中に物があるようなはしたない真似はない。

「もしも、人間じゃないからこそ生活できている人に使って。
 その後に人間だからこそ生活が苦しくなるのならば……私は、その人を引き取ることができるのか、と」

ヨキ > フォークの手を止め、ほう、と口を噤む。

「人間として産み直す、か。
それはよほど、互いの信頼がなくば成り立たないものだな」

少し考える。

「だが……こうも考えられないか。
『産み直す』ほど君と信頼を培った相手ならば、その後の生活にも支障はないと。
二人で支え合って、生きて行けるのではないかね?

この島には、人間として生きてゆくための生活基盤と、支援のシステムが堅固に成り立っている。
人間であることを『選べる』ほど人間になる決意が強いのなら、慣れることも出来るだろう。

あとは君が、その異能を使いたいほど助けたい相手に出会うかどうか、だとヨキは思うよ」

雨見風菜 > ヨキ先生の言葉に、手が止まる。

「……確かに、そうかも知れませんね。
 ええ、やっぱり異能を使うことを甘く見ていたかも知れません」

オレンジジュースをひと口。

「助けられるならば助けたい。
 そのための信頼関係の構築を、甘く見ていたと思います」

ふふ、と自重めいた笑みを浮かべて。

「私は、私を悪用するような相手でなければ、そしてその方が人間になりたいというのならば。
 きっと、迷わずこの異能を使うと思うんですよ」

ヨキ > 「本当の『母』として子を産み育てることは、親子の関係はゼロから始まる。

しかし君の異能の場合は、『産み直す』前に信頼を築いておけるという点が、少なくとも救いではないかな。
まったくのゼロからのスタートではない。それは君の、ひいては相手の負担を減らす一助になり得る」

優しく微笑む。

「人間でない者は、身一つでこの世界に辿り着き、はじめに大きな孤独を味わった。
そこに君という支えを得て新しいスタートを切れるのならば、ヨキは君を、そして産まれ直そうとする者のことも応援したい。

『別の種族として産まれ直す』ことは、相手にも大きな負担と不安を強いるはずだ。
君は、それを支えるだけの気持ちを育ててゆかねばならない。

とても濫用出来る力ではない。
それでも、その力を迷わず使えるだけの気持ちを重ね合えるなら。
それはそれは、強力な異能となるだろうさ」

雨見風菜 > ヨキ先生の言葉に聞き入る。
やはり、自分の認識は、とんでもなく甘かったのだと再確認する。

「……私は、やっぱりまだまだ子供ですね。
 そういった、相手の負担はともかくとしても不安を考えていませんでした。
 やっぱり、ヨキ先生に相談して良かった」

ヨキ > 「何しろ、目覚めたばかりの異能だ。
使い方も、心掛けも。君はまだまだ、これから学んでゆく段階にあるのだろうさ。

もしも『人間になりたい』と悩む者があれば、一緒に悩み、考え抜くといい。
本当に産まれ直すことが幸福なのか、それとも他に心を解きほぐす道があるのか。
寄り添ってやりたいと思える相手なら、その思索も苦ではないだろうからね」

アヒージョのオイルに、バゲットを浸して食べる。
くたくたになった魚介ときのこを載せて、贅沢に。

「知らない力も、知らない世界も、支えなくして乗り越えることは出来ないから。
ヨキは君たちみんなの相談相手でありたいのさ」

雨見風菜 > 「一緒に悩み、考え抜く……」

ヨキ先生の言葉に、どんどんと自分の思慮の浅さが浮き彫りになる。
きっと、彼に相談していなければ、この思慮の浅さで突っ走っていただろう。

「そうですね。
 私の異能はゴールまでショートカットするようなもの。
 本当にそれを使わうべきなのか、きちんと悩み考える……」

果たして、自分は彼女と何を話すべきかと考えながら。

「はい、ありがとうございます、ヨキ先生」

ヨキ > 「どういたしまして。
君ならきっと、そう支え合うことが出来ると信じているよ。
もしも不安が大きく膨らんだときには、またいつでもおいで。

ヨキは男である以上、君の悩みすべてに応えることは出来ないやも知れんがね。
こうして美味しいものでも食べながら、一緒に話そう。
打ち明けるだけでも、いくらか気楽にはなるものだ」

料理の残りを綺麗に食べ終え、グラスを空にする。
ご馳走様でした、と行儀よく手を合わせて。

「――ふう、お腹いっぱいだ。
話し足りないことはないかね? 少し休んだら、そろそろ帰ろうか」

雨見風菜 > 「支え合うことができるかはわかりませんが。
 また、頼りたくなったら頼らせていただきます」

残り少しとなった食事を食べ進めていく。

「話足りないことはないですね。
 今のところは、これで全部です」

ヨキ先生に少し遅れて、完食。
こちらもまた、ごちそうさまでしたと手を合わせる。

「ええ、今日はありがとうございました」

ヨキ > 「君の学園生活は、まだまだ始まったばかりなのだ。
これからじっくり時間を掛けて、自分のやりたいことを見つけてゆこうではないかね。
ヨキが少しでも力になれていたらよかった」

笑って、頷く。
相手を労わる微笑みと眼差し。

「それでは、もう遅い時間だ。
君は寮住まいだったかな? よければ送ってゆこう。
この街を夜に独り歩きするのは、大層危ないからな」

荷物をまとめて、立ち上がる。
会計を済ませて店を出ると、一度伸びをして――
風菜が辞するタイミングまで、連れ立って歩いていくことだろう。
取り留めのない会話を交わしながら、和やかに。

ご案内:「落第街大通り」からヨキさんが去りました。<補足:29歳+α/191cm/黒髪、金砂の散る深い碧眼、黒スクエアフレームの伊達眼鏡、目尻に紅、手足に黒ネイル/黒半袖Tシャツ、細身の濃灰デニムジーンズ、黒革ハイヒールサンダル、右手人差し指に魔力触媒の金属製リング>
ご案内:「落第街大通り」から雨見風菜さんが去りました。<補足:白い薄手のパーカーにミニスカート。そして赤い首輪>