2020/08/29 のログ
ご案内:「常世公園」に羽月 柊さんが現れました。<補足:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>
羽月 柊 >
陽が傾いてくる。
暑い日はまだまだ続くが、それでも確実に今年も季節は過ぎていく。
今日は本業の外回りの仕事を終えて、
コンビニで適当に水分と塩分を揃えて、公園のベンチに腰かけている。
少し前に通り雨でもあったのか、
僅かばかり所々に水たまりが見えた。
湿気を含んだ風が、長い紫髪と白衣の裾を揺らす。
魔術で熱気を遠ざけているとはいえ、汗をかかない訳でもなく、
冷気を纏いながら、買ってきたペットボトルの水に口をつける。
夏みかんの味がふんわりとする。
常に連れている白い小竜たちと買ったモノを分け合いながら、少し休憩。
ご案内:「常世公園」に伊伏さんが現れました。<補足:長めの黒髪を高く結っている。黒いタンクトップにオレンジのサマーカーディガン、ジーンズとサンダル。>
伊伏 >
口にチューブタイプのアイスを咥えたまま、公園の中を通る。
コンクリートの上を歩くよりは、砂や土の上を歩いたほうがまだ涼しい気がするからだ。
水たまりをそう避けるわけでもなく、たまに思い切り踏み込んでから、ああ避ければ良かったなと思う。
チューブの下半身を揉み、中のアイスを細かくほぐしながら、ふと紫の髪に眼がいく。
確か、そう。小さな竜を連れた新任教師だ。
「小りゅ……羽月先生」
こんな陽射しの下で大丈夫なんですかと、声をかけた。
研究職そうな人類への偏見が、少し混じっている。
羽月 柊 >
「しかしまぁ、胡蝶の夢な…レム・カヴェナンターなんぞ大層な名前を…。」
訪れた青年の耳に、そう声が届いた。
これは男の異能に、学園側の診断からつけられた名前だ。
まだまだ細かい発動条件は分からないが、
親しくなった人間に対し、異能の類を借り受ける能力として、そのように割り当てがされた。
自他の境を失う胡蝶の夢、その夢で他者と契約を交わすように、と。
そんな名付けがされた、
三十路を越えた自分に発現したばかりの異能について考えていたが、
青年の声に現実に引き戻された。
肩と頭の上に留まっていた小竜たちが、首をぴょいと上げて視線を向ける。
「ん…? あぁ、君か。」
近くまで来れば、ふわりと涼しい空気が青年を撫でるだろう。
「これでも外回りの多い身でな。
夏場はまぁ、魔力消費はするが、冷気魔術を運用しながら動いている。」
伊伏 >
「ちょっと意外ですね。建物から建物への移動が多いのかと」
羽月の傍まで、サンダルをじゃりじゃり言わせながら歩いていく。
伊伏はへらっと笑って小さな竜達に挨拶をし――教師の方には、愛想はあれどへらへらした顔は向けない。
どうやら動物向けの顔があるらしい。可愛いなぁと白い小竜を眺める。
「魔術使うと疲れやすいのがなぁ。
…そういやなんか、胡蝶の夢だか聞こえましたけど。禁書の方で面倒な品でも出ましたか?」
ついでにと、少し空けて同じベンチに座った。
冷気のおすそ分けを勝手に頂くつもりだ。
羽月 柊 >
「訪問の仕事が多くてな。春夏秋冬だから…こうやってな。
…君は今日は何かの帰りか?」
そういって指をパチンと鳴らす。
おすそ分けどころか、柊の周囲を漂っていた冷気が、青年の方にも漂う。
それはエアコン下というほど涼しさは無いが、初夏程度には楽になる。
顰めづらとまではいかないが、男はそこまで親しみやすいタイプではない。
声に抑揚をつけるのは苦手であるし、
話自体も面白いかと言うと…本人も自信がない。
故に、羽月柊よりも、小竜と親しんだりする生徒は彼以外にもいた。
「あぁ、書じゃなくて、今のは俺の異能だな。
学園から大層な名前を"今日貰ったところ"だよ。」
伊伏 >
チューブアイスを吸いながら、有り難く冷気を受ける。
自分の風魔術で涼しい風を使い続けるとなると、こうもいかない。
口元から微かに甘い梨の香りをさせつつ、自分のサマーカーディガンの裏から袋を出した。
「趣味モノの本を求めて、ちょっと買い物に。という感じですね。
一日かけて、じっくり本屋めぐりをしてきたとこです」
そう言いながら袋を開け、"当たり障りのない本"を取り出して、羽月に見せる。
【魔術との対話】 【野生動物図鑑・ポケット版】等など。自分の得意な分野、好きなものが丸出しという感じだ。
見せていない本には【本年度版薬品成分書】、【違法とされた植物たち】と言った少しディープな部類がある。
こちらは自分の裏の顔に繋がるため、紙一枚分を余計に包んでタイトルを察せないようにしてあった。
【野生動物図鑑・ポケット版】を片手にしたまま、伊伏はきょとんとした顔を見せる。
「異能?名前を貰ったってことは…おめでとうございます、でいいんですか。もしかして」
羽月 柊 >
「古書店街の方にでも行って来たのか。
あの辺は入り込むと本当に出てこれないからな。
【魔術との対話】……書としては中級に片足が入るが、
解説が丁寧だった印象があるな……。
確か、自分の中の魔力をいかにして感じ取るかといった内容が特に。」
魔術関係の本は男も一通り、頭に入っている。
元来魔力を持たない男にとっては、魔術の習得には人一倍努力が必要だった。
初級から高等魔術まで。深淵を覗くことも稀にあるほどに。
『真理』について危険を犯してまで手を伸ばそうとは思わないが、
命が続くのならば、男はあまねく魔術の術を知っている。
その中で、魔力を持たないながらに使える魔術を扱っている。
「おめでとう…か。ひとまずはありがとう。
ただ、今年の夏に発現したばかりでな………。
"異能疾患"とまではいかないが、不随意な上に、詳細もまだ良くわからん。」
聞かれれば、ペットボトルを傾けて口を潤しながらそう話す。
"異能疾患"。それは今年の初夏にも騒動になった。
異能というのは、必ずしもメリットという訳ではない。
場合によっては異能そのものを"疾患"とし、異能が無くなることを願うヒトがいるほどだ。
今年の学術大会の時期には、『全ての異能は治療されるべき』
等と叫ぶ過激派が現れることもあったぐらいだ。
伊伏 >
「学生通りの方で新書を見て、そのまま古書のほうにずるずるとですね。
あの辺はホント漁り始めると止まらないし…。おぉ、先生も読んでたんですね、これ」
読みやすそうだと買ってきた本だが、羽月の言葉を聞く限りは当たりのようだ。
「はいはい、"異能疾患"。治療強制騒ぎもあったんでしたっけ?
もはや個性とも化して、剥がそうにも剥がせないものを病気扱いしてくれんのは良いけど。
そういう事でこぶしを振り上げたり、弾圧するように騒ぐやつって、なんか主語がデカイから…」
あまり会話したくない内容なのか、伊伏の中の偏見もあるのか、べっと舌を出して嫌そうな顔をした。
猫のようなぎょろっとした眼で自分の仮想を斬り捨てるように視線を動かし、アイスの残りを吸う。
「あ、詳細が分からないってのは、まだ異能の扱いに余白があるって事ですよね?
物理的なモンだったとか、精神に感応するとか、そういうのもあやふやだったんですか?」
羽月 柊 >
「本が好きだと、あそこに住みたくなってくるぐらいだからな。
学生時代はあしげく通ったものだ。
あぁ、魔術が関係する本はそこそこ読むようにしている。
自分のスタイルが確立しているにせよ、知識はあるに越したことは無い。」
全てを網羅することは流石に厳しいが、
研鑽を積むことを怠ってはいない。己は研究の徒である故に。
「異能疾患周りも複雑だがな。
実際に望まない異能を持って、それを疾患として治療を望むモノも居る。
例えば、『音を消去する異能に目覚めて、自他諸共に音を失くしたモノ』とかな。
とはいえ、そういう弾圧する連中は、
一切合切を含めて"平等"の名のもとに消し去ろうとするが…。」
男にとっては正直、関係の無いモノだと思っていた。
故に、自分に発現したこの異能に対する接し方に迷っている。
少し背を丸めて、膝上に肘をついて頬杖をし、息を吐く。
まぁ、世の中にはそんな異能疾患に対する差別どころか、
《大変容》が起こる前の世界に戻そうなんて活動する組織があったりするものだが…。
「扱いというか、発動条件そのものがあやふやで扱うも何も…という所だな。
何せ、端的に言うなら俺の異能は"コピーする"モノだとは思うが、
起きたのが2回、再現性が難しい……。」
伊伏 >
空になったチューブの口を噛む。
羽月の言う「治療を望む異能者」の事もよく分かる。
自分はコントロールが可能な能力だから助かっているだけだ、という事も。
だから尚更、平均を極端なものに合わせてしまおうとする異端の言葉が、伊伏は嫌いだった。
内心の態度は舌打ちを連続でする様な悪いものだが、それは態度に出さないでいる。
嫌いな物に対する感情を、羽月にぶつけても仕方がない。流石に、そこまでガキでも無い。
溜め息じみた吐息を漏らす姿を横目に、歯の先でチューブを噛み続ける。
「コピーするってのは、事象関係なく…?何をコピーしたんですか。
まさかカラーイラストや名画をそっくり手元に模造(コピー)出来るとか、そういう…??」
羽月 柊 >
頬肘をやめて背筋を戻し、
肩の上に居た小竜の一匹を手招きすると、膝上で転がすように撫でる。
もっふもっふしている。もふもふころころ。
男もそういった極端な平等主義は好きじゃない。
頭のカタイ馬鹿馬鹿しい連中だとも、思っている。
しかし、いざ自分が当事者になってしまうと、頭が痛い問題だ。
「事象関係無くという訳では無いと思う。
2回発現した時にコピーしたのは、"親しい相手の異能"だったからな…。
友人の教師は、他者に対する強い共感や同調、何らかの強い感情かもしれないと言っていた。
学園側からの診断見解にしてもそうだから、大層な名前を付けられた。
胡蝶の夢、《レム・カヴェナンター》とな。」
本来は入学時に異能診断を受けることが出来るが、
この男は在学中には"無能力"であった故に、必要が無かった。
今学園に再び舞い戻った身として、発現した異能が不随意性の不安定なこともあり、
かつて在学していたということを理由に、本来の形としてではないが、
簡易的に異能診断が出来る教師を頼ったのだ。
そうして名付けられたのが、この胡蝶の夢《レム・カヴェナンター》である。
伊伏 >
「…………」
小竜可愛いなぁ。なんでこんな可愛い生物がいるんだろう。ありがとう、世界。
そんな感情を詰め込んだ眼で、羽月が小竜をもふもふころころしている姿を見つめる。
この人何かにつけてこんな行動を外でもしてんのか?という、中年のギャップ問題もついでによぎった。
まあ、可愛いから良いか。猫や犬、げっ歯類とも違う可愛さが長毛の竜にはある。絶対ある。
それを転がす羽月が可愛いかどうかは、伊伏の感性に封じておく。
「《レム・カヴェナンター》。綺麗な響きですね。
親しい相手の異能をコピーするかもしれない…という内容にしては、"胡蝶の夢"だなんて、少し寂しげだなあ」
咥えていたアイスの容器から口を離し、ゴミ箱へと投げる。
風魔術で軌道を整え、離れたところでカコンという音をさせた。ナイスシュートだ。
「…それとも、親しい相手だと認識しているからこそ、自分と相手の境界線を見失えて、能力のコピーを行うのかな。
聞いてる分にはかなり面白いし、発動の条件もロマンチックで良いですね」
早く内容が割れる事を祈りますよと、伊伏は楽し気に微笑んだ。
開花したての自分の能力に振り回されている他人ほど、面白いものはない。
羽月 柊 >
小竜は男の手遊びに付き合う。
指の間を尻尾が交互に入り込む。手触りがとても良い。
人間、手触りの良いモノを永久に触っていたくなること、あると思うんですよ。
行動的に無意識的というか、手慣れた動きなので、恐らく良くしていることなのだろう。
「良いコントロールだな。
自分の魔力をちゃんと扱えている。」
頭の上で紫髪を乱しながらくつろいでいる小竜が、
手元の小竜に熱い視線を注いでいる青年を見つめている…。
「寂しいというのは良くわからんが、急に"背中から翼が生える"だのあった…。
名付けたモノも、そう言っていたよ。
親しい相手に対して、自他の境界線を越えるように、"契約"を行うようだから、と。
まぁ、この胡蝶の夢の契約とやらが、きちんと意識して行えるようにならん限りは、
下手をすれば異能疾患と変わりが無いがな…。」
伊伏 >
「夢と現実の境目を失くして漂うことを、胡蝶の夢…っつうんじゃ無かったでしたっけ。
他者への強い共感、親しいと感じている相手への結びつきが"もしも"トリガーならば、
境目を失くしているものへの名付けにされてる"胡蝶の夢"という名前は、どこか寂しいように思えますね」
ハシバミ色の瞳が、揺れる白を見つめている。
小竜の白ではない白を視界に捉えたまま、最後の方は独り言のように呟いた。
それから、はっとしたように手を振って。
「まあ、あの、あくまで俺が思ったことなんで。
あまり気にしないでもらった方がいいかもしんないですわ。聞き捨ててください。
異能が初めて発現した時なんか、みんな同じですよ?疾患と同じかもなんて思う方が、どこぞの思うつぼです。
……貴方も学ぶだけでしょ、センセ」
視線がまた小竜に戻る。ああ、可愛い。どこか転がされ慣れているようにも思えるのが、また。
羽月 柊 >
「いいさ、異能に関しては俺も一年生みたいなモノだ。
自分に関係が無いことと、触り程度しか学んでいなかったからな…。」
そういって男は息を吐く。
専門外のことにはどうにも疎い。
知っている事はどこまでも探求する故に研究者であるのだが。
こんな年齢になって新たに学ぶジャンルが増えたというのは、悩ましいことだが。
それでも、この教師は生徒と共に、友人と共に学んでいくのだろう。
「………まぁ、故に…《カヴェナンター》、契約者…になるのか。
俺も上手くは言えん。胡蝶の夢の状態から、きちんと結び…契約が出来るようにと、
名付けたモノは願いを込めたのかもしれん…。
…君にも異能があったら、そういう風に名前がついていたりするものなのか。」
指を甘噛みされていたりする。
手元のペットボトルの蓋に夏みかん味の水を注いで、彼らに与えたりする。
そろそろ空も、青年の瞳の色を通り過ぎようとしている。
じわりじわりと秋の虫が夜を告げようとし始めていた。
伊伏 >
「俺のですか。俺のは単純に青白い火が扱えるってだけで…」
伊伏が自分の指先に息を吹きかけると、蝋燭が風に煽られた時のような火が揺れながら出現した。
その青白く燃える火を人差し指の背に移し、ゆらゆらと発火させ続ける。
「名前は自分でつけちゃいましたね。火遊び《No.9》って言うんですよ。
発現させるのに名前を声に出す必要はないんで、気合入れる時くらいですかね。No.9と呼ぶのは…」
好きなアーティストのアルバムから取っちゃいましたと、若者らしい名付け理由だった。
語るに、発現したのは最近ではないが、名をつけたのはここ数年の事らしい。
伊伏の指の背から手の甲へと、火は静かに燃え広がる。ただ、そこに熱は無いようだ。
羽月や小竜が青白い火に近づこうとも、風に吹かれた木の葉がそこへ飛び込もうとも、熱に焦がれはしない。
赤銅を焦がす夕焼け空に相まって、"火遊び"の色は目立つ。
空を見上げ、もうこんな時間かとぼやいた。
羽月 柊 >
「火遊び…火遊びか。以前本の封じを行った時にも少し見たが、綺麗だな。
冷気の魔術に反応が無いが、熱が可変出来るのなら便利だろうな。」
揺らめく炎を桃眼に映しながら、僅かに眼を細める。
男の表情変化は少ない。親しいモノが見るならば、
少しばかり羨まし気に見えるのかもしれない。
「あぁ、自分で名付けたモノでも良いと言われたな、確かに。
俺はどう表現したモノかと悩んだせいで、さっきの名前になったが。
……さて、そろそろ陽が落ちるな。
俺も家に戻らねばならんな…。」
そう呟くと、手元の小竜がぱたぱたと飛び立ち、男もペットボトルの蓋を閉める。
傍らに置いていたコンビニ袋にそれを突っ込んだ。
伊伏 >
羽月の表情の変化は、察せなかった。
ただ、綺麗だと褒められれば、伊伏は素直にありがとうございますと返す。
「あー…夏の終わりって感じだなぁ、風が…。俺も飯食ったら帰ろ」
本を入れ直した袋をカーディガンの裏へしまいなおす。
ベンチから立ち上がり、軽く背伸びをした。
頬へとかかる余計な髪束を耳にひっかけ、羽月に軽く会釈をして。
「じゃあまた――っつっても、もう夏休みが終わるのも秒読みですかんね。
またどこかでというよりは、学園ですれ違う方が早そうだ」
それではさようならと肩越しに挨拶をすると、手の甲へ息を吹きかけて青白い火を消す。
ご案内:「常世公園」から伊伏さんが去りました。<補足:長めの黒髪を高く結っている。黒いタンクトップにオレンジのサマーカーディガン、ジーンズとサンダル。>
羽月 柊 >
「ああ、もし授業やらで逢ったらな。
機会は少ないかもしれんが…。」
なにせ、研究者という本業の傍らの仕事なのである。
兼業教師というのは、この学園にちらほらといるのだ。
今のこの学園では、素性の知れないモノでも割と安易に教師になれる。
何かを教える事が出来るのなら、誰かを導くことが出来るのなら、
それは誰かの教師足り得るのだから。
青年が去っていくのを見送る。
冷気の魔術は少しの間、伊伏の元に残ってくれるだろう。
頭に留まっていた小竜も飛び立ち、コンビニ袋を持って立ち上がる。
男は新たな名を携えて、帰路についた。
ご案内:「常世公園」から羽月 柊さんが去りました。<補足:乱入歓迎:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアスと手に様々な装飾品。くたびれた白衣。小さな白い竜を2匹連れている。>