2020/09/02 のログ
ご案内:「常世渋谷 底下通り」に紅葉さんが現れました。<補足:薄手のインナーに肩出しジャケット、スキニーパンツ>
紅葉 >  
「~~~♪」

夏季休暇が明けても非常勤のスクールカウンセラーである紅葉の生活は変わらない。
強いて言えば相談室に常駐する時間が少し増えたくらいだが、夜の時間は今まで通り飲み歩きに費やす予定だ。
今日も今日とて千鳥足。既にほろ酔い、頬を紅潮させて次に入る店を吟味している。

紅葉 >  
「ん~、焼き鳥はこないだ食べたしなぁ。麺類───あぁ~肉もええな」

通り沿いに立ち並ぶ屋台の看板を眺めては右往左往。
どれも魅力的な選択肢に見えてきてしまい、逆に決めかねている。

「こないな時、誰かに決めてもらえたら楽なんやけど……」

胡乱な瞳で道行く人々を見渡した。
しかし、酔っ払いと分かっていて絡む輩はそうそういない。
皆そそくさと離れていってしまう……

「んもぅ……いけずやわぁ」

口ではそう言いつつ、さほど気にしてはいない様子で歩き続ける。

ご案内:「常世渋谷 底下通り」にヨーコさんが現れました。<補足:160cm/眼鏡/探偵/裏医者/白ワイシャツスカート>
ヨーコ > はぁ………。

闇であっても、医者は忙しい。特に犯罪の温床にほど近いこの渋谷なら当然といえば当然。
急患が運び込まれ、面倒な処置が終わったのが先ほど。
シャワーだけを浴びて匂いを落として。
朝から何も食べてないわ、と気が付いてフラリと外に出る女。

「何でもいいから、何か1つ食べようかしら。」

頭をぽりぽりと掻いて、立ち並ぶ屋台を眺めながら歩いて……
どん、っと肩がぶつかる。

「あ、……すみませ………。」

ぶつかったところで、相手の顔を見て硬直。

紅葉 >  
普段なら千鳥足でも不思議と通行人に接触しないのだが、今宵は余所見が過ぎたらしい。
二の腕あたりに軽い衝撃を感じ、ぼんやりとしていた意識が引き戻される。
これは因縁を付けられかねないと億劫に思いながらそちらを見ると、ぶつかった相手は知っている顔であった。

「うん……? なんや、誰やと思たら"陽子"はんやないの。えらい久しぶりやなぁ」

こちらを見て愕然とする表情に気付き、にんまりと口角が弧を描く。
もともと細目がちな目が更に細められたようにも見えるだろう。
あなたもよく知る紅葉という女性の、揶揄うネタを見つけた時の表情だ。

ヨーコ > 「………………。」

一瞬押し黙る。
何のことか分からない、と振り切って背中を向ける?
久しぶりー、と昔の顔をして明るく声をかける?
逡巡が過ぎて、………逃げるタイミングを見失ったと分かれば、ため息をついて。

「………ええ、久しぶりね。
 紅葉先生は、今でも先生をしているのかしら。」

白衣こそ昔と同じだが、髪を伸ばして少しダウナーな表情はイメージとは違うやもしれず。
その笑顔を見れば、う、っと顔を顰める。

頭は良いから揶揄われることは分かるのだが、全く回避できない女。
そこらへんは、昔と変わっていない。

紅葉 >  
「んふふ、うちは今でも"かうんせらぁ"続けとるよ。
 半分は趣味でやっとるようなもんやし、やめる理由もあらへん。
 あんたはんは……ちぃと見ない内に随分暗くなったんとちゃう?」

長い髪も似合っとるけどな、と言って小首を傾げながらくつくつ笑う。
昔はもっと溌剌としていたはず───あなたの雰囲気の変化を気にしているようだ。

なお、当の本人は一年前と容姿には全く変わりがない。
違うといえば服装くらいだが、去年と同じ服を着ている方が問題と言える。

ヨーコ > 「なぜか不思議と生徒には好かれていたものね。
 いやまあ、だからこそ向いているんでしょうけどね。」

頭を抑えながら、相手の言葉に少しだけ笑ってしまい。
なんだかんだ、何故か分からないけれど向いている、はあるものだ。

「…ちょっとね。
 先生も医者もやめたんだから、いろいろあったことくらいは分かるでしょ。
 今はこっちの街で探偵やってるわ。
 世界一向いてないとは思うけれど、ちょっとした理由でね。

 にしても、貴方は全く変わらないわね………」

それはそれで腹が立つわ、なんて、笑いながら口にして。

「どっちでもいいけど、何か食べない? 朝しか食べてないのよ。」

一応。 白衣に血がついていないかは確認する。

紅葉 >  
「陽子はんも医者が天職や思てたんやけどなぁ。それが今は探偵?
 人生分からんもんやねぇ……」

あなたが突如として自分の前から姿を消した理由を紅葉は知らない。
カウンセラーらしく困った事があれば相談に乗ると言ったこともある。
何も言わずにいなくなったなら自分には話せない事情があったのだと思うことにしていた。
酒の席だったので本気に取られていなかったのかもしれない。

「くふ、何年経っても変わらぬ味っちゅうんもええもんやろ?
 この辺りは最近できたとこやさかい、老舗もなんもあらへんけど……
 うちも丁度、飲みの相方探しとったんよ。なんか食べたいもんある?」

どこ行くか迷っててん、と肩を竦める。
特段あなたを訝しむような様子は見受けられず、相変わらずの馴れ馴れしさだ。

ヨーコ > 「そのつもりだったんですけどね。
 わかんないものよ。」

溜息をつきながら、酔っぱらっている相手の顔を覗き込む。
………酔いつぶれているようには見えない。まあ、大丈夫か。

「相方……、あんまり長く飲めないわよ。
 朝からずっと仕事で、ちょっと疲れてるのよ、私。

 んー、何でもいいけど。
 そうね、ラーメンか何かでいいわよ。

 何年たっても変わらない、ねぇ。
 確かにあなたの雰囲気は変わってないけど。」

眼鏡を取って、瞼の上から目を揉む女。
何時も疲れているのは昔から変わらず。
指を伸ばして、その頬をぷに、っと突っついて見せた。

紅葉 >  
既に幾らか出来上がってはいるが……このくらいは彼女にとってデフォルトのようなもの。
ここから酔い潰れるには相当の量を呑む必要があるのをあなたは知っている。
なにせ、一年前まで肝臓を始めとした彼女の健康状態を管理していたのはあなただ。

「明日もガッコやさかい、そない遅くまでは飲まへんよ。
 陽子はんもずいぶん溜まっとるみたいやし、呑んで吐いてスッキリしまひょ♪」

あ、ほんまに吐いたらあかんで? と肩を揺らして笑いつつ。
ラーメン屋なら近くにアテがあるので、そちらへ向けて歩き出した。

「自分がどんなに変わってもうても、ずっと変わらんものが一つでもあったら安心するやろ?
 行きつけの店とか、馴染みの顔とか……んむ」

ぷに、と指の食い込んだ頬はハリがあり、年齢を感じさせない若々しさを保っていた。
その先にある悪戯っぽい笑顔も当時となんら変わりない。

ヨーコ > 「分かってるわ。まあ、今は私は遅くまで飲んでも構わない自営業なんですけどね。」

ふふ、と少しだけ自由をひけらかすように笑って見せて。
……すぐに、苦笑を浮かべ。

「ああ、まあ、貴方もよっぽど自由だったわね。
 大丈夫よ、吐くまで飲む前に寝ちゃうわ、今日の調子だと。」

言う相手が悪かった、と肩を竦める。


「………………。
 まあ、それは、ね。
 変わらないものね、不思議な人。」

相手の言葉に思うことがあるのか、少しだけ押し黙り。
その上で、ふ、っと表情を緩める。 変わらない相手に、心が少しだけ穏やかになるのを感じる。


「でも、あんまり揶揄ってると、お返しの一つでもされるわよ?」

こちらは頬をちょっとだけ膨らませて、相手の頬をつんつく。

紅葉 >  
「むぁ、何すん───」

むにむに。抗議の声は一本の人差し指によって封殺される。
これではどちらが酔っ払いか分からない、というツッコミはそっと胸にしまっておいた。
こうやって気安く絡める相手も貴重なのかもしれないので。

「ほら、着いたで陽子はん。うちの柔肌突いとる場合やないで」

何度目かのつっつきをひらりと躱し、シンプルな屋台を手で示した。
『らぁめん』の暖簾がいかにもレトロな雰囲気を醸し出しているが、店構え自体は小奇麗なものだ。
そもそも店主は異邦人。おおかた、店を出すにあたって現地の様式を真似たのだろう。

「お邪魔しますっと」

暖簾をくぐり、あなたと並んで屋台に腰掛ける。
ラーメンの味は醤油ベースの一種類のみ。異世界産のエールでいただくスタイルだ。

ヨーコ > 「はいはい、貴方にいいように喋らせると絶対敵わないのは分かっているもの。
 私なりの対抗策よ。」

なんだかんだで、最初は逃げることまで頭に浮かんだが、こうやって会話をしていると昔を思い出さなくもない。
情熱にあふれていた頃を思い出して、ふん、と鼻を鳴らしつつ。

「それにしても、本当に何一つ変わってないの?
 非常勤のカウンセラー、一筋ってわけ?
 この島より、本土の方にいい仕事の一つや二つあるでしょうに。」

メニューに悩む必要が無ければ、むしろこちらから尋ねる。
短い期間だったが、ここはハードな職場だ。
離職率も高いと思っていたが。

紅葉 >  
「くふふ……昔は逆立ちしたってうちに敵わへんかったのに。
 強なったなぁ陽子はんも」

しみじみと言いながら二人分のラーメンとエールを注文。
喉の渇きをとりあえずお冷で潤しながら、あなたの問いに首を傾げる。

「言うたやろ? ずっと変わらんものがあったらええよなって。
 この島で暮らす子達にとって、そういう存在でありたいんよ。うちは」

実入りと安全面を考慮すれば間違いなく本土の方が条件はいいだろう。
しかし、この常世島に拘る理由が紅葉にはあるようだった。
糸目の奥で穏やかな、慈愛にも似た感情を感じ取れるかもしれない。

「陽子はんこそ、探偵やなんてどういう風の吹き回しなん?」

そんな細目がうっすらと開かれ、真紅の双眸があなたを見据えた。
相席したからには問われる覚悟はあるのだろうな、と暗に告げるかのように。

ヨーコ > 「この街で過ごしてたら、嫌でもそうなるわ。」

相手の言葉に、偉ぶるでもなく嬉しそうでもなく、少しだけ擦れた表情で肩を竦める。

「……変わんないわね。
 やんなっちゃう、帰ろうかしら。」

相手のその変わらなさに対して、空を見上げるように溜息一つ。
ゆるいようで信念を持ったその言葉に呆れたような声を漏らすが、僅かに憧憬も混じる。
だから、当然席も立たないし、腹を立てた様子も全くない。


「………あー、そうね。
 …異能疾患って奴? この近隣でよくある、霊障だとか怪異だとか、そっち系の。
 それにかかっちゃっただけよ。」

元々嘘は下手だ。
それでも、この裏表しかないような場所で過ごしているだけあって、それなりに形にはなってきた。
この状況で、騙せる相手と騙せない相手くらいは、見分けられるのがその成長の証左。

「今日明日じゃないわ。 でも、いつかボン。」

掌を開いて、爆発するようなイメージを伝えた上で。

「島が研究はしてるみたいだけれど。
 黙って待ってもいられないし。 そんな状況で継続して患者も生徒も見れやしない。」

肘をついて、できるだけあっさりと簡潔に事実を伝える。

紅葉 >  
「つれない事言わんといてぇな。
 別に、変わるんが悪い事っちゅうわけでもないんやし……」

そうフォローを入れるが、本気で厭がられていないことは分かっていた。
職業柄はもちろん、過去に散々あなたを揶揄い通してきた経験から、あなたの細かい癖を把握している。
本気かそうでないかくらいは今でも分かるし、だからこそ続けて告げられた内容が真実であることも分かってしまう。

「異能疾患……うちの知らん間に、そないな事になっとったんか」

それまでの飄々とした態度が鳴りを潜めるほどに深刻な事情。
相談できなかった───否、したところでどうしようもなかったのも頷ける。
軽い調子を装ってはいるが、不本意に医療界を去らなくてはいけなくなった辛さは測り知れない。
それを知って揶揄えるほど無神経ではない、という自負はあった。

ヨーコ > 「そゆこと。別にまあ、なっちゃったものは仕方ないわ。
 今は手掛かりを集めるためになんでもいいから依頼を受けて、自分の情報とセットで探してるってわけ。

 いいのよ、別に。 それじゃあ食べましょ。」

やってきたラーメンとお酒を前に、片目を閉じて促してみるが。
食べるところまでは元気だったのに、お酒を飲み始めればすぐに頭をふらつかせて。

紅葉の前で、がくん、っとテーブルに突っ伏して寝てしまう。

昔と変わらぬ姿を、最後まで見せてしまうのだった。

ご案内:「常世渋谷 底下通り」からヨーコさんが去りました。<補足:160cm/眼鏡/探偵/裏医者/白ワイシャツスカート>
紅葉 >  
よほど疲れていたのだろう。それほどまでに手掛かり集めに必死ということだ。
起こさないように、そっと陽子の髪を撫でる。
一年前は短かった彼女の髪は長く、そして手入れが疎かになっていた。

何も言わずに器を片付けてくれる店主に礼を言って、二人分の代金を支払う。
一介のカウンセラーである紅葉に彼女の問題を解決する術はない。
ならばせめて、多くを失った彼女にとって数少ない"変わらないもの"であり続けよう。

「ほな───いい夢見ぃや、陽子はん」

そう囁いて、独り屋台を後にした。

紅葉 >  
───その日、あなたは昔の夢を見た。
情熱をもって医師と教師、二足の草鞋を履いていた頃の夢だ。
旧友との再会が当時の記憶を呼び起こしたのかもしれない。

夢の内容はなんでもない日常風景。
ああ、そういえばこんなこともあったな、と思うような取り留めもないひととき。
穏やかな時間が流れていき───次に目を覚ました時、あなたは自宅の寝室で横になっているだろう。

昨夜の飲みは夢の中の出来事だったのだろうか?
そんな疑問に答えるかのように、白衣のポケットには紅葉の連絡先が書かれたメモが入っている。
あの頃と変わらない番号とメールアドレスだ。

視界の端、朝日の差す窓の外を、一匹の淡く光る蝶が舞っていった。

ご案内:「常世渋谷 底下通り」から紅葉さんが去りました。<補足:薄手のインナーに肩出しジャケット、スキニーパンツ(後入り歓迎)>