2018/09/06 - 21:46~22:46 のログ
ご案内:「ロビー」にアリスさんが現れました。<補足:金髪碧眼の一年生。(乱入歓迎)>
アリス >  
私、アリス・アンダーソン。
今年の四月から常世学園に通っている一年生!
突然だけど、放課後のロビーって好き?
私は好き。自由だから。

漫画を読む人、勉強をする人、おしゃべりに花を咲かせる人。
私は今日は……お化粧にチャレンジしたいと思っている。

メイク!! それは!! リア充に至るまでの階梯のひとつ!!
ぼっちを卒業した以上、さらなる青春ランクアップを目指し、私は今、セルフネイルに挑戦する!!

アリス >  
買ってきたファッション誌とお化粧ポーチを置く。
まずは呼吸を整える。
リア充の呼吸を。リア充の呼吸は太陽の呼吸、私に勇気をくれる。

まずは初心者向けネイル特集を見る。
あった。秋に注目を集める単色ネイル。
これでいこう。グラデーションネイルとかより簡単そうだし。

やっぱり色は紫がいいわ。
大人の色だもの。ポリッシュ、マニキュア液を取り出してさっと左手の人差し指にひと塗り。

なぁんだ、楽勝じゃない!
こんな感じでみんなオシャレを楽しんでいたのね!!
自分の手で自分のカラーが変わっていくの、素敵で楽し……ん?

「えっ?」

よく見たら左手の爪が全部毒々しい紫になっていた。
これ……前に漫画で見た毒爪じゃない?
刺さったら人が意のままに操れる系じゃない?

ちょっと塗りムラがあって垂れてる部分があるのが一層毒々しい。

アリス >  
これはまずい。
リア充というか毒属性だ。
怪物ハンターのゲームでも一発で飛竜が毒にかかりそうな色。

ネ、ネイルリムーバー(除光液)を使って落とさなくちゃ!!

その時、紫のポリッシュを倒しそうになる。
危ない!!
慌てて左手で取ろうとするけど、無理。
結果――――……左手が全部紫のポリッシュで染まってしまった。

「ひっ」

毒手だこれ!!

 毒手。それは熱砂と劇毒、そして薬効のある植物が入った壷を用意する。
 熱砂に手を突きいれ、傷ついた手を毒薬に浸し、
 体に毒が染み入る前に手を薬効で解毒する、を繰り返す。
 手全体がサツマイモのような色になる頃、毒効を帯びた殺手が完成する。

心の中で解説してる場合じゃないよう!!
なんかこう、花に触れたらサモ…って音と共に枯れそうな色の左手になった!!
リア充どころか闇の拳法家になってしまった。
広がるポリッシュの匂いは異能で無害な匂いに変換しておこう。

ど、どうする? どうしよう!?

アリス >  
とりあえず携帯デバイスで手についたポリッシュを落とす方法を!!
これ、ネイルリムーバーで何度拭っても取れないんだけど!?
右手だけで必死に携帯デバイスを操作した。

皮膚についたポリッシュはぬるま湯に浸してふやかして取りましょう。
なんかそんな知恵袋的サイトが検索にかかった。

……えっ!?

そんな悠長な!! こっちは左手が毒手になってるんだよ!?
毒手をお湯に浸してるところ人に見られたら困るし!!
アイツの異能は毒手だとか思われたら困るし!!

周りに見えないように左手をテーブルの下に隠しながら嫌な汗をかいた。
帰ってママに泣きついたら主婦の知恵的な何かで解決しないかな!?

アリス >  
あ、ダメだ。帰るまでに人に見られる。
そしたらミス毒手コンテストで優勝してしまう!!

左手を異能で作った手袋で覆うとか!?
ダメだよ、この残暑厳しい時に手袋とか怪しすぎる!!
左手にいっそ包帯を巻くとか!?
ダメだよ、厨二病を発症してると勘違いされちゃう!!

鼓動が跳ねる。
誰もがひとつ、胸に持っている原始の音。
恋もしてないのに確実に聞こえる、心音。

くそう、何がリア充よ!!
私には早かった!! レベルが足りなかった!!
アリス・アンダーソン! アンタに人生は重荷ッ!!

涙目で左手を隠しながらロビーから動けなくなる。

アリス >  
そもそもどうしてこんなことになったのかしら。
うん、私が学校でネイルとかツケマとかしてる子たちが羨ましかったからだわ!!
格好つけて私もオシャレとかするんですけど? アピールしたかったからだわ!!
全部全部全ッ部私が悪いわ!! アハハハハ!!!

なんか笑えてきた。
同時に泣けてきた。
人の感情としては極限に至ったものだと思う。

その場から動けない。
動いてはいけない。
気づかれては――――いけない。

昨日見たホラー映画よりよっぽど怖いよこの状況!!
現状で詰んでるしどう動こうとバッドエンドしか見えない!!
将棋やチェスで言うところのチェックメイトってやつね!?

アリス >  
劈く想いは誰にも響きはしない。
その時、ロビーの入り口に女教師が現れた。
真っ直ぐに私の元にやってくる。

えっ? えっ? 何事? 私の罪? 私の罰?

混乱していると私の左手をガシッと掴んで。
剣呑な表情で私の肩に手を置いた。

『話は聞いたわよ、真っ青な顔で変色した手を隠してる子がいるって』
「へ?」

バ………バレてた!!
そして誰かが心配して先生に言ってた!!
誰ですか告げ口したの!! 半泣きで女教師の顔を見上げる。

『大丈夫、保健室に行きましょう。何が原因でも、必ず助かる……ううん、助けるから』
「ちょ、ちょっと、待っ……」

私は毒手を隠そうと必死になりながら、女教師に保健室に引きずられていった。

BAD END No.11 タイムオーバー。
そんなことをぼんやり考えた。

ご案内:「ロビー」からアリスさんが去りました。<補足:金髪碧眼の一年生。(乱入歓迎)>