2020/09/08 のログ
ご案内:「宗教施設群-修道院」に神樹椎苗さんが現れました。<補足:黒いロリータ服とグレーのキャスケット。ネコマニャンポシェット装備。>
ご案内:「宗教施設群-修道院」に神代理央さんが現れました。<補足:風紀委員の制服に腕章/腰には45口径の拳銃/金髪紅眼/顔立ちだけは少女っぽい>
神樹椎苗 >
この日の講義を終えて、日の高さも低くなり始めた頃にふらりと、修道院立ち寄る。
そう、特別な理由はなく、ただ会いたくなったから──それだけで来ていいのか少しばかり悩んだが。
グレーのキャスケットを被り、修道院の前まで行く、が、そこで首を傾げた。
以前来たときは出ていた、相談受付の看板が出ていない。
修道院の扉も閉められていた。
(──今日は施療院の方ですかね)
最近、『姉』は落第街で医療支援活動を行っている。
一度様子を見に行ったのだが、なるべく来ないように言われてしまった。
『姉』を心配させるのは本意ではないので、大人しく従っている。
(となると、今日は会えねーですね)
仕方のない事だが、少しだけ不満が顔に出てしまう。
本当ならもっと姉と一緒にいたいのだ。
折角、可愛いと褒められた服を着て来たと言うのに。
もしかしたらまた、熱中症で倒れてるだけじゃないだろうか。
なんて、そんな同じ失敗を繰り返しはしないだろうと思いつつ。
開かないとわかりながらも扉に手を掛ける。
「────?」
──開いた。
一瞬、意味が分からず固まってしまったが。
まさか本当に倒れてるのではないだろうか。
「姉、いるのですかー?」
扉の隙間から顔を覗かせて、中に声をかけてみる。
しかし、反応はない。
本格的に倒れているのかもしれないと、非常事態を考えて院内に入る事にした。
──結果としては、何もなかった。
姉も居なければ、空き巣かなにかに荒らされた様子もない。
むしろしっかり片付けもされている。
きっと、姉がヒマさえあれば掃除や修繕に動き回っているからだろう。
(なんだ、ただ出掛けてるだけですか)
鍵も掛けずに出て行ったとなると、余程慌ただしい何かがあったのか。
しかし、そう言う事ならそのうち帰ってくる可能性も高い。
しばらく待っていれば合えるかもしれない。
玄関の前に座り込む。
暇や退屈を過ごすのは、さほど苦痛ではない。
留守番がてら、ここで時間を過ごす事にしよう。
神代理央 >
落第街での聞き込みは成果を生まず。
警邏の最中に行うには、効率が悪いとの結論に至り、違う方法を模索するに至る事になる。
とはいえ、直ぐすぐ良い方法が思いつく訳では無い。考えを纏める為にも、先ずは『犯行現場』である修道院へと足を運んだのは、放課後遅く。黄昏の夕日が修道院を染める頃。
久し振りに警邏が非番、という事もあって、珍しく日が暮れる前に此の場所を訪れる事が出来た――。
コツリ、コツリと革靴を鳴らして。石畳を踏み締めて。
訪れた修道院の玄関先には――ぽつんと座り込む、少女の姿があった。
一瞬、マリーの関係者か。或いは、彼女を『待つ』者か。
少なくとも玄関前に座り込んでいる、という事は――マリーはきっと、此処に戻ってきてはいないのだろう。
となれば、行方が分からなくなって二日目となる。そろそろ、楽観視するのは難しくなってきただろうか。
まあ、先ずは。座り込む少女に事情を聞いてみようかと。
ゆっくりと近づいて言葉を投げかけようと――
「……すまない。此の修道院のシスターは不在か――」
投げかけようとした言葉は、途中で打ち切られる事に成る。
何故なら、眼前の少女はつい昨日、恋人に送られた『母親』のものと同一であったが故に。
即ち、此の少女は『神樹 椎苗』であるという事。
それに気付いてしまえば流石に。驚いた様な表情を隠す事も出来ず、少女の数歩前で立ち尽くす事になるのだろうか。
神樹椎苗 >
ただただぼんやりと、『姉』を待ちながら時間を過ごして。
いつの間にか日が暮れた頃に、靴音が鳴って顔を上げた。
そこに居たのは一人の少年。
名前を神代理央。
『鉄火の支配者』という異名を持ち、過激な制圧行動で違反部活から恐れられる存在。
優秀な風紀委員であり、その産まれから何までエリートに属する。
そんな少年に対する椎苗の評は――。
「――クズやろー」
まるでゴミムシを見るような、蔑むような視線が少年に向けられた。
神代理央 >
初手で投げかけられた言葉は罵倒。向けられる視線は侮蔑。
初対面の少女に向けられるには随分な態度に、僅かに眉を潜めながらも、取り敢えず歩みを進める。
恋人の母親、と聞いている少女に聞きたい事もあるのだが、今回の己の目的はあくまで修道院の調査。
「…随分な言い様だな。その言い草では私の事を知らない訳ではあるまいに」
少女にこんな態度を向けられる理由とすれば、大凡恋人に対する事だろう。そしてそれは、大きく否定出来るものでもない。
小さな溜息を吐き出しながら、少女の三歩前で立ち止まる。
「……まあ、何でも構わないが。中に入りたいのだが、構わないかね?」
神樹椎苗 >
すっと立ち上がり、少年の前まで四歩進む。
体感温度がマイナスにまで下がりそうな冷たい視線で、少年を見上げた。
「気に入らねーですか。
そうですか。
なら言いなおします」
すう、と息を吸い、一息で。
「恋人と迎えた初夜で処女の娘に避妊もせずに連戦しろくにデートも恋人らしいこともしないうちに他の女のために奔走した挙句ぼろぼろになっている恋人にも気づかないでほったらかしてやっと落ち着いたと思えば妙な相手に因縁付けられすれ違いの末に喧嘩して捨てられかけて仲直りしたと思えばまた一人で落第街をほっつき歩いて大怪我して恋人が暴走するきっかけを作って諸々片付いたと思ったら夏祭りのデートでお持ち帰りした上に女に避妊具を用意させるようなクズやろー」
と、言い切った後。
「なにしにのこのこ現れやがったのですか。
懺悔ですか、悔い改めにでも来やがったのですか。
残念ですがお前の懺悔を聞く優しい姉――シスターは不在ですから帰りやがれですよクズやろー」
言いながら、右足で少年の脛を蹴ろうとする。
神代理央 >
「………激しく罵倒されているのは理解出来たんだが、少しは区切って話してくれないか。全て聞き取れたかちょっと怪しいんだが…」
9割くらいは心当たりがあるし、否定の言葉を持たないが。
あまりに一気に告げられた言葉は、怒りよりも先に疑問符を頭に浮かべる事に成る。ぱちくり、と言わんばかりの表情で、首を傾げてしまうのだろう。
まあ、全て聞き取れたとしても否定の言葉は持たないのだが。
「……親心に満ちた貴様を無碍にするのは本意では無いのだがな。
懺悔にでも、悔い改めに来たのでもない。強いて言うなら――そうか。"やはり"シスターは不在か」
右足を蹴飛ばす少女を止める事は無い。
痛みに少々顔を顰めつつ、シスターの不在を告げる少女の言葉には――失望の色を隠さず、深い溜息を吐き出すのだろうか。
神樹椎苗 >
「いえ、べつに聞き取って欲しい訳でもねーですし、聞かなくていーです。
すべて圧縮してクズやろーで十分ですし。
お前の能力自体は評価しますが、これとそれとは別の話です。
それよりも――」
むっと目を細めて、少年を睨みつける。
「『やはり』とはどういう意味ですか。
何があったのか、事情でも知ってやがるんですかクズやろー。
詳しく話しやがれです」
そう問い詰めるように言いながら、右足は止まらない。
淡々と連打、連打、連打。
神代理央 >
「……貴様が沙羅の事を大事に想っている事は理解出来た。それに、聞き取れた内容については否定の言葉を持たんしな。
寧ろ、能力を評価してくれているだけ、有難いと思っておくとしよう」
呆れた様な溜息と共に、己を睨む少女を見下ろす。
「……それを貴様に言う理由も、説明してやる義理も無い。
少なくとも、出会い頭に罵倒と暴力を振るう様な者に丁寧に語って聞かせる程、私はシスター程慈悲深くない故な」
フン、と少女を一瞥すれば、好い加減痛みを訴え始めた脛を庇う様に数歩身を引いた後、彼女の横を通り抜けて修道院へと足を進めようとするだろうか。
何事もなければ、少女の話をゆっくり聞いてやっても良いのだが――今は、少しでも早く『犯行現場』を見ておきたい、と気が焦ってしまっているのだろうか。
神樹椎苗 >
「待つのです、いくら風紀でもヒトの家に勝手に入っていい訳はねーのです。
シスターに、『姉』に関わる事ならしいにも無関係じゃねーです。
だから事情を話しやがれってんですよ」
すれ違おうとする少年の服を掴んで引き留めようとする。
「妙な横暴をするようなら本庁にクレーム入れますよ。
まず説明義務を果たしやがれです」
止まろうとしなければ、止まるまでしつこく妨害するだろう。
神代理央 >
「……事情を話したところで、何がどうなると言うのかね。
貴様にとっては『姉』かも知れんが、学籍情報においてその様な事実は認められない。
よって、私にとって貴様は『無関係の生徒』でしかない」
服を掴まれれば、立ち止まって少女に視線を向ける。
その視線は、感情の色を見せぬ淡々としたモノ。
「クレーム?好きにすると良い。ならば今此の場で、公務執行妨害で補導しても良いのだぞ。
強引な手段に訴えないだけ、有難いと思って欲しいものだが」
突き放す様な言葉。拒絶する態度。
しかし、掴まれた服を振り解こうとはしない。立ち止まった儘、少女をじっと見つめるばかり。
それは、少女の気持ちを理解出来るが故のもの。
無碍に出来ず、振り解けず、己の言葉によって少女が諦めてくれればと。冷たい表情と言葉の中に、僅かな苦悩が滲んでいるだろうか。
神樹椎苗 >
「――そうですね、たしかに『無関係』ですね。
まったくお前の言う通りなのがむかつきますね」
チッと大きく舌打ちをしながら、それでも手を離すわけではない。
表情は苦々しく歪んでいる。
「なるほど、公務と来ましたか。
それはつまり、いよいよ『姉になにかがあった』って事ですね」
声音に少しの焦りと、苛立ちが混ざる。
しかし、その後にすぐ大きく息を吐いて、頭を切り替えた。
そして方々に意識を『接続』する。
「――風紀のデータに事件の報告はあがってねーですね。
となると、事件性が認められない内容って事ですか。
なら、少し待ちやがれですよクズやろー」
そう言ってから、後ろに引っ張って手を離し、少年より前に出る。
「お前に鑑識みてーな能力はないはずです。
現場を調べるというのなら、しいの方が多少、得意と言えます」
そう言いながら、少年より先んじて、玄関の扉を開けて修道院の中を覗き込んだ。
神代理央 >
己の言葉にも態度にも、決して諦めない少女。
気の強さと思い立ったらすぐ動き出すところは、何となく恋人に似ている。『親子』は似る者なのかな、と少しだけ苦笑い。
「………何気なく物騒な事を言わなかったか。風紀委員会のデータベースにアクセスするのは、それなりに問題行動なんだが」
と、小さく溜息を吐き出しながらも、それを咎める様な素振りは見せない。
「…やれやれ。まあ、手伝ってくれるというなら止めはしないが…」
と。溜息に交じるのは小さな苦笑い。
少女が諦めずに行動を起こした事を喜んでしまうのは、己もまだまだ甘いという事なのだろうか。
さて、そんな少女に続いて己も修道院の扉へと。
少女の頭の上から己も顔を突き出して、ひょい、と中を覗き込もうとするだろうか。
神樹椎苗 >
「そうです、手伝ってやるのです。
感謝して崇めやがれば今後の対応も考えてやりますよ」
また大きく舌打ちをしながら、二人で並んで修道院の中を覗き込むことになるだろう。
修道院の中は、きれいに掃除されている。
それは先ほど様子を見に入ったときから変わっていない。
問題は、椎苗以外の人間が出入りした痕跡があるかどうか。
「――しい以外に出入りした痕跡はありますね。
この修道院が掃除されたのは昨日、それ以降の痕跡が二人分。
どちらも男のもので、姉のものではありませんね」
そう、わずかな埃の積もり方、動き方、微細な情報から『計算』を重ねて『解析』する。
その結果わかったのは、少なくとも丸一日以上『姉』が戻っておらず、男が出入りしているという事実。
それだけでも十分に異常事態だ。
「一応、念のために聞きますが。
姉に『なにかがあった』と思われるのはいつの事ですか」
そう少年に確認をとる。
神代理央 >
「…すまないが、少女を崇め奉る趣味は無いのでな。
だから貴様も、その態度を改める事は無いさ。嫌う相手への対応を、無理に変える必要も無い」
僅かに肩を竦め、舌打ちする少女に応えつつ。
少女と共に中を覗き込めば、意外な程綺麗に整頓された修道院が見える。
争った形跡は一切感じられない。それどころか、つい最近綺麗に清掃した様にすら見える。
「……昨日掃除された?修道院の関係者か何か、だろうか。
そして、掃除した後に男二人分………」
ふむ、と考え込む。
昨日、落第街の施療院へ送り届けた担当医からマリーが帰って来た、見つかったという類の連絡は来ていない。
即ち、昨日の時点で『マリーは修道院にも施療院にも帰ってきていない』
掃除したのはまあ、マリーの関係者だとしても。その後に訪れた男二人と言うのは――
「……修道院を掃除したのは、関係者かも知れないが…。
その後に此処を訪れた二人、というのは些か解せぬな」
ふむ、と考え込む様な素振りと共に少女の言葉を聞き入れる。
そして、少女に問い掛けられれば暫し考え込んだ後――
「……いなくなった、と連絡が来たのは一昨日の夜。
つまり、一昨日の何処かの時間で、シスターはいなくなったのだろう」
彼女の問いに答えた後、振動音と共に震える己の端末。
懐から取り出した端末の画面を見れば、其処に映るのは恋人からのメール。昨日己が依頼した違反組織についての情報が記載されているだろうか。
「……違反組織による誘拐、という可能性も零ではない。勿論、誘拐されたと断言する事は出来ないが。
その可能性を考慮すれば、掃除の後に訪れた二人の男というのは――調べる価値が、あるかもしれんな」
神樹椎苗 >
少年の言葉を確認すると、意識を外部に『接続』し『拡張』する。
常世島内の整備された場所には監視カメラが設置されている区画が多い。
それはこの宗教施設区画も例外でなく、この近辺にも少数だが設置されていた。
「――なるほど、つまり一昨日以降に出入りした思われる男二人が怪しいですね。
修道院に出入りした可能性があるのは女二人と男二人。
男の方は黒いキャソックが一人に、大男が一人です」
そう、この近辺のカメラのデータから映像を抽出。
鮮明とまでは言えないが、個人を特定するには問題ない程度の解像度だ。
それを以前から特定していた神代理央の個人端末へと転送する。
「今、お前の端末にその男二人の映像データを送りました。
どうやら二人組と言うよりは、一人が二組と言ったところでしょうかね。
掃除した関係者と言うのは、このカソック姿の男でしょうか」
眉間にしわを寄せながら、左手でこめかみを叩いて言う。
短時間で情報処理を行った事による、脳神経の炎症で軽い眩暈がしていた。
神代理央 >
「…女二人、というのは恐らく私に連絡をくれた女性達だ。第一発見者、とでも言うべきだろうか」
という事は、その女性二人の後に出入りしているという男二人が怪しいだろう。とはいえ、黒いキャソック姿という事は、修道院の関係者の可能性も捨てきれないが――
「一人が二組……つまり、別行動だったという事か?
そうなると益々分からないな。私はてっきり、違反組織の構成員が証拠隠滅にでも訪れたのかと思っていたが。
ん、有難う。早速見せてもら--」
其処で、己の言葉は止まる。
止まる、というか、文字通り、絶句。
「………神樹。この、ちょっとだけ背の高い方。年齢が高い方、とでも言い換えようか。こいつ、その、同僚というか風紀委員――」
そう告げようとして、こめかみを叩く少女に気付く。
少し困った様な表情を浮かべて、かがみこむ様に少女に視線を合わせれば。
「………余り無理はするな。沙羅もそうだが、誰かを助ける為に自らの身を削り過ぎるのは、その相手も決して望まない事だろう。
私の小言など聞きたくは無いだろうが、貴様に何かあればきっとマリーが悲しむ。だから、無理は、するな」
神樹椎苗 >
「――別に、無理だったらそもそもやってねーです。
ただ、一応、話は聞いておいてやります」
また不愉快そうに舌打ちをして、少年から目をそらした。
「それより、一方が風紀の同僚ってんですか。
となれば、このキャソックの男が一番怪しい事になりますね。
証拠隠滅のために複数回出入りしている、周囲の不信感を減らすための偽装工作をしている――そう考える事も出来ます」
とはいえ、確証はまるでないのだが。
少なくともこの修道院に他の聖職者が居るとは聞いた覚えがない。
「しいは、姉から他に手伝いが居るような話は聞いた覚えがねーです。
怪しいと言えば怪しいですね」
さて、と顎に手を当てて考える。
より詳しく調べるなら、中に入って手がかりを探す事も出来るだろうが。
「今もこの男が出入りしているとなれば、下手に接触するのもまずいですね。
時間をかけて調査する、というのもリスクが高そうです」
どうしますか、と問うように少年を横目で窺った。
神代理央 >
「……聞いて貰えるだけ、有難いと受け取っておこう」
舌打ちしながら目線を逸らせる少女に小さく苦笑いを浮かべる。
「…しかし、此の映像を見る限りだと、どうにも親し気というか。仲が良さげというか…。
此のキャソックの男には見覚えが無いのだが…」
とはいえ、此の映像以外に情報も無いので此処から手掛かりを得るしか無いのだが。
うーん、と悩みながら視線を彷徨わせる。
「…確かに、シスターは一人で修道院も施療院も切り盛りしていた筈だな。となれば、やはりこのキャソックの男が、何かしらの情報を得ているか。或いは事件に関係しているのか…」
取り敢えず、此の映像の男を風紀委員会のデータベースから探してみるところからだろうか。
「……今更中を調べたところで、出て来るものは少ないだろう。
それよりも、今得た情報を整理して次の一手を考えたい。
『シスターは二日間戻ってきていない』
『研究の為に拉致を繰り返す違反組織が、最近活動を始めている』
『シスターがいなくなってから修道院に出入りした男が二人。一人は風紀委員。もう一人は情報無し』
現場でこれ以上我々が動き回るより、御互いに此の情報を持ち帰って精査した方が良いと考えるものだが」
端末を操作して、恋人から送られて来たメールを少女に見せながら。
現場での行動は一度終えるべきではないかと、少女に提案するだろう。
神樹椎苗 >
「――同感ですね。
これだけわかれば十分でしょう。
大丈夫です、『姉』は簡単にどうにかなるようなヒトじゃねーですから」
そう自分に言い聞かせるかのように呟く。
しかし、あのヒトはどこか、その時になったら仕方がないと諦めてしまうような、そんな潔さがある。
だから少しでも足を動かして情報を集めに行きたいところなのだが。
「違反組織が動いてる、ですか。
となると、しいはあまり動き回るわけにはいかねーですね。
残念ながら自衛する程度の能力だって、しいにはねーですから」
悔しいが、姉や『娘』に心配をかけるわけにはいかない。
ミイラ取りがミイラ取りになるような展開になっては、目の前の少年にも迷惑をかける事になるだろう。
たかが『道具』の非力さに唇をかみしめる。
「クズやろー、しいは今回、直接的に動くのは難しいのです。
ですが、情報を扱う事に関しては、お前が書類やデータを漁るより数億倍役に立ちます」
そう左手の拳を少年の胸に押し付ける。
「風紀委員(おまえたち)がしいを使う分には、学園も文句をいわねーでしょう。
しいは情報の収集と処理、出力と入力を司る『演算装置』です。
学園の『備品』ですからね、上手く使いやがれ、ですよ」
そして椎苗の連絡先や、同時に椎苗のデータへのリンクが少年の端末に送られる。
神代理央 >
「…そうだな。シスターは、マリーは簡単に屈する様な人じゃない。
彼女を信じて、今は唯出来る限りの事をすればいいのだから」
恋人は、目の前の少女の事を『母』と呼ぶ。
きっとそれは、精神的な面に起因する事なのだろう。実際に会って話をしても、此の少女は芯が強く、大事な人の為に行動出来るのだと実感する。
だがしかし。自分に言い聞かせる様に呟く少女の姿は――少なくとも己には、年相応の少女にしか、見えない。
「その違反組織が、マリーが行方不明になった事に関わっているとの確証はない。未だ、誘拐されたと断定する情報も無い。
だが、もし本当にそうだとしたら。貴様の言う通り、出来ればこの件に深く関わって欲しくはない」
"そういう仕事"は、己の様な汚れ仕事に慣れた者のする事だ。
危険な場所に立つ事を是とする、己の様な者の仕事だ。
『戦う道具』である、己の仕事なのだ。
「……そう判断してくれるだけで、何より有難いよ。
そして、情報面での援護は何よりも有難い。沙羅も頑張ってくれてはいるが、どうしても人手が足りない。お前の力があれば、きっと沙羅の苦労も減る」
とん、と押し付けられた少女の左手。
少女の言葉と行動に、穏やかに笑みを浮かべるだろうが。
「……学園の備品、か。なら、私は。『神代理央』は有難くお前を使わせて貰おう。お前を使って、きっとシスターとの日常を取り戻してみせよう」
「…だから。備品であるのは、私の前だけで良い。沙羅や、お前を大事に想う人々の前では、そんな事は言わないで欲しい」
「私が言う程の事でも無いし、お前自身も理解している事ではあるかもしれんが。……まあ、『クズ』からの細やかな御願いだと思って、聞き流してくれればいいさ」
『貴様』から『お前』へと。それは少女への信頼の在り方か。それとも、単なる気紛れか。
端末へ送られた少女の『情報』を確認しながら、穏やかに微笑んだ。
神樹椎苗 >
「ふん、偉そうなクズやろーです。
さすがに紙の資料までは手が回りませんが、ネットワークに繋がる情報なら何とかします。
調べられるだけの項目が見つかれば、連絡しやがれです」
そう言って、少年に背を向ける。
表情は相変わらず、本当に不愉快そうだった。
「とりあえず、娘が帰っても来ないで働いてますから、適度に帰しやがれです。
娘の体調管理と、複雑な情報処理があればしいがやりますが。
後の上手い使い方はお前が考えろです」
入力される情報か、出力される条件がなければ、椎苗は役立たずだ。
腹立たしいが、この少年に『使われてやる』しかないだろう。
「お前の頭なら、それなりの使い方くらい思いつくでしょう。
期待はしてませんが――それくらいの能力はあると評価してますから。
余計な情は抜きにして、お互いに『利用』し合うとしましょう」
ふん、と鼻を鳴らして歩き去っていこうとする。
これ以上ここで話す事はないとでも言うように。
神代理央 >
「………沙羅には、後で連絡しておく」
帰って来ないで働いている、とは流石に思わなかった。
深く溜息を吐き出して、僅かに項垂れるだろう。
「……分かった。此方で得た情報は、随時お前に送るとしよう。
どのみち、他に動いている者とも一度情報共有をしなければと思っていたところだ。散らばった情報の統合と精査は、お前に任せようと思う」
「……『クズやろー』に対して、過分な評価を頂けて光栄の限りだよ。では、その評価に答えられる様に、御互い利用し合うとしよう。
互いに『道具』として、最善の効果を出せる様に努力しようじゃないか」
歩き去る少女を見送りながら、その言葉に応えよう。
恋人の『母親』に認められるのは、まだまだ遠そうだ。
それに、此方も捜査を進めたいところではあるし――先ずは恋人に『余り根を詰め過ぎない様に』とメールを入れておこうか。
そうして少女を見送った後。
此方もまた、信徒を失い、座する神が掻き消える様な修道院を後にするのだろうか。
ご案内:「宗教施設群-修道院」から神代理央さんが去りました。<補足:風紀委員の制服に腕章/腰には45口径の拳銃/金髪紅眼/顔立ちだけは少女っぽい>
ご案内:「宗教施設群-修道院」から神樹椎苗さんが去りました。<補足:黒いロリータ服とグレーのキャスケット。ネコマニャンポシェット装備。>