2016/12/13 のログ
ご案内:「落第街大通り」に烏丸秀さんが現れました。<補足:着物を着た学生>
烏丸秀 > 落第街大通り。
そこから烏丸は火事を眺めていた。
久しぶりに落第街に、『裏』の仕事で来ていたのだが、まぁ予想外の物が見れた。
「はぁ、あれが噂の『炎の巨人』かぁ」
大通りからは逃げ出す人間も出ていたが、烏丸は炎の巨人を眺めている。
もしあれが例の報告書の通りのものなら、あの下に居るのは――
「雪城氷架。もしくは同じ能力を持つ者」
とはいえ、烏丸には特に関係の無い話でもある。
重そうだが、金になりそうもなく、どちらかといえば能力研究者が喜びそうな部類だ。
「怖いこわい。無能の人間は近寄らないでおこう」
というわけで、火事場見物なのである。
烏丸秀 > 炎の巨人がよく見える場所に、一軒のコーヒーショップを発見。
丁度良い、ここにしよう。
「おじさん、コーヒーとパンナコッタ……ちょっと、逃げないで注文取ってよ。
大丈夫、あの巨人なら、いきなりこっちに来る事は無いって」
どんな根拠があるわけでもないが、気楽に言う。
まぁ、あれは研究区の一区画を吹き飛ばした程の力があるが、それも西園寺の操作によってのものだ。
こちらに直接来ない限り、吹き飛ぶのはまず路地裏だろう。
「そうそう、コーヒーはミルクと砂糖たっぷりね。
あんまり良い豆使ってないんでしょ?」
落第街でまともなコーヒーが飲めるとも思っていない。
いわゆる暇つぶしだ。
烏丸秀 > 場所は2階のテラス。
ここからなら、巨人の足元までよく見える。
「さて、と」
双眼鏡を取り出す。
さっきそこで買ったものだ。丁度よく売ってて良かった。
「――やっぱり、あれが雪城氷架」
へたりこんでいる学生。
この落第街でもきっちり制服を着ているのだ、間違いないだろう。
「他には――風紀委員が一人、よく分からないのが二人、か」
ふむふむとうなずきながら。
炎の巨人の勢いはいまだ衰えず。
このままでは路地裏から落第街全域へと火が回りかねないだろう。
烏丸秀 > 「おっ」
刀の方はそこまでのダメージを与えていないようだが、あの竜のブレスは効いたようだ。
いくら常世島といえども、竜はなかなかお目にかかれない。
あの研究員らしき男、何者だろう。
「にしても――ふぅん」
肝心の雪城氷架。彼女が何もしていない。
あの炎の巨人事件から大分経つが、まだ能力を制御できていないのか。
しかし、いずれにしろ――
「こんな事件を起こしちゃったら、ねぇ」
まぁ、良くて研究区に軟禁だろう。
可哀想な事だ。カワイイのに。
烏丸秀 > 「――あら、もう終わりか」
やがて炎の巨人は消える。
時間にして20分強。ちょうどコーヒーを飲んでいる所だった。
やれやれ、もう少し時間がつぶせると思ったのだが。
「ん、しかし、あそこ一帯は地獄絵図だねぇ」
ぴっぴっとスマートフォンを弄る。
折角だ、再建する企業を抑えておこう。
少しは稼げる事だろう。
「あ、親方? うん、ボク。いや、オレオレ詐欺じゃないって。
うん、落第街の方で大規模な火事がね、あってね。
そうそう、建築の準備をお願い。ボクは福利厚生関係あたって予算をお願いしてみるからさ」
電話をかけつつ考える。
彼女、雪城氷架はこれからどうなる事やら。
下手すると、一生――
ご案内:「落第街大通り」に獅南蒼二さんが現れました。<補足:くたびれた白衣を身に纏った無精髭の魔術教師。いつも疲れ果てた顔をしている。ポケットに入っている煙草はペルメルのレッド。光を放つ指輪はつけていないようだ。>
獅南蒼二 > テラス席への階段を上ってくる足音が聞こえる。
特に急ぐようでも無く,それこそ,普段通りに店に入る足取り。
「……珈琲を啜りながら野次馬とは,呑気なものだな。」
…白衣の男は先客にそうとだけ告げて,適当な席に腰を下ろした。
その言葉をそのまま返してやりたいほどに,この男も平然としている。
珈琲を注文すれば,静かに煙草に火をつけて…
「…………。」
無言で白い煙を吐き出した。
街の焼ける不快な臭いに,わずかな煙草の香りが混じる。
この男も火事場見物のようだ。教師だってのに助けに行く気配もない。
烏丸秀 > 電話を終え、スマートフォンをしまう。
これで落第街の一部は再建されるだろう。予算は、まぁいわゆる常世島民の『篤志』という奴を使ってあげよう。もちろん、対価は頂くが。
「ボク、これでもこの後の再建の事を考えていまして。
先生よりかは働いてると思うなぁ」
これまた言葉通りに呑気に返す。
ちなみにパンナコッタは既製品で、それなりに美味しかった。
「どうです、先生から見て。あの炎の巨人」
獅南蒼二 > 貴方のことを多く知っているわけではないが,
少なくともその表情や振る舞いから,それが嘘ではないとは分かった。
つまり,それだけの力をもっているということだ。
「それは失礼した,救助より先に再建とは,恐れ入ったよ。」
皮肉めいた言葉とともに肩をすくめて笑い,運ばれてきた珈琲を啜る。
「何ということは無い,よくある異能の暴走に過ぎんだろう。
尤も,今回に限っては単なる暴走とも言えんだろうが……な。」
呟くのは,どこか含みのある言葉。
それは無論,雪城氷架が魔術的な“封印”を自らの意志で解放したことを,
己の意志によってその無制限の力を行使したという事実を知っているからだ。
烏丸秀 > 皮肉めいた言葉に苦笑する。
まぁ、その通りであるが。
「そりゃね、救助するのは専門家が居ますから。
そろそろ到着しないのかな?」
まぁ、落第街だと到着は遅くなる。
それも仕方の無い事なのだが。
「――これで二度目、ですからね。
一度目は西園寺のせいって事で決着しましたけど、今回は違う。
おそらくは……本人が力を行使した」
と、なると、だ。
当然、雪城氷架を野放しにした責任が問われ、そして彼女を拘束、軟禁する話も出るだろう。
名目はまぁ、『炎の巨人対策の為に研究機関に出向』とか、そういう風に取り繕って。
「もったいないなぁ、あんなにカワイイのに。胸はあんまり無いけど」
獅南蒼二 > 貴方のそんな在り方をとやかく言うつもりなどない。
むしろ,あの街にとって貴方はまさに必要悪というべきだろう。
「奴らにも客を選ぶ権利くらいあるんだろう。」
相変わらずの皮肉。半分ほど残った煙草を,灰皿に置いて,
「理由はどうあれ,そしてこの結果を想像していたのかどうかもさておき。
……それを決断したのは本人だろう。」
白衣の男は少しだけ,残念そうに目を伏せた。
かつてのこの男なら,制御されぬ異能の危険性を説くところだろうが…
「この島の先進的な異能学をもってしても,この事態を防げなかった。
同様の事故を魔術学が引き起こすことは皆無であるという点からしても,異能学者の怠慢と言わざるを得んな。」
…獅南はそう言うにとどめた。
珈琲を静かに啜って,息を吐き……
「…そう思うなら,口説いてくればいいだろう?
彼女が力を使うに至った理由か,裏で糸を引く黒幕あたりを暴くか,でっち上げるかして,ヒーローにでもなればいい。」
烏丸秀 > 客を選ぶ権利は無い、と聞かされれば。
心底楽しそうにけらけらと笑う。ツボに入ったようだ。
「はは、そりゃそうですね。
客は選ばないと、商売なんてやってられませんもんねぇ」
「いやいや、異能学者さん達は大変ですね、本当。
ボクみたいに無能の人間には、どれ程の苦労か分かりませんけど」
しかし、少し引っかかる。
魔術学が引き起こす事は皆無?
「魔術事故はこの規模にならない、と?」
ふむ、と少し考える。
魔術学ならば召還魔法の暴走――いや、そうか。
魔術ならば等価交換。人の素質以上の力を発揮する事は出来ない?
「あ、ダメです、あの娘、彼氏居るんで。
ボク、この島だと彼氏持ちに手を出すのご法度なんですよ」
獅南蒼二 > 「真っ先に動くのは,使命感やらなにやらに駆られる一般人だろうな。
二次災害を引き起こさん限り,彼らは優秀な自浄作用だ。」
楽しげに笑う貴方を見て,そうとだけ答えつつ,
貴方の質問には,事も無げに答えた。
「…簡単なことだ,高度な魔術は学ぶことなしには行使できず,
単純な魔術であればどれほどの素質があろうと出力は頭打ちになる。」
「つまり,このような悲劇を作り出せるのは,高度な魔術を学び結果を十分に把握した魔術師のみだ。
それ故に,魔術学に於いて,この規模の“事故”は発生し得ない。」
「……尤もこれを“事件”という名称で扱うのなら,この幾倍も悲惨な結果を,意図的に作り出すことも容易だろうがな。」
異能学はまだ黎明期であるからして,異能者の意志を超えた暴走による“事故”を完全に防ぐには至っていない。
それは無論魔術学も同様なのだが,こういった大規模な事故を引き起こす可能性があるのはどちらか。
「何にせよ…これを彼女一人だけの責任だと言うのなら,異能学者などこの世には何の利益も齎さんな。」
珈琲を飲みながら,ことの成り行きを見守る。
…状況はほぼ管理下に置かれたようであるし,これ以降被害が拡大することは無いだろう。
「ほぉ,それは残念だ。
お前の活躍をここから眺めてやろうと思ったのだが……お前は裏方で,活躍するのはその“彼氏”か?」
烏丸秀 > 「なるほど、確かに。
魔術は高度な術式ほど、やたら難しくなりますからねぇ」
力は、それを振るう術を知らない者が持つと凶器になる。
魔術は術式の難解さがリミッターになっているが、異能にはそれがない。
「まぁ、彼女の責任ではありますが、それだけではない。
でも、これ以上の暴走は、それこそ異能学への致命的なダメージになりかねない」
だからこそ、異能学者たちは彼女の責任にしたがるだろう。
そして、こう嘯くのだ。『強力な異能を解明し、管理する事こそが重要である』と。
「あ、ボクはこの件にそんなに関わる事、無いと思いますよ。
ボク、『これ』の関わらない事はとんと苦手でして」
手でお金のマークを作ってみせる。
そう、この男の解決方法は、いつでも頭脳か金銭なのだ。
獅南蒼二 > 「そういうことだ…呼吸するように炎を出されてはな。」
楽しげに笑いつつも,貴方の言葉の裏側の思考までも読み取ったか…
…いや,単にこの男の,異能学への不支持がそうさせただけかもしれない。
「それこそが,現代における異能学の限界だろう。
犠牲や危険を伴いつつも創造と進歩を齎すような代物ではなく,
犠牲や危険を封じ込める方策を生み出すことに終始する。」
「このまま異能学が堕落してくれれば,異能さえも魔術学によって昇華し管理すべき時代が来るかもしれんな。」
楽しげに笑いながらも,貴方の手の形を見て……呆れたように肩をすくめた。
「一貫していて素晴らしい,と言うべきか。人間味に欠けるとでも言うべきか。」
珈琲を飲み干せば,代金を適当に,やや多めにテーブルに置いて立ち上がる。
「あの街を再建するのなら,あまり小綺麗にはしないことだ。
陰には陰の住人がいる……っと,お前には必要のない助言だったかな。」
くくく,とわざとらしく笑い,白衣の男はテラスを後にした。
そしてゆっくりと,まだ炎の燻る街のほうへと,歩いていくだろう。
ご案内:「落第街大通り」から獅南蒼二さんが去りました。<補足:くたびれた白衣を身に纏った無精髭の魔術教師。いつも疲れ果てた顔をしている。ポケットに入っている煙草はペルメルのレッド。光を放つ指輪はつけていないようだ。>
烏丸秀 > 「――ふむ」
なかなか面白い先生だ。
いやはや、あれで全く、被害者の事など眼中にも無いようだった。
まさに首尾一貫しているというやつだろう。
「まぁ、その通り。あんまり小奇麗にしても、ね」
本当は高い建物のほうが利益も大きいのだが、まぁ仕方ない。
適当なバラック小屋を建て、その後は現地に任せるとしよう。
「にしても……」
異能とは、本当に本来の持ち主の力を超えて『暴走』するものなのだろうか?
ご案内:「落第街大通り」から烏丸秀さんが去りました。<補足:着物を着た学生>