2020/09/13 のログ
ご案内:「常世学園付属常世総合病院」に羽月 柊さんが現れました。<補足:乱入歓迎:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアス。病衣姿。左肩に包帯が覗く。>
羽月 柊 >
違反部活『ディープブルー』との決戦から日が明けた。
港で起きた大規模戦闘で戦った三人。
山本英治、神代理央、羽月柊。
敵将だったのかはまだ不明ではあるが、
"ブラオ"と名乗った男を山本英治が討ち取ることで、一旦の終決を見せた。
とはいえ、理央は瀕死、柊は左肩の負傷。
英治も異能による回復が追い付かず意識不明にまでなった。
戦闘力あれども徹底的に"知られて"対処された三人は、
一対三+小竜であったにも関わらず、不利な戦闘を強いられた傷は深かった。
それは、身体も、心も。
──常世学園付属常世総合病院。
病室の一室で紫髪の男は溜息を吐く。
ベッドの上で病衣を纏っている。
服の合間からは左肩側に包帯が見えた。
三人の中でも一番負傷の軽かった柊である。
とはいえ、レーザーブレードの飛斬撃に左肩を焼かれているのに
一番軽症というのは、他の二人に比べただけという話だが。
しかしここは常世島。
医療の発達はすさまじく、科学、魔術、異能といったあらゆる技術により、
柊の火傷程度なら、せいぜい治療と検査で一日から数日で済むだろう。
これが現代なら、片腕を失ってもおかしくは無いのだろうが。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院」に山本 英治さんが現れました。<補足:長い直毛/全身に包帯/入院着>
山本 英治 >
車椅子を押してもらいながら病室に戻る。
虚ろな眼で自分のベッドに座り込む。
現代医学と魔術の複合処置、というのは凄まじい。
死ぬような怪我でも、あっという間に治してしまう。
心以外は。
「……ああ、羽月さん」
どこかぼんやりする意識の中で頭を左右に振る。
夢を見ているようだ。それも悪い夢を。
「すいません……俺が巻き込んで、負傷を………」
「なんか……………申し訳ないすね…」
正しい言葉が浮かんでこない。
死んだ親友の幻影を見るようで、視界の外が恐ろしかった。
羽月 柊 >
「あぁ、戻ったか…怪我の具合はどうだったんだ、山本。」
部屋に戻って来た英治を見て溜息を呑み込む。
自分はほぼ検査入院みたいなモノだ。
久しぶりに愛するヒトの声を聞いたとて、1人ならともかく、
もう生徒の前で取り乱す程では…無かった。
「いいや、俺に対して徹底的に対処されたんだから仕方ないさ。
それを言えば、君はこちらを庇ってくれたんだからな…。」
音を消去してしまう"異能疾患"の再現。
言霊や音を魔術発動の合図にしているタイプの自分にとっては効果覿面だった。
あの場で英治に釣られて異能を発動させなければ、
自分は本当にただの、"無能力"でしかなかったのだ。
山本 英治 >
「体力はあるほうなんで……徹底的に処置を…」
「弛緩毒の除去と、再生治療に時間をかけてもらって……」
なんだっけ。次は。次の言葉は。
何を言えばいいんだっけ。何を。
薄ぼんやりと考えながら、羽月さんのほうに向き合おうと体に力を入れると。
羽月さんの隣に。
死んだ親友の姿があった。
「……ッ!!」
絶句してしまう。今は、その姿が何より恐ろしい。
怖い。怖い。怖い。
未来が、俺は。怖い。
ふと、親友の幻影は消え去っていた。
頭がおかしくなりそうだ。
「か………庇うのは、当たり前のことですよ…」
「羽月さんは俺が認めた男なんですからね………」
視線を彷徨わせながら、汗を拭った。
羽月 柊 >
………友人の様子がおかしい。
危ういながらも強い意志を持ち、
冷めた己をも動かした山本英治の姿がそこにない。
相手を殺したことへの罪悪感? いいや。
──彼と己が同じであるならば。
「………、……。」
ベッドから降りる。
歩く分にはなんら支障はない。
彼の方へと歩み寄り、今はその象徴を無くし、
そして壊れそうな相手に視線を合わせるように、傍らの椅子に座る。
「…何かアイツに聞かされたか。山本。」
自分が愛するヒトの声を聞いたなら…彼は。
山本 英治 >
羽月さんにそのことを聞かれると、心が軋む。
あの野郎……羽月さんにも同じことをしてやがったのか…
あいつを殺したことに、後悔はない。
それでも。
「親友の……未来の幻影を見せられています………」
「親友が俺のことを詰る悪夢を…………」
「あいつを殺した後も……消えない………むしろ」
「あいつが死んだ今、正当な解除方法はない────らしいです」
荒い呼吸をしながら、無意識にネクタイを緩めようと手を伸ばした。
ただの病院着の襟があるだけだった。
「あいつを殺したのは……俺だけどさ…………」
「こんなのねぇだろ………! クソッ」
羽月 柊 >
英治の状態を聞けば、眉を寄せる。
自分はただ悲痛に問われただけに過ぎない。
故に彼とは違い、惑ってしまった。
「……俺も香澄の声を聞かされたのは確かだ。」
しかし、自分にはブラオが死んだ後の痕は残されていない。
例え、その声は己が欲して止まないモノだとしても、響き続けてはいない。
「しかし、君のような…奴が死んだ後もずっとということは無い。」
僅かばかりに己と友に、
強引に溝を作られてしまった気分になり、内心歯噛みする。
──あの時、英治が奴を殺すのを止めておけば。
そう後悔をした所で、喪われた命を戻すのは、
《大変容》が起きたこの世界とて簡単なことではない。
「正当な解除方法が無い……とはいえ…、何かしら手段、は…。」
相手に起きていることがもし自分にも起きたら?
こうして話すことすら…ままならなかったのかもしれない。
山本 英治 >
「そう……ですか………」
羽月さんが同じ呪いを受けていないと安心すると同時に。
俺は。ああ、なんてこった、クソッ。
羽月さんを妬ましいと思ってしまった。
苦しい。どうして俺がこんな思いを………
苦しい。これが俺の罪で、罰なのかよ。
「祭祀局から色々見てもらったんですが」
「地道に解除を試みることしかできないって……」
「そして、異能を使ったり人を殺せば、取り返しのつかない状態になるとも」
エイジ。キミはもう救われたりしない。
キミを信じたことは、僕の人生において大きな汚点だったね。
キミの終わりを望むよ。ずっと、ずっと。
───隣でね。
「うるさいッ」
悲鳴のように小さく叫んで、髪を掻き毟った。
俺の心の弱さを、追い詰めるように。親友の幻影は傍に来る。
羽月 柊 >
…嘘でも、同じ状態だと言えば良かったのかもしれない。
しかし、嗚呼しかし、自分の不器用さは自分の一番知る所で…。
身近な彼に対して嘘を吐き続けるのは…難しく思えてしまった。
こんな時、ヨキなら彼になんと声をかけられたのだろう。
「…異能すら引き金になるのか。」
せめてそこが無ければ──と考えてしまう。
異能とは、その人間の備える資質であることも多い故に。
まさか彼の異能が、"異能疾患"にすらなり得る状況になるだなんて。
「山本……、…俺の前では無理しなくても良い。
想像することしか出来ないが……、
そういう状態なら、独りでいれば悪化する一方のように思える。」
強引に溝を作られても、『それでも』
『俺の言葉が届く』と信じなければ。
ここで彼を独りにしてしまえば、以前の自分より酷い状態になりかねない。
ならば、自分がこうして前を向けているように、
言葉を伝えるより他ない。
「俺は、君の言葉で動かされた。
こうして教師をしているのも元を辿れば、
『取りこぼしたくないのではないか』と君に問われたからだ。
だから、どれほど声が君を苛もうとも、
それでも同じ道を歩み、君が灯した火を忘れないでくれ。」
──友はここに在ると。
山本 英治 >
はぁ、はぁ。荒い呼吸。
自分の呼気か? これは………
ナースコールを……いや、何も解決はしない…
俺は赦されない。決して。
「はい……異能で傷の再生をしようとしたら、症状がひどく…」
胸のあたりをぎゅっと握って。
落ち着け。落ち着け。何もいない。未来は死んだ。
死んだんだ……!
「こんな状態を………」
「羽月さんに、見られるわけには……」
羽月さんの前では。一人の男でいたかった。
潔く。男らしい。そんな存在でいたかった。
そして続く言葉に。
自分が行ってきたことは、ただ奪ったり奪われただけじゃないと今更ながら理解して。
俺は。泣いたんだ。
「すまない……! 俺は………」
どこまでも、彼を信用しきれていなかった。
羽月 柊 >
…以前、自分も日下部理沙に対してそういう態度を取った。
カッコつけて、大人ぶっていたかった。
けれど、それは自分が壊れるだけだと気付いたから。
椅子から少し身を乗り出して、
涙を零す英治の背をぽんぽんと軽く叩く。
いくら彼は成人しているとはいえ、己と一回り近く違う。
…自分は、『教師』になった。
それは、間違いなく目の前の彼のおかげも一つあるのだ。
「泣いてもかまわん。
むしろ、互いに痛みを知っているからこそ分かる涙もあるだろう?」
涙にはストレスの緩和効果もある。
自分が涙を流せる相手がいるかといえば分からないが、
それでも己が英治にとってそういう相手ならば、彼の心も少しはマシだろうと。
「以前の入院の時も思ったが、
君の朗らかさに救われた人間は数多く居たと、安易に想像がつく。
それを君に多少返したってバチは当たらんはずだ。
確かに俺も君も大事なモノを失ったことは、罪にすら思えたとしても……。」
許されないというなら、自分だけでも彼を許そう。
一歩を踏み出させてくれた英治への、せめてもの恩返しとして。
山本 英治 >
泣いた。泣きながら、誓う。
親友のことを正しく理解してあげようと。
今は、俺のことを罵ってくる彼女の真実の姿を。
思い出してあげようと。
羽月さん。
すまねぇ……アンタとダチになれて良かった…
俺と同じ傷を持つ、アンタと………
俺がやってきたことは無駄じゃない。
だから、俺はここで終わりじゃない。
そのことを、どれだけ心に刻み込んでも。
俺の傍で未来は口元を歪めて笑っていた。
羽月 柊 >
『言葉』は『祝福』で『呪い』だ。
友人が泣き疲れて眠りにつくまで、
『言霊』を使う柊はそれを理解していながら、声をかけつづけた。
自分がそうであるように、どれほどの友の言葉があっても、
…苛まれ続けるのは、変わらないとしても。
この『祝福』が、届くと信じて。
ご案内:「常世学園付属常世総合病院」から山本 英治さんが去りました。<補足:長い直毛/全身に包帯/入院着>
ご案内:「常世学園付属常世総合病院」から羽月 柊さんが去りました。<補足:複数人可:【はづき しゅう】深紫の長髪に桃眼の男/31歳179cm。右片耳に金のピアス。病衣姿。左肩に包帯が覗く。>