2020/09/14 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に燈上 蛍さんが現れました。<補足:待合済:【とうじょう ほたる】青交じりの黒髪に紅橙眼の青年/18歳184cm。髪を編み込んで白い彼岸花を髪に差している。風紀委員の制服に腕章。>
ご案内:「落第街 路地裏」にクロロさんが現れました。<補足:迷彩柄のジャケットに黄緑の髪。人相の悪い青年。>
燈上 蛍 >
落第街の裏路地。
"普通の生徒"ならば近づくことの無い場所。
そこはこの島の掃き溜め。"在る"けれど"無い"とされる場所。
…では、そこを警邏する自分は…"在る"のだろうか。
この常世島という本の中に。
手ぶらで武器も持たず、歩く。
見える武器をぶら下げて歩くよりも、己の存在自体を武器として歩く。
"手を出すなら面倒な相手"だと思ってくれれば、それに越したことは無い。
風紀委員の制服は、そういうモノだと思っている。
紅い服に炎の瞳を暗闇に瞬かせ、頭に白い花が咲く。
青年はそうやって、歩く。
『ディープブルー』と言われる違反部活の旺盛に合わせ、
こういった裏の道に巡回をと言われる回数も増えた。
……特に、先日、神代理央が倒れてからは。
クロロ >
暗がりとは、人が立ち寄らない場所だ。
そこで何が起きようと、誰も助ける事はない。
そこで起きる事は全て"自己責任"。何が起きようと、誰も関与することはない。
それが、この島の暗部ともなれば、そこは更に深い深い場所だ。
手軽に表と裏が繋がる場所でもあった。
薄暗く湿気の強い裏路地に、生暖かい風が吹いた。
蛍の花を揺らす風の吹く先に、それはいた。
裏路地の暗闇に煌々と光る金の瞳。
闇夜でも目立つ、迷彩柄の青年だった。
「ア……?」
人相の悪い顔が、蛍へと向いた。
「なンだお前……?コッチ側の連中……ッて、雰囲気じゃねェな。何モンだ?
ガキがちょろちょろ歩いてイイ場所じゃねェンだぜ。とッとと帰りな」
しっしっと軽く手を振って追い払う動作だ。
燈上 蛍 >
「…帰りませんよ。生憎と仕事なので。」
炎の瞬きは、その色に似合わず氷のように話す。
この島は子供が大人の…大人以上の責務を任される場所だ。
《大変容》以前の日本ではまだ未成年とされるこの青年もまた、そういう責務を背負っている。
珍しいな、風紀委員の自分に帰れと言うだなんて。
この服も腕章も、大概ここ落第街では抑止力として働くはずだというのに。
自分が見ている所だけでも面倒ごとを起こさないでくれれば、
青年はそれで良かったのだ。
生物が存在すれば、そこには必ずはみ出るモノが生まれる。
少数派が生まれる以上、落第街のような受け皿は存在出来てしまう。
その全てを消してしまったとしたら?
…その時は、また新たな少数派が生まれるだけなのだ。
声をかけてきた相手を見る。
黄金。それはこの世で価値ある色として、愛されてきた色。
「僕は風紀委員。この島の警察機構を担うモノです。」
相手はこの島の制度を知らないのだろうか。
ならば異邦人か、己の意志でここに来た訳ではないタイプの不法入島者か。
そんな考えが青年の頭をよぎる。
クロロ >
「フーキイーン?……ア、腕章つけてンじゃン。なンだよ、仕事中か」
訝しげな顔をしながら、じろじろと蛍を見やる金の瞳。
暗がりの中で、それが見出したのは腕につけられた腕章。
この島の秩序、抑止力となる双頭の一つ、風紀委員会の証だったか。
それを見た途端、心配して損したと言わんばかりに何ともぞんざいな声を出した。
「この前みてーに、クソガキが余計な絡まれ方すンじゃねェかと思ッたが
寧ろ、睨まれる方だッたか。マジで心配して損したぜ」
ため息交じりに吐き捨てる言葉は何ともと言わんばかりの言葉だ。
悪意こそない。そう言うガサツなタイプらしい。
それでいて、クロロは普通に蛍の事を心配していたらしい。
直情的と言うか、わかりやすいというか。両腕を組んで、じっと蛍を見据えた。
「よォ、よくもまァこンな場所までご苦労なこッた。
今日はガサ入れか?それともしょッぴくンか?
……ア、言ッとくけどオレ様世話ンなることしてねーからな」
「つーか、オレ様の目でも気になるのか?」
ぱちくり。瞬きしながら首を傾げた。
燈上 蛍 >
なんとまぁ、本当に裏で逢うには珍しいタイプの相手だった。
「別に荒事が好きという訳では無いです。
風紀委員の皆が皆、好戦的ではないですよ。
なので貴方が目の前で犯罪でもしない限りは、どうこうする気はありません。」
前線の部に配属されたばかりの青年はそう言う。
自分だって能力値的に最適な所に回されたというだけだ。
仕事としている以上、上の決定に逆らう気はない。
かといって、不服だからと風紀委員を辞めるという選択肢も思い浮かばなかった。
ただ流されるままに、台本に書かれているかのように、
自分に割り当てられた役割(ロール)を演じている。
別に、自分がこの薄暗い路地で死ぬ…"彼岸"へ渡るとしても、
それは運命として決まっていたことなのだろう。
そんなことさえ考えている。
「"こちら"の街にいるのに、随分と親切な方ですね。
眼もそうですが、珍しいと思ったんですよ。」
まぁ、風紀委員に好印象を与えて裏で何かする狡いタイプかもしれないが。
何かが起きない限りは、自分たちは動くことが出来ない。
ならば好意的に受け取っておいて、報告書に記しておくだけだ。
丸腰のようにしか見えない青年は、一定の距離を保ちながら話す。
クロロ >
「ほォン。そう言う割にゃァ、"喧嘩上等"キメてンじゃン。
だッてお前、その腕章付けるッて事は、仕事ッてもそーゆー事だろ?」
確かにどちらかと言えば物静かな男だとクロロは思った。
だが、此の街にとって"風紀委員"と言うのは"抑止力"と同時に"的"だ。
好き好んで秩序機構に喧嘩を売る相手はいないが、この場所なら"別"だ。
此処は島の掃きだめ、落第街のスラム。確かに、島の秩序を担う風紀委員は"抑止力"であるが
それを良く思わない連中はゴマンといる。
此処で喧嘩を売られた以上、殺されたとしても文句は言えない。
そう言う場所だ。何処となく、クロロの声音は同情的だった。
「ウルセーな。オレ様は色々やるが
テメェ等の前で暴れる程飢えてねェよ」
露骨に顔をしかめた。
クロロは確かに荒くれ者だが、節度はある。
風紀相手に、理由が無ければ喧嘩を売る事はない。
「親切?気のせいだろ。オレ様は
お前がヘンな目に合うのが気に入らねーから声を掛けただけだ。
珍しいか?案外声掛ける連中は多い気もすッけど……」
徐に、自身の目元に触れる。
「そンなに珍しいか?金」
燈上 蛍 >
「仕掛けられれば対応はしますし、命令されれば動きます。
そういう"お話"です。進んで何かをする気が無いだけなので。
なので、そう言っていただけるのなら、僕はありがたく警邏の役割をするだけです。
実際、こうしてお話で済むなら、ここでは親切な方でしょう。」
殺されたならそれはそれ。
今は生きられるから生きているだけ。
表の世界で生きているのも、己に定められたこと。
"運命"に抗える訳が無い。
自分は、"物語の主人公"では無い。
この落第街という場所で、"風紀委員"に恨みを持つ輩に殺されたとしても、
別に文句を言うつもりなんて無いし、言える立場でも無い。
そんなもの、この島の"日常"に過ぎない。
『風紀委員の一人が殉職した』という記録が残るだけだ。
青年の声は同情にも別段『それがどうした』と言うようだった。
不満を言い出せばキリが無いのだから、
全部そういう"お話"だったと割り切ってしまった方が早い。
「そう万人には無いと思いますけれどね。金色。
黄土色や黄色ならともかくですけど。」
金や銀、光を反射して煌めく色。
そういう色は得てして"特別"のように思える。
クロロ >
「…………」
訝しげに眉を顰め、眉間に皺が寄った。
ため息交じりに、後頭部を掻いた。
「要するに、『面倒クセェけどやッてる』ッつー事か?
お前も大概ヘンな奴だな。テメェでやる気がねーなら止めりゃいいのに」
有体に言えば"覇気"を感じない。
目の前の男からは、今一そう言った"やる気"を感じなかった。
"ありがたく"とどの口が言うのか。そんな感情もないくせに
ただ、"そうしろ"と言われたからやる冷めた感情。
怪訝そうな唸り声を上げながら、じろじろとクロロは蛍を見ている。
「そういうのと会ッた事ねェだけだろ?多分いるぜ」
偶々そう言う色と言うだけだ。
裏路地の闇に輝く金は、僅かに裏路地を照らしていた。
「つーか、それよりもお前だお前。随分とやる気がねェし、マジでンな調子だと死んじまうぞ?」
燈上 蛍 >
「死ぬならそれまでですよ。」
燈上 蛍 >
返す刀でそう言い切った。
特に淀むことも無く、静かな声が揺れることも無く。
瞳に炎を灯した青年は、どうでもいいことのように。
「まぁ、出来得るなら戦いますけれど。
自分以上に強い方なんて、ここにはごまんと居ますしね。」
例えば『異能殺し』。
データを見るだけで、まるで神話の存在のようではないか。
『鉄火の支配者』たる神代理央と対等以上に渡り合うような相手に出逢ったなら、
自分のような一般風紀委員上がりの人間など、敵うはずが無い。
「ええ、いらっしゃるのかも知れません。
僕は全てを知っている"事典"という訳では無いので。
面倒というかなんというか……そういう"役回り"ですから。
辞めたところで単位が取れるとも限りませんし。」
そう言いながら悠長に眼を閉じて瞳の炎を消す。
自分の物語が終わるなら終われば良い。
生も死にも執着していない。
自分が頭に冠するは彼岸花。
それは、死を象徴する花なのだから。
目の前の青年よりも幼い子供は、子供というには余りにも、冷えていた。
クロロ >
「何言ッてンだコイツ?」
素直な感想が口に漏れた。
如何やら覇気の無さは、そもそも自身の在り方に起因するらしい。
無気力と言うより、"自分すらどうでもいい"とも言える姿勢のせいらしい。
だからこそ、クロロは不信感、と言うより疑問しか抱かない。
自分の事を此処迄どうでもよさそうに言える様に、疑問しか抱けない。
「"それまで"ッてなァ。死ンだらそれこそ、しょーもねェだろ?
つか、お前風紀委員に入ッたのだッて、自分の意思とかじゃねェのか?」
普通の人間ならば死を恐怖する。
理由は単純、死にたくないから。
だが、彼にそんな意志は見えない。
瞳に炎は陽炎の如く、何処となく胡乱ささえ感じさせる。
「なンつーか、面倒クセェ奴だなァ。
お前、そンななンもかンも冷めた感じで楽しいのか?」
素朴な疑問だった。
別に感情の起伏の差なんて人それぞれだ。
だが、彼の場合はそれ以前の問題にも見て取れた。
何物にも執着しなたんぱくさに、クロロは心配さえ覚えている。
「"ジテン"……?や、知らンが。アカシックレコードでもねーンだから
何でもかンでも知ッてる奴のが珍しいだろうが。つーか、"役回り"ッてなァ……」
「そーゆーの、組織にいる以上は当たり前にやるンじゃねェのか?」
燈上 蛍 >
長いモノには巻かれろ精神をもっと面倒にした形。
「ええ、ですから"当たり前"にこうして警邏しているんですよ。」
自分の能力に合った場所だと上が判断したのだから、ここにいる。
『神代理央と一度共闘出来た』という実績があるのだから、
上の判断は正当だろうと思っているし、逆らう気もサラサラ無い。
瞼を開く。炎は相変わらずそこにある。
今日ここで時間が潰れるのなら、無事に帰れれば、
それはそれで今日の"報告書"の内容は問題なく書ける。
人間が生きている上で、全ての本を読破は出来ない。
誰とて、己の興味のある本を読んでいる。
だから自分の生死がどうでもいいと言えるのは、
『燈上蛍』という一冊の本に、自分は興味が無いだけだ。
「まぁ僕にも楽しい瞬間はそれなりにありますよ。
それはそれとして、人間、死んだらそこまででは無いですか?」
どうしてこの男は自分をそこまで心配するのだろう。
こんな日の当たらない場所では、花など簡単に散ってしまうのに。
道端の花が枯れたところで、気にする必要などないだろうに。
クロロ >
それこそ頭上にはたくさんのクエスチョンが浮いた。
「ホントかよ」
悪いが、生きてて楽しいとは微塵も思えない。
クロロから見ればそれこそ"惰性"で生きているようにしか見えないのだ。
「ケーラ……まァ、仕事が"当たり前"ッつーのはわかるがな。
それでも"拒否権"だのそーゆーのあンだろ。なンーつか
マジで生きてて楽しいのかよ、お前。そンなンじゃァ、なーンも燃えなくね?」
ただ在るがままに、流されるままに生きていく。
社会の歯車として、時にはそれが必要な事が在る。
だが、それが"全て"ではない。
人間得てして、個の自由が無ければ個が死ぬ。
目の前の男は、まさにそれだ。
瞳に宿す炎とは裏腹に、冷めきった熱量に思わずため息だ。
「死ンだらそれまでだが、死ンだら気に掛ける奴もいンだろーが。
少なくとも、今オレ様はお前が急に死ンだらまァまァ気に掛ける」
フン、と腕を組み力強く頷いた。
燈上 蛍 >
「ええ、本を読んでいる時とかは楽しいですよ。」
そう言ってにこりと微笑む。
心からの笑顔とは正直言い難い余所行きの笑顔。でも別段構わない。
相手は名も知らぬ初対面なのだから。
言っていることは偽りの無い本心だ。
けれど、この街でそう本心を知られることの利点も無いだろう。
だから疑われたって問題無い。そのはずだ。
本は好きだ。
他人が綴る物語が好きだ。
自分には無い世界がそこには詰まっている。
自分には無い誰かがそこには居る。
自分には到底出来はしないことが、そこでは当たり前に起きている。
「…不思議なヒトですね。
この街にいる割に、風紀委員の僕を気に掛けるだなんて。」
少しだけ、この金眼の男という"本"に興味が出る。
「燃えるだの燃えないだのはよくわかりませんけども。」
目の前の彼は、どのような『物語』を生きて来たのだろう。
クロロ >
「ほう」
本を読むのが好き。思わず関心の言葉が漏れた。
「オレ様本を読むのは好きッつーか、知識が好きだな。
好きッつーか、魔術師の習慣みてーなモンだが……」
魔術師と知識は切っても切れない縁。
知識は力、魔術とは発想力。
それらを鍛える事、力を蓄える事をクロロは好きだ。
必然的に、そう言った行為も好きになる。
尤も、彼の"好き"とは違うかもしれないが。
「不思議かァ?そりゃ、名前も知らン相手だが、死ンだら寝覚めくらい悪ィーだろ?」
それ位は初対面だろうと気に掛ける。
当たり前だ、人間であればそれ位。
そこに裏も表もない。どちらもどちらの秩序はあれど
そこに住む人間自体が変わるわけじゃない。
だったら、クロロが気に掛けるのも必然だ。
後頭部を掻きながら首を傾げた。
「目、オレ様は嫌いじゃないぜ?なンか燃えてるッつーか……お前のな?
そう言うののほうが、よッぽど特徴的じゃね?」
それこそ陽炎の様に揺れる、一種の美しささえ感じる。
ヘッ、と口角を吊り上げた。
「オレ様はクロロだ。お前は?」
燈上 蛍 >
「………「ありがとうございます」。僕は蛍(ほたる)と申します。」
無駄に本を読んでいるせいか、
青年…蛍は、相手が魔術師だと知れると、フルネームを口にすることを避けた。
瞳を褒められれば、静かな言葉とは違って抑揚の無い感謝が返った。
まるで台本を棒読みにするような声が。
これはきっと、素直に受け取れないナニカが邪魔している。
それ以外の言葉は今までと変わらない静かなモノ。
故に、違和感は目立つかもしれない。
「さぁ、どうでしょう。この街だと死は身近でしょう?
僕たちとこの街の方が戦うのも一日の光景の一つですし、
それでどちらが死んでも、明日に何の差支えも無い。
寝覚めが悪いと言っていたら、精神が持たない気がしますけれど…。」
どうしても、己の生死に興味を見いだせない。
クロロという本に興味はある。
けれど、それは書架の内の一冊に過ぎない。
本は無数にあるのだから、その中の一冊が中身も知れず消えたとしても、
それに対してそうかかずらうモノだろうか。
クロロ >
「ホタル?なンかあの光る奴?ハァーン」
蛍。確か夏か何だかに光る虫の名前だった。
それは幻想的な光を持つ、と知識にある。
ともすれば、それは儚い幻想の光か。
そう言う雰囲気は確かにある。
少なくとも、今一つ抑揚の無さは何か、自分が魔術師であるせいか。
その警戒はある意味正しい。尤も、"記憶喪失"の魔術師に、何かできるわけもないが。
「よし、蛍な。よし、よし!」
その白紙の脳内に、しかと刻み込んだ。
数少ない名前を、姿を二度と忘れないように刻み、強く頷いた。
「そらァ、身近ッちゃ身近だが、そうじゃねェだろ?
だからッて、生命一つ一つに"ケーイ"を忘れちゃァならねェ
それじゃぁ、死ンだ奴も救われねぇし、明日に何もかわりゃしねェが
オレ様たちを多少なりとも悲しむ奴がいるッつーのを忘れちゃならねェ」
自分たちもその命の一つだ。
尊むべきものだとすれば、それこそ一つ一つに敬意を抱かなければならない。
それこそ、死が身近な此処では途方も無い事かも知れない。
それでも、それをないがしろにするのは……。
「それじゃァ、"スジ"が通らねェ」
それが、クロロの"矜持"だ。
無法者が日常の裏側で生きるルール。
無数にある一冊一冊の本を手に取り、めくり、自らの本棚<キオク>に収める。
それは決して、無駄な事では無い。
蛍とは違い、クロロは全ての一冊に意義がある物語を見出すと信じてる。
「だから、お前もそう簡単に『仕方ねェ』なンて口にすンな。
なンなら、ちょッと位ケーラ、手伝ッてやろうか?暇してるからよ」
だからこそ、目の前の蛍と言う本も手に取るつもりだ。
ニィ、と楽しげに口角を吊り上げ、その瞳を金色が見やった。
燈上 蛍 >
「……、……。
ええ、その蛍と同じです。
それにしても、貴方の信念は…僕よりよっぽどまともですね。」
『いるんですかね、哀しむヒトなんて。』
そう言いかけて口を噤んだ。
自分は誰にとっても特別では無いと考えている。
本の山に埋もれるように、手に取られることを恐れているとも言える。
中身を開示した結果、
レオという青年の『悲しい思い出』を呼び起こしてしまった事もある。
この頭に冠した彼岸花の花言葉そのままに。
何が青年をこんな風にしてしまったのか。
今はまだ、その頁は開かれない。
僅かに頭が揺れる。
黒髪に混ざる青い髪が、この暗い場所の僅かな光に反射した。
相手の言いたいことはなんとはなし分かる。
本にそういうことは良く書いてあることだし、そういうことを語る物語も嫌いじゃない。
けれど青年は、徹底的にそこから自分を除外していた。
それでも。
「……手伝うとは?」
本は手に取られる。
クロロ >
「信念ッつーのは、テメェと他人を比べるようなモンでもねーだろ?
それこそ、『オレ様はオレ様』で『お前はお前』だ」
人それぞれだ。だからこそ、それを尊重し合い生きていき
時にはぶつかり合い、対立する。
人間が生きるというのは、そう言うものだ。
クロロはそのぶつかり合いを畏れない。
それを良しとし、人の生きざまを"一部"を除き尊重する。
だからこそ、目の前の蛍<ページ>に手を掛けた。
「そンなモンこれからだろ。何もなきゃ、それでいいし
なンかありゃァぶちのめせばいいだろ?ホラ、行こうぜ」
警邏にしては随分と荒くれの思考だ。
元よりそう言う表裏の無い人間だという事をありありと示している。
ついてくるからどうかは知らない、笑みを浮かべたまま踵を返せば
こいよ、と軽く手を振って、裏路地をズケズケと歩いて行った。
燈上 蛍 >
「…、…そういうモノですかね……。」
個の尊重。
それを聞けば、僅かに炎が瞬いた。
けれど同時に、世の中はそんな個々よりも、
付随したタグで仕分けされて、
比べられてしまうことの方が多いのでは無いかと思ってしまう。
個人だけを見るだなんていうのは、美談のように思えてしまう。
魔術師だというのに、そんなことを堂々と言うクロロが不思議でならない。
不思議だからこそ、彼の"本"をこうして手に取っている。
「…風紀委員と仲良く歩いて、後で何かあっても知りませんよ…。」
──だから、彼を僅かばかりに"心配"してしまった。
二つの炎が落第街を照らし出す。
裏路地に響く靴音は二人分。
警邏の報告書には『現地での協力者有り』と書かれていることだろう。
それが今後『物語』にどのような影響を及ぼすかは、まだ誰も知らない。
ご案内:「落第街 路地裏」からクロロさんが去りました。<補足:迷彩柄のジャケットに黄緑の髪。人相の悪い青年。>
ご案内:「落第街 路地裏」から燈上 蛍さんが去りました。<補足:待合済:【とうじょう ほたる】青交じりの黒髪に紅橙眼の青年/18歳184cm。髪を編み込んで白い彼岸花を髪に差している。風紀委員の制服に腕章。>