2020/09/05 のログ
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に修世 光奈さんが現れました。<補足:少し茶色に寄った黒髪 同じく色素が薄い黒目 緩いツリ目 私服姿 銀のブレスレット 待ち合わせ>
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」に神樹椎苗さんが現れました。<補足:黒基調のロリータ服。桃色の髪と淡い青の瞳。ネコマニャンポシェット>
修世 光奈 > 夜の常世渋谷
本来なら、非常に危険な場所ではあるが。
表通りの一部にはお墨付きを押されている場所があり…そこは一般人でも安全と言える一角となっている。
そして、そんな区画の中でもよく待ち合わせに使われるロク公像前が光奈と、とある人物との待ち合わせ場所だ。


「―――♪」

そして、像の前でずっと立っていながらも、小さく微笑みながら体を揺らしている様子から。
今日の待ち合わせが楽しいものであることはよくわかる。
依頼を受け、今日待ち合わせた相手が抱えた事情はとても大きいが。
何度かメールのやり取りをしている感じでは非常に話しやすい相手のように思える。

もちろん、遊ぶためだけではなく依頼にも関係しているからこれは無駄な約束ではない。
その相手と深く話すことが、依頼達成の糸口となるかもしれないのだから。
さて、一応メールで待ち合わせ時間はすり合わせたものの、やはり時間が近くなってくればきょろきょろと、待ち合わせ相手を探し始める。

神樹椎苗 >  
 ロク公像前で待っていると、人並みから押し出されるように小さな影が転がり出る。
 ほんの少し息を切らせてやってくると、左手でグレーのキャスケットを押さえながら待ち合わせ相手を見上げた。

「――ちょっと、待たせちまいましたか。
 娘の夕食を用意してたら、出るのに手間取っちまったのです」

 そう少しばかり申し訳なさそうに。
 黒に白いレースの混ざったロリータ衣装は、以前とは違う余所行き用なのだろうとわかるだろう。

「今日はエスコートを頼むのですよ」

 そう言って、左手を差し出す。
 その様子は、そわそわとしていて、感情の薄い表情からも楽しみにしている様子が滲み出ているのが分かる。

修世 光奈 > 思えばここは、人もそこそこに多いから少し外した場所が良かったかな…と後悔していたところに。
可愛らしい恰好をした待ち合わせ相手が目の前に転がり出てきた。
対する光奈は、夜でも暑いと感じているのか、目立たない装飾が入った白Tシャツに足首までのジーンズだ。

「娘…ああ、沙羅さん…だったっけ。
ううん、全然待ってないよ。しいちゃんこそ、今日はありがとうー!」

会ったことは無いが、相手のデータを見た時に書いてあったことを思い出す。
申し訳なさそうな相手の手を取りながら、笑顔で迎えよう。

「ふっふっふ。お任せあれー。えっと、あっちのビルの4階かな。看板も出てなくて見つけたときはびっくりしたよー。いこいこ!」

別の依頼で、そのお店に関する捜索依頼があったため、偶然見つけられたお店だ。
マイナーキャラクターを前面に押し出している店だから印象に残っていてよかった。
そわそわしているのを見ればくすくす笑いながらゆっくり歩き出そう。どちらにしても、場所は割と近くだ。

光奈の案内に従っていけば、ネコマニャンが飛び交う絵が描かれたガラス扉の前にたどり着く。
中を覗けば、壁紙から何から所々に同じようにネコマニャンが居る店内が見えるだろう。

神樹椎苗 >  
「礼を言うのはしいの方です。
 色々と考えてくれるのはありがてーと思ってますよ」

 そして、はぐれない様に半歩後ろをついていく。
 ビルを見れば、ぱっと見では何かあるようには見えない。
 しかし、扉の前までたどり着けば、椎苗の目はきらりと輝くだろう。

「――ネコマニャン!」

 やや平坦だが、それでもどこか力の篭った声。
 歓声と言うには静かだったが、中をのぞき込もうとすでに身を乗り出しかけている。

「探偵もどき、見るのです、ネコマニャンです。
 よくやったのですよ、こんな店は簡単には見つからねーのです」

 うずうずとした様子で、隣の女子を見上げていた。

修世 光奈 > 「依頼だしね。私のやりたいことだから妥協は…できるだけしたくないし。」

そう言って笑いながら…もちろん、歩調を合わせて。
相手がはぐれないように人の波を進んでいこう。
ビルは綺麗ながらも特に何も表示されておらず…見ただけでは何があるかわからない。
ここを見つけられたのは、幸運とも言えよう。

「店主さんがすごく好きみたいでね。何か他に収入減があって、趣味全開でやってるんだってさ」

相手の出自を考えれば、小さな体躯と精神は一致しないのだけど。
うずうずする様子は見た目相応に可愛らしく思う。

「入ろ入ろ。パフェ食べないとねー」

などと言いながらガラス扉を開けて。
中は壁紙などは明るい色調で、カウンターが何席かと4人掛けのテーブルが2つ。
他のお客さんはカウンターに女性が1人だけだ。相当な穴場らしい。

「せっかくだしテーブルでゆっくりする?いいですかー?」

明るく光奈が聞いてみるとカウンターの内側に立っていた店主がいい笑顔で頷く。
テーブルに着けば、そこにはメニューが置いてあり。
パフェの他にもネコマニャンの焼き印がついたパンなどもあり、更にジュース等のグラスにもネコマニャンの顔がプリントされているようだ。

「さ、楽しも―!美味しくて好きなモノ食べた方が色々話しやすいしねー♪」

なーにーにーしよーうかーなーと間延びした声を出しながらメニューを広げて見せよう。

神樹椎苗 >  
 扉を入った店内の様子は、ある意味理想的ともいえる光景。
 店主とは趣味を理解しあえそうだ。
 人が少なく静かなのも、椎苗としてはポイントが高い。

「二人で連れ立ってきて、カウンターもねえでしょう」

 テーブル席を選ぶ女子には素直に同意を示して、向き合うように椅子に掛ける。
 真っ先にメニューを開いて、パフェのページを開いて目を輝かせた。

「なにはともあれパフェです、パフェを食べなくちゃ始まらねーのです。
 他はそれからじっくり制覇してやるのです」

 メニューの中に在るネコマニャン商品を見逃す事なくチェックしていく。
 ドリンクはミルクココアを頼む。
 パンは後で持ち帰れるかどうか聞いてみようか、と考えつつ。

「お前は何にするんですか?
 普通に軽食もあるみてーですし」

 と、メニューを一緒に眺めながら。

修世 光奈 > 「それもそうだねー」

あはは、と軽く笑いながらテーブル席へ。
広げられたメニューはネコマニャン一色だ。
光奈が言っていたパフェは…内容自体はクリームとチョコレートが層になったパフェ。
ただ、頂点のチョコアイスの上に特注の万歳ポーズをしたネコマニャンクッキーが乗っている。

光奈は飲み物にオレンジジュースを選択してから。

「制覇するんだ…ほんとに好きなんだねー。…んーーーー!悩むなあ…ちょ、ちょっと夜だし…こっちの小さいので…」

そう、この時間の甘いものは甘美であるが故に罠である。
ただ、軽食というのも少しこの夜というシチュエーションに合っているのかどうか。

そんな悩みから、増えた体重を嘆くことを少しでも避ける為に小さめのショートケーキを注文する。
これもまた、ネコマニャンの顔のチョコプレートが乗っているものだ。

ゆったりとやってきた店主…おしとやかな女性にそれらを告げれば。
少々時間をいただきます、と言って店主は下がっていく

「ふー…。落ち着いたところで、早速色々お話しよっか。
神木が関係あることでも、ないことでもさ。あ、そうそう。料理作れるんだよね。すごいなあ…
私、簡単に焼いたりとかはできるけど、ちょっと色々覚えたいなって思っててさー」

その後、光奈はにっこりと笑って、まずは当たり障りのないことを話し始める。
会話することによって少しでも真偽の差異がわかるようになればいいのだけど。

神樹椎苗 >  
「制覇するつもりですが――カロリーですか?
 そう言えば気にしたことなかったですね」

 対面の女子が何に悩んでいるのかと考えて、思い当たった。
 そう言えば娘も気にしていたように思う。
 店主への注文を任せて、パフェを楽しみにして無意識に足を揺らしていた。

「ん、料理はまだすごいってほどのもんじゃねーですよ。
 一応師匠になるのですが、白ロリ先輩の料理はすげーです、そこらの店と格がちげーですからね」

 そう言いながら、左手でポシェットから端末を取り出し。
 簡単に操作して、写真を表示する。
 映っているのは非常に美味しそうな、タマゴがつやつやと輝くオムライスだ。

「レシピ通りにやっても、どうにもこうはならねーのです。
 こだわりのすげーので、教えられるのもなかなか大変ですよ」

 などと言いながら、スワイプして何枚かの料理の写真を写す。
 煮物に焼き魚にハンバーグやら等々。

「しいも、娘に食べさせるまでは料理なんてしたことなかったですよ。
 とりあえず、レシピ通りに焦らず作れば大体形にはなります。
 まああとは――誰かに食べさせようと思えば、やる気も違いますよ」

 と、最近料理を初めて思った事を口にする。

修世 光奈 > うらやましい…!とつい口に出てしまったのは仕方ないだろう
太らない女子というのはファンタジーだと思っていたが、やはりというべきか目の前の相手はその類のようだ。

「おー…おいしそー!」

身を乗り出して美味しそうな料理たちの写真を見ていく。
特にオムライスは黄色い宝石のようだった。
確かに、格が違うという相手の言葉もよくわかる。

「理由が大事、ってこと?…そっか。そっかー……
あ、あ、別にあれだよ、誰に食べさせたいってわけじゃなくて、えっと、うん。できないよりは出来た方がいいかなーって!」

もうバレバレではあるが、ごまかしを入れたが

「…………。そのー、やっぱり、男の人ってこういうハンバーグとかの方が喜ぶかな?」

しばらくの無言の後、観念してハンバーグの写真を示す。
明らかに、メールでバレている『彼』の好みを考えている。
女子寮にはキッチンもついているし、練習もできるだろうと。

神樹椎苗 >  
「そもそも理由がなければ料理はしないでしょう。
 その理由次第で――どこまでこだわりたいか変わってくるでしょうけど」

 相手は、恋人に料理を振舞ってあげたいのだろう。
 それはとても、『それらしい』事のように思える。

「そうですね。
 相手にもよるでしょうけど、故郷の味というのは特別な想いがある事が多いようです。
 単純に男女で考えるなら、まあ、それなりにしっかり食べられる物の方が好まれるかもしれませんね」

 椎苗の部屋では、娘の要望によりヘルシーで栄養バランスのいい食事を心がけている。
 女子がそう言った食事を好むのなら、単純に考えれば男子は所謂重ための食事の方を好むのだろう。
 実際、学食や購買では、安くて沢山食べられる物が人気らしい。

「ハンバーグは作るだけなら比較的簡単ですよ。
 労力はかかりますが、焼き加減さえ焦がさないようにすれば何とかなります。
 わかりやすいレシピ本、教えましょうか?」

 と、自分が参考にしているレシピ情報を思い返しつつ。

修世 光奈 > 「故郷の味、としっかりしたものかぁ…こっそり今度聞いてみようかなあ
あ、うん!お願い!女子寮にせっかく料理できる環境があるからさ。色々試してみようと思って」

もう知られているのだから隠す理由もない。
素直にアドバイスを受けよう。
ほわほわ、と想像を巡らせていると相手から嬉しい申し出。
二つ返事で頷いたところで、まずはココアとオレンジジュースが運ばれてくる。
微妙にグラスの絵にバリエーションがあるらしく、光奈の方は少しカッコつけているネコマニャンだ
オレンジジュースをちゅー、とストローで飲み

「…んー。…やっぱり、さ。生きる為に死にたいって…その娘さんとか、他の人が関係あるのかな」

不死であるという気持ちはわからないけれど。
相手の気持ちを想像して考えてみた時に光奈の頭にはそういった考えが浮かんだ。
だから、もしかしたら、と問いかけて。

「そうだとしたら。今でも頑張ってるけど、もっと頑張ろう!って思えてさ。
メールの内容をもうちょっと深く考えたんだ。聞いてくれる?」

神樹椎苗 >  
「なら、いくつか見繕っておきますよ。
 料理は経験すればするだけ、理解するだけ上手くなれますからね」

 そう話しているうちに、ココアがやってくる。
 グラスにはだらりと、だらけているネコマニャンの姿。
 再び目が輝き、端末を手にそのグラスの写真を撮る。

「探偵もどき!
 そっちのグラスの写真も撮らせるのです!」

 そんな、外見相応の子供らしい振る舞いが見れるだろう。

「――んえ、理由ですか?
 娘は、まあ無関係でもねーですが。
 どうしてかと言われれば、宗教的なもんですかね」

 深く考えてみた、と言われれば、ふむ、と思案顔をして。
 続きを促すように顔を見る。

修世 光奈 > ありがとー、とまたお礼を言って。
一転、はしゃぐ様子にも笑顔を誘われる。
それにつられてグラスをそのまま差し出し、カッコつけネコマニャンも端末に収めてもらおう。

「宗教?…えっと、例のカルト教団に関わること…なのかな。
まあ、一旦置いといて」

大げさに何か箱状のものを左から右に置くモーションをした後少し声を潜める。

「最初に送ったメールのさ、2番目の案。
しいちゃんと神木を切り離すやつだけど…先に、神木の方にしいちゃん以外を端末にするように―、とかできないのかな
それこそ、木とか…。その後しいちゃんを切り離せば、神木が生むのはその新しい端末――になったり?
でも、もしかしたら端末を変えた時点でしいちゃんが木になったりしちゃうのかな、その場合」

それは、メールの内容をさらに発展した案。
メールと同じく可能不可能を度外視して、アイディアを出しまくる形だ。
そして…一応面と向かって神木の事を聞くから、何か態度に違いはでないだろうかと。
この案が神木にとって都合が悪ければ、神木にとって都合のいい方に誘導する文言が返ってくるのだろう。
返ってこなければ、それはそれで有効ではない案だ、ということだ。
ただ、それを見破れる可能性が低いのが問題ではあるが。

「いや、どうにも頭がパンクしそうで…。これくらいしか浮かばなかったんだけどさ
まだ、他の人に相談とかもできてないから、がっかりだったらごめんね…」

依頼が進まない、というのはもやもやとする。
頭もそれほど良いわけではなく、直感に頼るタイプのため全く的外れな可能性もあり、先に謝っておく。

丁度、話を終えた直後にケーキとパフェが運ばれてきた。
ケーキは小さめサイズ。パフェは中々の大きさだ。
大食い関連で出てくるサイズではないが、がっつり、と言えるサイズ

神樹椎苗 >  
「――さて、出来るか出来ないか、という点だけで言えば、出来なくはないと思います。
 ただ、それにはしい以上に、『神』が好む依り代が必要ですね。
 神木がしいを端末に選んだのには、しいが『神の手足』として具合がよかったからですしね」

 神木の能力、その神性を身に受けても壊れないもの。
 大量に蓄積された情報を押し付けられても、自我を維持できるもの。
 またそれらを扱える『知能』があるもの。

「基本的に知性体じゃねーと無理ですね。
 ただ、もししいが端末として不要になったら――まず、真っ先に学園が財団に始末――良くて捕縛されるでしょうね」

 試験運用とはいえ、データベースのバックアップの扱いだ。
 余計な事まで知っている相手を、自由にさせておくほど寛容ではないだろう。
 今は利用価値があるからこそ、自由が約束されているだけなのだ。

「その案に関する問題点は。
 しいの『代替品』を用意できるかと、しいやお前の身の安全を確保できる『取引材料』と言った所ですか。
 切り離す方法自体は、やり方はいくらかあるで――」

 と、受け答えしたところにやってきたケーキとパフェ。
 椎苗の言葉は途切れて、夢中で写真を撮り始める。
 その表情は、やけに真剣だ。

「――た、食べるのがもったいねーです」

 ふるふると震えながら、パフェを真顔で見つめていた。

修世 光奈 > 「……代わりの依り代…それに、対価、かぁ。
方法を考えてみると難しいねえ。切り離す方法も…ある、としてもそれから、かそれまでが大変だし…」

あくまで、参考程度。
もしかすると、神木の影響で何処かに欺瞞が混ざっているかもしれない。
ただ、それを離す相手の様子はほとんど変わらず、やはり簡単には嘘とはわからない。
簡単にわかってしまえば、自分以外の誰かがきっともう解決しているだろうから、当然と言えば当然だけれど。

(…うーん、やっぱり難しいなあ。…でも、がんばろ)

ふむー、と唸りながら相手の話を聞き。
けれど…好きなキャラクターの前で真剣にはしゃぐ姿は奮起を促すものだった。

「あはは…綺麗に盛り付けてあるよね。これはちょっと確かに食べにくいかも
でも食べないと、アイスが溶けてネコマニャンがクリームに沈んでいっちゃうかも?」

アイスの上に乗っている…ば、と両手を広げたポーズのネコマニャンは少し凛々しい
しかしアイスは溶けるもの。このままではクリームに沈むか、無様にコケるネコマニャンになってしまう。

「また来ればいいし、制覇するなら食べちゃわないと―。ん♪おいしー」

光奈は…流石に一口目からではないが、ネコマニャンの顔が乗ったケーキを少しずつ食べていく。
甘いものはやはり、食べると幸せになってくる。

「あ、と。後は…宗教的な理由?って詳しく聞いてもだいじょーぶ?」

記録を一言一句覚えているわけではなく。
何か見落としがあったかなと思いながら聞いてみよう。

神樹椎苗 >  
「むむむ、仕方ないのです。
 せめて美味しくいただいてやるとしましょう」

 と、手を合わせてクッキーを少し割ってアイスを載せて食べる。
 見た目だけでなく、味もしっかりとしていて美味だった。

「ん、ん、これはネコマニャンに恥じない出来ですね。
 これなら単純に甘味目的としても満足できそうです」

 そう感心したように言いながら、ぱくぱくとアイスを、クリームを食べていく。
 スプーンの動きにはよどみがなく、みるみるうちにパフェが減っていくだろう。

「――ああ、さっきの話ですね。
 しいはそう、『黒き神』を信仰しているのです。
 黒き神の教えからすれば、死を忘れた存在は、生きているとは言えないのですよ」

 スプーンをくわえながら、少し悩む。
 最初に会ったときも軽く話したが、一般的な宗教観や価値観とはかけ離れたものだ。

「要するに、死神信仰と言えば良いでしょうか。
 死を尊いものとして、畏れ崇める事で、より良い死を迎えるために充実した生を全うする。
 正しく生を全うした魂は、死神により楽園へと導かれ安寧が約束される」

 要するに、死ぬために生きるという価値観だ。
 より多数に浸透している『生』から始まる価値観とは正反対に位置している。

「だからこそ、しいは、自らにも『死』が訪れるものだと確かめたいのです。
 そうでなければ、しいはいつまでも『生きていない』半端な道具でしかいられません。
 『黒き神』に見初められた使徒としても、そんな存在は許せないのです」

 そう、ネコマニャンに向かっていた時と同じように、真剣な様子で話すだろう。
 

修世 光奈 > ケーキもまた、甘すぎないものの甘みをしっかり感じられる塩梅。
ネコマニャンが好きだからこそ、それを題材にした料理にはかなり力を入れているのだろう。
うわ、食べるの、起きるのはや、と言いつつ、思考を巡らせて。

「信仰、信仰かぁ……」

実感がわかない言葉だった。
光奈自身はあまり神様、というのを信じてはいない。
だから信仰する感覚というのがわからず。

ただ、宗教に対する知識や想いが薄いからこそ。
正反対に位置する考え方にも、そういうものか、と納得できる。
それに、相手の経歴も一通り見たからこそ、というのも理由としてある。

「ほんとに、こんな熱心な…えーと、信徒?が居るならその願いを叶えてあげてもいいのにねー。
まあ、またすぐ神木がしいちゃんを作っちゃうから仕方ないけど…」

スプーンの先を咥えて行儀悪く軽く噛んでいる。
甘いものを食べながら、じっくり考えているのだ。

「おっけー。いや、理由が詳しく知りたくて。
私のモチベーションにもつながるからね!」

いくらライフワークとはいえ、長く続けば体力も消費していく。
だからこうして、依頼人と話す時間も光奈にとっては癒しでもあるのだ。

「頑張って探すよ、しいちゃん。
そのままだと、しいちゃんが楽園?に連れていかれないもんね」

真剣な様子にこくりと頷いて。
ケーキもまた食べ進めていこう。
小さいサイズだからか、すぐに食べ終わりそうだ。

「やっぱり直に話すと違うねー…こんないいお店も紹介できたし、満足かな」

メールでのやり取りもいいが、こうして会うとより頭に入ってくる気がする。


「よっし、今日はここの制覇に付き合っちゃおうかな!お皿にもネコマニャンが居ますって書いてあるし」


重い話をしながらも言葉は軽く、明るく。
二人でネコマニャンメニューを堪能していったでしょうか。
まだまだアイディアを考えないとなー、と前向きに考えながら。

神樹椎苗 >  
 意外にも、理解できないと壁を作られることはなかった。
 それに少しばかり、安心を覚えている自分が居て、不思議な気分になった。

「――黒き神には、随分とよくしてもらってますよ。
 ただ、その神もほとんど残骸みてーなもんですから」

 いわば力の残りカス。
 すでに、椎苗の魂を強引に引き離せるほどの力は残っていない。
 ――かつての神器が揃うのなら話は別かもしれないが。

「ん、お前のやる気になったのならかまわねーです。
 別に、しい自信はそれほど隠したい話ってもんもねーですから」

 こうして話をする事そのものが、依頼の達成に近づく可能性すらあるのだから、お互いにいいことづくめだろう。

「そう言ってもらえるのは、ありがてーですね。
 しいの宗教観はどうにも、世間一般とはズレてしまってますから」

 理解を示されるだけでもありがたい。
 相手によっては、楽園へ行きたいだの、安寧がどうだなんて言えば、病人扱いされて終わってしまう。
 こうして受け入れようとしてくれる相手というのは、それだけで貴重な人間だ。

「しいの方こそ、こんないい店を教えもらえて大満足です。
 ――ほう、しいにつきあうと言いましたね。
 なら、明日体重計に乗って後悔するといいのですよ」

 ニヤリ、と悪い笑みを浮かべながら、椎苗は店主を呼ぶ。
 そして。
 メニューを右から左へ、全て頼んでいくのだった。

 その後、二人が――と言うより、付き合わされた方がどうなったかはわからない。
 なお、支払いは付き合わせたからという事で、椎苗が持ったのは言うまでもないだろう。

ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から神樹椎苗さんが去りました。<補足:黒基調のロリータ服。桃色の髪と淡い青の瞳。ネコマニャンポシェット>
ご案内:「常世渋谷 中央街(センター・ストリート)」から修世 光奈さんが去りました。<補足:少し茶色に寄った黒髪 同じく色素が薄い黒目 緩いツリ目 私服姿 銀のブレスレット 待ち合わせ>