2020/09/23 のログ
ご案内:「商店街」に神樹椎苗さんが現れました。<補足:黒基調のワンピース。ネコマニャンのポシェット。123cm>
ご案内:「商店街」に園刃 華霧さんが現れました。<補足:黒いチョーカー、赤いロング丈のキュロット、白いTシャツ、デニムのジャケット>
神樹椎苗 >  
 いつものように、商店街で食材の買い物中。
 今晩からは娘に作るだけでなく、もう一人食べさせないといけない相手が増えた。
 献立を考える楽しみも増えたが、男女となれば食事量も適切な栄養バランスも異なる。

「――さて、どうしたもんですかね」

 朝食とお弁当の内容も考えなくてはいけない。
 商店街に並ぶ店を眺めながら、献立を考えつつ散歩するように歩いていた。

園刃 華霧 >  
ツバキの"提案"を頭の中で繰り返す。

――『あの子』を安心させてあげてほしい

そんなもの、当然のことだった。
当たり前ではあるが、意識しているのといないのとでは違う。
それに……これは、他にも意識している仲間がいる、とその場でも話にした。
であれば、今まで会ってこなかった相手にも会わなければならないだろう。

……とはいったものの。
風紀委員のいつもの格好で探せば、物々しい雰囲気過ぎて話にならないと思う。
なにより、非常に個人的な話だ。
制服でやるものではなかろう。

そんなわけで自主的にオヤスミをいただいて、なけなしの私服を引っ張り出して。
最近はあちこちを歩き回っている。

「……っても、ナぁ……」

この島は広い。
その島の中で、たった一人を見つけだす。
意外と、どころでなく大変な仕事だ。

「……ま、しゃーナいな……」

あまり怪しくならない程度に周りを見ながら歩く。

「……ん?」

それらしき姿を見つけた。
よし、じゃあ……

……まて、どうやって声かけるかな?
考えてなかったぞ

「ァ―……ちょい、そコのお嬢サん」

……気の利いた台詞は浮かばなかった

神樹椎苗 >  
「――ん」

 声を掛けられると、声の方へと振り向く。
 なぜ声を掛けられたのかと、怪訝そうな表情を浮かべてはいるが。

「なんですか。
 同性趣味は理解できますが、ナンパならお断りです。
 ナンパどころか、子供に声を掛けて路地裏に連れ込むような性倒錯者なら通報しますが」

 と、白昼堂々、言葉を選ばないトゲトゲしい反応。
 じっと、女性を上から下まで眺めるように見る。

園刃 華霧 >  
まあ、トゲな反応が返ってきてもおかしくないよなあ、と身構えてはいた。
返ってきたのは、予想以上にきっつい感じの直球ストレート。

マジでこれがサラの言ってた人物ってのなら、逆に面白い。
そうじゃなかったとしても、いや、面白い娘じゃんか。

「フは、ははは! いや、アタシらしくナかったナ。
 や、確か二怪しカったナ。アタシは園刃華霧。おマえさン、神樹椎苗でいい?」

けらけらと楽しそうに笑って聞く。
そうそう、この方がソレらしい。

「ッテ、ソれも怪しいヨな。アタシは……水無月沙羅の友だち……っていうカ。
 アイツに言わせれば、姉、らシいんダよナ。
 でまあちト、"母"を探しテ三千里しテたんダ。」

はたから聞けば何を言っているかわからないような、そんな言葉で切り出す。
その方は手っ取り早い気がした。
 

神樹椎苗 >  
「怪しさ満点でしたね。
 ――ああ、その名前は覚えがあります。
 ええ、間違いねーですよ」

 娘の名前が出れば、なるほど、と小さく頷いた。

「三千里も歩かせちまったとなれば、悪い事をしましたね。
 でも、名前と顔もわかってれば、風紀なら寮の部屋くらい見つけられるでしょうに」

 最初の戸惑った様子から、一転して砕けた気安い調子。
 女性の態度には、椎苗も警戒を解いたようで表情は和らぐ。

「それで、しいを探してたとすれば、娘の話でちがいねーですね。
 ――場所、変えますか?」

 込み入った話があるのなら、と。

園刃 華霧 >  
「ンー、いヤ。顔と名前調べルだけデも、アタシ的にはアウトなンだヨね。
 だッテさー、そウほいホい勝手に他人のコト調べンもアレじゃン?
 今回は、ちット緊急だったンで掟やブりしたけドさ。」

風紀で追い立てるように調べるなんて、趣味じゃない。
だから、探す時の姿も制服にしていないのだ。

まあ、そこは自分の勝手な主義主張なんだけど。

「あァ、うン……そうダね。
 流石、察しガよくテ助かるヨ」

なるほど、"母"か。
見た目に騙されてはいけない知性があるのがよく分かる。

神樹椎苗 >  
「なるほど、随分とモラルがあるみてーですね。
 それならしいのデータを見た時は驚いたんじゃねーですか?」

 なにせ、全ての経歴から出会った相手、出歩いた場所すら記録されて、公開されているのだ。
 目の前のマトモな感性を持った相手なら、違和感、場合によっては不快に思ってもおかしくないだろう。

「流石、なんて言われるようなもんじゃねーですよ。
 ――そこの甘味処でいいですか?」

 商店街に佇む、和菓子屋。
 茶屋も兼ねていて、座って食べれる小さな空間もある。

園刃 華霧 >  
「モラル、なンてご大層ナもんじゃナいヨ。
 アタシ自身が、そウいうのが好きじゃナいダけ。
 ……ァー……まァ、ね。ちットどこじゃナく驚いタ。」

ちょっと調べようと思ったら、出るわ出るわ。
あれやこれやと出過ぎて見る気も失せるほどだった。
ま、どうせ知りたかったのはサラの関係者ってだけだから、別にいい。

ただ……
そこまで情報が集められている目の前の相手は、何者なんだ、という疑問は勿論もった。

しかし同時に
そんなものはどうでもいいことでもあった

「ン、あぁまあ話せルなら、どこデも」

ああ、よく知ってる店だ。
あそこはいい。

神樹椎苗 >  
「そう言う価値観は悪くねーですね」

 話しながら歩みを進めて、店の中に入る。
 ちょうどスペースは空いていて、椎苗はあんみつとほうじ茶を頼んでから席に座る。

「――で、娘の事ですが。
 最近の様子がおかしいって話ですかね」

 と、左手で頬杖を突きながら問いかける。

園刃 華霧 >  
「そりゃドうも。母のお眼鏡に叶ッタかネ?」

ひひ、と面白そうに笑う。
素直に後についていって……自分は、クリームあんみつと揚げ饅頭とほうじ茶を頼む。

「ン。
 やッパ、気づイてル? ッテいうカ、まズちゃんト家、戻ってルの?」

様子がおかしい、という第一声。
流石に一緒にいるだけあってちゃんと気づいている。
……一緒にいても気づかない間抜けがいそうな気がするが、この際とりあえず忘れる。

神樹椎苗 >  
 眼鏡にかなったかと言われれば、薄く笑って答えるだろう。
 家に戻ってるのかと聞かれて、とりあえずは頷いて見せた。

「一緒にいて気づかねーわけがねーですよ。
 ――帰っては来てますし、しいの前では普通に見せてますね。
 何も言わないので、何も聞かないではいますが」

 そう答えながら、少し目を細めて。

「で、同僚――先輩に勘づかれるって事は、随分目立ったか。
 それとも、直接何かありましたか?」

園刃 華霧 >  
「おー、コワ」

薄く笑う様子におどけて答える。
まったく、手強いことで。
園刃華霧なら、それは面白いと思うだろう。

「気ヅいてナさそーナのも、いるケどナ。
 そレは置いトいて。そッカ……」

"普通"に見せてる。
ひょっとすれば、家でも入れ替わってる可能性もあるか……
目の前の少女は、予想以上に頭がいい。

あまり話さないように、という約束はあったが……この相手ならいいだろうか。

「……そウだナ。両方って言えルかナ。
 アタシもなンとなく、おかシな感じハしてたケど。
 何も言わナいから様子見てタんだけドさ。」

そもそも自分の彼女に対するスタンスがそうなのだから、そうなってしまう。
しかし、そうも言ってられなくなったのは

「……たマたま、落第街のスラムでナ。
 "明らかに違う"アイツと会った。」

さて、どこまで気づいているのか。
いきなり突拍子もない話をふる前に、ちょっとワンクッションを置いてみる。

神樹椎苗 >  
「明らかに違う、ですか」

 ふむ、と口元に左手を添えて、少し考える。
 目の前の女性は鈍感ではない。
 その相手が、明らかに違うというのであれば。

「視覚的にわかる変化であれば、他の連中だって気づきますね。
 ――なんらかの、精神的な変容ですか」

 はあ、とため息が一つ。

「情緒の不安定さは、元からありましたね。
 後は、ストレスをやたら一人でため込む性格でしたが」

 言動や思考傾向の変化、そんなところは感じられた。
 過干渉しないよう、見守っていたが――。

「なかなか、頭のいてえ事になってるみたいですね」

 困ったように、眉根を寄せた。

園刃 華霧 >  
「……」

ふむ、と独りごちる。
流石に、人格が違う、までは気づかないよなあ……
いや、アタシも聞いてなきゃ当たりまでいけたかどうか。

「割と、頭イタイ。
 んデ、その話をもうチっと詳しクしたイんだけド……」

さて、どこから話したものか……と思った時に。
ふと、頭をよぎったことがあった。


「ァー……しぃって呼んデいいカ?
 その話を進める前に確認しタいコトが一個。
 おまえサん……ちょっト前にサラが落第街で事件起こシたの、知ってル?
 内部じゃ、そこソこでカい話にナってハいたンだけド。」

そのときこそが、おそらくは"彼女"がはっきりと表で行動した瞬間。
査問会だのなんだのになったから、一応それなりにはでかい話。
もっとも、不祥事、みたいなもんだしどこまで目の前の少女が知ってるかは……不明だ。

神樹椎苗 >  
「ん、好きに呼んで構わねーですよ。
 風紀の報告で上がっている事なら、ほぼ把握しています。
 娘が同僚に大怪我をさせたって件ですね」

 報告書や査問のやたら低レベルな議事録にも目を通している。
 相手が問題にしなかったから軽い処罰で済んだようだが――相手によっては厳罰になってもおかしくなかっただろう。

「で、その原因がクズやろー――『鉄火の支配者』とか呼ばれて調子に乗ってるヤツなのもわかってます。
 娘が深刻に精神に変調を来す事があるとすれば、またどうせあのクズやろー関係でしょう」

 そこまで言うと、また大きくため息。

「先日の『ディープ・ブルー』の件でも、あいつは大怪我してますからね。
 生死の境を彷徨うようだったそうですが――それが大きなストレスになってるかもしれませんね」

 はっきり言って、あの少年は人格的に未熟な上に傲慢で鈍感で幼稚だ。
 椎苗の個人的な感想を述べるなら、不愉快極まりないクズやろーである。
 それでも、心底不愉快だが、娘の恋人なのだ。

「――それで、娘はどんな状態になってるのですか」

 運ばれてきたあんみつとほうじ茶を受け取りながら。
 
園刃 華霧 >  
「なルほど、そいつは話が早い。」

風紀の報告で上がっていることを把握している。
普通であれば異常な話であり、なんなら真面目な風紀委員なら問題とするかもしれない。
けれど――
そんなこと、今は些細だ。

「あァ、クズやろートは……ひひ、なルほど正当な評価ダな。
 あのクズ、本当、人の話を聞いテるようデ聞かナいかンな…… っと。
 さておイて。」

危うく脱線しそうになる。
とりあえず、クズやろーの話は本筋とは少しずれるからほうりなげておく。


「うン。なラ、わかッテるト思うケど。
 相手は"怪力の異能"の持ち主。サラが力で敵うハずないノニ、ぶん回シて大怪我さセたわけダ。」

普段の彼女を知っていれば、明らかに異常なことは分かるだろう。

「デ。その当の被害者ノ話カラ聞いたのハ。戦ったのは"椿"って名乗ル別の人格だったッテ。
 ンでもッテ……アタシが、会ったのも"そっち"のアイツ。
 といウより……正体隠しテたアイツが自分かラ、サラじゃナいって話を振ってキた。」

ツバキが正確に何を考えて教えてきたのかは分からない。
けれど、なんとなく分かるのは自分を信じて正体を明かしたのだと思う。
逆に言えば、ソレを言わざるを得ない状況にある、とも言えるのかもしれない。

神樹椎苗 >  
 話を聞いて眉をしかめる。
 クズやろーに関して同意を得られたのは気分がいいが。
 それはとりあえず横に置いておこう。

「――はあ。
 また出てきた、と言うよりは。
 ほとんど入れ替わっちまってる、そんなところですね」

 娘が別の人格に頼らなければならないほど、精神的に追い詰められている。
 つまりはそう言う状態と言う事だ。

「手っ取り早く解決するなら、原因を取り除いちまう事ですが。
 あのクズやろーがアレな限り簡単ではねーですね」

 おそらくもっとも大きなストレスがあの少年に関わるものだろう。
 そしてその次点、となってくると。

「先日の件が引き金となったとすれば、おそらくしいの関係者が被害に遭ったのも一つの原因でしょう。
 他にも前線に出れていない事や、自分が周囲の人間に置いていかれるかもしれないという恐怖心。
 幾つもの不安が、クズやろーが死にかけた事で噴き出した、そんなところでしょうか」

 自分の知る情報から、そう推測して仮定を話す。
 そして、その『椿』という人格は『沙羅』の生活を壊そうというつもりはない。
 壊すつもりならとっくに大事になってるはずだ、と。

「娘がどうしたいのかは、わかりませんが。
 わざわざ正体をお前に打ち明けたって事は、何らかの解決を求めてるのは間違いないですね。
 お前に要求してきたのもさしずめ、ストレスや精神的障害の解消ってところじゃねーですか?」

 

園刃 華霧 >  
「ご名答、ダな。
 『偶に表に浮いてくるときもあるけど、基本的には閉じこもっているもの。』
 ツバキは、そう言ってタ。
 『いつまでも閉じこもっているわけにも行かないってわかってるはず』とモ、ね。
 見てみぬふりしてるのかも……ってちょっと疑ってたな。」

とすれば、今、自分たちが接しているのはサラのふりしたツバキってわけだよな。
……同情、なんてされたくないだろうけれど。
つい、自分としては可愛がってしまいたくなる。

「うン? クズやろー以外にモ、なンかあっタのか……
 そりゃストレスもたまルな……」

やれやれ、とため息をつく。
そして、ああ。『貴方達』か。

「うん。ツバキと会話したことは、あんまり人に言うな、とは言われたんだ。
 けれど、しぃ。多分、おまえさんは知っていたほうがいいな。」

これだけ賢くて、サラのこともよく分かっている相手だ。
自分の知るすべてを共有する必要があるのは間違いない。
それに、お互いに協力をしたほうがいい。

「ツバキは――『ディープブルー』、と、その黒幕を探してる……そういった。
 そして。正体を明かしてから、アタシに解決法を提案してきた。」

それは

「――私がそうして自分の『殺意』をごまかしていられる間に、『あの子』を安心させてあげてほしい。ってな。」

自分を律しての、願い。
戦うものの、妥協策。

「あの子にとって大事なのはそこなのよ。
 『貴方達』が居なくなるのが怖いだけなの。」

一言一句、言われたことを復唱する。
薄々分かってはいたけれど、改めて突きつけられた事実。

「そういうことだそうだ。」

神樹椎苗 >  
 『椿』の目的を聞いて、額を押さえた。
 思った通り、あの件が娘にとっては致命的だったのだろう。

「なんとも、難しい提案ですね。
 娘が失いたくねーのは、風紀委員のお前たちの事もそうです。
 ですが、風紀の仕事をしていれば危険はいつまでもつき纏うでしょう」

 解決法はある。
 娘にとって大切な人間たちを、一人残らず鉄火場から蹴りだせばいいのだ。
 もしくは――二度と鉄火場に立てないような体にしてやればいい。

「求めてるのは『安心』で、恐れてるのは『失う』事。
 そうなると、出来る事なんて限られてきちまいますね」

 少し悩んで、茶を啜る。

「しいに出来るのは、これまで通り娘の帰りを待っていてやる事くらいです。
 食事を作って、弁当を持たせて、帰ってきたら迎えてやる。
 しいが『娘たち』に与えてやれる安心は、それだけですから」

 ――言葉にすると、やはり無力感を覚えてしまう。
 けれど、自分に求められているのは、『帰る場所』だ。

「ん――何とかするなら、どこから動くべきでしょうね。
 しいの立場からだと、どうにも難しいところですが」

 あんみつを頬張りながら、眉をしかめる。
 具体的な案が思いつかない。
 椎苗が干渉するには、娘の言う『貴方たち』は風紀に偏っているのだ。

園刃 華霧 >  
「そこ、なんだよな……
 それこそ、『ディープブルー』なんて……
 アタシのよく知ってる男が、絶対に探り当ててカチコミに行くだろうし……」

その時、神代理央は一緒にいくだろうか。
そうでなくても、山本英治がどうかなってしまえば……やはりサラはショックを受けるだろうか。

「そう……アタシも、そうなんだよな……
 風紀に属しているとはいっても、別にコントロールできるわけでもないし。
 サラが甘える場になるしか、ないんだよなぁ」

ため息
それだけで済むのなら、いつでも何度でも。
デートでもなんでもして、甘やかし倒すんだけれど。

「アタシも、ねえ……
 それこそ、クズやろーにはさんざ説教くれてるんだけどさ。
 あと、どうしたもんかな……」

再びため息
改善がないわけではないが、どうもあの石頭。
簡単に治るものでもないらしい。よもやまた退院早々に落第街に行ってたりしないだろうか。

とっくに来ていたクリームあんみつを頬張り……
2つある揚げ饅頭を食べる?と、しぃに勧めたりしつつ。
顔は難しい表情をしていた。

神樹椎苗 >  
「悩みどころですね。
 どいつもこいつも、自分の信念とやらがあるみてーですし。
 人に言われて「はい、わかりました」と大人しくなる連中ではねーでしょう」

 そういう連中だから、わが身を省みずに他人のために動けるのだ。
 勧められた揚げ饅頭に食いついて、ゆっくり咀嚼しつつ。

「あむ――――クズやろーをどうにかするには、そろそろ力づくしかねーんじゃねえですか。
 まあアレはもう、最悪の場合拘束して監禁でもするとして」

 言葉でどれだけ言われても、容易に変われるとは思えない。
 自分の命にどれだけの価値があるのか――そこをわかっていない。
 だから椎苗は根本的に、あの少年を嫌悪しているのだ。

「娘の周囲に働きかけるよりは、娘を納得させる方が多少、現実味がありますかね。
 とはいえ、それが思い浮かばねーんですが」

 今回の件は、過度のストレスが原因とは言え――娘にも問題がある。
 怖いものから目をそらして、殻の中に逃げ込んでいる。
 ただ『安心』を与えて甘やかすだけでは、また同じことになるだろう。

「――とりあえず、今の一時的なストレスを取り除きつつ。
 『娘たち』にもしっかり、向き合えるように尻を叩く必要がありますか。
 『安心』なんて、いつも与えてもらえるもんじゃねーんですから」

 いつの間にか、手元のあんみつはなくなっている。
 結局、正解と言えるような結論には至れそうにない。
 対症療法か、荒療治といくか、なんにせよ――心の問題は簡単ではないだろう。

園刃 華霧 >  
「信念なんて持ってないようなアタシが言うのもなんだけど、
 そうなんだよなー。頑固モンばっかで困るんだよな。
 そんで入院する連中の多いこと多いこと」

チェルとかエイジとか……マジでさ。
もうちょっとなんとかならないのか……

「いや、ほんと……縛り付けて牢にでもつないでおきたいよな……
 自分を大事にしないのもムカつくけど、ソレが何を招くのか分かってるようで分かってないのが最悪だ」

何度かその辺の話をして確認しているんだけど……どこまで響いているのかいまいちわからない。
まあ、そういう生き方をずっとしてきて曲げられないってことなんだろうけどさ。
少しは融通を……いや、一応利かせてはいるんだが。
その傾け方をもうちょっと、なあ……


「納得させる、か……確かに、なあ……」

ずきり、と何処かが痛んだ。
――『安心』なんて、いつも与えてもらえるもんじゃねー
ああ、本当に、そう……なんだよ、な……

ああ ほんとうに わかっては いるんだけど

「サラの心配も最も、なところもあるしなあ……
 でも、何処かで折り合いをつけないといけなのも、確か……か……
 向き合う……か。
 サラも、多分、わかっちゃいるんだよな……」

だからこそ、殻にこもっているところもある気がする。
絶対の『安心』がほしいが、それが無理なこともわかっている。

いや。わからないふりをしていたい、ということだろうか……

最悪……じっくり話し合うことも必要かもしれない、けれど……

思考している間に、食べ物は食べ尽くしてしまった。

神樹椎苗 >  
「まあ、簡単に結論が出る話じゃねーですね。
 今日明日で円満解決、なんていくような問題じゃねーですから。
 本来長く付き合っていくような事でしょうからね」

 そうやって解決するのなら、世の中、心を病むような人間はもっと少ないだろう。

「さて、とりあえずですが、スタンスをはっきりさせときましょう。
 しいはこの件に関しては、助力はしても直接手を出すつもりはねえです。
 正直なところを言えば、どうなってもしいのやる事はかわんねーので」

 そう、受け取り方によっては冷たくも聞こえる言い方をする。
 椎苗にとっては、結果はあまり重要じゃないのだ。

「しいにとっては、どちらも大切な『娘』です。
 その『娘たち』が選んだにせよ、逃げたにせよ、しいはそれを受け入れるだけですから」

 娘が助けを求めてくるのなら、尻を叩く事も叱る事もあるだろうが。
 そうでない限りは――どうなろうと受け入れるのが椎苗の役目だ。
 あらゆる面で、椎苗は『娘たち』を肯定して味方で居続ける。

「甘やかして、与えるだけが『母』ってもんじゃねーでしょうからね。
 正解に導いてやるのも『母』なら、一緒に間違ってやるのもまた『母』でしょう。
 だから、しいは静観します」

 それは、話こそ聞くが、それ以上はしないという明確な線引き。
 今、おそらく誰よりも近くにいるからこそ、何もしないという意思表明だ。

「悪いですね、たいした役に立てなくて」

 わざわざ探しにまで来た相手に、申し訳なさそうに苦笑を浮かべた。
 

園刃 華霧 >  
「……そこは、まったくもって同感だな。
 簡単に結論出るんなら、世話はない。」

それは、そう。
だって そのこたえが かんたんに でるのなら
だれも くろうは しなかった

「……」

結論をじっと聞く。
それはある意味、予想をしていたとも言える解答で。

「いや、それでいいと思う。
 アタシだって、こうして駆けずり回って考えちゃいるけど。
 やれることなんて、『優しくしてやって欲しい』って程度の話を振りまくくらいだ。
 あとは……もう、最初から最後まで、受け入れてやる、くらいしか思いつかない。」

あとは、できることがあるとすれば……
今まで、触れてさえ居なかったこと。
じっくりと、話をする。その一点かもしれない。

「むしろ、な。しぃはそれでいい、とアタシは思った。
 そういう奴が、一人でもいないと……な。」

へらっと笑う。
あのこには きっと ささえが ひつようだから

「ま、正直な。この結果は予想通りだったところはあるんだ。
 だから、これは……そうだな。
 多分、確認。"家族"くらい、真実をちゃんと知っておいてやったほうがいいってな。
 うん、だから悪く思う必要もない」

"分かち合う"
それが多分、家族、というものなんだろうから。
それだけで十分だ。

神樹椎苗 >  
「――お前は、いい『姉』になれるんじゃねえですかね」

 その返答に、嬉しくなり自然と笑みが浮かんだ。

「それなら、後はお前に任せます。
 お前も、お前の思うようにやると良いのですよ。
 しいは、それを応援しますし、肯定します」

 彼女が娘の『姉』というのなら、それは椎苗にとっても意味を持つ。

「お前が『姉』なら、お前もしいの娘です。
 どんな結果になっても、しいが一緒に背負いますよ。
 抱えきれない事があったら、また甘えに来るといいです」

 そして、突然端末に着信があるだろう。
 その内容は、椎苗への連絡先と寮の部屋番号。

「だから、そうですね、こういうのも本当は妙なもんなんですが。
 ――『妹』の事、頼みます」

 静かに、頭を下げた。

園刃 華霧 >  
「いい『姉』、か……さて、どうかねえ。
 上手く出来てりゃいいけどさ。」

妹どころか、家族すら持ったことがない。
そんなやつが、いい『姉』になれるか……
ちょっとどころではなく、自信はないが。
保証されるんなら嬉しい。

「あぁ、そりゃありがたい。
 新米の『姉』としちゃね。ま……どこまでやれるかわからないけれど。
 やれるだけはやってみるさ。」

肩をすくめる。
実際、本当にどこまで何をできるかはわからない。
わからないけれど、必要だと思ったこと、やれることはやっておきたい。
ソレは確かだ。

「あー……確かに、しぃがサラの『母』ってんなら……『姉』のアタシは、確かに『娘』か。
 ははは、そうだそうだ。そりゃそうだ。」

からからと快活に笑った。

「ああ、それはさ。こっちこそ、だ。
 『妹』のことを、頼む」

お互いがお互い、できる領域は違う。
けれど、どちらが欠けても多分ダメだと思うから……
だから、頭を下げた

神樹椎苗 >  
「ふふ、お前が娘の姉でよかったですよ、『悪食娘』」

 頭を上げれば、可笑しそうに笑って。

「さて、それじゃあしいは買い物に戻ります。
 ああそうだ――お前、好きな料理はありますか」

 と、椅子から立ち上がりながらたずねる。

園刃 華霧 >  
「それはよかった……と」

今日のところはお別れかな、と思って……
おや……好きな料理、か

「うーん、いやな。それこそ『悪食』なんでね。
 好みってほど好みはないんだな。だいたい何でも食べるよ。」

ご期待に添えずにごめんね、とそんな感じのポーズをとる。

神樹椎苗 >  
「それは困りましたね。
 献立の参考にでもと思いましたが」

 ふむ、と顎に手を当てて。
 それならそれでいいか、と。

「よかったら、今度はうちに遊びに来ると良いです。
 その時は美味い料理でも作って迎えてやりますよ。
 好き嫌いはなくても、味が分からないってわけでもねーでしょう?」

 そう笑いかけつつ、支払いを済ませて店を出ようとするだろう。

園刃 華霧 >  
「そんな辺だろうと思った。
 うん、そうだね。今度はせっかくだからお邪魔するよ。
 なんなら三人で食事とかもいいんじゃないかな。」

にしし、と笑って後について出るだろう。
祖してその後は……

互いに別れてそれぞれの家路につくだろうか。

ご案内:「商店街」から神樹椎苗さんが去りました。<補足:黒基調のワンピース。ネコマニャンのポシェット。123cm>
ご案内:「商店街」から園刃 華霧さんが去りました。<補足:黒いチョーカー、赤いロング丈のキュロット、白いTシャツ、デニムのジャケット>