2015/06/14 - 20:57~23:07 のログ
ご案内:「常世保健病院」に遠条寺菖蒲さんが現れました。<補足:長い黒髪を下ろした青い瞳の女生徒。簡素な寝間着姿の生徒会幹部候補生>
遠条寺菖蒲 > 昼下がりの病院内。
見舞いに来る知り合いはそんなに多くはない。病室にいて好きなテレビドラマの原作小説を読んだりしつつ指のリハビリをしたり、リハビリルームで歩く練習をしたりする。
担当医の話では、手足には『全く何の損傷は見られない。可能性としては精神的な影響である』と言われている。
けれど、自分では分かっている。
あの日、あの暗闇で蟲に食されて喪失したと知ってしまい受けたショックからこうなっているのだ思ってはいる。
けれども、それを理解した所で手足は自由に動いてはくれない。
あの、自分の手足が消えて何も反応がない喪失感が未だに心に焼き付いてしまっているのが問題だった。

遠条寺菖蒲 > 本当なら普通に歩いて普通に走って自分一人で箸を持ってご飯も食べれるはずなのに、それが出来ない。
そのことに菖蒲としては僅かながら焦りを感じている。
担当医曰く「動かせるとちゃんと認識できるようになれば数日から数週間で快復するだろう」と言っていたけれども。
未だに上手く手に力は入らないし昔のように素早く腕も動かせない。付いている両脚では上手く走れずに転んでしまう。
そんな状況だ。

けど、それでも、私は動けるようにならないといけない。

夢の様な場所で出会った彼女・西園寺偲さんとの約束は忘れていない。
彼女が私に託すしかなかったのなら、どうにかしてその想いを叶えてあげたいと思うから。
私が、その今は表に出せない願いを叶えてあげたいと思うから。
どんなに苦しくてもリハビリを続ける他にない。

遠条寺菖蒲 > ――それに、私だって悔しい。

手すりに手を置いてリハビリルームにある階段を模した段差を2段ほど登り降りる。ただ歩くだけならすでになんとかなりそうな段階にまで来れていた。
足を上げて――

「っ……」

下ろす。
病院で目を覚ました直後はまるでずっとしびれたままのようだった足も今では感覚がそれなりにある。
これなら、後数日でそれなりに回復するのではないかと思う。
額に浮かぶ汗を拭い段差に座って腰かけた。

――反省点は色々とある。

遠条寺菖蒲 > 『ロストサイン』と呼ばれる組織の“害来腫”ブラッタに“失落園”ザデルハイメス。
どういったモノかという詳細は彼女から聞くことは出来なかったが、その二人が私が遭遇した可能性の高い存在だと彼女の話から察した。

ご案内:「常世保健病院」に『室長補佐代理』さんが現れました。<補足:No.38 汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。公安委員会の腕章をつけている>
『室長補佐代理』 > 「大変そうだな」
その声は、突然かかった。
頭上から。落ちるように、言葉がかけられた。
もし、視界をそちらに向けたのなら、そこに居るのは、柱を思わせる長身の男。
ザンバラの黒髪から、黒瞳を向ける不気味な男。
口元の笑みを滲ませながら、男は少女を見下ろす。
その右腕には、公安委員の腕章が巻かれていた。
「生徒会幹部候補生 遠条寺菖蒲」

遠条寺菖蒲 > 少し思考にふけっていると目の前に長身の男がいた。
はじめて見る人だ。
誰だろうか?公安委員の人であるとはその腕章から理解するが……

「……は、はじめまして!もしかして公安委員の第九特別教室の方ですか?!」

記憶にないが、公安委員で以前自分と関わりがあったとするならその組織の人間だと考えて口にした。

『室長補佐代理』 > 「いいや、『御同類』ではあるが、所属が違う」
そういって、懐から、普通の生徒のそれとは装丁の異なる生徒手帳を取り出し、開く。
「公安委員会直轄第二特別教室 調査部別室 『室長補佐代理』 異能名は『主観論』、魔術名は『君の友人』だ。生憎と、本名は規則上名乗ることができなくてね」
好感より先に嫌悪を感じさせる不気味な笑みを漏らしながら、手帳をまた仕舞う。

遠条寺菖蒲 > 「そ、そうでしたか。えっと『室長補佐代理』さん?とお呼びしたほうがいいんでしょうか?」
少し不気味な男に緊張しつつも恐怖というよりどちらかと言えば、他の組織の偉いだろう肩書の人と会うのがはじめてで焦りがある菖蒲であった。
自分はなにかしてしまったのか、心当たりはな……いことはない、と表情が不安そうに『室長補佐代理』を見上げる。

「えっと、何か御用なのでしょうか?」

御用があるから来たのだろうけれど、聞くのは礼儀だろうと考える。

『室長補佐代理』 > 「無論だ」
そういって、大儀そうに少女の隣……リハビリルームにある少し背の高い椅子に腰掛ける。
それでもなお、長身の男の視線は菖蒲とそう差がない。
「『害来種』の件で話をしにきた。不躾かもしれんが、君に聞くのが一番手っ取り早いだろうとおもってね」
黒い、伽藍洞を思わせる瞳が、少女を覗き込む。

遠条寺菖蒲 > 一瞬、自分でも身体が強張るのを感じる。
トラウマ、というものなのだろうと自覚はある。
しかし、簡単に克服できるようなものでもない。
だが、ここで引くわけにはいかない。
私は立ち向かい再び対峙しなければならない可能性があるのだから。
いつの間にか乱れていた呼吸を整え、落ち着いた顔で室長補佐代理の顔を見て答える。

「……私に協力できる事でしたら。分かることは答えます」

足は震えそうだ。手も震えているかもしれない。
それでも、立ち向かっていかなければ前には進めないから、目を逸らしはしないと意気込む。

『室長補佐代理』 > 気丈にそう答える少女を見て、男は目を細める。
伽藍洞の瞳の中、ぽっかりと穿たれた闇が縮小する。
それがただ瞳孔が細まっただけだと分かるまで、どれだけの時が必要であろうか。
「ご協力感謝する。当時の状況を軽く説明してほしい。思い出せる限りで構わない。奴とは俺も浅からぬ仲なんでね……何せ、元同僚だ」

遠条寺菖蒲 > 「そうですね……先ず害来腫と遭遇したのは――」

事の始まりと自分が何か――恐らく蟲にさされ一瞬で眠らされ気がついたら下水の奥深くだったこと、そして「自分が人柱の最後の一人」で「その場所になにか害来腫とは別の何かがいたような気がした」と言うことを報告する。
気がついた時には病院で目を覚まして今に至ると自分の手足が一度食われていたなどとどう説明してよいか分からない部分は説明を省いた。

「私が、覚えてるのはそんなところ……です。詳しい事は、意識があまりハッキリしてなかったので…すみません」

僅かに声を震えさせているが必死に抑え込もうとして当時の話をする。
いつの間にか膝の上で握られた拳は力強く作られていた。

『室長補佐代理』 > 最後まで、男は口をさし挟まず、ただ話を聞いた。
ただ静かに一部始終話を聞いて、少女が話をそう引き結ぶんだところで、ようやく頷いた。
「重ねて、ご協力感謝する。実は、アレの『処分』が正式に決定してね。その事で詳しい話を聞ける人物を探していたんだよ。心労を重ねる様な真似をしてすまないな」
そう、謝辞を口では述べるが、口元の笑みは依然変わることがない。
最初から、何も変わらない。
「しかし、その証言のお陰で……なんとか色々対処はできそうだ」

遠条寺菖蒲 > 「いえ、私も生徒会の人間ですから、こうして公安委員や学園の平和に協力出来るのは嬉しい限りです」
そう言ってこれまでの我慢してた怯えを隠すに笑顔を作った。
この眼の前のひとのような笑みは浮かべられないだろうけど、ぎこちなく笑顔を浮かべる。
もしかすると私に笑顔を思い出させるためにこの人はこんな笑顔を貼り付けているのかもなんて良いように解釈して。

「『室長補佐代理』さんと公安委員の方々がなるべく無事に、害来腫を倒せる事を祈っておきます…――お願いします」

きっと、私ではアレは倒せないだろうから。
だから、自分で討ちたくとも託す他にないから、そう室長補佐代理に頭を下げた。

『室長補佐代理』 > 「大丈夫だ、あれの末路はもう決まっている」
そういって、徐に立ち上がる。
変わらぬ不敵ともとれる不気味な笑みを浮かべたまま、緩慢に。
「君はここで養生するといい。今の君の仕事はそれだ」
そして、それだけを言い残して去っていく。
意味深な笑みを浮かべたまま、静かに。
「あれは無事に倒せるさ。悉く、敵に回す相手が『悪い』。アイツもそれは多分わかっている……なら、もう、そういうことなのさ」
ただ、その呟きだけを残して。

ご案内:「常世保健病院」から『室長補佐代理』さんが去りました。<補足:No.38 汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。公安委員会の腕章をつけている>
遠条寺菖蒲 > そう言って去っていった『室長補佐代理』を見送り、やはり公安委員や風紀と言った治安や警察的な組織の人は凄いな、と笑う。
少しの間、俯いてこうして自分では何も出来ないと言う無力さから来る涙に堪えた。

「……強く、ならないと」

生まれてはじめてそう思った。

遠条寺菖蒲 > それは彼女との約束を守る為でもあるけれど、『ロストサイン』を止めれればきっと手段は問題ではない。
だけれど、今の私には自衛力も乏しいのだ。

故に、強くなる必要がある。

戦う為だけではなくて、生き残り彼女の願いを少しでも叶えてあげるために。
それが約束を守ることにもつながるならと考えた。

遠条寺菖蒲 > それに、私のような被害者は増えるべきではない。

未だフラつく足だが前よりも歩けるようになっていた気がした。
部屋に戻って養生してよう。
菖蒲がその腕に力が入るように戻ったと気がついたのはベッドに入って小説を読もうと手を伸ばした時だった。

ご案内:「常世保健病院」から遠条寺菖蒲さんが去りました。<補足:長い黒髪を下ろした青い瞳の女生徒。簡素な寝間着姿の生徒会幹部候補生>