2015/06/07 - 14:10~23:45 のログ
ご案内:「閑静な住宅街」に遠条寺菖蒲さんが現れました。<補足:長い黒髪を結い上げてポニーテールにした青い瞳の女生徒。護身に小太刀を携帯している生徒会幹部候補生>
遠条寺菖蒲 > 時間の余裕を見て話に聞いた数日前にあったという事件現場付近に菖蒲は足を運んできた。
実のところ『違法薬物』の事件について調査しようとした菖蒲の行動は即・生徒会幹部たちにバレていたため生徒会の情報力収集能力など記録を見て詳しい場所を調べて足を運ぶと言う作戦は失敗しており、口頭で聞いた『住宅街で何かあった』と言う言葉だけを頼りにやってきている。
「本当にこの辺なんでしょうかね……」
遠条寺菖蒲 > バレたけれど、注意をされただけで調べることを禁じる事はされなかった。
つまり菖蒲の自己責任として関わることは自由だということであった。
「先輩方は色々と把握しているみたいですが、私には直接情報は与えられませんし幹部候補と言ってもまだ執行役員の時から変化はないですね……」
それは焦りでもあり、自分の信頼のなさなのだろうかと少し不安になるには十分であった。
遠条寺菖蒲 > 「多分、公安や風紀から緘口令が出ているからこの辺の人から余り事情も聞けないのだと思いますし……一部にあったドラゴンだとかそういう噂話も来てみればそんな痕跡はないし……いえ、異能などでそういう痕跡を消せる処理班がいてもおかしくはありませんよね。何度か事故処理の要請の連絡役はしたことがありますし」
詳しい組織については菖蒲もしらないが、書類と電話を先生に送れだとかそういう話はこれまでにあった。
だから、そういう思考が動くのは道理でもある。
遠条寺菖蒲 > しかし、住宅街と言っても広いのだ。
学園地区の高級住宅地に住む菖蒲の行動範囲はこの常世学園の中でも極端に狭い。
この居住区に来るのははじめてであった。
「少し歩いて迷子にならないようにしておきましょう……」
最早それは散歩に近い行為であるのだが、気付かないのは本人ばかりだ。
ご案内:「閑静な住宅街」に五代 基一郎さんが現れました。<補足:黒猫と散歩中。>
五代 基一郎 > コトは既に終幕に入りつつあった。揃った檀上の役者達。
シナリオの決着は見えていた。与えられた配役を各々が自覚し動き始める。
あとはどうケリが着けられるかだが。
「何してるのこんなところで」
その見知った顔……当時雑務の席にいた少女を見かけて声をかける。
本当になんでこんなところにいるんだか、という素直な疑問を。
自らの前を歩く黒猫と共に歩みを止めて聞いた。
どう考えても今の時期それなりの肩書がある人間が、それなりのことがあった場所で散歩してるわけないのは明白だった。
遠条寺菖蒲 > 声をかけられて一瞬歩みが止まり、中途半端に浮いた足は硬直してゆっくりと地面を踏みしめる。一瞬であるが左肩に背負う刀袋の紐を握る手に緊張から力が篭ったのが分かる。
「えっと、散歩で――」
声に答えようと相手の顔を見て一瞬思考が止まる。
そして表情も硬直する。
菖蒲としては多少、自分の肩書きと名前を知っている程度ならある程度誤魔化せる自信は腹芸が出来ないくせにあった。
が、目の前の人にはどうにも頭は上がらないだろうと理解するのに一秒もいらなかった。
「五代執行部長……!どうしてここに……?」
僅かな混乱による質問への質問返し。
五代の事を認識して半歩下がった菖蒲から僅かに血の気が引いていっているようだった。
五代 基一郎 > 「声をかけられて意気込むようなら、もうちょっと気を付けようよ遠条寺君」
やるきのない、というより飽きれた顔でかつての部下の顔を見て諌める。
菖蒲の記憶に残る執行部時代のこの男から決して離れたことの無い黒猫でさえ
警戒すらせず飽きれて気だるげに見える。
「元だよ元、今は風紀の人間さ」
この季節特有の湿度の鬱陶しさからか、左腕に雑に纏められた風紀の制服を揺らして見せる。
やる気のない瞳。くたびれたシャツ、古めかしい鞄に疲れた革靴。
記憶の中の人間とは大きく変わっているだろうか。
「どうしてって……俺は人探しだよ。西園寺君の首切りが正式に決まった今はそれなりに大っぴらに歩けるしさ。
そろそろこの件も終わりが見えてきたしな。もしかして今から調べようとしてたの?」
遠条寺菖蒲 > ぎくり、とそんな声が聞こえてきそうな古典的な漫画のように表情筋が動く。本人は無表情を努めようとしたようだが、そんな事は今まで一度もしたことがないのに直ぐに出来るはずがない。
「そ、そうですね。今は風紀のどこかの部署で隊長をやっているって執行役員の子から聞いた覚えがありますけど、私他所の組織の事はよく知らなくて……」
生徒会の今は幹部候補生でありながら、余りに知らないことが多過ぎる事に改めてかつての執行役員時代に世話になっていた先輩のその後を知らなかったことを恥じているようである。
しかし、昔から何故か菖蒲に対しては異常なほどの雑務処理などが与えられ基本的に生徒会室に縛り付けられていたようなものだったと当時の彼女の事を知るならば知っているだろう。
「し、調べるとか……」
顔を逸らして斜めしたから五代の顔を見上げてしらは切れないだろうな、と言うことくらいは菖蒲でもなんとなく理解する。
「えっと、その、個人的に……少し。後でちょっと記録の情報の齟齬とか調べ直すのに便利かなって……幹部候補生になったらそういう情報の調査もするんじゃないかって執行役員の先輩から聞いて、ですね……」
怒られる前の子供のように恐る恐る自白をした。
五代 基一郎 > そのひきつった顔、オカメじゃないんだからさぁとでも言いたげな飽きれた顔で首の裏側あたりに手をやり、所謂思考を巡らせるような体を見せて言葉を続ける。
「それじゃ今回のことも、あまり知らないってわけか」
まぁだからといって今ここで”生徒会の”人間が動くのはあまりよろしくないのだが
目の前の少女にはそこまで知らされていないか、そもそういう考えに至るような人間ではないのは
執行部時代生徒会室に長くいた彼女の姿を見ていたのもあり察することはできた。
物を知らないと言えばそれまでだが、ようは善良な人間の一人なのだ。
「存在する、さりとて存在せずとし。あることがまた重要であるというのが生徒会みたいなもんだし知っているのは大事だけどさ。
今回だけは時期もあんまりよろしくないなぁ……」
萎縮というより親にいたずらを見つかった子供のように小さくなる菖蒲から目を移し、住宅街に備え付けられた休憩用のベンチ
その隣に見える自販機を見て
「ねぇ、何がいい?」
そういいながら答えを待たずに歩き出した。ポケットから折りたたみの小さい小銭入れを出しながら。
黒猫はというと既にベンチに飛び乗り丸まっていた。
遠条寺菖蒲 > 「えっと、少し前の会議で落第街とかこの辺だとかで違法薬物の事件がとかって聞いてはいるんですけど」
それも大雑把な情報だ。知られても何が出来ると言う情報ではないし、そもそもが関わっている人間の名前を誰一人として知らないから現場である家の場所も調べられないし、各事件で対処した風紀委員や居合わせた公安委員の名前も知らから菖蒲は今ここで一人なのだろう。
「時期……?そう言えば先程、言ってた西園寺君って西園寺偲公安委員会の副委員長さんですか?」
やっと少し冷静になってきたのか少しずつ五代の言葉を咀嚼して理解し始める。
「いいんですか?それじゃあ、桃の絵柄の飲み物を」
最初は怒られるだけかと思っていたのだけれど少し違うのではないかと思い段々といつもの調子を取り戻してきているようだ。
五代 基一郎 > 「情報が入ってこないから、まぁなんというかこうして来たわけか。事後ので十分だろうになぁそれなりに報告上がるだろうにさ終わったら」
自販機に小銭を入れて、桃の絵柄の飲み物……甘い桃ジュース。大地の恵みヘクタールのボタンを押して購入すれば
出てきた缶を菖蒲に手渡しつつ、自分は無難なつめたい番茶を選んだ。
「そう。西園寺偲。かつての執行役員、書記のね。君も見た事あるでしょ」
応えながら席取りでもしてたかのような黒猫が背もたれに昇り
男がベンチに座ればその膝の上に乗る。菖蒲を隣の席を促しつつ、話を続けた。
「一応の話としては、公安委員会副委員長である西園寺偲が、非常連絡局を利用して違法薬物の研究と実験を行っていた。
落第街の路地裏での取引、歓楽街にばらまいたりさ。
この住宅地でも大騒ぎして、事件に関係した一般の生徒2名を指名手配送りにしたりとかね。
で、まぁもう公安委員長やその上の方も庇いきれなくなったから処分を下したってところ。もう話は決着をつける時期なのさ。」
缶のプルタブを開ける音が小さく鳴った。
遠条寺菖蒲 > 五代の言うことは最もである訳だが、菖蒲にはいきなり薬物事件だなんて幹部候補生始まって早々TVアニメよりも自分とはかけ離れた幻想の産物だと思っていた事件であり自分の目と耳で確かめたかったのもあるとは少し言いづらくあった。
促されるままにベンチに座ると缶ジュースを開けるのに数秒悩んだようだったが、足で缶を押さえて両手で開けると言う妙に器用な事をしてみせた。
「実は私、幹部候補生になるのが決まるまでそれこそ五代さんとか書類に名前がある人とかいつも仕事を投げてくる幹部の人くらいしか名前を知らなくて……多分顔は見たことはあるのと思うんですけど……」
菖蒲の中ではかつて書記にいた女性の先輩となるとぼんやりとだが覚えており当時の顔もなんとなく覚えているが、その書記の先輩と公安委員会副委員長の西園寺偲という名前はイコールで結ばれてなかった。
が、故にその後五代の口から語られた話には唖然とした。
「え、え?!研究して実験って……取引にばらまきって……。
それに一班の生徒二名も巻き添えって……そんな事、一人で……」
出来るはずがない。
そう言いかけて、件の西園寺偲の肩書きを思い出す。
公安委員会副委員長。更には非常連絡局まで利用していたとなれば可能かもしれない。いや、ある程度は一人でも可能だろう。
「それに、処分を下して決着ってことは西園寺偲さんはもう?」
結果、どうなるのかは菖蒲も知らない。裁判にでもかかり牢屋に、未成年ならばまだそれほど大変な刑罰にはならないのではと『外の基準』で思考した。
五代 基一郎 > そういえば慣れてなさそうだな、と思ってはいたがまさか今の今まで本当に缶飲料を飲んだことがないとはと。
爪気を付けてね、との言葉でその思い出にも似た考えを切りつつ話を続けた。
「まぁ、それなりに地味でもあったからね。言うときは結構言う子だったけどさ当時は」
今まさしくそんな過去の姿とは離れた、自分でもある種の現実離れしたことになってるなと思いつつ
まぁ、知らないなら足を出すのも無理もないかとも思いつつ迂闊だなぁとも思った。
「巻き込まれた、となればもっと多いな。公表されてない人数を含めれば両手じゃ足りないさ。派手にやりすぎたよ彼女は。
無論、できるはずはない。だから一応の話。それなりに裏はあるんだろうけどね。そこも蓋を開けないとわからないでしょ実態は」
菖蒲が何を言いたいかを察した上で補足するように続け、またその先にも言葉を続けた。
「権力の剥奪、出頭命令と出てるがそんな穏やかにはならないさ。
風紀もだけど、俺らには軍権と警察権が与えられている。
いくら学生や未成年とはいえ、その籍にいる人間が喧嘩や独断の範疇を越えたことに手を出したんだ。
タダで済むわけはないよ。実際この件の影響は大きい。風紀公安だけじゃない。その治安維持能力を持つ二つ騒動にかこつけて悪さしてるヤツや影響力拡大しているやつが出てきているんだ。
今じゃどこが安全かわからない、なんて空気すらあるよ。だから急いだんだろうけどさ公安委員長らも」
息継ぎのように茶を口にし、黒猫にも舐めさせるとこれが本題とも言うように菖蒲へ顔を向けて
「そんな複数の組織が悪い顔でカードの奪い合いしてる時に、生徒会の人間が顔出したら痛くない腹でも勘ぐる奴は勘ぐるし
何か利用しようとしたり、自分の手札にしようと思う奴が出てきてもおかしくないでしょ」
遠条寺菖蒲 > 静かに聞いて五代の話を頭に入れていく。
なんとなくだが、直感的にこの件の情報処理は自分には当てられない気がしたのだ。
そして最後の一言で自分の迂闊さを理解し眉を寄せて、口からは声が漏れそうになったがなんとか堪えた。
「……あれ?まだ西園寺偲さんは捕まってはいないんですか?
異能使いの多い風紀と公安なら彼女を捕まえるのはそんなに難しくはないように思うのですが」
記憶している限りでは公安委員会の副委員長の異能は身体能力系だとか認識阻害と言ったものではなかったと記憶している。
「後、私だって悪人の顔くらい分かりますよ!これでも公安や風紀の方には劣るでしょうが私のチカラだってそこそこ有用なんですから」
そう言って菖蒲が思い浮かべる悪人面と言うのはこの島に来てから見るようになったテレビドラマに出て来るような明らかにそれっぽいような悪人面である。
五代 基一郎 > 「大手を振って”風紀”が”公安”の副委員長を逮捕するとなれば、一日とかからないよ。
しかしそんな公安の上から二番目の人間を力づくでねじ伏せることをすれば公安の常世での存在することこそ抑止力になる機能はほぼなくなる程度には低下する。
裏でこの常世の安全を見守る(監視する)公安がいるからこそ、裏でこそこそやる悪い連中は出にくいことだし。」
自分が出る必要などない。ハッキリいえば今回機動隊と刑事課の人間が破壊活動防止法等で施設の立ち入り検挙すればすぐにでも済んだ話だ。
「で、そんな今悪いと流布されている悪いヤツとされた……しかも公安の上から二番目に権力がある人間をひっとらえた風紀はこれ幸いにと鬼の首掲げて影響力を広げるわけさ。
正義の戦争に勝利したんだ。大きい顔でイバり散らすのも無理はないし、それがどんな影響を生むも考えないだろうしさ。
正義の戦争に勝利して、その栄光と賛辞を受けた権力組織がどうなるかは今の非常連絡局がよく示しているじゃないか」
飲み終わった缶を脇に退けて黒猫を撫でながら疑問に答えていく。
「だから、風紀も一部は尻込みしていた。だが今は上が示し合わせて非常連絡局の解体と西園寺偲の職業上の地位と権利を剥奪したんだ。
風紀もようやくそれなりに遠慮なく動ける状態になり、さぁってことになったの。大丈夫?ついてこれてる?」
わからないならわからないって言ってね、きちんとわかるように説明するからとも付けて。
今回の件でわからないことがあれば、また不用心にうろうろするだろうことが見えていたからである。
不用心極まって体のいい交渉材料にかつての部下を貶められるなどまっぴらごめんであった。
「ねぇ、顔でどうこうってのは今の件がいい例じゃない。西園寺君は悪い顔してなかったでしょ。
それでもどうあれ悪いことをして、こうなってるんだ。それに本当に悪いヤツだったら君に顔を見せずにどうこうしちゃうよ。
見つけて”お元気そうですね、何をしてるんですか”なんて声をかけないはずさ」
遠条寺菖蒲 > そうか、とそこで自分はそう簡単にいかないので察するに至る。
菖蒲の思い描いていた状況とはテレビドラマでは権力者を警察機構が周囲の目も気にせずにズバッと逮捕してしまうような痛快である物語だ。
更には自分の知らないところで様々なことが日々起きているのだと知るとどうしてこんなにも自分は何も知らない。いや『知らされていない』のだろうか?
それは今もこうやって五大元執行部長というかつての上司の一人に言葉としては優しくだが咎められている事で理解できなくはない。自分は余りにも住まわされている場所以外の外を知らない。
けれども、それにしては何かおかしいような気もした。が、今思考すべきは生徒会の自分に対する情報の制限などの話ではない。
「ごめんなさい。……私確かに風紀委員会や公安委員会…それに生徒会もそれなりの権力を持つというのは認識してました。けれど、そこまで大きな事になるような権力を持つというのは理解していませんでした……」
この少女は島に居ながら余りにも学園地区に拘束され過ぎている。
それが外にある彼女の家の意向なのか、それとも別の何かなのかは分からないがそれでもここまで事を把握していないとまるで島に来て日の浅い一般生徒のようだ。少なくとも中等部の三年間はしっかりとこの常世島の学園で過ごしているのにも関わらず。
「それに非常連絡局の解体って私は、聞かされてませんでした……」
その声はどこか悲しそうにも聞こえる声色であった。
「そうですよね、私でも敵や目標をどうにかするのにお伺い立てることはしません……。なんでしょう、今回の件は私って下手をすれば最悪の一手を引き起こす可能性すらあったんですね」
その返しは自嘲めいた言葉と悔しさに塗れた声色であった。
五代 基一郎 > 箱入りというにはあまりに危険な情報に対して、または現実に対して離れた意識。
当時は彼女自身初々しいこともありあまり気にしてはいなかったが。
現在でも変わらずとなるといくら自分でも不安になってくる不自然さはある。
例えば広報の彼女のような理解していても気づかない無防備さではなく
理解させられていないが故の無防備さが彼女から感じられた。
「学生活動と言っても実態は島の外と同じの通り。大人や社会が決めた機能を引き継いでいるんだ。学生だからと守られた時間であっても、社会を維持するために守られる部分が出たらそりゃ大人(機能)が顔を出すさ」
現に今。それなりに察しているだろう一般生徒や異能を持つ生徒……もっと言えばこの島に慣れていたり
政経的な話を耳学問でも齧ったことがあるなら理解できそうな話に留めている。
だがどうも遠条寺菖蒲が理解しているという手応えがない。
例えるなら”大きいことが起きています” ”そうですか、知りませんでした”と言うような自分の言葉からニュアンスだけを受け取って処理したものだ。無防備どころか無知と断言できる程に。
「まぁこうやってかつてのかわいい後輩と話すこともできたんだ。それでよしとしようじゃないか」
よいわけはない。先日のカフェテリアで暴れたアレの件もある。頭のネジなどありもしない奴による最悪の事態などいくらでも想定はできるのだ。
最もそれは現在の状況が異常なだけといえばだけだ。
だからこそ時期が悪い、と口から出た。
「もうそろそろ騒ぎは収まる。散歩ならその時ゆっくりやろうじゃないの。
もっと学生らしく遊び場に行くのもさ。同級生と遊ぶのも学生の仕事だよ」
ゆっくり立ち上がると膝の黒猫は飛び降りて舗装された地面に降り立った。
片手にある空き缶をゴミ箱に差し入れると菖蒲に向き直り
「立場は違えど本来は平和を守るのが俺らの仕事なんだ。騒動が収まれば直ぐ平和になるさ。」
遠条寺菖蒲 > 五代の語る言葉を飲み込んでいく。さながら親鳥から餌を与えられる雛鳥のように、その貪欲さというか姿勢だけ見れば模範的な優等生とも見えるかもしれないが、五代の不安は正しいと言える。
どういう訳か、彼女の生活環境は島に来る前も来てからもまるで籠の中の鳥であり、今この瞬間にようやく籠の外の事を知り始めたと言える。
故に、菖蒲は無自覚のうちに世界とは自分には牙を向かないようなものなのではないかという錯覚すらしている。それは徐々にだがこうして外にでる『暇』を与えられたのならば消えていくだろうが、どうしてこのタイミングなのか、であった。
それは単純に生徒会に何か『狙い』があるのかそれともまた別の何かによる『思惑』なのかは分からない。
「今回は五代さんの言う通りにしようと思います。私も今回の件が片付いた『くらい』はきっと書類的に分かるでしょうから。そしたら少し色々歩き回ってみようかと思います」
そういう顔は言葉の割りに晴やかではない。曇る原因は自分の中に湧いた違和感であるが、それは今回の事件の話とは何一つ関係がない。
手に持った缶ジュースには一口しか口をつけていないことに五代の持っていた缶を見て気がついた。
「それなら、風紀委員や五代さんには頑張ってもらわないといけませんね」
ややあって両手に缶を持ったままゆっくりと立ち上がって少し頭を傾げた。
「そう言えば五代さんの今の風紀委員会での部署と役職ってなんなんでしょうか?」
不確かな話を前に口頭で聞いただけだったので少し気になったので口にした。
五代 基一郎 > 「そうそう。終わったら散歩ぐらい付き合うよ、俺でよければね。まぁ同世代の女の子のほうがいいだろうけどさ」
欠伸と伸びをして、肩を鳴らして整えれば。黒猫は既に路地付近に出ていた。
穏やかではない顔の菖蒲の前に。懐から出した名刺入れを見せるように開き、一枚取って手渡す。
名刺入れの名刺がギッシリ詰まっているあたり一応持たされているだけで日頃使っていないのがよくわかる。
「風紀委員会警備部、特殊警備一課の第二小隊の隊長ね。まぁ暇な部署だから。こうして出歩いてるわけだし。
あぁそこ、名刺の下のが連絡先ね。私書籍のアドレスとか書いてあるから。」
何かあったときの繋がりというより外の繋がり。
知らない、蚊帳の外というより籠の中の菖蒲が持つ外との繋がりを……という意味も込めて手渡した。
「まぁ、そういうわけだ。警備の人間だし送ってくよ」
言外に今日の散歩の終わりを告げつつ顔を傾けて住宅街の道を見た。
若干、日が沈みかけて黄昏時を呼んでいる。誰彼時なのか帰宅していくだろう道を行く人の顔は見えない。
遠条寺菖蒲 > 「暇が取れましたらその時は今日の缶飲料のお返しでもさせてください」
密かに今度は自分が小銭を入れて買うのだと小さく意気込む。これから外に出ようとか考えているのだからその機会は幾らでもあるのだろうが。
手渡される名刺を眺めて、示されるアドレスなどを眺めて自分はそう言えばないということに気がつく。
「後で携帯に登録して一度送ってみますね。生徒会のお仕事の連絡にくらいしか携帯も支給されたのにこれまで使ってませんでしたから」
名刺を見ているので五代からは表情を伺えないだろうがどこか携帯を私用で使えるのを楽しみにしているのが伝わるだろう。
「すみません。では鉄道までお願いします。学園地区に入れば家まではすぐなので」
そう言って五代に地味に迷子だった菖蒲は道案内もお願いするのだった。
五代 基一郎 > そうして黒猫が先導し、五代が横に並び行く姿が影を伸ばし
やれ飲み物がどうだの、最近でも缶飲料はあるのだとかペットボトルのがどうとか
他愛もない会話をしながら鉄道まで送っていった。
生徒会以外に繋がりを持っていなかった菖蒲の異質な環境には言及することなく
よく見る学生の帰宅時の光景で、学生がする普通の話をして送っていった。
ご案内:「閑静な住宅街」から五代 基一郎さんが去りました。<補足:黒猫と散歩中。>
ご案内:「閑静な住宅街」から遠条寺菖蒲さんが去りました。<補足:長い黒髪を結い上げてポニーテールにした青い瞳の女生徒。護身に小太刀を携帯している生徒会幹部候補生>