2015/06/14 - 13:07~21:53 のログ
ご案内:「常世公園」に九十九 十六さんが現れました。<補足:フードを被った赤青オッドアイの少年。二級生徒。>
九十九 十六 > 白昼の常世公園。
水飲み場に九十九十六は居る。
「ごっ、んっ、ぐっ、っ……はぁはぁ。ごくっ、ごくっ……ぷはー!! 水~~っ!!」
爽やかなる笑みを浮かべ、水で首元を濡らした少年は顔を上げた。

九十九 十六 > 「なぁんで水道ってやつは急に止まっちまうんですかねぇ! でも最高っすよ日本! 安全な水が公共の場で飲み放題!」
救われたように生気に満ち溢れた顔には一点の曇りもない。
「…………」
そして。水飲み場から離れると野草の群生するほうへ歩いていく。
「コンフリー。コンフリーないかな……ないな……」
がさごそと草の根をかき分けている。

九十九 十六 > 「ユウガギク……ユウガキクとか……月見草とか……」
目を皿にして採集を行う。
植物知識は、嘗て人に軽く教示して貰った事がある程度である。その人の顔や名前は思い出せないが。
「エンダイブとかクレソンとかさ……ないの……?」
そうして探していると陰鬱な気分に浸される。
ここが犬の散歩ルートの交流点だということも、薄っすら脳裏に浮かんでくる。
十六はすっくと立ち上がった。大きな瞳を細めて。
「いけないな、こんなことじゃ……ふふ、どうしてこうなったんだろうね、わからないや」

九十九 十六 > 「今まさに……戦不能の状態……」
十六は片手で顔を覆いながら、ウッドベンチに腰掛けた。
腰を下ろすと身体の芯からどっと疲れが泌み出てくる。
「余計な体力使った~……しんどい~……おなか減ったぁあ~~……」
そのまま寝転がり、ごろごろとする。うだうだとする。
それもまた余計に体力を消耗させ、十六は自らで自らをぐったりとさせた。
「あ゛ー…………」

ご案内:「常世公園」に桜井 雄二さんが現れました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。>
九十九 十六 > 「腹が減ったら戦はできぬと言いますれば」
「全世界の人間が空腹ならば、戦争は根絶するのではないだろうか?」
「もしかすると恒久的平和を実現する方法を思いついてしまったのかもしれんね」
「あ~~超アイデアマンっすよ~~僕ぅ。このまま餓死ったら世界の損失っすよう~~……」

一頻りじたばたして、しんとした。動くのが面倒になった。

桜井 雄二 > (ウッドベンチに腰掛ける少年を見て声をかける)
むっ……そこの君、大丈夫か? どこか具合が悪いのか?
(迷いのない語り口、そしてポケットから手帳を取り出す)
生活委員会の桜井雄二だ。もしかして異世界から来た人間か?
(もし、そうであれば保護しなくてはならない)

九十九 十六 > し~ん……。
虚ろな瞳で虚空を見据えた虚人と化していたが、声にぱたぱたと手で返事をする。
「ふあ?」
ポケットに手を入れる仕草を目にすると、寝転がっていた状態から瞬時に起き上がり、ベンチの横で重心低く逃げ腰に構える。
「!! せー? かつ? いいん? …………あーあーあーあーなになになになにそういうやつだったのね! はいはいはいはい! わかったわかった! セーカツね! セーカツ! もちろん知ってるよぉ、脅かさないでよぉ、もう! 全くぅ!」
瞬時に焦った様子が消えて、けたけたと笑う。
赤と青の瞳の少年はにんまりと笑んだ。
「え、なになに? 異世界、異世界じゃないよ。日本人です。でも、生活委員会なんだよね? 生活とか保障してくれちゃったりしない? 最低限文化的な、ぶらっとファーストフード店に立ち寄れるようなソサエティを僕に提供してくれちゃったりしない?」
ぐー。勝手なことを言っていると腹が鳴った。

桜井 雄二 > ………? もしかして生活委員を知らないのか?
(やはり異世界から来た人間かと紅く染まった右目が熱を持つ)
(彼は義侠心にかられると右目が熱を帯びる)
日本人、か………生活委員会は別に生活を保障する委員会ではなく、この島のインフラ整備を取り仕切る…あ。
(鞄の中からパンが入った包みを取り出し)
腹が減っているんだろう? 焼きそばパンとクリームパンだ。
紙パックだがグァバジュースも入っている。食べながらでいい、話を聞かせてくれ。

九十九 十六 > 「知らないといえば知らないですねぇ。もしかしたらどっかで耳にしたかもしれないけど、脳の記憶領域に入った瞬間蒸発しちゃったっていうかぁ」
雄二の瞳が熱を放つと、雄弁な(あるいはひどく喧しい)十六の語りが一瞬途切れた。
けれど、すぐに調子を取り戻してにこにこ笑う。
「そういうヒトタチなんですね? はー、いつもご苦労様ですぅ。助かっておりますぅ。さっきなんかそこの水飲み場でめっちゃお世話になっちゃいましたからぁ……」
「!」
パンを差し出されるとひったくるように、受け取る。
(いいの!? いいの!?)
と象が引っ張っても奪えないぐらいの勢いでそれを掴んだまま離そうとせず。
「きみ、いい人だね……。前世とか仏だった憶えない? 僕、ちょっとクモの糸とか垂らされた記憶がうっすら……(もふもふ)」
クリームパンにかぶりついている。一心不乱だ。
話を聞かせろ、と言われたが完全に意識を奪われている。

九十九 十六 > 「うめ~っ! 糖分うめ~っ! 炭水化物うめ~っ!」
みるみる血色が良くなる。
どこのパンだか知らないが、クリームパンのフィリングは植物油脂を混ぜたものでなく本物のカスタードクリームだ。
バニラビーンズが良い香りを鼻から抜けさせてくる。
超幸せそうだ。

桜井 雄二 > そうか……(学校に通っていないのか、あるいは記憶に欠損があるのか)
(まずは詳しく聞かなければならない)
(少年の喋りが途切れると、小首を傾げて)
水飲み場で空腹を紛らわせていたのか? それは……
(首を左右に振って)悪いが前世の記憶はないな。
クモの糸を垂らされるのは地獄の住人だという覚えはあるが。
(パンを貪るように食べる少年に対し、メモ帳を取り出し)
常世学園の生徒か? あるいは二級学生か?
保護者は? 家出中? そうでなければ家は?
働き口はあるのか? 自分の健康や精神に異常を感じるか?
日本人だと言っていたが身分証はあるか?
(そこまでメモ帳に書いてあったマニュアル通りにまくし立てて)
……その前に。名前を聞いていないな。

九十九 十六 > 「そ? いろいろ大変ですねーっ」
空返事。
口は語るためにあるべきものでなく、
ただ咀嚼し飲み下すためにあるものである。
そんな意識が十六を言葉少なにさせた。
十六はクリームパンは周囲のパン部分をまずかじって中央部にクリームを残し、さらに上下を剥ぎとって中央に薄いパン生地に包まれたクリームの塊を作り上げてそれを齧るという食法を披露していた。
やがて、クリームパンを食べ終わる。

「ふへ。えっ、えぇっ。やあやあ、いっぺんに聞かれてもそんなわかんないっすよぅ。そっすねえ、常世学園の一年生? ……みたいな」
「で、なんすか二級学生ってぇ! 保護者はあれなんだろう本土でこう、わかるでしょう? ごくごく一般的なケイレキみたいな……働き口は……たまに……。あっ、ほらほら、ちゃんと学生証あるっすよ、ね? ね? 見たら一発でわかるっしょ、身分!」
苦笑したり身を縮こまらせたり。不自然に手を目の前でひらひらさせてみたり。
空を見上げて積雲の様子からこりゃ一雨来そうだと天気をわざとらしく気にしてみたり。
そうしてから、懐から革のパスケースを取り出し、渡す。
学生証が入っているが言うまでもなく偽装。
校章のデザインが正規品とわずかにぶれがある以外は、電子処理も潜り抜ける上質な“偽装学生証”だ。
そこには『一年 九十九 十六』とある。
「つくもじゅうろく。つくもじゅうろく、たしてひゃくじゅうご? みたいな。あはははっ」
お愛想を振りまいている。様子が不自然だ。

桜井 雄二 > (パンを食べていく少年を満足げに見る)
パンはまた買えばいいが、空腹に困っている人間を助ける機会は二度来ないかも知れないしな。
そこのパンは美味いだろう? よく通っているパン屋のものなんだ。

常世学園の一年生……(沈思黙考)
(学生証を見せられればさらに黙り込む)
……確かに学生証を確認した。それなのに生活委員会を知らないとは悲しいな。
今度からは生活委員会が街の『便利』を守っていることを覚えていてもらいたいな。
とにかく保護者は本土、働き口はたまに。
(メモ帳に書いていく――――様子が不自然なのを察することはできない、天然なので)
九十九十六。残りのパンとジュースはここで食べてもいいし、持ち帰ってもいい。
それでも明日の食事のアテはあるのか?(対応は無感情な職質のようで)

九十九 十六 > 「そ、そりゃもう。えっとねぇ、そうですね、そう、普段見えない場所? っていうか。縁の下の力持ち的な? あるのが自然すぎて感謝ってもんを忘れてたみたいですっ!」
背中全域に冷や汗の雨を降らせながら、雄二の鈍さに心の底から感謝する。
「この礼は必ず……どこかで? 僕が助けになれることなんてそうそうないかと思いますけどぉ、もしも困ってたらパパッとバシッとお助けさせて頂きます!」
上手く欺けた、その気持とは別に心底からの善人に感謝する気持ちもある。
見るからに正義漢の様子だが、見ず知らずの相手に昼飯か間食であろうパンを“両方共”渡す人間だ、ジュースつきで。
普通ならどちらか片方選んで渡す程度のものだろう。底抜けというか、損をする体質というか……。
「明日の食事のアテっすかあ。ないっすね! でもなんとかなるっしょ、こう、今日のカロリーで多分2日ぐらいは生きてけますんで?」
小首を傾げて、自分にも明日は明日の風が吹く、といった調子だ。
未だに腹は満たされていないらしく、焼きそばパンの封を開ける。
「…………」
片手でそれを持って掲げる。よく見ると片腕の上腕部にはギプスが巻かれている。
赤い輝きが片目から漏れると、焼きそばパンは鮮烈な赤に包まれた。
それは炎のようにパンを巻く。
「あっちち…………惣菜パンってあったかいほうがウマいっすよねえ。5倍くらい?」
自然な調子で温めた焼きそばパンを頬張る。火力は随分セーブされたようで焦げてはいない。

桜井 雄二 > そうか、それならいいんだ。(無表情に頷き)
忘れられて悲しいと言った後になんだが感謝を求めて仕事しているわけでもないしな。
……そうか、わかった。それじゃ元気な姿をまたどこかで見せてくれ。
それ以上のお礼などないからな。
………!(何らかの力で焼きそばパンを温めたのを見て)
炎熱系の能力者か?(右手を軽く擦ると火花が散って)俺と同じだな。
もっとも、俺は左手側は氷雪系だが。(左手を軽く振ると氷の花がぱっと咲いた)
……その異能があるなら、働き口も見つかるだろう。

九十九 十六 > 九十九十六は食べるのを止め、円なる青赤の瞳で値踏みするようにじっと見る。
雄二の瞳は真っ直ぐとしていて、逃げないし、惑わないし、泳がない。
嘘臭い程の正義の体現は、どうやら嘘つきではないらしかった。

「……そうだね。“同じ”だ」
焼きそばパンを食べきると、親指の先についたソースを舐め取る。
ジュースはビタミン源として非常用に持って帰る事にした。
十六は微笑みを浮かべる。
その片目は慈愛を秘めて、片目はわずかな嘲笑を浮かべている。
瞳が見ていたのは、火花と氷の結晶であった。

「キミとボクは似ている。……似ているだけで、同じではない」
「ありがと。またあおーね、ゆーじクン」
そして混ざり気なく純真に笑むと、さっさと公園から去っていってしまった。
先程まで死にかけていたとは思えないほど身軽である。

ご案内:「常世公園」から九十九 十六さんが去りました。<補足:フードを被った赤青オッドアイの少年。二級生徒。>
桜井 雄二 > ………同じ、か。(相手の言葉を聞くと何故か、それが同じではないように思えた)
(まるで相手の能力が底が見えないから、でもあるのだが)
似ているだけ、なのかも知れないな。
結局のところ、温度操作系の能力者は多いけれど、一人だって同じ規模の能力者はいないからな。
ああ、また会おう九十九十六。
(去っていく彼を見送ると、鞄を持って)
……またパンを買いに行くか。(自分も立ち去っていった)

ご案内:「常世公園」から桜井 雄二さんが去りました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。>