2021/11/14 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に柊さんが現れました。<補足:178cm/黒スーツ/黒ネクタイ/腰に大型ナイフ(刃渡り25cm)/革靴 乱入歓迎>
柊 >
「随分と派手にやりましたねぇ」
落第街の様子を見て 路地裏へと
これでは収入は大幅な減少だ
まだ無事な場所や黒街に債務者がいるとは言え、だ
「風紀共が……こっちを人間としてみてやがらねぇ」
もうすぐ完済して自由になるものもいた
金を借りてどう自分の道を切り開こう そう思うものもいた
それが、塵芥のように消え去った
薄情を気取っていてわりと感情的に動くこの男 怒りは当然ある。
そこに、着信音がなる ポケットから携帯を取り耳に当てた
柊 >
「どうしましたタカハシさん」
携帯の先は此方の右腕のタカハシという軍隊上がり
此方よりも情が深い男は、これからどうするべきか悩んでいるようだった
「泣き言とは珍しいですね ですがまぁこの状況ではねぇ」
相槌を打ちながらタカハシの言葉を聞く
ついには、例の組織への金や武器の供給をやめようという
理由は、金の確保だ 随分と目減りして今は半分程度と言ったところか
「それは出来ない相談ですねぇ
この状況でやめるなんて断固としてありえません
なぁに、黒街からの取り立てを厳しくすればいいだけですよ」
金を払うきのないもの 逃げ出そうとしているものなどがその対象だ
「なにより、私はあの男に賭けたんですよ
それが、賭けて一度負けたからって手を引く? ありえねえだろ」
博打打ちとしては どうなのだろうかという思考のそれ
「破産してまで賭けて負けて そこからですよ、今後どうするかは」
柊 >
あの少女も無事に逃げ切れただろうか そこも気がかりだった
崩れかけの壁 そこに背を預け、未だ泣き言を続ける部下へ
「いい加減黙りなさい いい男が見苦しい
破産した時は組織を畳みます。あなた方へも退職金は払う
だから安心しなさい。居場所なんてものは無限にありますよ」
ついには此方の心配をしだす右腕にため息が漏れる
「私のことは良いんですよ。畳んだあとのことも考えてあります」
実のところは全く考えていない わざと、考えていない
それは退路を断つためでもあり 自分への叱咤だ
「ははは、どうするかは秘密です 驚きますよ?」
その後、業務に関する事柄のみを話して 通話を切った
「ネズミ共が……ばんばか壊しやがって」
生活するこっちの身にもなりやがれ
毒づきながら 懐から煙草を取り出す 何年ぶりだろうか
「すぅ……げほっ ごほっ
はぁ、慣れないことはするもんじゃありませんねぇ」
それでも、吸い続けて 目を浮き上がる煙へ向け、ため息を
ご案内:「落第街 路地裏」にロアさんが現れました。<補足:砂漠色の布を被る混沌とした混ざり物。怪異、人外、隣に在る何か。しわがれた声で話し、大きさは時々で変わる。>
ロア >
闇が光で照らされるとどうなるか?
そこに隠された何かは確かに暴かれる。光に負ける何かもあるだろう。
しかし、ああしかしだ。
闇の中に何か物体があるかぎり、照らされれば、新たな影は出来るもの、
暗い所はより暗くなることも、また必然ではないか?
落第街、此処は常世島の行き止まりのどん詰まり。
どれほどに照らされようと、そこに在り続ける。
あぶれて堕ちて来る何かは常にいる。
柊が路地裏の鈍い灯に立ち上る煙を見つめていると、
視界の端で何かが蠢いた。
誰かが柊を見つめている。
それは1つではなくて、多く、多くの眼、目、瞳の視線。
それと同時に人間にとっての悪寒が走る。
何かしらのヨクナイモノ
何かしらのフコウ
何かしらのサイヤク
何かしらのカナシミ
そういった何もかもの良くない予感をかき集めて、
背筋に流し込んだかのような。
はじめまして、"雲雀"、雲の雀、日晴を飛ぶ子。
空高く飛び立つ準備は出来ただろうか?
はたまたこの戦火の果て、地に堕ちて闇に喰われるか?
それとも"柊"に込められたように、
先見の明にて家族を護ろうとしているのか?
『ギャッギャッギャ……』
鴉の鳴声のような、しわがれた笑い声が聞こえる…。
柊 >
視界の端で何かが蠢く 瞬間
人間が感じてはいけないような そんな気配が背筋を凍らせた
煙草を捨て腰のナイフを勢いよく引き抜く
「な…んですかねこれ」
様々な感情が 此方を見ている
様々な予感が 背筋に叩き込まれる それは、どれも良くないものだ
相対してはいけないものに 相対してしまったようだ
何を言っている 化け物は 何を言っている?
聞こえた、嗄れた笑い声 ナイフを構え笑い声 その主を探す
「……ご用件をどうぞ?」
今までで出会ったことのない これはなんだ
ロア >
捨てた煙草が落ちる先、ギョロリと眼が覗く。
消えてない火が灯があるはずなのに、落ちた先それは路地裏の闇に喰われて消えた。
見ている、みている、ミテイル。
この落第街が何故に落第街であるか。
何故その存在を看過し、常に在り続け、一部が焼かれても存在し続けるか。
内側から零れ落ちるモノの受け皿、外より来たる最後の受け皿。
外から島を見ている何かの潜む場所。
数多の柊を見ていた眼が寄り集まるように固まり、
やがてそれは腰の折れ曲がった老婆のような"ナニカ"が姿を現す。
今は柊よりも小さい、150cmにも満たないような。
砂漠色の布を被ったその奥で、翠紅色の眼が爛々と愉悦に輝いている。
老婆のその下肢では、未だに数多の眼がギョロギョロと、柊を見ている。
『浮かなイ声を、聞いダ。
ゴんにちハ、闇夜に彷徨ウ迷いゴ、どうしタ、どうジダ?』
柊は問いかけてしまった。
問答をしようとしてしまった。
ならば、そこには薄くも"縁"は結ばれる。
『困りゴとかい?
こんナ場所で、弱った雛ガ、何故鳴いてイル?』
柊 >
見られている 見られている
数多の目に、見られている
これは、此方のようなものが相対してはいけない何かだ
逃げなければ そう判断を下すのに 足は震えて動いてはくれない
寄り集まっていく瞳の先 それは老婆のようなモノへと
一瞬 見えた老婆の瞳の色は 邪悪すら感じる愉悦
これに嘘をついてはならない 見透かれそうだ
そう感じたが、故に本当を話そう そう決めた
「ええ、ご挨拶どうも 少し現状を憂いているだけですので」
見て分かるでしょう? ボロボロになった、落第街 それを横目に肩を竦め
「ええまあ、力がなくて困っていたんですよ
組織の金も半分を切り……と、話してもどうにもならないでしょう?」
聞いても面白くもないしどうしようもない
そう 言外に告げて、老婆の姿をした化け物
それが此方を見逃してくれるよう願い 人好きのする笑みを浮かべて
ロア >
足は動かずとも、言葉を紡ぐ胆力が柊にはあった。
それは本能かもしれない、けれども、
それは仮にも人を束ねているからこそとも言えるのかもしれない。
その胆力を称賛しよう、今宵の出逢いの縁に祝杯を。
『それハ、ゾれハ。
この闇のナカ、憂い傷ヲ晒す余裕ガある。
食べてシまいたくナる。ギャッギャッギャ……。』
これは忠告かもしれない。はたまた気まぐれかもしれない。
闇の中に開いた足元の穴に気付かないように、
いつだって此処は更なる闇へ誰かを手招きし続けている。
今柊の目の前にいる何かとて、そうだ。
『迷いゴ、惑イ子、面白イこどを言う。
力は手に入れよウと思えバそこかしこにあル。』
手段を選ばないならば、柊に差し伸ばされる手はそこかしこにあるだろう。
だが、それは油断をすれば、
目前の化物のような、いや、もっと悲惨な何かに喰われる可能性もある。
引き際を見誤れば、雲に届くほど飛べる雀の小さな翼は手折られてしまう。
『この街モ、時間が経デば、また新ダに混沌に満ぢる。
暗がりハ照らさレテ更なる影へ、闇へ。
此処がこれホドになったノは、そう珍しイ事でもナい。』
その度に失ったモノはある。その度に消えた命は数多にある。
しかしそれもまた、この常世島の日常の一つ、群像劇の一つ。
切れた尾の断面から伝う血は、いつか本体を指し示す。
『それデ、どうスルづもりなンダイ?』
未だ舞台の上に残るというのなら、柊はどうする?
こんな異形に言う義理など在りはしないが。
柊 >
言葉を紡げたのは 半ば本能でもあった
紡がなければどうなるか分からないという 不安
長年この街に潜っていたから というのもあるかも知れないが
「あはは、食べるとは物騒な
比喩表現であればもう少し若返ってください?」
余裕があると たしかにそうかも知れない
此方はまだ資金しか失っていないのだから
人は少ないが残っている
だが、この眼の前の化け物はそんな余裕すら打ち砕いた
「ほお? そんなにお手軽であったのなら苦労はしなかったんですがね
どれもこれもお手軽そうじゃないので止めておいたのですよ」
そう、どれもこれもが手軽とは言い難い
だがそう、此方ももう少し犠牲を払わなければならないやもしれない
だが、その引き際が難しい 力を手に入れるとは、そう簡単なことではないと
目の前にいる化け物がそう教えてくれている。
「ははは、そうかもしれませんね
ですが私はショックを受けておりますよ 今の、この現状に
今を生きる人間は、どうでもいいと?」
たしかに時間が立てばもとに戻るだろう
新たに戦火が交わるだろう
だが、今を生きるこの街の人間はどうなる
人間はいつだって今を生きている そう、思っている
「どうする、とはまた……どうしましょうね
私は……私は……」
風紀に復讐? もとよりそのつもりだった
ではどうする? 自分に問いかけても、答えはいつも一緒
「そうですね……舞台の袖から、では文句を言う資格もありませんか
舞台に立つだけの……力がほしい。風紀に、復讐を果たしたい」 >
ロア >
『はてサで、どうダろうネぇ…。』
じゅるうりと舌のような触手のような
血色の何かが舌なめずりを零す。
手段はいくらでもある。けれど、そうだ、手軽ではない。
何かを得る為には対価が必要だ。
そして、その対価というのは、
互いの価値観が共有出来ていてこそ成り立つものでもある。
『どウでもヨイ。どうでもヨイ?
切り捨デられぬナラ、闇に居続けルは、難しイ。
人間の奢リ、エゴ、全デを救えル万能の神ハ、存在シない。
何故そウ思う? 空が恋ジいのカ? 雛鳥。』
人間は脆くちっぽけだ。定命であり、手を伸ばせる範囲は限られている。
この目の前の化物とて、万能の神にはあらず、
この常世島の闇に潜んでこうして誰かを弄ぶようにする程度が関の山。
それ以上目立てば駆除されるのが目に見えているからだ。
この化物は、見ている。
『………復讐? ほぉ、ホウ、フグジュウ…。』
声は濁る。楽し気に笑う。
『大きイ事を言うヒトの子ダ。
風紀とハ? 何故風紀ヲ恨む?
個人個体デはなク? 風紀ゾのモノか?』
異形は問う、問う。
この化物はどうやら風紀委員を知っている。
風紀の誰か個人だというならば、お膳立ても出来ようが、
風紀委員のシステムそのものだというならば、それは大それたモノだ。
潰すことは容易ではなく、例え潰せたとしても、
この島そのものが無くならない限り、代替の何かは出て来るだろう。
例え人間でも、仮にも大人がそれを理解出来ていないとは思えないが。
もし理解できていないとするならば、
何が柊をそうさせているのだと、闇は問いかける。
この眼前の、明らかに今柊が居る場所よりも更に暗い場所に居る異形は唆す。
柊 >
「おお、怖い怖い」
何かが、触手のような 何かが
舌なめずりをする 背筋に、冷たいものが入る
本当に食われるのでは と
対価、この手で対価なんて支払えるのだろうか
支払えるのならば、いくらでも契約は交わしていた
「はぁ、分かっておりますよそのくらい
夢を見たって良いでしょう
万能の神がいないことも痛いほど分かってます
……案外、恋しいのかも知れませんねぇ」
昔は、先生になるのが夢だった
それを壊したのは自分自身
妹さえも守りきれなかった愚か者
目の前の化け物ほどの力があれば そう、思う
「風紀全体、だったんですがね……最近は揺らぎ気味でして
ま、ただの逆恨みですよ。妹を失った男の」
どうやらこの化け物は風紀を知っているようだ
質問に 一つづつ返しながら、どうするかと思考 しても
この化け物に勝てない以上は仕様がない。
抜いていたナイフを腰に仕舞い 此方の大それた妄想に嘲笑を
実のところ、もう風紀を倒せるなんて思っていない
思っていないが、どうしても打撃を与えたい 一矢を報いたい
駄々をこねる子供のようなそれだ
だが最近は、揺らぎ始めているのも事実だ
ロア >
ギャッギャと異形は笑う。
『ヒトを喰うノモ今はダイヘンだ。
1人居なグなれバ、大騒ぎ、オオサワギ。
死体の小指ひどつ、零れダ臓腑の端、そんなモノダ。』
そんな恐ろしい雑談を零す。
対価を支払ったとして、それに見合う何かが得られる保証もない。
ただただ奪われて終わりということだって、この落第街ではあり得る。
奪われるだけならまだマシな状態にだってなるかもしれない。
感情の揺らぎにこの異形は敏感だ。
ヒトを喰う故に、ヒトの変化に敏感だ。
だからこそ、柊の前に現れたのかもしれない。
今日が転機となるか、はたまた転落となるか。
もしくは何も変わらないのか。
それは分からないが。
『いモうド。妹を失っダのが、風紀のせいダと。
この街のヨウに、焼かれでもしダか?』
流石にこの異形も、柊の過去までは知らない。
病床の妹の為と、手段を違えてしまったかつての青年。
後がない人間の最後の足掻きを封じてしまった風紀委員。
…調べれば当時の担当ぐらいは出て来るかもしれない。
その対象に報いる術ぐらいは見つけられるかもしれないが…。
まぁそれも、表の伝手があれば容易かもしれない。
『ダガ揺らいでいル。そうカ、ソウガ…。』
揺らいでいる要因を吐き出すか?
目の前にいる異形は、地面に開いた穴のようなモノでもある。
何をため込んでいるか、何を悩んでいるか。
吐き出して、反響して、何か得られるモノがあるだろうか?
柊 >
「おや、貴方のような化け物でも恐れるものがあるとは
……驚きですね」
そんな恐ろしい雑談に 肩をすくめよう
奪われるだけ、そんな恐ろしい話はこの街にいくらでも転がっている
だからこそ此方は契約してこなかった、それを恐れて
今日の出会い、それはどうなるかわからないが
今は この化け物と無事に話を済ませよう
「あはは、焼かれていればもっと真っ直ぐに恨めたのですがね」
どうせ迷っている身 この化け物になら話しても構わないかと
簡単に昔のことを話す、逆恨みの原因を。
「とまぁ、こんなわけですよ
酷い逆恨みでしょう?」
可笑しそうに クツクツと
逆恨みが過ぎて、当時の担当を嬲って 殺しても構わないのかも知れないが
それに家族がもしいれば、それを悔やむ程度には 揺らいでいる
だから今は袖から見ているしかなかった
「ええ、揺らいで揺らいで 参ったことになってますよ」
なぜだか、この化け物にはすべてを話しても良いような そんな気がする
だからこそ、口を開こう
「とある少女と会いましてね。それが風紀委員だったんですが
それが妹とよくにておりましてね……風紀も、人間だと思ったんですよ
良い風紀もいる、とも思いましてね?」
ああ、ここまで吐露したのはいつ以来だろうか
なんとなくに 化け物に対し心地よさも感じて
「不思議な化け物ですね、貴方」
ロア >
『化物、バゲモノ。所詮は混ザり物。
ただのヒトの子よりは強かロウ。
だガ、七つ目の喇叭(ラッパ)の吹かれダこの世界。
《大変容》のゴの世に、恐れるモノは多く、多グあル。』
この島は悪が跳梁跋扈出来るような場所ではない。
そうでなければ、門の開くこの島は、もっともっと無法地帯だ。
生徒会も、常世財団も、常世学園、ひいては島そのものも、
こうして光と闇に別れているとはいえ、成り立っているのは、
こんな異形とて身を潜めて生きる必要のある世の中故なのである。
『…いいや、イイヤ?』
話を聞き、異形は言葉を零す。
『大切なモノを取りコぼしダ嘆き、哀しみ、
憎悪に変えデ、それガ生きル為だった。
失っタ過去に囚われデ、傷ヨり血を流しつづケ、生きル。
ダのに新たナ縁に揺らいでイル。』
そう言っては異形はずいと柊に近寄る。
老婆の背がぐいと伸びて、男の顔を覗き込むように、見て。
光を未だ失わぬ柊の金眼の煌めきを、その瞼を通すように。
ロア > 『 』
ロア→柊 > 『実に人間らしい。人間"じゃあない"か。』 それは今までと違う男の声で。
ロア >
間近で、異形は言葉を紡ぐ。
『…オレは、オ前のようナ、ヒトの子を知っているヨ。ジってイル。
魔除けの花。どこカで逢うカモナ。』
しわがれた声が続く。
心地が良いと言うのは、僅かな縁がそこにあるのかもしれない。
『化物ハ皆不思議なモノだ。
魅入られれば、鳥は地に堕ちて喰われテしまウ。』
柊 >
「ははは、確かにそうでしょう
貴方でも怖いことくらいはありますか……失礼いたしました」
この化け物も、恐れるということがあるのだろう
急に 親近感じみたものが湧いて可笑しそうに 笑おう
確かにこの化け物よりも強いものはいるだろう
羨ましくて 羨ましくて その絶望に息をこぼす
「……ははは、優柔不断と言われていたのを思い出しました」
化け物の声は 慣れてきたのか 妙に心地よくも聞こえ
人好きの笑みを崩した 刹那 此方の顔を覗き込む 顔が見えた
「……」
急に近づいてきた顔 それに肝を冷やす
だが、人間らしい そう言われてしまい
きょとんと開いた目を化け物へと 向け
「おや、それは知り合いたいですね
魔除けの花……? なんですかそれ」
聞き覚えのない単語 それに頭を回転させ 止めた
「ははは、では……そうですね、私が地に落ちたら食べてくださいよ」
もし、もし 疲れ果てて飛べなくなったら それもいいかもしれない
ロア >
ゆるりと背丈を元の小さな老婆に戻す。
覗き込んだ翠紅の瞳は、炎にようにちらついていた。
『良い事、良いゴト。
縁ある故にヒトは在る。独りで生きられぬ故のヒト。』
優柔不断と言われたことのある彼にそう言う。
柊、ヒイラギ。
花言葉は『用心深さ』『先見の明』『保護』
……『家庭の幸せ』
そして柊は、魔除けの花として扱われる。
『縁が呼ブのなら、いつか逢ウこどもあルだろウ。』
疑問符を浮かべる柊に、異形は笑うのみ。
この異形の知り合いに、同じ『柊』の名を冠するモノがいる。
同じように大切な人を失い、虚ろに生きて、
それでもと数多の縁に恵まれて教師に成った男がいる。
だがそれは、今は知らぬこと。
異形は仔細を話すことはしなかった。
ただ今は、ほんのひとかけらの言葉と縁のみ。
『そうカ、そウガ。
とびキリに美味しクなって居たラ、そうしヨウ。』
願われれば、異形は受け入れる。
雲雀が堕ちて、蓮の咲く沼に沈むなら。
柊、釜雲蓮司。
もし、君がとある蓮が象徴するように滅亡へ導かれるなら、
確かに最期の眠り、この異形が担ってくれるかもしれない。
だがそれは、本当に最後の最後であると、願っている。
君に伸ばされた手は、君と繋がる縁は、
どこかで君を思い血色のカクテルを飲む彼がいるように、
まだまだ、居るのだから。
『さてサテ、草木も眠ル時間がヤッテくる。
おかえり、オガエリ、ヒトの子、巣ハまだアルだろウ?』
柊 >
炎のようにちらつく炎は 瞳を釘付けに させた
「ははは、本当に不思議な化け物だ」
最初の恐怖感 それは今はなく、一人の人間と喋っている気分にさせられる
「ええ、貴女みたいな面白い化け物とは また話したいですね」
存外綺麗な顔してるじゃないですか
そう言った口は面白そうに歪められており
「あはは、多分不味いですよ? それでも良いならどうぞ?」
今日も、いい縁に恵まれた気がする
怖いが 話してみると存外に話せる化け物
こんな出会いは早々ないだろう
「ええ、まだありますとも」
最後の最後 こんな良い化け物に食われるならそれもそれでありだろう
クツクツ 喉奥にて笑った後 いつの間にか歩ける足を動かし
「それでは、おやすみなさいませ 夢が見れるのならばよき夢を」
そう言って、ゆっくりと去っていこう
気持ちは 揺れたままだが
ロア >
どれほどに堕ちても、手を伸ばす誰かは居る。
その手を取るか、払い除けるかは己次第。
出逢った縁を抱え、ヒトは生きていく。
脆くも定命の人間は、そうして《大変容》の後も、数を保ってきた。
吐き出した気持ちが、揺らぐ心が、
たった一度だけ出逢った異形に変えられるとは思っていない。
けれど、それでも、吐き出さずに抱えるよりはマシだろう。
『オヤずみ、おやすミ。ニンゲン。
オレは"ロア"。異形たル夜闇で隣ニ在るモノ。』
去っていく彼にそう名を告げる。
老婆のような異形は現れた時と同じよう、
黒と眼玉の何かに溶けて闇夜に散っていく。
ご案内:「落第街 路地裏」から柊さんが去りました。<補足:178cm/黒スーツ/黒ネクタイ/腰に大型ナイフ(刃渡り25cm)/革靴 乱入歓迎>
ご案内:「落第街 路地裏」からロアさんが去りました。<補足:砂漠色の布を被る混沌とした混ざり物。怪異、人外、隣に在る何か。しわがれた声で話し、大きさは時々で変わる。>