異邦人街の一画にある蛇を崇める宗教の常世支部教会。
司教と副司教、少人数の信者が暮らしている。

所属しているものは一様に、眼が赤い。

2021/12/10 のログ
ご案内:「聖セサンタエル教会 常世支部」にシンシャさんが現れました。<補足:白髪赤メッシュに赤眼/27歳186cm。蛇と星のシンボルマークの神父姿。赤眼の白蛇を連れている。>
ご案内:「聖セサンタエル教会 常世支部」にアガートさんが現れました。<補足:灰色の長髪を結った男。蛇と星がシンボルの赤いストラに黒い神父服。赤い瞳の白蛇を連れている。>
シンシャ >  
ここは異邦人街、宗教施設群、その一画。
白を基調とした、よくある教会の見た目をしている。

目立つのはそんな白を貫くような赤いシンボルマーク。
陽に星が降り、そこの蛇が絡みつく。


──聖セサンタエル教会。


最近この常世島に新たに支部が設立された。
神父たちが生活しているのが見られるようになり、
教会住み込みの信者たちがちらほらと学園に通い始めた。

邪とされることの多い蛇を、彼らは神聖と崇めている。

しかしここは常世島、異の認められる場所。

正規的な手順さえ踏んでいれば、
何を崇めようと、そう咎められることはない。


 
「子供達、そろそろ寝る準備を始めましょうか。」

教会の庭、1人の長身の男性が信者たちに声をかける。

長髪の白髪に赤いメッシュが寒空の夜風で揺れる。
黒い神父服に肩掛けの赤いストラ。

腕や首に一匹、赤眼の白蛇が這っていた。

アガート >  
教会の鉄の門扉が、キと小さな音を立てて開く。
そこに立っていたのは、灰色の髪を高めに結った男だ。
首元に太く白いマフラーを巻き、黒いチェスターコートを羽織っているのが、暗がりながらも分かる。
男は後ろ手に扉を閉めて閂をかけると、庭先にいるシンシャに向かって手を広げた。

「おや、庭先にいたのですね。
 パパのお帰りですよ!子供たちはもう寝ましたか?」

陽気な口調である。
とはいえ、決して酔っているわけではない。
この男はこれが通常運営だ。

シンシャ >  
アガートの柔らかくも良く響く声が聞こえれば、
そちらを見てにこりと男は微笑む。

二人の男の背丈はちょうど同じぐらいと言った所。
まぁ靴とアガートの高結の髪で多少差異は出るだろうが。


「あぁ、おかえりなさいパパ。

 今夜風に当たっていた子供を呼び戻した所で…、
 他の子供たちは、そろそろベッドに入ったかと。」

アガートの陽気さに、落ち着いた声でそう言って歩み寄る。
良かったら後でおやすみの挨拶だけでも、と。

肩から首にかけて白蛇が這いあがり、
男の顔横でそれも彼を出迎えた。

「こちらに来てから少し…。
 学園の面倒な申請関係は粗方片付いてきましたね。

 今日はどちらまで?
 私もそのうち此処の地理は頭に入れないとですが。」

アガート >  
「じゃあまだ、起きている子も多いでしょうね。
 …ああほら足はちゃんと拭いて。はい、ただいま。残念ですが口に入るお土産はありませんよ。
 耳に入るお土産ならばわんさとありますけれど、お土産をひもとくと朝になってしまいますからね~」

そこまで長い土産話があるかはさておき。
シンシャに話をしながらも、その途中で夜風からベッドへと向かう子供たちに手を振る。
子供といっても、シンシャやアガートの実子ではない。
全ては、教会に属する<信者/子供>である。

シンシャの白蛇が顔をもたげると、アガートのマフラーから別の白蛇が顔を出した。
人がただいまと言うように、この蛇もまた舌をちろりとのぞかせる。

「そうですねえ。
 子供たちの勉学の場としても有り難い場所でしたからね。
 冬休みとかぶるそうなので、彼らがちゃんと通えるのは年明けも落ち着いた頃でしょう」

今日はどこにと言われると、笑顔で


「ええ、手続きや挨拶回りを終えてからは、
 宗教黒歴史ポエム会というところに顔をだしておりました」


こう答えたのであった。

シンシャ >  
子供と称される彼ら彼女ら。
しかして年齢層は統一されている訳ではない。
子供というには大きすぎるのも、幼なすぎるのも居た。

唯一共通点があるとすれば、彼ら神父も含め、

 "皆が赤い眼をしている"

ということだった。


「ふふ、パパのお土産は、私が先にいただいてしまいましょうか?」

なんて信者に冗談じみて零す。
ころりと笑えば、傍らの蛇が頬擦りをした。


「彼らも冬の間に島に馴染むでしょう。
 お友達が出来るのは、少し先延ばしになるかもしれませんが…。
 ある意味、この時期で良かったのではと。

 賑やかな所だとは思いますが、その分色々と楽そうです。
 "彼女"たちも、偏見なく過ごしやすいでしょう。」

ちらりと門の外を見やれば、異邦人の街。
住んでいる住人がそれぞれ己の住みやすいように場を作っている。

異が異であると認められた場所。


「まだ残っている手続きが……──。
 なんですかその、そんなのあるんですね…?

 聖句を作ろうとして間違えたとかそういうのです?」

アガート >  
「ええ、蛇を連れてるくらいではさほど驚かれません。
 とはいえ、苦手な方もいらっしゃるでしょうから、異邦人街より遠くにいくならば、
 <彼女>らに留守番を頼むことも多くなるでしょうね」

彼女とは、白蛇のことだ。
蛇全体ではなく、アガートやシンシャが連れている特別な個体の事を云う。

「私も宗教黒歴史ポエム会ってなんじゃそら、だったんですけどね。
 内容としましては、それぞれの宗教における偉い方やシンボルとなる人々の…こう…
 若気の至りで作ってしまった…将来性の高い……」

どう言葉を選んだもんかと悩んでいる。

「…うん、まだるっこしいですね。ハッキリ言うなら、
 年頃の少年少女が神の声やお告げを聞いて舞い上がっちゃったときにこさえた恥ずかしい文章…の、披露会でした。
 大人になる前の感性というものは素晴らしいですね。

 私も本部に残した10代の頃の日記を燃やしたい気持ちにかられたほどです」

アガートはほがらかに笑った。
『崇められ、尊敬される人々にもそういう痛々しい青春があったのだ。
 そんな可愛痛々しい過去すら、丸ごと愛せるような不屈の精神の修業をしましょう』
…というような趣旨があるそうなのだが、果たして会として成立しているかは謎である。

「残った手続きも、私が今日書類などを取ってきましたから。
 一応、学園の方にも打診はしておきましたよ。『悩みがある生徒の為に移動懺悔室を行いたい』という趣旨を」
 

シンシャ >  
「余程でなければ留守を頼むことも無いとは思いますが…。
 本国に比べれば、混沌故の秩序があるかと。」

用心するに越したことはないですが、
なんて話しながら、隻手の指先で己の白蛇を軽く撫でた。

爬虫類は懐かない、なんていう話があるが、
神父の連れる個体は、彼らに懐いているように見える。

「まぁこういう所だとそういう…歴史の研究?
 のようなモノも、あるんですね…。

 宗教に共通性があるなどと言うのは、そういう所からも…。」

ううむ、と、少々唸った。
フォローのつもりなのかなんなのか、分からないが。


「私も若かりし頃は何かと荒れていましたから、
 お父様にもそういうのがあった、というのは気になりますね。」

今度本部に戻った時に覗いてみましょうかね、なんて。


「移動懺悔室…こちらでも迷える子羊が救える機会が増えると良いのですが。

 あぁ、書類は手伝える範囲は、私にも回してくださいね。」

アガート >  
余程でなければというシンシャの言葉はもっともであると、アガートは頷く。
とはいえ、離れがたいほどに愛しい白蛇に留守を頼む理由も、彼らには付きまとう。
それは学園内にお邪魔するために気を使うだとか、そういうものではない。

「私もそう思うのですけれどね」

アガートは少しばかり声をひそめ、シンシャの耳元へ唇を添えた。

「…こちらにも、スラムのような場所はあるそうで。
 上の方々は認めませんが、島の方々は認める…見て見ぬふりをされるような。
 異能と魔術の密度が異常な島でのスラムなんて、<とっても危険>だと思いませんか?」

低くあやすような声が、言葉を転がす。
危険という言葉の裏は<素敵>だ。

「彼女らは賢いので、危険が迫れば相応に身を隠しますし、私達も決して弱い方ではありません。
 しかし、悩める子羊や傷つき力を失った子羊たちが、必ずしも人の目に触れるところにいるとは限りません。


 でしょう?」

そう言うと、赤くにじむ瞳を三日月のように伏せて、顔を離す。
まだ子供たちが起きている。子供たちには、<危険>な場所の話はまだ避けておきたい。

「あ。悪い情報を与えてしまいましたね。
 私の日記は見ちゃダメですよ。シンシャの昔のような荒れ方ではありませんが」

口の前で指をクロスさせ、×印を作る。
ぷんぷこと頬を膨らませて拒否を示しているが、この男は31歳であった。
ぶりっこはなはだしい。

シンシャ >  
アガートの声に、鮮血のような瞳を伏せる。
唇は弧を描き、心地よく聞きなれた父の言葉を聞く。

「…そうですね、"嘆かわしい"。」

それは決して、笑みを浮かべながら言う事ではない。


「我々の救いを望む子羊は、そのうち迎えにいかないといけませんね。
 もしかすれば、"卵"を抱いて泣いているかもしれませんし。

 …あぁ、一息ついたら卵は食べますか? お父様。」

まだ彼らはこの島に来たばかり。

彼らにとっての日常も、ここでの生活も、
これからどうなるかはまだまだ分からない。

けれども、彼らは落第街やスラムなどの危険な場所にも出入りできる。


優しい笑みの奥に、朗らかな笑みの奥に、それを隠して。



「いやぁ、お父様の下につけられるまでは、
 私は日記などマメにつける方では無かったのが幸いですかね?

 文字に残っているのは…。」

くすくすといたずらっ子のような笑みを浮かべる。

アガート >  
「ある程度、子供たちが歩きまわる前には<危険>を確認しておかねば。
 日によっては、貴方に探索を頼む時もあるかもしれません。
 …ほら、はしたないですよ。シンシャは本当にやんちゃですねえ」

すぐに理解を示してくれる<兄>で助かるものだ。
アガートは唇の前で作っていた×印をほどき、自分の傍らにいる白蛇を撫でる。

「良いですね。今日は腰を落ち着けて食べれていないので」

手荷物を整頓したら卵も頂きましょうと、マフラーをときながら言う。
書類もそう多くはない。子供たちのサインが必要なところも過ぎてしまった。
ほんの10数分ほど、シンシャに手伝って貰えば済む話だろう。

シンシャ個人の感情や行動の記録が、本人の文字で残っていない、ということに関しては

「いいんです~。シンシャの荒れている頃の姿は、私が覚えていますからね。
 その頃の貴方といったら、腹をすかせた大蛇のようで……」

…などと、昔話をこぼしながら、室内へと向かっていく。

シンシャ >  
「存分にこの身、お使いください。
 私は"兄"、私は副司教ですからね。

 流石に火の中水の中とは行きませんが…、
 ふふ、私のやんちゃを止めて下さるのが…パパでしょう?」

目は赤くとも、同じ赤色ではない。
彼らは父子ではなく、血縁ではない。

この教会では副司教は"兄"と称される。

通称ではあるのだが、シンシャはアガートを信頼しきっている様子だった。


室内へ向かいながら、アガートが解いたマフラーに手を差し出す。
コートに手を伸ばして、寒かったでしょうと声をかける。

するりとシンシャの白蛇が彼の白蛇へと寄り、ちろちろと舌を出した。


「今でもお腹は空いていますよ?
 牙をおさめることを知っただけなので……。」

そうして、声は教会へと消えていく。

アガート >  
 
すうっと夜風が通り抜け、教会の扉は閉まる。





聖セサンタエル教会は、
道に迷う貴方に、道を往く事に疲れた貴方に、手を差し伸べます。

悩みを打ち明けられぬひと。

何でもいいから話をしたいひと。

蛇が好きなひと。そうでもないひと。

様々な方々がいらっしゃると、それだけは存じております。


近い未来、子羊のみなさまと出会い、お話が出来る時を―――
―――心待ちに、しております。
 

ご案内:「聖セサンタエル教会 常世支部」からアガートさんが去りました。<補足:灰色の長髪を結った男。蛇と星がシンボルの赤いストラに黒い神父服。赤い瞳の白蛇を連れている。>
ご案内:「聖セサンタエル教会 常世支部」からシンシャさんが去りました。<補足:白髪赤メッシュに赤眼/27歳186cm。蛇と星のシンボルマークの神父姿。赤眼の白蛇を連れている。>