2021/12/24 のログ
ご案内:「風紀委員本庁 刑事部の一室」にレイチェルさんが現れました。<補足:金髪の長耳少女。眼帯と学園の制服を着用。>
レイチェル >  
時刻は夕方。
夕陽が射し込む風紀委員本庁は、既に少しずつ人が減ってきている。
普段であればもう少し人が居ようものだが、
何と言っても今日はクリスマスイブだ。
早めに帰って日常を楽しみたい者が多いであろうことは間違いない。
大切な人と過ごす者、学生街のクリスマス商戦に乗り込む者、
家でゆっくり過ごす者。色々居るようだが。

「さて、あと半分ってとこか……」

レイチェルはといえば、
デスクに座りながら今日も書類の山を片付けていた。

年末ともなれば、多くの書類が舞い込んでくる。
各種申請書類、報告書類……色々だ。

各種書類は目を通して修正箇所をチェック、
手書きの付箋を貼って差し戻す。
問題なければ、上へ渡す為のファイルへ入れておく。

すっかり慣れた作業だ。
カップに入れた珈琲に口をつけながら、滞りなく業務を進めていく。

夕陽が沈んでいき、少しずつ夜が近付いてくる――。

レイチェル >  
「んしょっと」

大部分を切り崩した書類の山を前に、肩を回す。
 
身体の不調もあり、
一時期は書類仕事ばかりをするようになっていたレイチェルだったが、
近頃は戦闘訓練の方にも復帰を始めている。

本日も午前中は病院へ行き、医者と相談の上検査を行い、
午後は昼から後輩達の戦闘訓練を見て、指導を行っていた。

少し身体を動かすくらいであれば問題ない、寧ろ推奨するところだと。
そう医者からは言われている。

想い人に血を分けて貰い、何とか繋いで貰ったこの身体。
無駄にするようなことはしたくない。


だからこそ、少しずつ。


そう、少しずつだとしても前に進みたい。


このまま書類に埋もれてばかりでは、
いざやむを得ず前線に立たねばならなくなった時に
必ず良からぬ結果を招くだろう。
それに、座りっぱなしは性に合わない。

基礎トレーニングは毎日欠かしていないが、
毎日落第街へ行っていた頃とは違い、今は身体が弱り、鈍っている。
身体を慣らしていきたいのだ。

日が完全に沈み、夜が始まる――。

レイチェル >  
『ほんとに良いのか? 
クリスマスイブだよ? 
レイチェルも楽しみたいんじゃ……』

『彼氏とかいらっしゃるでしょ……!?』

レイチェルのデスク前。
同期と、後輩の風紀委員――いずれも女子が二人、
椅子に座るレイチェルの傍に立っていた。
クリスマスの前日、既に窓の外はすっかり暗くなっている。

「オレは別にいーよ。お前ら最近頑張り過ぎだっつの。
今日くらい気にせず楽しんで来いって」

レイチェルは笑顔を零しつつ、
手をひらひらと振って見せた。


『それじゃ、お言葉に甘えさせていただくか……。
 ちゃんとケーキ買って来るからね』

『あそこの部活のいちごショートケーキ、
 まだ売ってますねぇ……去年はすぐ売り切れだったんですよねぇ』

「だったらさっさと急いで帰る。気をつけてな」

ぺこりと頭を下げて去っていく同僚達の姿を見送る。
特に後輩は、一年生だというのに、本当によく働いてくれている。

窓の外を見やる。
少しばかり眠気を覚えて、窓を開ける。
夜風が髪を頬を撫でていくのを感じれば、
ふぅと一息。

「みんな楽しんでりゃ良いけどな」

今日はそれぞれ、どんな夜を過ごすのだろうか。

レイチェル >  
書類の山を切り崩して、切り崩して――残り、わずか。
終わりが見えてきた。
ぐっと背筋を伸ばして、一つ深呼吸をする。
 
そこで改めて窓の外を見やる。暗闇の中に、星空以外にも
沢山の明かりがあった。

とても、綺麗だった。何より、エネルギーに満ちていた。


「商売してる部活の奴らは、今頃大忙しだろうな……」

クリスマス商戦。昨年のそれも、とても激しいものだった。
警邏で少々顔を出した程度だが、凄まじい盛り上がり様だった。
この学園の巨大なエネルギーを感じるイベントに圧倒されたものだ。



「華霧と真琴は家で楽しくやってっかな……」

またコスプレ大会でもしているのだろうか。
華霧がサンタの格好をしていたりして。
……マジにやってそうだな。
真琴は料理が上手いから、クリスマスは腕によりをかけて色々と
作っていそうだ。華霧がそれで少しでも満足していれば良いんだが。

……一緒に居たい、なんて。そんなこと。
そんなこと。


「キッドはまぁ……相手が居るって話だからな。
 今頃デートでもしてるか」

以前に、このデスク前で一緒に話したことが懐かしいな。
一度くらい彼女を紹介してくれてもいいのにな、と思う。
今度飯にでも誘ってみるとするか。

「英治は……ちゃんと生きてんだろうな、あいつ」

呪いに負けたりなんかしねーよな。
オレ達はそんなもんに負けてられねぇ。
それに、お前は奴と……松葉雷覇とケリつけるんだろ?


「神代は……あいつも仕事してそうだな」

最近なかなか話せてねーな。
色々あった彼が負っているであろうもの、負わねばならないもの。
様々なものを思い、少し溜息をつく。

「貴家は……どう過ごしてんだ。
 まぁ、甘いもの好きだしケーキでも買いに行ってるかもな」

前にネコマニャンカフェに一緒に行った時は、甘いものを前にして
かなり嬉しそうにしてたっけ。
今度また甘いもの買って持っていってやろーかな。

レイチェル >  
さて、懸命に行っていた書類の整理も一段落。
時計を見れば、時刻は0時手前。
秒針が0を示すギリギリ手前といったところだ。


「……ん?」

そこでふと気付いて、カレンダーに目をやる。
そうだ、クリスマスだの何だの、そちらばかりに気を取られていたが。
レイチェル >  
――5、4、3、2、1。


「……あ」

彼女以外に誰も居なくなった仕事場で、ぽつりと呟いた。
ケーキ買ってくる、ってそういうことか。

クリスマスイブから、いよいよクリスマスへ。
常世学園に聖夜がやって来る。

この世界の者達も、異邦の者達も、
様々な冬の文化を巻き込んだ、大きな祭が。
あれもこれも混ぜ込んで、それでも皆でやっていく。
レイチェルはそんな、この島が大好きだ。
この学園に住む皆が大好きだ。
だからこそ、今日だって仕事を頑張ることができる。

「メリークリスマス、常世学園」

そうして一人の少女には、誕生日が訪れる。
しんしんと降る雪のように、ただ静かに。

そうして少女は窓の外の明かりを――いつまでも満足そうに眺めていた。

ご案内:「風紀委員本庁 刑事部の一室」からレイチェルさんが去りました。<補足:金髪の長耳少女。眼帯と学園の制服を着用。>