2015/06/15 - 19:36~02:07 のログ
ご案内:「常世保健病院」に遠条寺菖蒲さんが現れました。<補足:長い黒髪を下ろした青い瞳の女生徒。簡素な寝間着姿の生徒会幹部候補生>
ご案内:「常世保健病院」に乙訓 真織さんが現れました。<補足:生徒会書記局副局長。身長185cmのおっとりな女子。ゆるい。今日はお見舞いにやってきたようだ。>
遠条寺菖蒲 > 時は昼過ぎ、三時からは菖蒲がよく視聴するテレビドラマ『刑事x探偵(デカとたんてい)』の再放送が行われる。
第一期の再放送が再び今日からはじまる。
そんな病室でテレビを姿勢を正してみる。
これは一種の儀式と言える。デカタンとは菖蒲にとって掛け替えの無い存在であり、至高であり、この常世島に来てからプライベートのすべてであったと言える。
そして、彼女は刑事である船後エイジの熱血なのだが器が大きく暗い過去を持ちつつも明るいそんな彼のファンであった。
「………」
ごくりと固唾を飲みながらデカタンがはじまるのを待つ。
悲しくは足が未だ正常とは言えず正座で待てないということであった。
乙訓 真織 > 「遠条寺さん、そう遠条寺菖蒲さんの病室なんですけど~……」
部屋の向こうから声が聞こえてくる。
聞いたことのある声だ。
「あ、ここです? おおきに~」
なんとも、聞いているだけで気の抜けそうな間延びした声である。
デカタンを前に真剣に待機する菖蒲は声に気がつくかどうか。
軽やかな足音。
ややあって、トントン、と菖蒲の病室のドアがノックされる。
「菖蒲ちゃ~ん? 乙訓や、お見舞いに来たで~」
ドアの向こうからそんな声が聞こえてくるだろう。
遠条寺菖蒲 > 声が聞こえてぴくりと反応する。
どうやら来客のようだ。
聞いたことのある声だ。
最近はあまり喋っていないが……書記局の乙訓真織。
確か、そうだと記憶している。
ここ数日での出来事と新年度から幹部候補生となってしまったのもあってどうにも随分とあっていないような気がしてくる。
「はい、どうぞ」
身を一応戸の方に向けた。テレビはつけたまま、番組ははじまる。
乙訓 真織 > 「失礼するで~」
がらり、とドアを開ければ入ってくるのは身長185cmの黒髪女子である。
乙訓真織。
一見ではその緩い雰囲気からそうは見えないかもしれないが、生徒会書記局副局長の肩書を持つ、立派な生徒会の一員である。
「会うのも久々やね、菖蒲ちゃん。生徒会の代表ってことで、お見舞いに来たで~……ま、みんな忙しいからうちが任されたってだけなんやけど……でも、菖蒲ちゃんのこと心配やったから一度来ようと思ってたし、丁度よかったわ」
そう言って、病室に入る――と、びくり、と身体を震わせて、テレビ画面に向けて声をあげる。
「わ~、デカタンや! 長充持左! ああもう、かっこええわ~」
そんなことを言いながら、両手をぽんと合わせてそう口にする真織。
遠条寺菖蒲 > 「最近は何かと騒がしくて忙しいところに乙訓さん来てもらってすみません。けれど、そのように思って頂いて来ていただけるのは嬉しいです」
菖蒲は相手の風貌などで嫌ったりはあまりしない。あまりというのはややトラウマになるような存在もいるからだと知ったからであるが、それはどうでもいい。長身で大きな女性である乙訓に彼女は別段恐怖することもなければ、並みの男性よりも大きな彼女をからかうこともない。彼女は優秀で同じ生徒会の一員で一緒に仕事をしたこともある。それでいいのだ。
テレビでは事件現場の第一発見者である長充持左が船後エイジにその時の状況を話しているところであった。
「乙訓さんは長充持さんのファンなのですか?」
真織の反応をみるにそうに違いないだろうが、つい確認するように声に出していた。
乙訓 真織 > 「相変わらず堅苦しいな~、菖蒲ちゃん。もっとフランクでええねんで? あ、フランクって言ってもフランクフルトやないで?」
彼女としては面白いことを言ったつもりなのだろうか。
真織はどや、と言わんばかりに顎に親指と人差し指を宛てがっている。
「そうやで~! 船後エイジもおじ様! って感じでかっこええし、可愛ええねんけどな、やっぱうちは長充持左やな! クールに見えて、実は熱いっていう、あのギャップに心打たれるんや~」
ほわ~、とした口調でそんなことを言う真織。
今頃彼女の中ではデカタンの様々なシーンが脳裏を駆け巡っているに違いない。
「あ、ここのシーンはあれやな。事件現場の最初の発見者が左だったからって、疑われちゃうとこやったな~、懐かしいわ~――あ、菖蒲ちゃんはもうこの話見てるん? デカタン好きだとか、噂には聞いてるんやけど~」
噂には聞いている。が、菖蒲とデカタン話をしたことはない。
一応ネタバレしないように気をつけたらしい。
遠条寺菖蒲 > そう言われて思わず苦笑する。
やはりこの人は底抜けに明るい。
今では少し眩しく見えるか。
「確かに長充持さんはすごく魅力的ですよね。ハードボイルド?と言うんでしたがそういう態度だけれど身内や知り合いに手を出されては黙っていない熱さが船後さんにも認められてましたしいいですよね」
確かに確かにと頷く。原作ではないが、長充持左をメインとした第三期もいい話であった。
「そうですね、この後長充持さんが自分が犯人じゃないことを正面してやるって動いてそれを疑わしい真似はやめろと仕方なく船後さんが監視について……」
「え?ええ、私はデカタンのファンです。……とは言っても今まで原作も劇場版も見たことはないのですが……」
そう言ってしゅんと凹んだ。
乙訓 真織 > 「ツッコミなしか~いッ!」
びし、と菖蒲の居る方向――虚空に向けてだが――手刀を振り下ろした。
いつか見た彼女の言動とそう変わらないが、今日はどこか気合が入っている。
真織なりに、病室で動けない菖蒲を励まそうとしているのだろうか。
「そうやで。だからうちはサードシリーズの純情派が好きなんや! 何たって左メインの話やからな~……丁度デカタンを知ったのがその頃やったから、左好きになったのもそこが大きいんやろな~、きっと。衝撃的やったで~、サードシリーズの第一話での左の登場シーン! 帽子を手で抑えて、颯爽と事件現場に登場! あ~、もうたまらんわ~」
そう言いつつ、持っていた小さな鞄の中から林檎と果物ナイフを取り出す。林檎食べれる? などと小首を傾げつつ。
「えっ、原作も映画も見てないんか!? 勿体無いわ~、テレビ版が好きならどっちも絶対気に入るで~! うちが今度貸したるわ! 特に映画のDVDはメイキング映像なんかもあってな、ファン必見やで~。エイジの俳優さんのお茶目っぷりが爆発しとったり、左の俳優さんの柔らかい笑顔が見られたり、ほんと最高やで~!」
そう言って、にっこり笑う真織。
遠条寺菖蒲 > 虚空に向けられた手を見て少し吃驚する。
「……その、触れない方がよいかと思いして。なんとなく下手に触れれば乙訓さんを傷つけてしまうような気もしたので」
至極真面目だ。
至極まじめにそう告げる。
「あの頃にはもう船後さんも長充持さんの事を信頼してますし何より探偵としての推理パートに力を入れているのがいいですよね。林檎ですか?昼食後なので少しなら」
3時のおやつの時間であるとはいえ、食後なので余り食欲は沸かない。
けれど、貰えるのならば悪い気はしない。
「原作は退院したら読もうと思いますよ。映画は異能仕掛けの摩天楼ですが、この後知り合いの先輩がレンタルしてくれるってメールで約束してくれてるんですよ」
この後ついに劇場版が見れるのだと手を合わせて幸せそうに言う。
乙訓 真織 > 「ぐっ、遠条寺菖蒲……強敵や……けど、絶対いつかうちのネタで大爆笑させたる……待っとけよ……!」
がっくりと肩を落とす真織。
しかし最後には、小さくガッツポーズしてみたりしつつ。
「そうや。探偵といったらやっぱり推理やからな~。頭のキレる左! ほんと憧れるわ~。うちもこの学園に来て、探偵部に入ろうかと思ったんやけど、な~んにもできへんから、さっぱり諦めたんやわ~。菖蒲ちゃんも左のファンなん?」
少しなら、という言葉を聞いて、そかそか、と満足気に頷いて林檎の皮を剥き。
「ということは、二作目の方はまだ未定なんやな? そっちの方はレンタルせんでも、うちにあるから退院したら持ってくるで。せやから、早く元気になってな?」
そう言って、林檎を一切れだけ、爪楊枝に刺して手渡す。
遠条寺菖蒲 > どこか子供向け番組の悪役のような事を言う彼女を微笑ましく眺めて、
「楽しみにしてますね」
と答えておこうと思ったのだった。
「えっと、私は船後さんが好きですね。彼はどんな事があっても諦めませんし長充持さんとは違ったその熱さが好きです」
林檎を受け取って、ドラマで見た船後エイジの活躍を思い出す。
彼はどんな事があってもその手を伸ばして困難に立ち向かった。若者にも負けない情熱を持った刑事だ。
「では退院したらお借りさせていただこうかと思います。上海巨人伝説殺人事件はローラーブレードで現場に向かう長充持さんが格好いいと評判らしいですね」
乙訓 真織 > 「その余裕面ぁ、絶対笑いで歪ませたるからな……!」
きらん、と目を光らせる真織であった。
「お~、菖蒲ちゃんはエイジ派か、分かるで~! あのおじ様素敵やもんな~。ストレートに熱いおっさんやし、暗い過去を背負いつつ前向きに生きてるのに憧れるわ~、何より経験豊富なおじ様! っていうのがええよな~」
にっこりしながら、うんうんと頷く真織。
「そやで~。あんまり言うとネタバレになってしまうから詳しいとこまでは言わんけど、左がローラーブレード着けて、車に捕まって現場まで向かうんや、超かっこよかったで~!」
そう言って、胸に手を当ててうっとりとする真織。
「……っと、長居してしまったなぁ~。デカタン談義はこのあたりにして、また退院したら思う存分語り合おうや~」
気付けばデカタンもCMに入っている。
右手を挙げて、猫の手のような形でにぎにぎ、としつつ約束の言葉を投げかける真織。
遠条寺菖蒲 > 「乙訓ちゃんとは改めていい友だちになれそうな気がします」
どこか食いつき気味に言葉を返す。
丁寧な言葉であるが、その声には喜々とした色がある。
「ええ、ええ!是非今度は生徒会の仕事前や小休止の時などに話しあいましょう。ふふふ、楽しみです」
はじめて趣味について語り合える友人を見つけた菖蒲にとって興奮せずにはいられない案件であった。
ああ、早くまともに動けるようにならないと。思ったよりも快復が早く退院もそう遠くはないとは聞いてはいるが、これは学園に再び通えるようになるのが楽しみだ。
乙訓 真織 > 「お~、元気出たみたいやな、来た甲斐があったってもんやわ~。乙訓ちゃんでもええけど、まおりんって呼んでもええねんで?」
そう言って再び、顎に親指と人差し指を宛がう真織。
「ん、了解やで~。お互い忙しいかもしれんけど、時間見つけて、なっ?」
にぱ~、とゆるい笑顔の真織。その笑顔には、何処か人を癒やす力がある……のかもしれない。心の底から嬉しそうな笑顔だ。
「ほな、そろそろお暇するわ~。身体に気ぃつけてな~、入院中はしっかり身体を休めるんやで、出ないと長引くこともあるからな~」
ほなな、と最後に再び猫の手をにぎにぎ、と動かして去っていく真織。
どうやらこれが彼女流の挨拶らしい。
遠条寺菖蒲 > 「乙訓さんで、なんだかそのように呼ぶのはまだ早いような気がするので」
なんとなく、と笑っていう。
この子にはとても温かみがあるなぁと少し肩から力を抜いて思う。
「ええ、それはもちろん」
菖蒲は真面目である。真面目で融通の効かないところがある。それに今までは生徒会幹部に完全に隔離されていたようなものでこのように暇な時間を見つけて、なんていうのはこれまでには考えられないことだろう。
「乙訓さんこそお体にお気をつけて。意外と病院って暇なものですからお世話にはならない方がいいですよ」
なんて冗談を言う。
彼女の動作がよくわからないので取り敢えず笑顔で見送ることにする。
乙訓 真織 > 「あはは、せやな! まだ、早いわなぁ~」
全く気分を害した様子はなく、寧ろ嬉しそうにけらけらと笑う真織であった。
「うちは大丈夫やで、早寝早起き、三食ご飯に適度な運動もしとるからな~、健康健康! やからなっ。でも心配ありがとうな~、ほなな~」
部屋を去りながらそんなことを口にし、真織は病室を去って行った。
ご案内:「常世保健病院」から乙訓 真織さんが去りました。<補足:生徒会書記局副局長。身長185cmのおっとりな女子。ゆるい。今日はお見舞いにやってきたようだ。>
遠条寺菖蒲 > 「退院したらまた学園で」
そう言って真織が去っていくのを見守ると
ゆっくりとテレビへと向き直る。
そう言えば、まだこの第一回目の頃にはあの今ではテーマソングの一つとして有名なあの曲がないのだな、と『刑事x探偵』の再放送に集中する。
ご案内:「常世保健病院」に五代 基一郎さんが現れました。<補足:夏用スーツ。荷物多し。>
五代 基一郎 > 放課後。昼の再放送が終わり小一時間ほどしたところでノックの音が病室に来訪者を知らせる。
「入るぞー」
からからと引き戸を開ければ先導するように黒猫が、病院というのに入り込み
その後ろからいくつか荷物を持った男が入っていた。
「今日、祭りだったから出店のいくつか買ってきたけどどう?」
恒例のなのかリンゴ飴やらたこ焼きやらベビーカステラなどを両手に抱えて、それらをテーブルに置いていく。
流石にかき氷を買って持ってくることはできなかったようだが。
遠条寺菖蒲 > その頃にはテレビを消してベッドにつけられた机で勉強をしていた。
頭が悪いなんてこともないしそんなに必死にやる必要もないはずだが、菖蒲の見ている教材は高等部の三年向けのものである。
「どうぞ、五代さんお待ちしてました!」
パッと明るい顔で菖蒲は手を止めて五代を迎える。
先程まで『刑事x探偵』の再放送を見ていたためこの「先輩」にレンタルを頼んだ劇場版が楽しみで声があがる。
「お祭りですか?それは私も行きたかったですね……」
残念と言う顔で五代の見せるものを見る。
似たようなものは見たことあるのだけれど、どれもはじめてみるようなものだった。特に林檎飴などは菖蒲にとってはガラス細工のように見える。
「このような物を売るお祭りだなんてきっと楽しいのでしょう?」
祭りというと言葉と文化的なものは歴史の授業として習うから知っているが、菖蒲には縁のないものだった。
五代 基一郎 > 「なんだ勉強中か?それじゃこいつはまた後かな」
レンタルしてきた指定の劇場版……第一作のDVDをテレビ台に乗せて教材を覗きこんだ。
業務の関係上、この学園に来て以来ほぼ聴講のみで過ごしてきた。
後輩と言えど、時間外に勉強をしている姿は中々に見てておもしろいものがある。
「まぁ毎月15日だ。来月もあるし、その時行けばいい」
好きに食いなされ、とでもいうように備え付けのポットに寄って茶を淹れ始める。
「祭り行ったことないの?意外だな。神道とは近いと思ってたけど」
淹れたか二つの湯呑をテーブルに置いて、自分も椅子を引き寄せて腰を落ち着ける。
その膝には黒猫が指定席だといわんばかりに乗って落ち着く。
遠条寺菖蒲 > 「え!?あ、そ……それは先に頂きたいです!」
お淑やかさとか上品さなど捨てるかのようにいつもとは違う動きの早さで教材を片付けるて居なおす。
今目の前に現れた好物を目の前にいずれの為の予習など少し暗い後にしても問題がないし、そもそもこうして勉強するのも他にすることがないからというのが大きい。
「毎月なんて凄いですね。来月には行ってみたいと思います」
こんな芸術的なものが売られているだなんて凄いものだと思った。
神道とは近い、とは恐らく私の実家の事か。
今思ってみると確かにそう言うそういうのはあったのかもしれない。
一時期の間いた側仕えの女性が綿飴なんてものを持ってきてくれた時はあったが、もしかしたらあの時期に。
「私はちょっと家の中で必要な時以外は外に出して貰えませんでしたから教科書で見る祭りくらいしか……」
それこそ世が乱れる前に盛んだったという地方の有名なお祭りくらいしか知りはしない。名前は知っていても実際はどうかというのは知りはしないのだ。
五代 基一郎 > 「まぁ時間も時間だ。ちょっとぐらい後でもいいじゃないの」
何か勉強は先にしなさい、という親のようにそのまま。
猫を撫でようとして尻尾で叩かれながら、話を続ける。
「そうか。なら来月だな……出店だけでもいいし、神事を見るのも勉強になる。リハビリも順調そうじゃないの。」
やれ伊勢は今でも、とか厳島はどうだのとか出雲は……と話を乗せつつ自分もベビーカステラを摘まみ茶を飲む。
そういうイベントに出ることもいい経験になる、とその話を閉めるように語り、ひと息をつけば
「……さて、どこから話せばいいか。聞けばいいか。」
それ以前とは違い、首の裏に手をやりなんか出す言葉を考えるように溜め息をついた。
遠条寺菖蒲 > 借りてきてくれたのは彼だ。
ならば、彼の言には従おう。今は我慢の時、僅かに下唇を噛みかけるが堪える。子供っぽい気がするから。
「……わかりました」
意気消沈したのが目に見えてわかるようだった。
「そうですね、こちらの神社が何を祀っているのかなんていうのも私は調べたことがないので少し気になるところではあります」
ヤマトタケルに関する由来のある青垣山があるくらいなのでその辺なのかもしれないと僅かに考える。神社と山はそこそこ離れてはいるが、どうなのだろうかとも思考したが答えが出るわけはない。
「そうですね。手はもうすっかり問題ない感じです。足も普通に歩く分にはよくなったみたいです。早ければ明後日には退院できるかもって話です」
どうやって食べるのだろうかとしばらく悩んでから大胆に林檎飴に齧りつく。はじめての餌に戸惑う小動物のようにみえるかもしれない。
「……えっと、報告ということで一つ私から先に」
と意見をする時の癖が手を少しあげて五代に告げる。
「昨日、公安委員会の第二特別教室の『室長補佐代理』と言う方が少し聴取に来られた、というだけですけど一応」
報告しておきますね、と言った。
五代 基一郎 > 悪い、ちょっとな。と呟いきつつ話を続ける。
職務上というのもあるし見舞いもあるがやはり気になるものはあった。
「まぁ見に行けばすぐわかるさ。神社仏閣……どれもただ突っ立ってるだけじゃない。」
大体にして訪れれば、知ってる人はわかるように。というよりも祭っているものが何かわかるようにはなっているだろうと。
ぶっささってる割りばしには気を付けるように、とリンゴ飴を齧る小動物に注意しつつ話を続けようとし、先に挙がれば
「はい、遠条寺君。なにかね」
伺えばもはや見知った名前が出て、先に来てたかという感想しか出てこない
「あぁ第二のあいつな。害来腫の処分のためか……まぁ、情報なら上げただろうにな」
突入した風紀や公安の話もあるのだ。わざわざそれを遠条寺に聞きに来るとはまた趣味が悪い。
当然の隙のない仕事だ、とか言いそうだなと思いつつ話を続ける。
「最近の新入りといい、隔離施設じゃないだろうにやつも大変だよ。最も元ロストサインを受け入れた自体どうかと思うけどさ」
「他に何か聞かれたことはなかったか?」
ないならいんだが。と呟きつつ思い出す。確か奴からの資料には別件で遠条寺の名前があったはずだが。
あいつ、あの件は今優先度が低いとみているのだろうか、と考えながら。
ある種の菖蒲を越して相手を伺うように聞いた。
遠条寺菖蒲 > 少し食べ始めると意外と食べやすい、と感じているが口の周りは悲惨なことになりかけている。
「……そうですね。少し思い出したことを教えたくらいで他にはないですね」
そんなに多くは尋ねられはしなかったし、話を聞いたら納得していた。自分が最後の「人柱」と呼ばれた事と「あの場には害来腫の他に何かがいたような気がした」と言う不確かな情報を与えたくらいだと言う。
少し悩んでから五代に少し疑問を投げかける。
「そう言えば……ロストサイン、でしたか。何人か確認されているみたいですよね?」
みたい、ではない。少なくとも自分は二人ほど確認している。
しかし、とぼけながら続ける。
「今、どれくらいいるんでしょうか……?」
それは生きている元メンバーではなく、今の学園が確認している元ロストサインのメンバーの数についてだ。
五代 基一郎 > 「……そうか。俺らがみたのとあまり変わらないか。」
まぁ、近いうちに始末されるだろう。あいつが動いたということはそういうことなのだ。
「あぁ、そうだな。情報はいくつか上がっている」
未確認情報が多いが、それでも近い目撃情報は上がっている。
それらを並べるだけで頭が痛い話だが、菖蒲の問いに難しい顔をして答える。
「どれくらい……ね。元メンバーというなら大なり小なり、それなりにいるな。要するに異能や魔術犯罪者、それも組織だった連中だ。
最盛期の規模がデカすぎたのさ。末端や元ロストサインというだけならもう何がどうやらと答えるのも難しい話だ。
ロストサインという枠が外れてたとしても、ある種それらはどこにでもいつでも存在する。
最近ので言えば西園寺偲と起こした事件もロストサインと変わらないしな」
遠条寺菖蒲 > やはり動き出しているのか。
彼女の言う情報は正しいと見るべきなのかもしれない。
「そうですか」
情報を整理する。
しかしなんとなく、この人がその台詞を言ってはいけない気がして一つの言葉に胸の奥に何かが引っかかったような感覚。
「西園寺偲先輩の起こした事件は過程も結果も確かに酷い部分の多いものだったと思います」
けれど、それを五代さんには言わないで欲しい、と何故か思った。
それは最初この人から彼女の名前を聞いた時のあの印象のせいか、それとも先日の彼女の邂逅によって芽生えた感情なのかはわからない。
「けど、他の誰かならいいですけれど……私は五代さんに彼女をロストサインと変わらないとは言ってほしくはないです」
よく分からない。菖蒲にもよく分からないがそう口にする。彼女の選択は間違いだらけだったのかもしれないけれど、それでも願ったのは平和であったと思うから。
彼女のことを私よりも知るだろう彼には悪く言ってほしくはないと思ったのかもしれないと思う。
五代 基一郎 > たこやきを摘まんでいた手が止まり、溜め息。
箸を起いてそれを机の端に退けた。
単純に根が優しく、まだ物事の基準がわからないからだろうか。
だが、そのまた生み出されてはいけない類のものを見たがために
溜め息をついて茶を啜りひと息ついた。
「遠条寺君。ロストサインとは何か答えなさい。」
遠条寺を見る男の目は、風紀委員会警備部特殊警備一課の第二小隊長……
やる気のない目ではなく遠条寺がかつて遠巻きに見ただろう執行部長時代の
意気ある目であり、それは断固とした意志を見せる力があった。
その目が、遠条寺の目を見て、問うていた。
遠条寺菖蒲 > 怪訝そうな顔をして、それでも自分が理解している範囲で考えて答える。
ロストサインとはなにか、それはどういうことをした集団でどういう事を意味する言葉となるかとも言える。
「二年前まで存在した違法部活(イリーガル)で、あらゆる犯罪に手をかけた違法の……犯罪組織です」
そう、今まで知らなかったのが不思議なくらいに犯罪という犯罪、違法という違法に携わってた組織。
そして、先の事件も目的はどうあれ違法であり犯罪に手を染めたやり方であった。
それは、その。
言葉は尻込みして視線を泳がし俯いてしまう。
どう言えばいいのか、うまく言葉は選べない。
五代 基一郎 > 黒猫はいなかった。いなかったがそこに男の組まれた手が置かれていた。
「補足しよう遠条寺君。学園成立初期より存在し、二年前に一つの事柄が切っ掛けで壊滅した違法部活(イリーガル)
外部とも繋がり、あらゆる犯罪に手をかけた
”己が目的のためなら法を法とも思わず、人の命を命とすら思わぬ”狂人達の犯罪組織。
それがロストサイン。」
もはや答えは出ているというのに、それを認めたくないが如くに
視線が泳ぐ目の前の少女の目を見る男。
その目は菖蒲が昨日であった第二特別教室の室長代理の覗き込むような目ではない。
断固とした意志を貫く者が、目を逸らすものの目を射抜き止めるような目だった。
「公安委員会副委員長という学園社会の秩序を担う要職でありながら、その公的な職務や本分を無視し
法を法とも思わず公権力を私物化し、違法薬物を撒き
人の命を命とも思わず何も知らぬ学生を死に至らしめ多くの被害を出し、また学生を誘拐しての実験行動。
現在でも薬物の拡散は確認されている。」
ひと息置いて、もう出ているそれを改めて口に出して菖蒲の前に突き出した。
「如何なる目的であっても、そのために多くの失われずに済むものが失われた。それを正当化することは絶対に許されない。許されることはあってはならない。」
「故に、それが正しい。許されると思っていた西園寺偲は狂人でありロストサインと何も変わらない」
遠条寺菖蒲 > 五代基一郎の言葉は強く重い。
この重圧とも言える言葉の重みがどこから来るのかは、分からない。
菖蒲に目を背けさせることを許さないチカラが言葉にあった。魔術でもないただの言葉が何よりも強い。
罪や罰と犯した事の大きさは彼女もきっとソレラと一緒だ。
詳しくは知りはしない。かつてロストサインが齎した被害の大きさを私は知りはしないけれど。
彼女が犯罪者であり、正当化されないのも分かる。
誰にかとんでもないことをしでかした大罪人と言われてもきっと私は気にはしないだろう。今彼が口にした狂人であると言う言葉でも恐らくその通りだと言っただろう。
でも、けれど、私よりも長くちゃんと彼女を知るのなら、
そんな風には言わないで欲しい。
「……」
どうしてかそんな気持ちは喉まで出かかっているのに、言葉には出来なかった。
ただ、どうしようもなく彼の言葉は正しいと自分で分かってしまって。
間違った彼女を認めるのではなくて、上手く説明できない。
彼の言葉を認めるように俯きながら布団を布団を握る手に力が篭った。
五代 基一郎 > 「俺は西園寺偲を絶対に許さない」
それはもはや裁きを下す声に近かった。
断固とした、かつ怒りにも近い静かな声が発せられる。
「正しきことを掲げ、盲信し、人を踏みつけて踏みにじってきた者を許さない」
正義というエゴを掲げ盲信し如何なる地を流す事を許容し喜んで手を血に染めてきた者
歴史の教科書どころではない。今も尚それらは息づいている。
「仕方がない、省みられるべきものではないから構わないと犠牲にすることを厭わない者を俺は許さないし
それが正しさのためだというのならば絶対に許さない」
「それは正しさのためでもなんでもない。それは正しさを、正しくあるべきだとする人間が絶対にやってはならないことだ。」
そして、現実というものをまた突き付けていく。
何も知らなかった、知らない世界の少女に。
理想や気持ちが何よりだと思う夢を見る少女に。
「彼女を知っているからこそ”心苦しいが職務上言うしかない”のではない」
「裁かれざる者は、何かによって裁かれなければならない。
故に西園寺偲が裁かれぬのであれば、私は許さず生きる。
悪を悪とも思わぬ者に正しき怒りを持って、私は生きる。」
一呼吸いれてから残る茶を啜り、口調を変えて続けた
「君が今思っているのは悪いことではないが、それとこれとは別という話」
目は既にいつもの目に戻っていた。やる気のない目で再びたこ焼きを食い始める。
遠条寺菖蒲 > 最初に聞こえたその声の響きは厳格な親が子を叱る時のように聞こえる者もいるかもしれない。
しかし、彼女は親の声を余り知らないし最後に聞いたのはいつだったかも思い出せはしないのでただ純粋に怖くあった。
彼の言葉はどこまでも正しくある。
あの“失落園”の時も“害来腫”の時もあいつらの被害に遭った人たちを見た時に抱いた想いと重なる。
そして、そうだと認識するが故に彼女が彼に許される事はないのだと理解する。
行った事は私がアレにおこなれた事に等しい。いや、殺してもいるのだからそれ以上とも言える。
仮にもし私が被害者だったのなら彼女を許せるのか、という話でもあるだろうし今も“害来腫”に対する恐怖と怒りは薄れてはいない。
故に完全に何も言えなくなってしまった。
聞き終え、少し水尻に熱いものを貯めかけて
「……五代さんが彼女を許さないのは理解します」
別にそれを変えてくれとは言わない。
「だから、せめて私の前では西園寺さんの事は言わないで欲しいんです」
彼女が抱いていた最初の願いは綺麗だと思ったから、そのやり方をそれこそ派手に間違えてしまった彼女だったけど、学園の平和を願っていたのだけはきっと真実だから。
「ここに来て少しだけ彼女から話を聞いたから……」
五代 基一郎 > 正しさは往々にして恐ろしさを与えるものである。
誰しもがそうでありたいと願いながら、誰しもがそれに添って生きることは難しい。
強く言い過ぎたか、というより感情移入がしすぎているのは世間を
人を知らないからと思っていたが……言葉を聞いて内心舌打ちする。
何がしかのコンタクトか、存在がまだうろついて影響を与えている。
良くないことだ。如何なるものであれ、他の人間にもだし真っ新にも近いこの少女をそちらに引き込まれるのはあってはならないことである。
後で上伸しシステムから切り離すか隔離するのが妥当だろう。
「忘れろとは言わない、悪い見本だしな。だがもう接触はしないように。美しい言葉で虚飾されたものほど醜悪なものはない。
美しいものだけ見ようという気持ちもわからんでもないが」
食い終えたたこ焼きをしまいながら続ける。
それなりに時間は過ぎつつあったが……
「だからここが分水嶺。飾られた楽園世界と現実の世界との境界線になる」
先ほどのような親のような恐ろしさはないが、その言葉は現実という地に足を着いた淡々とされたものだった。
その言葉が積み上げられて、菖蒲に問う。
「世界を知るということは現実を知ることでもある。
君はその断片……その強い部分を今見てきた。
君がいた世界とは別の、外の世界の現実を。
俺が話していることもそこだが、まだ受け入れがたいのだろうなのはまだ見ぬ場所だからさ。」
冷めたジャンクフードのフライドポテトを摘まみながらも続ける。
行儀が悪いのはさておく。
「ロストサインと呼ばれた者達もそこの住人だ。
君の知らぬ世界の現実的な場所にいる。それも合わせてだが。
君がいた場所と、この学園社会という学生が全ての学生だからで許されるという楽園世界。
その内にありながらその外……しかし根ざすは現実という俗世そのもの。」
「何かに守られた楽園世界で今のまま……自分の思う都合の良い、見たい世界を生きていくか。」
世間知らずのお嬢様がちらと遭遇したイベントと、夢の中のような都合のいい学生生活で済ませるか
「己だけしか頼れぬ世界に踏み出し、現実を知り戦うか。見たくないもの、都合の悪いものも見て生きていくか」
誰かに守られずとも、過酷な世界の現実を知り生きて戦うか。
既に戦う者であることを知り、また戦うだろうことを見越して告げる。
その分岐点。案に言う。見なかったことにして過ごすこともできると。
それが学生の本分でもあると。態々でしゃばることもないと。
「まぁ、退院した後に聞かせてくれればいいよ」
その問いに対する答えが今後の付き合い方を決める決定的なものになるとは言わず。
ゴミを纏め、退室の準備にかかる。
黒猫は戻っていた。
遠条寺菖蒲 > 答えはすぐに出せるかと思っていた。
すでに自分はその答えを下したのだと思っていた。
しかし、
「……はい、その時には」
突きつけられた問題に即答できる解答はなかった。
平和な学園生活、それは今までどおりだけれど五代が来る前に訪れていた乙訓真織と言う生徒会の仲間にしてはじめて趣味を共有出来そうな人物。
過酷な現実の世界、それはここ数日で私が体験した悪夢とも呼べる日々よりもきっともっと凄惨な世界。私が見たこともない元ロストサインの面々やそれ以上の存在だってあり得る。
私はあの“化け物”に何も出来ずに倒されるしかなかった。
そんな私が生きていくにはこの世界の現実は過酷過ぎるのではないか。
よく考えよう。
ちゃんと考えないとダメだ。
これは、きっと私の今後を大きく変えてしまうから考えないことはもう許されない。
五代 基一郎 > 「レシートに返却の店舗書いてあるから、お願いね」
そんな日常的なことで菖蒲に返し
それじゃぁと手を振って退室していく。
レシートには店舗名と7泊8日という数字が書かれていた。
ご案内:「常世保健病院」から五代 基一郎さんが去りました。<補足:夏用スーツ。荷物多し。>
遠条寺菖蒲 > 五代が去って。
楽しみにしていた映画だけれど、どうにも今すぐ見ようと言う気に離れなかった。
机の上に置かれた「楽園世界」のものたちがとても眩しく輝いて見えた。
いつしか、それらがよく見えなくなった。
視界はぼやける。
どうしてか涙が溢れた。
私は無力だった。
戦えると思っていた。勘違いしていた。
この島にいる『現実』は、私が此処に来るまで討滅してきた魑魅魍魎などと比べるのも痴がましい『過酷な現実』だった。
私は自身一人ですら守る力はない。
故にすべてを忘れて楽園で笑うべきではないか?――否。
では戦うのか、力なきものが戦うのは自殺に等しい。私は死にたいのか?――否。
では、どうしたいのだろうか。
知ってしまったのは、理不尽に対する怒りと憎悪。
託されたのは、無力な私に『過酷な現実』を止めて欲しいと言う願い。
そして願われているのは、平和な世界で私が生きていくこと。
どうするべきなのだろうか。何を選択すべきなのだろうか。
その答えは今は未だ出ない。
遠条寺菖蒲 > 腕も、足もすでにだいぶ動く。
退院の日が近いのは自分でも分かる。
菖蒲はベッドの上で膝を抱えてはじめてどうしていいか分からなくて泣いたのだった。
ご案内:「常世保健病院」から遠条寺菖蒲さんが去りました。<補足:長い黒髪を下ろした青い瞳の女生徒。簡素な寝間着姿の生徒会幹部候補生>