2015/06/16 - 16:48~02:21 のログ
ご案内:「学園区病院」に否支中 活路さんが現れました。<補足:公安委員会機密監視対象「破門の男」>
ご案内:「学園区病院」に遠条寺菖蒲さんが現れました。<補足:長い黒髪を下ろした青い瞳の女生徒。生徒会幹部候補生>
ご案内:「学園区病院」に害来腫さんが現れました。<補足:学生服・黒い髪・隈のある目>
否支中 活路 > 夜の闇にわずかにブレーキ音がして、玄関口から少し離れた所に停まったバイクから人影が降りる。
行動に淀みはなく、するすると裏手へ回る。
非常口を……魔法や異能で開けたりはしない。それはそれでそういう防備もある。
そんなことより、今あっさり開けたように人の手が開けてしまう穴を把握しておくほうがはるかに早い。
否支中 活路 > 消えかけた非常灯のようにゆらめく緑の眼が、廊下を足早に進んでいく。
風紀委員“五代 基一郎”から聞いている。
被害者の名前。入院患者らの居る棟へと渡る。
忙しなく頭を振っている。いや、眼を。
探している。
妖精眼の視界は魔力へとピントが合わされている。
否支中 活路 > ある違法部活が誰と付き合っていたのか、落第街に慣れた活路は当然知っていた。
知っていて、距離をとっていた。
それは昨日でやめている。
歩く脚はまだ傷が残っている。
公安委員より切られ、風紀委員の手でアジトを破壊された男がどうするか。
それが来ていないなら、どういうことか。
わかっている。だからここに来ている。
否支中 活路 > 階段を駆け上がる。
踊り場を出れば、廊下の先に遠条寺菖蒲の病室がある。
闇の中で緑色の双眸がゆっくりと横に動いた。
害来腫 > 【既に夜となった病院は静寂で満たされており】
【活路以外の気配は無い…だが】
手前カ…本来なら会いたかった、と言いたいガ…
【暗闇から響く声…見れば廊下の暗闇は、まるで意思があるかのように動き出し】
【それはやがて、月明かりに照らされた廊下の床に集まると、徐々に人の形を取る】
よおぉ、久しぶりダなあ、最後にあったのは
俺の体がこうなった時以来かア?
【集まった蟲が人の形を取る…】
【“害来腫”、公安の庇護を失い、元の無法者へと成り下がったかつての敵の一人】
【その顔こそ笑っているものの、内に燃える憎悪は、殺気を通じて傍目からも容易に感じ取れた。】
否支中 活路 > 「なんや、そっちから出てくるなんて、ジブンにしてはエライキレとるやんけ“害来腫(ハームフルハート)”」
憎悪の瞳を向けられて、包帯の下の口がニヤッと釣り上がる。
「やっぱり来とったな。
尻尾巻いて逃げへんのかよ?
それとも――――」
緑光で相手へ視線を跳ね返しながら、あえてバカにしたように、
「もう逃げられへんてか」
遠条寺菖蒲 > ゾクリと背筋が震えて目が覚める。
「っ……!!?」
嫌な気配がした。
こういう直感は嫌なことに当たってしまう。
それに、この感じには覚えがある……。
強張る身体は別に武者震いを抑えてる戦闘狂ではないしただの恐怖だ。
この恐怖は、『楽園』を破壊する恐怖だ。
菖蒲はベッドの身を起こして部屋の中を見渡す。
これが夢ならばいいと確認するように。
害来腫 > 馬鹿いってんじゃねエ、逃げられねえんじゃなくて
逃げるために必要なものを取りに来たのサ
【突如消えた遠条寺菖蒲の、その後の足取り自体は容易に調べがついた】
【どうやってかは不明だが、あの時破壊した四肢も再生し、完全な無傷であるという事も】
てめえこそそこをどけヨ…俺が用があるのはその中の奴ダ…
悪いが今は手前と遊んでる時間はねえ
【事実その通りだった。】
【一刻も早く本調子ではない彼女を再び拉致し、速やかに人柱にして奥の手を起動させるか】
【今や完全に時間との勝負であり、活路への復讐は今の男には二の次であった。】
どかねえなら…
【ギチギチと異形の蟲達が姿を見せる…アジトは破壊されたが】
【その際蟲達は全てアジトから持ち出してきた】
【状況はともかく、実力だけで言えば今の男こそが、ロストサイン時も含めて】
【最も強力になっているといってもいい】
否支中 活路 > 活路は調慄者と害来腫の顛末は当然ながら知らない。
それでも自分の子飼いの前にも姿を見せていないということであれば、害来腫の行く先はいくつもない。
そして、
本人はたった今、これが最後の一つだと白状した。
己が殺しきらなかった男の、
己が手を出しひかえた男の、
最後の贄。
「ほんま、いやな義理が残ったもんやな」
蟲の群体として展開しつつある相手を見据え、呪符を指から覗かせる。
遠条寺菖蒲 > 気配は戸の向こうからしているようだと理解した。
微かに声がしたのだ。
夜の病院、それも自分の病室の前なら誰でも気づいてしまうだろう。
脇の机に置かれた小太刀「霧切」をその手に握った。
大丈夫だ。動けている。
夢ではない。今この部屋の外には『現実』が迫っている、そう理解させられている気がした。
否支中 活路 > 手にした呪符は四枚。
時間はかけたくなかった。一気に行く。
それを解き放とうとするその瞬間、壁の向こうの気配に気づいた。
「あ、待て害来腫」
害来腫 > 【気が逸れたその一瞬を見逃さない】
はははあ!!あ~や~め~ちゃぁん!!
【ドアが、蟲の大群に一気に叩き壊され、大量の黒い群れが雪崩れ込む】
あそびま~しょ~ってなあ!!!
【黒い群が、再び菖蒲の前に現れる、その顔は以前にも増して、狂気が色濃く浮かび上がっていた…】
否支中 活路 > 慌てて呪符を発動するか、と言えばそうしない。
なぜならその緑の眼が見ているからだ。
壁と、そしてそれをぶち破り雪崩れ込む蟲の向こう。
少女が起きていると、見えているからだ。
遠条寺菖蒲 > 気がしていたから、事前に準備が出来ていたとも言える。
相手気配は読めていたから、
―――その目を青く輝かせて
「魔術は、言葉と意志を介して顕現する《包み込め炎》」
飛び込んでくるソレに容赦しない。
ありったけの拒絶の意志を乗せた魔術は巨大な手のようにそこに広がり眼前に迫るソレを握ろうとするだろう。
そして僅かに遅延して菖蒲と重なるようにして見える《影》から全く同じ魔術が発動しようとしているのが見えるだろう。
ベッドを背に小太刀を抜刀し構えている少女の輝く目に浮かぶ色は『決意』であった。
害来腫 > 【飛び出すと同時に蟲を展開し、菖蒲へ向け大量の蟲を放つ】
【先の戦いで菖蒲の異能は大体把握していた、ならば打つ手は先手必勝】
【だというのに】
な、に…!!
【飛び込んだ先の菖蒲は、既に臨戦態勢を整えており】
【放たれた魔術、明確な敵意を持って放たれた力に触れ、違和感を感じた男は】
く、ぬぅぅううう…!!
【被害を抑えようと蟲に引くよう指示を飛ばす、だが】
【逃さんとばかりに放たれる、全く同じ魔術が猟犬のように逃げる蟲達へ迫りくる】
【何故だ、ただの小娘がいつの間にここまで精神的に成長した?】
【疑問は迷いとなり、活路への注意を散漫にする。】
遠条寺菖蒲 > 怖くない訳がない。
今すぐにだってこの場から逃げ出したい気持ちはある。
それでも、
「ここから私は逃げられない」
この場所は、この病院で私が何もかもを見捨てて見て見ぬふりで逃げ出せばここにいる多くの人達はどうなる?
ここにいるあの人はどうなってしまう?――それはとても怖い。
自分がどうにかなってしまうよりも怖いから
だから
「私は『逃げない』!“害来腫”……お前が私を狙うなら私は『覚悟』して戦う」
そして前に戦った時とは霊力の高まりが違うのに冷静な判断が出来れば気がつくだろう。
それは現実を見た少女の怒りでもあった。
既に楽園は現実によって穢され侵され最早あの時の輝きを取り戻すことはない。
それを認めせめて、コレ以上自分以外の誰かに同じ経験をさせないために。
少女はその身を現実へと置いた。
否支中 活路 > 真っ直ぐ輝く青い瞳を、緑に光る両眼で見た。
知る相手ではない。相手も自分が誰でどうしてここにいるかなどわからないだろう。
だが笑った。
害来腫相手への獰猛な笑みではない。
薄く口の端を歪め、目を細めて、五代基一郎……あのビッグワードが気にかけた少女を見て興味深そうに笑った。
決意と刃は向こうにある。
ならば、右手の呪符はすでに無い。代わりに赤く燃えるように輝いた指先が空中を回る。
「ざまぁ、あらへんな」
I(イス)のルーンが発動し、展開した蟲の中心から、そのまみれた粘液めがけて凍結が発生する。
害来腫 > 【もう失って久しいはずの背筋が、再びぞくりと悪寒を感じるのがわかる】
【危険だと、本能が訴える。自負してきた判断能力がプライドを捨て逃げろと訴えてくる。】
…じゃねえ
【男が、呟いた。】
冗談じゃねえ!!!ただのバトルジャンキーとクソド素人に!この俺の!
『蟲毒のブラッタ』の!邪魔ができるとでも思ってんのかよ!!
【激情した男が、床に蟲の粘液を用いた魔術の陣を描く】
【蟲が凍らされ、描ききれない分は蟲を切り離し、贄に使って】
【相手のコンディションは最高潮、加えて魔力とは似て非なる力が、全身を漲っているのもわかる。】
【後門はあの、ロストサインを壊滅させた例の男、状況は絶望的…だが】
いいぜ、手前等に見せてやる…本物のぉ!怪物って奴をよぉおおおお!!!
【自身を構成する大量の蟲を、陣へと移動させ、更に懐から出したキューブ状の機器を陣に放れば】
【陣から紫電と共に、何か巨大な生物の足と、蟲の顎と思われる器官が姿を覗かせる…】
【魔陣から現れた何かの顎が、虫たちを咀嚼していく…】
ははは…手前らぶっ殺してやる…お前らだけじゃねえ、この連中も、西園寺も、全員…全員だ!!
【そうして現れたのは…蜘蛛だ、8本の足は全て鎧のような甲殻に覆われ】
【醜悪に膨れ上がった腹から膿のような液体を垂れ流し】
【意思の感じられない無数の目は、絶えず獲物を捜し求めぎょろぎょろと動いている】
はあ、はあ…どうだ、『全ての蜘蛛を支配する者』の眷属の姿はよぉ!
眷族としちゃあ末端もいいとこだが、手前ら如きなら
十分打ち殺せるだろうさ…ひひ、ヒヒヒヒ…!!
【自身の残りの力の殆どを使って呼び出した、人ほどのサイズの蜘蛛の怪物】
【彼自身も制御できないのか、呼び出すと同時にその気配を霧散させ、その場から退避する…】
【その感情の感じられない目はいまや、残る二人をじっと見据えている…】
否支中 活路 > 「ン・カイの蜘蛛の仔かよ。大層なもん出してきよるわ」
現れた異形。高らかに嗤うブラッタ。
しかし態度は崩れない。
Yシャツの胸元を開ながら、化け物ごしに刀を手にした少女へと顔を向ける。
「もちろんビビってへんやろな?」
今更名乗りもしない。
瞳が燃える。
「お嬢ちゃんがいるさかい、今回はちょぉっとだけの“ゲートクラッシュ(乱入)”にさせてもらうで」
遠条寺菖蒲 > 「……これは」
害来腫の変化に驚きつつもその中に含まれる自分以外を指す言葉に反応しその人物を部屋の入り口の方に見つける。
その緑色の瞳を見て珍しい瞳だ、などと一瞬の思考をするがヤツの言葉を鵜呑みにするならば敵ではないだろう。
害来腫の声と蟲の蠢く音で聞こえなかったが、声をかけられた気がした。
“ビビってないか?”と。
「怖いわ……でも、ここで逃げてここがどうにかなってしまう方が怖いから」
聞こえなくてもいい。
別に答えようと思ったわけでもないが、言葉にすることで自分の気持ちを確かめる為に。
「だから、私もあなたにここの人達をやらせはしないわ」
それは学園に入る時に制約された事を破るという決意にもなる。
今のこの装備では足手まといにしかならないなら、戦える装備を呼び出せばいい。
菖蒲の霊力の流れが僅かに変わる。
否支中 活路 > 見えている。
少女の周りで霊力が渦巻いているのが、妖精眼にはっきり映る。
だから、それでいい。
現れた異形に体がざわつく。少女の刀も、疾く走るだろう。
時間はかけない。先ほど仕舞った呪符がいつのまにか指に挟まっている。
四枚。
神道神楽“高速神化”呪符圧縮起動。
一段、流水のごとく。
二段、神風のごとく。
三段、雷霆のごとく。
破段、星光のごとく。
“天有惡神、名曰天津甕星、亦名天香香背男。請先誅此神、然後下撥葦原中國。”
害来腫 > キィィイイイイイイイイイイイイ!!!!!!
【蜘蛛が吼える…というより本来発声器官の無いものが無理やり大声を上げたような】
【ガラスを引っかいたような奇声を上げ、その足の一つで】
【二人まとめて薙ぎ払おうとする】
ィィイイイイイイイ!!!
【再び奇声を上げながら体を屈める、すると】
【膿のような液体を激しく噴出させながら、胴の中から更に胴を出し、蛇腹の如く糸疣を伸ばすと】
【蠍の尾の様に伸びた糸疣から、粘着性の糸を吹き出そうと狙いを定める】
【どうやらその巨体もだが、搦め手を使う程度の知能も持ち合わせているようだ】
遠条寺菖蒲 > 刀を手に前へと翳す。
掲げるように両手で前へ、ゆっくりのようで決められた動作のように素早く丁寧に。
その瞳は今は閉じられて、
蜘蛛の足が迫る!
当たれば薙ぎ払われ無事ではすまないだろう凶悪な一撃に思える!
ゆっくりとその瞳は開けられ、青い瞳が揺らめいて
「"いざ我がともに"」
菖蒲の口から漏れるは唄うかのような声、それは祝詞であった。
これまでのどんな言葉よりもハッキリと聞こえる阻害されることなく響くであれろう唄う声。
どこかともなく現れる青白い糸の閃光。
それが菖蒲を守る。
「"神の坂まで"」
そして光が菖蒲を包み込む。
否支中 活路 > 弾けた。
魂を呼び、神の座すところとするが神楽の意。
ならば懸かったその身は天に輝く逆神。
高速神化――――破段“ミカボシ”。
光の尾さえ曳きそうなほどの速度で、蜘蛛脚のなぎ払いを滑ってくぐる。
床に踏みとどまり、軽く手首を回すのは、まだ菖蒲に脚が届く前のことだ。
更に向きを変え、瞬速で跳ぶのは胴から伸びる糸疣。
遠条寺菖蒲 > 今此処に人ならざる者と戦う為に、遠条寺家の切り札が召喚される。
それは着物のようで幾重もの羽織を重ねた格好であった。
「正装――…」
前に掲げていた刀を横に払い包んでいた光の衣が弾ける
「『オホナオミ』!」
赫と蒼を主体とした着物姿の菖蒲が姿を顕す。
頭を振って着物中に入っていた長い黒髪が外へと姿を見せる。
背中には黄金の光と共に菖蒲の背丈よりも大きな野太刀が顕現する。
退魔の正装。神力を借り纏う遠条寺家の最終兵装。
菖蒲は害来腫へと顔を向ける。
害来腫 > な、何だありゃあ…
【魔力を鎧や衣状に纏わせて使う術自体は、男の知識にもあるし】
【実際に見た事もあった、だが目の前のそれはそんなものとは比べ物にならないほど強力であり】
ありえねえ…ただの術で、ここまで神性を得るだなんて…!
【目の前の二人の力だけではない…『霊格』とでも言うべきか】
【霊的な存在としての格が、力を放った途端、段違いに高まったのだ】
【呼び出した蟲は、攻撃手段こそ原始的なものの、腐っても神の眷属という事もあり】
【傷つけるにはその霊格と同格以上の格を必要とし】
【仮にそれを魔力だけで補うとすれば、多大な料の力を消費する…】
【男としては、二人に蟲の防御力にものを言わせた消耗戦に持ち込み、餌食にするつもりであった、が】
やべえ…!
【同等以上の霊格を備えた二人にとって、最早目の前の蟲はただやや硬いだけの巨大な怪物に過ぎない】
く…っそぉ…!何で、何でいつもこうなる…!!何なんだよ…!!
【蟲の方も、その実力差に恐慌状態に陥ったのか、破れかぶれ気味に糸を吐くと】
【勢いをつけむちゃくちゃに足を振り回す、槍の穂先のような鋭い足が二人へ】
【襲い掛かるが、訓練も何もされて無いそれは、力はともかく技術など無いに等しく】
【容易く受け流す事も、防ぐ事もできるだろう】
否支中 活路 > 菖蒲が正装を纏った頃には、巨大蜘蛛の周囲を三往復し終えている。
蜘蛛の脚を抜けて、最後に立ったのは菖蒲の後ろ。
背に背を向ける形。
焦ったブラッタに呼応するような蜘蛛の連撃も、菖蒲を前に立たせたまま首をコキリと鳴らす。
「斬れよ」
何を、とは言わなかった。
蜘蛛らの事だけでは、なかった。
そしてその言葉と同時に、巨大蜘蛛の周囲へ魔法陣が浮かぶ。
数は八。それぞれ別々の方向から蜘蛛へと面を向けている。
あとは一瞬。
八つの魔法陣全てから、蜘蛛の体に巻きつかんとするのは鞭のごとき巨大な茨。
遠条寺菖蒲 > 目の前の男は何者か、いやそれは今はどうでもいいことだ。
“害来腫”に敵対する手合いなら好都合と思えた。
そして、その速度に再び脅威する。
あっという間に駆け抜け仕掛けた――戦い慣れている。
それだけで理解できる。
正装を纏った事で身体強化魔術よりも強化された動体視力でも追い切れないその速度は異常と言えた。
敵でないことが幸いだと思える。
数年ぶりの正装は以前にも増して力を高めている気がする。それがこの『オホナオミ』のチカラが増したのか菖蒲のチカラが増したのかは分からない。
「"真拆ノ葛"(マサキノカヅラ)」
男のやろうとしていることを察して唄をうたう。
蒼い糸のような物が菖蒲の背後より伸びる。
これは髪の毛を媒介とすることでその威力を増す拘束術。
男のやろうとしていることを補助するかのようにその霊糸を動かす。
害来腫 > キィィイイイイイイイイイイイイイイ!!!!
【茨と髪の二重の捕縛が、完全に巨大蜘蛛を絡め取る】
【余りの束縛の強さ故か、その硬い甲殻に皹が入り始め】
【巨大雲が苦痛に身を捩る】
くそ、こうなりゃ生きてるらしい西園寺だk…
【言葉を紡ぐより早く、自身に起きる異変に気づく】
【体が動かない…】
ま、まさか…!
【見れば、菖蒲の髪は蜘蛛を通り抜け、自身の周りにも漂っている…】
ま、待っ…
【咄嗟二口から出た命乞いは、果たして二人に届いたかどうか】
【男にそれを知る術は無い】
遠条寺菖蒲 > その名前がまた害来腫から聞こえた時、菖蒲は許せはしないと思った。
手から霧切を離し、床へと落ちる。
そして静かに唄う。
「"遊べ、"」
その言霊は、恐らく魔に属するもの携わるもの全てに警鐘を鳴らさせることだろう。
「"太刀佩き"」
一人でに右肩後に背負われていた野太刀が動き、その柄が降りてくる。
その柄を両手で握り、構える。
霊刀である野太刀の霊力が今、オホナオミによって神力へと変換され鞘に収まりきらない力は紫電のように迸る。
――野太刀「祇斬」の封印が解かれる。
否支中 活路 > 一つ風が起きて、高速神化が解除される。
一段ずつ下がっていく本来の使用と違い、破段は時間が切れれば即座に停止する。
だがもはや必要ない。
菖蒲のうしろで背を向けたまま、肩越しに蜘蛛を――ブラッタを振り返る。
破段反動の激痛にも構わず、ニイィ……と狂神の笑み。
ほとばしる霊力の奔流越しに、緑光を失った瞳が見ている。
遠条寺菖蒲 > 正装『オホナオミ』により強化された身体能力は魔術のそれとは桁が違う。
「"拆き祓ひ"」
その瞬間、鞘の上面に付いていた拘束具が開放され、抜刀される――!
「――"禊祓"!!」
“害来腫”の左肩から右脇腹に抜けるようにしてその霊刀――否、神刀がその身を切り裂く!
壁も糸も遮る全てを、意に介さずに切り裂く――!
害来腫 > く、うぅ…!!!
【完全に逃れられない状況に陥る…活路の笑みに怒りが湧き上がるが】
【直ぐに視線は菖蒲に戻る】
う、ぉぉおおおおおおおお!!!!
【悲鳴にも似た雄叫びをあげながら、その体を神力を借りた一撃が通過する】
【そして一瞬の静寂の後、巨大蜘蛛と…その背後にいた男の体がずるりとスライドすると】
【巨大蜘蛛は倒れ、男もまた、崩れた体の擬態が解け、害虫の死体の塊へと変化した】
【あの時のように不意打ちをしてくるような気配もない】
遠条寺菖蒲 > 「…………」
斬った後に僅かに距離を離して、脇構えで様子を伺った。
動く様子はない。
前回のこともあり、菖蒲は疑い無言で睨む。
否支中 活路 > 菖蒲にぶつからないようにか、振り返りながら少し右にずれる。
ふーーっと息を吐いて崩れ落ちた蜘蛛の体を見た。
「アトラク=ナクアの眷属か……まあ、ええわ」
ぞんざいに一歩踏み出す
遠条寺菖蒲 > 男のその言葉はよく分からないが、これはどうなったのか。
「……その、完全に倒せたのでしょうか?」
相手の事を伺うようにして先程とは別人のような声色で恐る恐る男に問う。
害来腫 > 【切られた巨大蜘蛛は、暫くすると音を立ててどろどろに溶け出し】
【やがて蛍光色の不気味な液体になり、すぐに蒸発して消えた】
【蟲の死体の方も、蜘蛛が暴れた際にできた穴からの風で吹き飛ばされたのか】
【蟲の体液の跡以外は特に何も見当たらない】
【探知したところで、周辺一体に引っかかるような気配も無いだろう】
否支中 活路 > 「できてへんやろうな」
あっさりと、男は言いながら両断された屍に歩み寄る。
蒸発していく液体へと手をかざしながら
「あいつの“害来腫(ハームフルハート)”は汎用性ならピカイチや。前はまさか体まで作れる思わんかったしな。
あいつが逃げよ思たらどこまででも逃げよるよ。
俺も慌てて迎え撃ちに来ただけやし……」
だが狙いは潰えた。
最後の贄となるべき少女はここに、刃とともに立っている。
「せやから、総てを識るやつが仕掛ける絶殺の領域やないとあかんやろ」
遠条寺菖蒲 > 男の言葉を聞きながら、周囲に気を回すが気配など感じない。
既にこの場にはいないようだ。
「そう、ですか……」
そう答えて、その刀と身に纏っていた正装・『オホナオミ』が光の粒子となって消える。
病院から支給された簡素な寝間着姿の菖蒲へとその姿を戻し、膝をつく。
「では、トドメはあなたか……そうですね、きっと『あの人』がとるのでしょうか」
思った事を口にしながら、
菖蒲は自分でも今気がついたが、膝が震えていた。
ご案内:「学園区病院」から害来腫さんが去りました。<補足:学生服・黒い髪・隈のある目>
否支中 活路 > 「俺はちっと義理があっただけや……それにジブンはもう道を拓いとるみたいやしな。来るまでもあらへんかった」
かざしていた右手を引っこめ、振り返る。
膝をついた菖蒲に手を貸とうとする素振りさえ見せず、そのまま手近な窓を開く。
「綺麗なもんやったで、ソードキル。
寝直しぃや。俺は一応後だけ探してみるわ」
やらんでええことやろうが、と付け足して、窓から身を乗り出す。
否支中 活路 > 魔術で落下の衝撃を抑えるのだろう。
病院への乱入者は、そのまま飛び降りて夜の闇に消えていった。
ご案内:「学園区病院」から否支中 活路さんが去りました。<補足:公安委員会機密監視対象「破門の男」>
遠条寺菖蒲 > 「あなたこそ見事なものでした」
そう言って窓から身を乗り出し今にもとんでいきそうな包帯だらけの今宵の戦友に言葉を投げた。
どこか晴やかな笑顔を向けながら。
遠条寺菖蒲 > 一人になった病室で大きく位置を吐き捨てる。
「はぁ……疲れた……」
荒れ果てた病室を見て笑う。
視界に捉えられないような神速とでも言うべき速度で動いたり蜘蛛が暴れたり天井と壁を豆腐を斬るかのように切り裂いて……
「こんなところじゃ流石に寝る気にはなれないよ……」
そう言ってため息一つついて笑う。
遠条寺菖蒲 > 足の震えはなかなか収まらない。
一段落した安堵からか後遺症とは別に身体にうまく力が入らなかった。
「怖かった……」
そう、怖かった。
けれど、
「一人じゃ、無理だったけど……」
あの包帯の男の人がいなければ危なかったけれど、
「生き残れた」
先ずは今、自分の命があることに喜ぼうと思った。
遠条寺菖蒲 > そして、ここには居ない彼に
「すみません……」
それだけ告げたいと思った。
知ってしまったから、見てみぬふりなんて私にはもう出来ない。
……ああ、それと学園との制約を破ってしまったのだけれど、どうなってしまうのだろうか。
部屋の隅まで飛ばされていた小太刀の鞘と床に転がる霧切を回収し、抱くようにして部屋の壁を背に目を閉じる。
荒れ果てた病室だけれど、今はなんだかゆっくり寝れる気がした。
ご案内:「学園区病院」から遠条寺菖蒲さんが去りました。<補足:長い黒髪を下ろした青い瞳の女生徒。生徒会幹部候補生>