2022/08/26 のログ
ご案内:「図書館 閲覧室」に北上 芹香さんが現れました。<補足:白のカットソー/チェックのスカート/ロングブーツ(乱入歓迎)>
北上 芹香 >
夏が終わる。
夏が終わるとどうなる?
知らんのか。
飽きがくる。(秋が来る)
「って図書館の名作漫画読んでる場合じゃねぇ」
置いてある漫画から妙にSNSで擦られてるコマを確認していたがすぐに閉じる。
今、目の前に置かれている問題を整理する。
一つは、私のライブハウス『クレスニク』で麝香廬山さんがめちゃくちゃ上手いお歌を歌っていたことだ。
これに関しては私にはどうしようもない。
そもそも私の歌はバトルするものじゃない。
私とソングバトルで勝負だ、という世界観にも生きてない。
もう一つ………こっちは深刻だ。
角鹿建悟先輩に自由がない、と啖呵を切ったこと。
彼の生き方は真っ直ぐで。それでいてところどころ歪んでいる。
だから、彼に自由さを伝える歌を歌うと一方的に告げたのだけど。
今は夏休みの宿題とその歌作りに同時に取り組んでる。
取り組んでない。
漫画読んでた。
北上 芹香 >
まず宿題から。現代国語。
近年、様々な分野で使われるようになった言葉『レジリエンス』という概念を解釈し、
現代的意義を論じる次の文章を読んで後の問1~6に答えよ。
……要するにサステナビリティの洒落臭い言い換えなんだろう。
揺れる船の上で一杯のコップの水をいかにこぼさずに運ぶか。
そんな文章が洒落臭く書いてある。あー洒落臭い。
問1、この場合の波に対するレジリエンスとは何を意味するか。
現国の読解力問題にカタカナ語を使うんじゃねぇー。
あ、今の社会に対する不満で一曲歌が書けそう。
でもこれは建悟先輩には響かない気がする……
北上 芹香 >
現代国語は意識高い系ビジネス用語に侵食されているというある種の諧謔か……?
ワナビのシンガーソングライターに諧謔バトルで勝てると思っているのか………?
そして現代文は読解力、語彙力、文法力、解答力の四つのパワーでねじ伏せられる。
この現代文も私の読解力と怪力(ないです)で服従させてくれる。
問2.以上の文章を踏まえてレジリエンスとソーシャルワークの関係性について答えよ。
だから!! これは!! 英語の問題だろ!!
文意がどうこうの前に!!
レジリエンスって言葉には初期の適度な失敗が包含されてるからー……ええと…
A.患者の意思決定を重要視したソーシャルワーク。
いやこれはこれでケアマネ資格試験の問題だろ!!
何の宿題だあの教師!?
北上 芹香 >
頭から煙を出してデスクに突っ伏した。
ちょっと半端になったけどこの宿題な後回しにしよう。
………やりたいことはあるのに。
やらなきゃいけないことの洪水で動けない日々。
あ、今の良いかも!!
上体を起こして歌詞を書き留めるメモ帳にすぐに書きなぐる。
ご案内:「図書館 閲覧室」に紅李華さんが現れました。<補足:袖の余った白衣。伸ばしっぱなしの髪、左右に大きなお団子。頭に咲く大きな李の華>
紅李華 >
「好一朵茉莉花――?」
のんびりご本をよもーとおもったら、なんだかたおれてる子がいる?
「你好ー?
せりかー、どしたの?」
ほけんのこーぎで見た子だー!
なにかこまったこととかあったのかなー?
――突っ伏している少女の隣に、より幼くすらみえる少女が座る。
本を置いて、少女の様子を窺うように声を掛けたのだ。
恐らく、講義や学内で何度か見かけた程度には個性的な外見が、記憶の隅くらいには残っているだろう。
北上 芹香 >
キャンディポップな声をかけられて頭を上げると。
保健の時のちびっ子せんせーだった。
ああ、確か……
「ニイハオ、ホンせんせー」
死にそうな顔で手を上げて上体を起こす。
「いやぁ……学校の宿題と人生の宿題に悩まされてる感じで…」
「せんせーはどうして図書館に?」
ダボダボ白衣かぁ。強烈な属性を持っている。
もし欠員が出たらバンドメンバーに誘いたいくらい。
紅李華 >
「にーはおー!
嗯、せんせーは、のんびりどくしょー」
きょうのもくひょーは、Aの書棚一つぶん。
「うー、しゅくだい?
なにかわからないとこあるのー?
せんせーおしえる?」
せりか、かおいろわるい!
あとでよく効く漢方ちょーごーしてあげようかな。
――顔をあげれば、横に置かれた本は、軽く書棚の一段分くらいが積み上げられている。
少女、ホン先生こと紅李華は、少女こと、北上芹香生徒を心配そうに覗くのだった。
北上 芹香 >
「のんびりどくしょなら仕方ないスな……」
信じられるか? この人年上なんだぜ……
世界って神秘に満ち溢れてるよなぁ!!
希望の光が差してるよなぁ!!
「えー、じゃあ教えて教えてこの辺教えてこの辺この辺教えて教えて」
人を舐め腐った現代文の宿題を見せる。
「あと一緒に歌詞考えて、ガールズバンドの」
人を舐め腐った態度で人生の宿題を押し付ける。
紅李華 >
「んえー、どこどこー?」
おー、げんだいぶん!
本人もぜっさんべんきょーちゅー!
「oh...」
あれー、これ、にほんごなのかな?
うー、えーごにしても変だよー。
ふつーのえーごとどいつごとらてんごならわかるのに。
「嗯――た、たぶん、これと、これとこれと、これにこれ、これかなぁ。
こたえのりゆーは、じぶんでかんがえてねー?」
ある學姐におしえてもらったから、ちょっとじしんがある!
こたえからぎゃくさんするのも、ちゃんとおべんきょーになるもんね。
「んえ、がーるずばんど?」
って、なんだろう?
おんなのこたちでなにかするのかな?
北上 芹香 >
「今、せんせーOh……って言いませんでしたか」
いや、わかる。
この宿題を出した先生は一度に色んなことを教えようとしてメチャクチャな授業をする。
そういうタイプの人だ。私にはわかる。
「Gracias、ホンせんせーっ」
中国人っぽいせんせーにスペイン語でお礼。
これが国際社会です。
「ガールズバンドというのは、女の子だけでやるバンド活動なんですよ」
「あ、私は#迷走中のボーカル兼ギターなんですが」
「建悟先輩に自由の良さを伝えるために新曲を考えている……というところで」
「煮詰まってまーす………」
浜辺に打ち上げられた鯨のような目でせんせーに事情を説明した。
紅李華 >
「おー?」
にっこり。
「没有没有。
でも、ちゃんとかんがえるんだよー?」
でも、なんですぺいんごなんだろ?
「ほえー。
嗯、おんがく?
おうた?
せりかが、おうたつくるの?」
すごい!
そんなことできるんだぁ。
――きらきらと、好奇心に満ちた目で、濁った魚の目をした少女を真っ向から見つめ返した。
北上 芹香 >
「おー」
真似してみる。なんか元気が出る。無闇に。
「大丈夫です……大丈夫…大丈夫…だって大丈夫だから…大丈夫だもの………」
大丈夫という言葉は連呼すると大丈夫に見えない。
これって豆知識になりませんか?
「そう、おうたを作るんです」
「ホンせんせーにとって自由ってなんですか?」
「そういうのを聞かせてくれたらそれをもとにニチャニチャ青臭い歌を錬成しますので」
粘着質の願望を生醤油レベルの濃さで教師にぶつける。
これが国際社会です。
紅李華 >
「おー!
おー!」
せりか、ちょっとげんきになったかな?
「没事吧?
是吗?」
ぜんぜんだいじょーぶじゃなさそう。
あたまなでてあげよー。
「おうた、厉害!」
すごいなー、おうたつくれるんだぁ。
せりか、かっこいーなー。
「んうー、嗯、じゆー――んー?
――いま?」
いま、げんざい、なう?
「嗯、けんきゅーしてー、こーぎしてー、ごほんよんでー、おひさまあびてー、哥哥とあそんで――。
んー、ん、いま! じゆー!」
すきなことできるもん!
――両腕をぶんぶんと振って、全身で今が楽しいことをアピールしている。
北上 芹香 >
「おー、おーおーおおっおー、おー?」
意思疎通を試みた。
このせんせーは元気を分けてくれるけど、減らないのだろうか。
頭を撫でられるとフヘヘと気持ち悪い笑顔を浮かべて。
「あ、もうちょっと右」
と、美容室で痒いところを聞かれたムーブでつい誤魔化してしまうのです。
「自由は楽しいですぅ?」
「兄弟と仲が良いってことカナ………」
よくわからないけど。
建悟先輩を縛る何かもよくわからないのだ。
普遍的な……毎日の楽しさと自由の関係性を歌うのは良いことかも知れない。
「ありがとうございます、せんせー」
紅李華 >
「おー?
おーおー、おおー!」
おー!
「みぎ?
こっち?
んー――はぐー!」
あたまをぎゅーってしちゃおー!
ぎゅーってして、よしよーししちゃおー。
「じゆー、たのしーよ?
对!
哥哥、おにーちゃん?
だいすき!」
えへへー。
「没有!
せりか、すこしげんきになった?
ちゃんとごはんたべてる?」
――優しくだきしめて、頭を撫でながら気遣うように。
大丈夫そうだったら、そっと放して、にっこり笑うだろう。
北上 芹香 >
「おー、おーおおう、おうおうおおあうあああ」
苦悶の表情で喉をかきむしるジェスチャー。
これはおーおー語で『風土病にやられた』という意味なんですねぇ。
「………せんせー」
「私が女子だったら惚れてますよ……」
謎の理論で頭を抱きしめるちびっ子せんせーの背中をぽんぽんと二回叩く。
「お兄ちゃんか……一人っ子にはわからないけど」
「きっと良いものなんだろうなぁ………」
抱きしめられると、せんせーの温もりと甘い香りに包まれて。
こういう状態でも、自由ってあるんだよな…とか。
そんなことを考えながら答える。
「ちゃんと食べてますよ、百均の鮭フレークと白いご飯」
と伝えてから離れて。
「参考になりました、歌詞作りと宿題は部屋に戻ってから続きに取り組むことにします」
「今度、お礼させてくださいホンせんせー」
その小さな手に向けて人差し指をクイクイと向けて。
相手と自分の拳をコツ、とぶつけた。
「それでは」
と言って去っていく。
自由と優しさ。その二つについて考えながら。
紅李華 >
「んえ?
せりか、おんなのこだよ?」
んふー、せりかいーにおい!
「是吗!?
せりか、もっとちゃんとたべる!
こんど、せんせーがおべんと持ってきてあげる!」
哥哥に、おべんと、もいっこつくってもらわなきゃ!
「没有没有!
せりか、加油加油!」
こつん、なんだかうれしくなる!
えへへ、せんせーらしーことできたかなぁ?
――去っていく生徒の背中を、袖余りの両手をぶんぶん振って見送る。
それから、李華は自分の読書を、ご機嫌にはじめるのだった。
ご案内:「図書館 閲覧室」から北上 芹香さんが去りました。<補足:白のカットソー/チェックのスカート/ロングブーツ(乱入歓迎)>
ご案内:「図書館 閲覧室」から紅李華さんが去りました。<補足:袖の余った白衣。伸ばしっぱなしの髪、左右に大きなお団子。頭に咲く大きな李の華>