2022/10/19 のログ
ご案内:「異邦人街」にパラドックスさんが現れました。<補足:ノースリブジャケットとスキンヘッドが特徴的な男。目が死んでいる。>
ご案内:「異邦人街」にマルレーネさんが現れました。<補足:165cm/金髪碧眼修道服>
マルレーネ > 「はい、はい、すみません………」
異邦人街には様々な施設がある。まるで違う文化の料理を再現した小料理屋やら、何に使うのか分からない祭具を売る商店。逆にこちらの世界の文化を中心とした書店………。
そういった中心街から少し離れた場所に、その修道院はあった。
もはや祈りの届かぬ神に祈りを捧げ続ける小さな修道院。
元々はこちらの世界の宗教のために作られたものではあるが。
その中央でぺちぺちと怒られているのが、ここの所有者であるシスター、マルレーネである。
異世界の冒険者でもあった彼女は、こちらの世界になんだかんだと馴染んできているわけだが。
マルレーネ > 「はい………、いえ、ハロウィンコーナー担当ということでなんとなく用意されたものを着てしまって……。
あ、はい、うっかりしていました………。」
百貨店のハロウィンコーナーで悪魔衣装を身に着けているところを。現地シスターに見つかって散々恥をかいた上でのお小言。
恥ずかしいやら情けないやら、中央で只管年配のシスターから小言を貰い続けているのであった。
パラドックス >
それはなんてことはない、他愛ない日常の一幕だったのだろう。
ちょっとした人生の谷。谷と言うには余りにも浅い。
そんなシスターの一幕をバン!と強く開かれた扉が最初の亀裂だったのだろう。
乱暴に開けられた扉の先には、スキンヘッドの長身の男。
やや細身であり、胡乱な双眸をした異質な男は、その場の注目を引くには充分だった。
「……ある種の"掃き溜め"のような場所でも神には縋る、か」
その場に置いて、紛れもない冒涜の言葉。
男には一切の信仰心を感じさせない。
一本に続く通路をゆっくり、ゆっくりとした足取りで踏みしめる。
「お前はこんな場所でさえ、未だ信仰を捨てないのか?」
投げかける言葉の剛速球。
全員の注目をよそに、シスター・マルレーネに男は問う。
マルレーネ > 扉は自分のDIYである。正直自信が無いから、激しい音にビクッ、と身体を揺らして。
「わ、っと。 扉あんまり丈夫じゃない……、ので……。」
言葉が止まる。
彼女は、穏やかそうな見た目とは裏腹に、ギリギリの戦いを生き延びてきた人間である。
同時期に冒険者となったシスターの集団は、3年を待たずして彼女以外全滅した。
唯一人、茫洋として果てのない草原を歩き続けてきた女だ。
「………シスター。アレン。下がってください。」
………だからこそ、自然と前に出た。
彼女は、信仰心が無い人を責めることは無い。
少しだけ困った顔を向けてから。
「それが私の在り方故。このような場所に何か御用でしょうか。」
落ち着いた口調で、そう返した。
パラドックス >
ふ、と返答を鼻で笑い飛ばした。
「虚言だな」
根拠はないが、何処か確信めいた物言いだった。
<クォンタムドライバー……!>
シスターの問いかけには、無機質な電子音が代わりのように答えた。
気づけば男の腰には、デジタル時計を模したベルトが装着されていた。
歩みを止める事は無く、男の周囲には年号めいたホログラムが周囲を飛び交う。
「安心しろ。その幻ごと、お前らを葬り去る。……私の名はパラドックス」
「この時代の"破壊者"だ。────変身」
<クォンタムタイム!>
全てのホログラムが砂となり、全てを巻き上げる小竜巻が男を包む。
纏わりつく砂を振り払い、中から現れたのは全身黒いケーブルを巻き付けたかのような怪人。
無数のデジタル数字が全身に浮かび上がり、瞳の思わしき赤は「0:0」と記されている。
近未来の融合体。それは、"人型の怪人"ともいうべき風体だった。
<クォンタムウィズパラドクス……!>
時代を破壊する怪物の名。
全身に絡みつくケーブルから蒼いエネルギーが右拳に集まり、怪人が大きく飛び上がる。
『フン!』
破壊のエネルギーを纏った拳が三人目掛けて叩きつけられる。
叩きつけると同時に小規模の爆発を起こす凶拳。
直撃すればただでは済まない────。
マルレーネ > 「かもしれません。」
少しだけ目を細めて、そう返した。
もう祈りは届かない。神はいない。それを最もよく分かっているのは彼女自身であり。
その上で、もう一度。
「シスター、アレン。……まっすぐ後ろの扉から出るんです。 早く。」
彼女は待たない。
電子音の時点で、目線を離さずに声だけを挙げる。相手の動作が終わるまで待つようなことは一切しない。
「早く!!」
次の言葉は先ほどとは真逆。怒りをぶつけるような声。
相手の姿が異形へと変わっていくことにも、驚きを見せない。
「走って、出来るだけ離れ……。っ……!」
相手の生み出したエネルギーの塊にも、特に動じることは無い。
三つ首の龍が吐き出した火球とイメージが重なり、バックステップとフットワークで回避する。
横には避けられない。あくまでも後ろで逃げ出すシスターと少年の壁になることを選択して、ただまっすぐに下がりながら。激しい音と共に長椅子が吹き飛んで、床に大穴が開く。
「………時代を破壊するならば、ここではないような気がしますが?
ここは"時代遅れ"もいいところですが。」
声をかける。周囲にせわしなく視線を向けながら、意図をもって言葉を紡ぎ。
パラドックス >
標的を砕かずとも床を砕いた青い爆炎の中、悠然と立ち上がる鉄の怪人。
黒煙に揺らぐ姿の中、血のように赤い双眸が怪しく光る。
『この島にあるだけで、充分すぎる理由だ』
流れに流され、流浪者が身を寄せ合う時代の掃き溜め。
故に身を寄せ合う不自然な時針の流れでさえ
常世と言う時計盤にあればそれは怪人のとっての"敵"だ。
健気にも自分以外のものを庇い、注意を引こうとするシスターマルレーネ。
<クォンタムシューター!>
だが、怪人は逐一選り好みなどしない。
蒼い光と共に握られた、歪なライフル。
無作法に垂れている不気味なケーブルが刻を刻むように怪しく揺れる。
『誰一人逃がすつもりはない。……ここで殺す』
機械的に、無機質に、向けられた無骨な銃口。
躊躇いも無く引かれたトリガーにより、銃口から放たれる蒼い閃光。
万物を貫き、焼き切る科学の結晶蒼いレーザー。
強烈な熱線が二発、逃げる二人の背中目掛けて放たれる!
マルレーネ > ああ、なるほど。彼は戦なのか。
自分の中で納得を得れば、彼女は口を閉じた。
その場所にいた罪で殺される人を、数多に見てきたが故の納得。
「………さあ、どうでしょうか。」
固定していなくてよかった。教会の長椅子を握り締める。
本来ならば武器にしても防具にしても適さない、3人から4人は座ることができる木製のそれを握り締めた。
彼女の能力は聖属性の付与。言うなれば、物質強化のエンチャントだ。
金属には通りが少し悪いが、身体に触れてさえいれば可能。
それ自身が光り輝く聖具となり、木の枝が鋼となり、布が鉄板の強さを得られる。
当然、長椅子自体がぼう、と全て光り輝いて………それが、思いっきりライフルを構えた男にぶん投げられる。射撃する前であれば僥倖。射撃をした後だとしても、迫りくる長椅子は貫かれない限りは盾になろう。
唸りを上げて投げられたそれは、明確な殺意すらあるような攻撃。射線を遮りながら動きを止めるには、もう先に"殺す"しかない。
地面を蹴って、前へ。
腹をくくる速度に関しては、やはり彼女は現代とは違う世界に住まう者。長椅子の向こう側には、聖職者とは思えない殺意の瞳。
パラドックス >
既に放たれた熱線は本来であれば容易に長椅子を貫いていたはずだった。
だが、その見た目とは裏腹にレーザーと干渉し合い爆発を起こし木っ端微塵だ。
鋼さえ焼き切る熱が、たかが長椅子に相殺された。
材質の問題ではない。アーマーの瞳からリアルタイムに送られるデータは
あの時、あの気に食わない赤女と同じ力を感知する。"魔力"だ。
『魔術か……』
己のいた場所では聞く事の無い文字通りのまぼろしだ。
あの聖職者は魔術を使う。ただものではないと思った矢先
なんと、木っ端と爆炎を搔い潜って自ら"前"に出てくるのだ。
『……面白い』
<スラッシュ!>
か弱いシスターとは程遠い殺意を、死線をくぐったものの"目"だ。
てっきり後ろの連中と逃げると思ったが、予想外だ。
だが、関係ない。殺す順番が前後するだけの話。
ライフルの刀身が青白い光に包まれ、瞬く間にレーザーブレードに早変わり。
そのまま迫りくるシスター目掛け、素早く刀身を突き出した!
無防備に当たればその身を焼き、その身を二枚に割られることになる────!
マルレーネ > レーザーブレード。
彼女は当然それが何かを知ることは無い。
「………っつ……!」
それでも、気配は感じ取れる。あれはただ殺意だけを抽出したような武器である。
チェインメイルを身に着けてこなかったことへの後悔を忘れてしまうほどに。
地面に足を叩きつけるようにしてブレーキをかける。みしみしと木の板が悲鳴を上げて、足首も同じように軋む。
全力疾走からの急ブレーキをかけながら、相手の刺突を身を翻してかわすが。
修道服の濃紺の服が裂けて、左肩が僅かに裂けて血が散って。
「………ああ、もうっ。」
相手の剣の間合いのギリギリ外にまで。
後ろに目を向ければ噛みつける、そんな場所に留まる。
有利になることは無い。プレッシャーに息が詰まりそうになる。
それでも、二人の姿が見えなくなるまで立ちはだかる心づもり。
パラドックス >
一歩遅れたがそれでも紙一重で一撃を躱した。
一撃カウンターを見舞うと思ってはいたが飽くまで防戦。
彼女が向ける気は自分より更に向こう側。即ち背後。
『そこまでして護りたいか。それも信仰心の成すものか?』
<クォンタムバースト!スラッシュブレイク!!>
他者の為に身を犠牲にする心意気。
生憎それを、天晴と称賛する気兼ねは怪人にはない。
あるのは無慈悲に、無情に全てを破壊する鉄の心。
ライフルに垂れていたケーブルがベルトに直結し、電子音声が修道院に鳴り響く。
より一層、妖しく蒼く輝いた。
『────全て無意味だな。理想(マボロシ)の淵に沈め』
ならば此方は一切合切の暴力で全てを破壊する。
踏み止まるその場ごと、叩き斬る。
大きく振りかぶり横一線に振り払われるブレード。
間合いの外、だが放たれるのは文字通り"飛ぶ斬撃"。
三日月状となったレーザーがシスターマルレーネに迫りくる。
巨大なエネルギーの本流。
焼けて消えるか、真っ二つか。
その背中にある何もかもごと磨り潰してくれる……!
マルレーネ > 「さあ、どうしてでしょう。」
自分でも理解が及んでいない。本能というか、染みついた教義が身体を突き動かした。
ああ、もう。私だって逃げたいんですけど。
心中のボヤきが僅かに宙を舞ってひらひらと落ちる。
「………そ、れはちょっと。」
僅かに表情が引きつる。地面を蹴るまでもなく、視界一杯に広がる光がうなりを上げる。
思い切り近づいたせいで、手元に盾になるようなものはない。
そのエネルギーを体で受け止められると信じられるほど、馬鹿でもない。
「……伏せて…っ!!!」
叫ぶしかできなかった。自分は横っ飛びに伏せながら地面を転がってそれを避ける。
流石にこれ以上は、遠くまで行ってくれていることを祈るしかない。
パラドックス >
長椅子も建物も何もかもを薙ぎ払い、聖女の叫びさえ掻き消す"力"。
暴力である蒼い刃光は止まる事はなく少年とシスターの背中へと迫り
強烈な青白い閃光が爆炎となって響き渡った。
周囲の木っ端をまき散らし、暴風が荒れ狂うその中でさえ
<ショット!>
───────鳴り響く電子音声が、"暴力"は止まらないと知らせてくる。
『フン……』
罪なき無辜の民であっただろうとも怪人には関係ない。
この時代に足をつけるもの全てが敵だ。
ブレード部分が消え、再び本来のライフルの姿となったそれを
無造作に薙ぎ払うと同時に銃口から乱射される青白いエネルギー弾。
鉛の銃弾よりも熱く、全てを焼き爆ぜさせる暴力の乱射。
命だけではない。この建物も、象徴も何もかも。
全てを炎に包まんと放たれた。
マルレーネ > 「………。」
ああ、最悪を覚悟する。
あれだけ背後を確認していたはずの女は、振り向くことなく膝を立てて立ち上がる。
生死は分からない。届いたのか、怪我をしたのか、それともすでにこの世にいないのか。
何もかも分からないまま、一端思考から切り離す。
「………ああ。」
僅かに声が漏れた。燃え上がる修道院と崩れ落ちる建物。もう信仰の拠り所は何もなかったとはいえ、蹂躙される姿に胸は………
いや、痛まない。それどころではない。
エネルギーの奔流が壁を、地面を、天井をえぐり、崩落する建物。相対していたシスターはその弾丸とがれきを避けながら、必死に建物から逃げ出そうとする。
脆弱な、ほとんど手作りのような建物は見事に燃え上がり、崩れ落ちて。
パラドックス >
爆炎、轟音。
悲鳴すら上がりはしない。燃え盛る瓦礫が音を立てて崩れていき
シスターマルレーネが外に出た途端、全ての役目を終えたかのように完全に崩れ落ちた。
瓦礫と木っ端が風圧と舞い、シスターの髪と衣服を靡かせた。
その頬を撫でるのは、少年が来ていたであろう衣服の───────……。
『見ろ。コレがお前の信じた幻の結果だ』
そして、この悪夢は終わらない。
全てが崩れ落ちてなお、その中心に鉄の怪人は未だ悠然と立っている。
瓦礫を踏み躙り、炎を払い、尚も止まりはしない。
流石に大事になってきた為か、周辺も騒がしなっているが、怪人には関係ない。
此の赤い電光の双眸。それに映る全てを"破壊"するのだから。
『お前も終わらせてやろう。歴史の闇に消えるが良い……!』
銃口が、シスターへと向けられる。
間髪入れずに、トリガーに指が掛けられ、青白い閃光が煌めく────……。
マルレーネ > 「………私の選択の結果でしかありませんが。」
よいしょ、と立ち上がって、ぽん、ぽんと服の土を払う。
ふ、う……とゆっくりと息を吐き出す女。 元々、一人で生きてきた女だ。
ぐちゃぐちゃに焦り、慌て、泣きそうになる心を切り離して………深く濁った海の底のような青い瞳。
「………終わらせる、ですか。」
終わりたい願望を口にしそうになる自分を押し込んで。
燃え上がる建物、激しく抉れた地面を踏みしめながら、射撃を少しずつ避けていく。
弓矢より速いが、それでもすごい速度で距離を詰めてくる相手ではないからこそ。
「………………ああ、ああ、そうですね。」
地面を踏みしめ、相手の攻撃を避けながら。
沸々と。
「………そうですね。」
沸々。
「………終わらせるというのは、貴方のことですよね。」
目を見開いて、ぎ、っと………男を睨む。
怒りが明確に表情ににじむ。
許さない。無造作に、無慈悲に、その場にいる罪を語る人間を。存在を。
叫び出し、頭をかきむしりたくなるような怒りを胸の内で固めて、固めて。
へし折れた道路標識を両手で、ぐ、っと持ち上げる。
パラドックス >
放たれる蒼い光弾を避け迫りくるシスター。
意志は死んでいないが、その目はまるで写し身。
身をどれだけ傷つけ、苛まれようと、意志は潰えない。
奇妙なシンパシーが、そこには生まれていた。
『私を破壊すると言うならやってみると良い』
<スラッシュ!>
滲み湧き上がる聖女の怒声。
既に出鼻を挫かれ、一度は痛い目は見ている。侮りはしない。
己を"敵"として見定めた聖女の怒りを、その上を行く"意志"で磨り潰すのみ。
ライフルを覆う蒼刃、レーザーブレードを構え、互いの曇り硝子が相対。
『お前如きに、私は止められん……!』
最初に踏み込んだのは此方だ。
瓦礫を跳ね飛ばし、土煙を上げ一気に間合いを詰め
構えたレーザーブレードを脳天目掛けて振り下ろす!
マルレーネ > 「やります。」
端的な言葉が一つだけ。
彼女の能力は神へ思いが伝わっていると信じている………が。
実は"神"は介在しない。もしも介在するのならば、こちらの世界では使えないものなのだから。
神への思いが生み出す力。こうあるべきだ、こうするべきだ、やらなければならない……意志の力。
それは例え殺意であっても同じだから。
「ああ。」
道路標識が蛍光灯か何かのように光り輝く。
自分の強い思いを、殺意を自分で自覚して、少しだけ目を細めた。
「………主よ。しばらく見ないでくださいね。」
祈りの言葉と共に、そのレーザーブレードを振り下ろす腕へと、戦斧と化した光る標識が半円を描く。道路はその斧の通り道、バターのようにすぅ、と削れ抉れて。
刀身ではなく腕を押さえんとする動き。ずっしりとした標識とは思えない動きで対抗する。
パラドックス >
『フンッ!!』
けたたましい金属音と共に標識とレーザーブレードがつばぜり合う。
己の腕を狙った一撃をその刀身で受け止めた。飛び散り合う火花。
その強い振りに、怪人の足元が地面を抉り、その身が後退する。
『お前……やはりただの聖職者ではないな……?』
直に力を受け止めているからわかる。
その見た目に似合わない怪力。
明らかに此方の戦力を削ぎに来た戦い慣れ。
そして、それを実行できる戸惑いの無さ。
『とてもではないが、祈りなどと似合わないな……!』
両手を合わせる以前に、何かを手折る方が余程似合う。
聖職者の姿なぞ、それこそこのシスターにとっては"隠れ蓑"ではないかと思うほどだ。
そんな濁り切った目で、何を祈る。何が見える。
祈りを捧げる先でさえ、そんな"殺人者"に慈悲を向ける神などいるのだろうか。
最早、"見放されている"とさ考えないのか、と哀れみさえ感じる程だ。
だが、紛れもなく力は本物だ。
『クッ……!』
腕にのしかかる重圧。
クォンタムアーマーで強化された筋力が徐々に抑え込まれている。
マスクの裏に映る各種状態に、徐々に腕の負荷が増え始めている。
この女と、真正面から戦うのは得策ではない。
『……舐めるな!』
<ショット!>
バチバチと両腕に青白いエネルギーが迸り、一時的な出力上昇。
標識を跳ね上げると同時に後ろに飛びのき、即座に銃口から乱射される光弾の数々。
どれだけ力が強かろうと、距離を取れば問題ない。
周辺ごとまた焼き払う算段だが、焦りから出た行動は果たして──────?
マルレーネ > 「そうですね。ええ、そうです。」
似合わない、と言われてしまえば、それは肯定するしかない。
ただの聖職者でありたかったんですけどね。
その思いは口にすること無く、ぎり、ぎりと火花を散らし続けて。
ふー、ふーっ、と吐息。……頭に思い切り上った血を落ち着けながら、更に力を込める。
命を奪うことに関して躊躇が失せている。いつ頃から迷わなくなったのだろう。
「………!?」
乱射される光弾に、唇を噛む。同じ速度でついていくことはできない女。
目の前で殴り合ってくれる方が、よっぽど都合がよかった。
両腕を顔の前に交差させ、爆発と炎に思い切り包まれて、人のカタチが消し飛ぶほどの火力に包まれ………。
「………まだやりますか……?」
立ち上がる。金色に輝く修道服は、相手のエネルギーにも耐えて、破れもしていない。
服は耐えた。
身体が耐えられるわけもない。両腕で覆っていても顔はひりひりと火傷のようになり、がっちりとプレートのような服に守られていても、その衝撃は身体のところどころにヒビを入れるのは容易いエネルギー。
でも、余裕そうに立ち上がって見せる。空元気を前面に出す。
パラドックス >
破壊のエネルギーが前面を包み込み、聖女を、周囲を、何もかもを爆炎が包んだ。
燃え盛る道に、建物に、生命が焦げる匂い。全て終わりだ。
……そうは思ったが、やはりそう簡単にはいかないらしい。
驚きはしない。鉄仮面の奥からは、溜息が漏れた。
『……そうだろうな、倒れはしない。私も同じだ』
どれだけ濁ろうと、視線は常に前を見ている。
己のしている事がどれだけ途方もなく、愚かであることは誰よりも知っていく。
それでも"止まれない。止まる事は許されない"。
過ちも誤りも、何もかもを暴力で塗り潰すのを選んだのは紛れもなく自分の意志。
故に、手折る。確実に、今此処で。そうしなければ、この女は"危険"だ。
<クォンタムバースト!フィニッシュブレイク!!>
消えない闘志を何よりも雄弁に答える電子音声。
アーマーのエネルギーが右足に一極集中し、鋼の体躯が天高く飛び上がる。
太陽を背に、その場を一瞬の影が包み込み……。
『此れで終わりだ……ッ!!』
空がより青く、蒼く光が広がると同時に
流星の如く力が破壊となって聖女目掛けて空を切る。
エネルギーの本流。先程の攻撃の比ではない。
文字通り、全身全霊を掛けた"必殺技"。
全てを砕かんと迫る流星キックの風圧がけたたましく聖衣と金糸を乱れさせる────!
マルレーネ > 「ああ……。」
ふう、と吐息をついた。今の自分では力が足りない。
理解はしていたが、こうも届かないとは。
「別に倒れはしないわけではなくて。……倒れるほどの攻撃ではないだけのこと。」
強がる言葉は自然と口を突いて出る。
ただでさえ集中を途切れさせることができない上に、足は立つだけで精一杯。
背中を向けて走って逃げようとも、相手に射撃武器があることが分かった以上、背中から穴をあけられるだけ。
「………主よ。」
ここで出来る限り引き出しておけば、後は誰かが何とかするだろう。
祈りを捧げる。太陽の光が何かに遮られて影が彼女を覆う。
届かぬ祈りだ。そんなことは分かっている。
後はどう殉ずるかだ。
「…どこまで届くでしょうかね。」
茫洋と、まるで他人事のような言葉。
相手の攻撃に思い切り、戦斧を叩きつけて対抗して。
爆発が巻き起こる。
今度こそ防御しきれなかった女は、地面にバウンドすることもなく燃える建物へと叩きつけられ、その場に倒れ伏す。
衝撃で上の階のガラスが全て割れて女に降り注ぎ、じんわりと地面を血で染めていく。
パラドックス >
ぶつかり合う力と力。
つば競り合うエネルギーの本流が辺りに風圧を巻き起こし、派手な爆炎に包まれた。
聖女は暴風に撒かれ、不運ともいえる硝子の雨に撒かれ、辺りが血で染まっていく。
巻き上がる土煙の中、蒼い火花を立てながら鉄の巨人は立っていた。
爆発の中心にいたのだ。確かにアーマーにダメージは入ったが、倒れるまでは至らなかった。
『フゥゥゥゥ……!
よくぞ持った方だ、シスター』
装甲の隙間から溢れる蒸気。
未だに電流が迸るアーマーとベルトは最早稼働限界だったが、トドメを刺すには充分だった。
ぎこちなく、装甲が金切り音を上げてライフルの銃口が向く。
血に染まった聖女の体に向けられた冷徹の黒鉄。
銃口に徐々に蒼い光が収束していき、トリガーに指をかけ──────……。
パラドックス >
『ぬぅぅ……!?くっ……!』
衝撃。
装甲に弾ける衝撃と火花に怪人はよろめき、ついにレーザーが放たれる事は無かった。
聖女の危機を間一髪で助けたのは、遠距離からの攻撃だったか。
魔術か、武器か。何れにせよ"時間を掛けすぎた"。
未だ常世学園が体制を保てているのは、そこの秩序機構が優秀だという事だ。
この地において、彼等の目を掻い潜るなどそうは出来まい。
異邦人街の外れと言えど、充分すぎる事は起きていたのだから。
『……此処までか。命拾いをしたな、シスター』
<ファースト!>
倒れ伏した女に投げかける声。
生死はわからないが、彼女が本当に自分と同じであるならば
此処からも"立ち上がる"と見越しての発言だ。
怪人は肩を押さえながら、時間加速能力により即座に撤退する。
滅びをもたらす前に、自分が滅びては意味がない。
此の荒唐無稽な暴力は、決して"ヤケ"を起こしているわけではない証左に他ならない。
怪人が去った後程なくして、瓦礫の周りに救護に来た各種委員会の生徒が集まってくるだろう。
聖女の安否はかくも、冷鉄の進撃は決して止まる事は無い。
生命尽きる、その時まで。きっと───────……。
マルレーネ > 言葉が出なかった。思ったよりも意識はしっかりしているけれど。
見開いた眼に映る光景は右が赤くて左が白い。
赤いものは血だとわかって、白いものはしばらく分からなかったけれど。ああ、これは視界が全て白くなってきているんだ、とどこか冷静に考えられた。
そして、身体が動かないのも、折れた木が刺さっているからだと分かる。
ピンで留められてる自分を想像すると、なんだか無性にバカバカしくなる。
思考がぐるぐる取り留めも無く他のものと混ざり合ってまとまらないまま。
しっかりした意識は何かしらを予感する。
「………ああ。」
でも立つべきだ。立つべきなんだろうな。
でも立ちたくないなあ。
小さなため息が漏れた。次に立ったら、おそらく楽には死ねまい。
このまま眠るように目を閉じた方がきっと楽だけど。
でも、立っちゃうんだろうなあ。自分の行動に嘆息する。
いつもよりも俯瞰で自分を見ている気がする。
「……よ、ぃ、しょ……」
硝子の中、身体を動かす。深紅に染まった木を引き抜きながら、ガラス片がぱらぱらと頭から流れ落ち。
………そこで、人が来たことに気が付く。
目の前から"相手"がいなくなっていたからだ。ああ、よかった。
もう立ち上がるのしんどいんですよね。
修道女はゆっくりと吐息を吐き出して。
「……逃げられましたね。」
一言だけ強がって、意識を手放した。水たまりのような深紅の中に髪を浸して。
ご案内:「異邦人街」からパラドックスさんが去りました。<補足:ノースリブジャケットとスキンヘッドが特徴的な男。目が死んでいる。>
ご案内:「異邦人街」からマルレーネさんが去りました。<補足:165cm/金髪碧眼修道服>
ご案内:「異邦人街」に安綱 朱鷺子さんが現れました。<補足:サイズ大きめの赤い制服 身の丈に合わない長さの飾り太刀>
安綱 朱鷺子 >
毀れた聖堂、今や見る陰もなし古刹にて、しゃがみこんで手を合わせる。
もう犠牲者は遺体は運ばれたよう。
それを看取った神さんに、宗派は違うけどなむ、なむ……
「きっときっと怖かったでしょうに……」
戦士の死は、しょうがないこと。
そんな風に朱鷺子は考えている。
撃たれていい逃げる背中なんて、よっぽどによっぽどな悪人だけ。
でも、そんなお約束だけで世界はできていない。
「ううん…でもなんもわからへんね。
鑑識の子ぉも、ぱらどっくすがどこにいるかまでは掴めてへんのやろ?」
膝を伸ばして振り返るとそこには、今も続く現場検証をしている委員たち。
朱鷺子はその護衛役の一人として駆り出されていた。
安綱 朱鷺子 >
「卵頭に鎧姿ぁ…なんて、いくらこの島だって目立つモンやない?
そぉんなうすらでかいなら尚更…そうでもない?そっかぁ…」
ちょっと黙っててと言われたので唇とんがらせて壁によりかかった。
自分の体重では崩れたりしないけど…よっぽどの力を使わないとここまで傷つかない。
「許せへんなぁ」
今までで一番小さい声で呟いた筈だが…
その場にいる誰もがそれに反応した。
気持ちは一緒だ。風紀委員なら。
安綱 朱鷺子 >
「うんーんん、でもああいう手合だと、追影せんぱいにお鉢が回るんかな…」
やばいやつにはやばいやつをぶつけんだよ、の法則で。
自分がやりたいっていうわけじゃないけど。
ちいとばっかりお灸を据えたくなるのが人情てもので。
でもやらせてくださいで配備されるわけでもないので…
…飲んでます?
「エッ!?の、飲んでへんよ?いやハハハまさかぁ…お仕事中よ?」
ぼんやり考え事をしちゃってたらしい。
酔ってる暇などない。
風紀委員は、常に後手に回るとしても、やるときはやらなきゃいけないのだ。
ご案内:「異邦人街」から安綱 朱鷺子さんが去りました。<補足:サイズ大きめの赤い制服 身の丈に合わない長さの飾り太刀>