2022/10/29 のログ
ご案内:「《ライブ配信中》スペシャルステージ…?」にノーフェイスさんが現れました。<補足:無造作アップヘア/黒地に白茨と薔薇がささやかにあしらわれたコート/赤ドレスシャツ/紫紺のネクタイ/レザーパンツ/ライディングブーツ>
ノーフェイス >  
夜風が心地よい。
歓楽街のネオンも、ここまで高い建物ならまるでモザイク画を床に敷き詰めているように見下ろせる。

建物のコンセプトがコンセプトだ。
中で行われていることも、ここまで音が届かない。
車が駆け巡る日常の営みの音も遠く――静寂。

火照った身体と喉を癒やすため、ミネラルウォーターのボトルを傾けながら、
悠然と、開けた屋上の中央へと歩を進める。

ご案内:「《ライブ配信中》スペシャルステージ…?」に言吹 未生さんが現れました。<補足:徽章付制帽/詰襟ジャケット・ズボン/革の手袋・長靴/袖なし外套>
言吹 未生 > ステージでの興奮の余熱を吹き攫うような夜風に紛れ。
鉄扉が開き、閉ざされる音。次いで地を噛む硬質な靴音――。

「――ステージは、大成功…なのかな? 君にとっては」

落ち着き払った声音で、その背に語り掛ける。
――けれども、音を愛し操る彼女からすれば、その浅薄なオブラートの奥の狂熱を感じ取るのは容易い事だろう。

ノーフェイス >  
「そこはボクの勝利条件ではないかな。
 ボクひとりでやったことではないしね」

残ったミネラルウォーターを頭からかぶる。
常温に保たれた雫が膚を流れ、毛先から雫を零した。
前座のフロントが手柄を独り占め、なんて、笑えもしない冗談だ。

あの場に居た者、あのライブを画面越しに見つめる者たちが盛り上がったのなら。
この『HELLOWEEN EVE#1』は成功した、といえるだろう。
だがステージのメインアクターはライオットであり、商業的な利益、
そして"顧客をつかみ、落第街に引き入れる"という種を撒いた者たちは、
また別の成功、そして摘発や逮捕という失敗を喫しているだろう。

愉快そうに笑うものの、女ははっきりとしたこたえを向けない。

「それでも、良い夜になったのなら一先ずの挑戦は成ったといえるだろう。
 さて、そんなこんなでいい気分のヴィランはというと~?
 帰って次の企画でも練ろうか、というところでキミに捕まってしまったな」

彼女のほうを振り向いて。
つややかな唇が、甘く囁いた。
そのまえに、人差し指を立てて。

「せっかくふたりきりになれて、今すぐにでも脱いじゃいたいところだけど。
 ハグは……もう数秒だけ、待って」

貞淑をロッカーに預けてきた女は、掠れた声で。
しかし、"何か"を待っている――必要なことを。

言吹 未生 > 「中々どうして、堂に入ったアジテートだったじゃないか。
 風紀の彼も、随分やきもきしていたようだが」

真ッ正直に風紀委員の格好をしていた金髪紅瞳の少年の様子を思い出し、
肩をくつくつと震わせる。
次いでこちらに待ったを掛ける声と、止める指とを、じとりと眺めて。
はあ、と溜め息。

「服を脱ぐのはおすすめしかねるね。
 薄くとも、防禦効果は――ないよりはマシだから」

言い終わるや否や。
既に起動していた【摩尼瞳】の身体施呪によってブーストされた脚力が、少女と女の彼我を著しく切り詰めた。
その推力に任せた肘鉄は、彼女の水月目掛けて。
さも“こいつを待ってたんだろう?”とでも言わんばかりの、臆面も躊躇もない勢いで――!

ノーフェイス >  
「ガッつくね……ゾクゾクしちゃう」

赤い唇に、ぬるりと舌が這う。
ならば突貫してきた彼女の動きを前にして、女はその場から動かない。
月とネオンの逆光に浮かぶシルエットは、いつしか。
その手に身の丈に迫る長さの長物を構えている。

歪なカタチ。未完のバベルにも、時計の針にも見える鈍い金色の輝きの長槍が。

「一気に突っ込もうとしてくるの、ドーテーくんって感じ」

果たしてインパクトの瞬間には――何も起こらなかった。
自分の身体をかばうよう構えられた槍の柄の中心が肘を受けた瞬間、
加速、重さ、衝撃――すべてが無になった。
異能か、魔術か、武技か。
果たしてその現象は、女が起こすべきして"成し遂げた"ことなのはたしか。
その狂熱を抱擁するかのよう、あるいは――嘲笑するように。

「可愛いね。 ……でも、今日は応えたいな。気分がいいから」

負け犬に甘んじなかった狂犬の牙に、その身を晒したくなったと。
言うなりに。

川平詩音 > 屋上に設えられた四方八方のライトが、彼我の姿を照らす。
交わるほどに近づいたそれを取り囲むように。

ビルの下から飛び上がってきた、無数の球体――
羽もプロペラも備えていない鋼鉄の"目玉"は、"撮影用のドローン"だ。

『――さぁッ! ライオットのライヴも闌!
 スペシャルステージ……エキシビジョン・マッチの開幕だァッ!』

甲高い少女の声が、ドローン付属のスピーカーから上がった。
川平詩音。電脳生命体ではないか、とも噂される正体不明の違反生徒。
彼女の業態たるラジオと、違法配信サイトの運営――それが成すことは。

『こちらに映っているのは、お察しの通り今宵の黒幕!
 ナ――イスバディーな大馬鹿者(ノーバディ)ーッ!

 "夜に吼えるもの"――ノーフェイスッ!』


『相対するは、黒衣に染まった"挑戦者"――
 衣装もキメキメ、案外ノリノリか?
 どっちにしたって無貌な狂犬(マッディ)ってことだけは確か!

 見とけよバカども!こいつあたしらの"敵"の新顔様だッ!』



『どっちにしたってロクデナシだ。
 黄昏(ダスク)を払った黎明(デイブレイク)も、鉄火の支配者もここにゃいない。
 意地と意地のぶつかり合い――』

『さぁ、どちらに賭ける!?
 高画質で観たい奴は、ぜひサブスク課金を――』

ノーフェイス >  
女はそのまま一歩を引いて、掌を軸に回転させた槍を抱え、半身に構える。
その旋回した切っ先が床にふれた瞬間、
コンクリートのタイルがバターのように切り裂かれ、礫を散らした。
捲れたコートの袖からは、鞭のように引き締まった筋肉を備えた前腕が覗く。

伊達ではない。
常の自信は、ハッタリではない。

「私闘(ケンカ)はしない」

女は、余裕の笑みでそう言い放った。

「――ボクが暴力をふるうなら、これが必要なんだ」

悪いね、と片眉を吊り上げた。
エンターテイメントであることが。
晒し者であることが。見世物であることが。
自分が闘うという行為をするための、絶対のルール。
自らに架した鉄の不文律を満たしてこそ。

「さあ、大勝負だ。
 ……見られながらってのも、それはそれで興奮するもんだぜ」

そう。
――成し遂げることができれば、コネクションも得やすい。顔も売れる。
独立独歩の正義を征く彼女も、ひとりでできることに限界はある。
自分とおなじ――ゼロから始まった彼女への餞だ。

ただし。
――ここで何も成し遂げられなければ、彼女は期待を抱かれない。
賭けてもらおう。
惨めな敗残者の姿を、衆目に晒すリスクを。

秩序を勝手に預かる猟犬として、自らを証す時だと。

「では、次はこちらから。
 一撃で終わるなよ? ――ギャラリーがさめちゃうから、さッ!」

バトンでも操るかのように、華麗に。
長い四肢のスパンと長物を存分に活かした、水平に薙ぐ槍撃を放つ。
その威力は、先に既に見せて――魅せている。

言吹 未生 > 須臾のうちに現れ、こちらの打撃を無に帰する槍。
――隠器術かッ。
撓みさえもしなかった槍の――威容/異様に、素早く飛び退り、

「ッ…は、前戯に時をかける方がお好みかい――」

耳年増が売り言葉に買い言葉を投げる。同時、しごいた袖口からまろび出た【安全鞭】を構えて。
突如として屋上の闇を灼くスポットライト。轟くアナウンス。
有形無形の視線と期待とを、光と影とに感じつつも肩を竦めてみせた。

「……まったく、君と言うやつはとんだ傾奇者だな。いや、婆娑羅者か?」

伊達や酔狂でなく“その伊達と酔狂を貫く”者達。
傍若無人のスワッシュバックラー。あるいはランツクネヒト――。

“そんなものに付き合う自分も、嗚呼、きっと同類なのか”――?

「――ッ!」

刹那の思考も許さぬとばかりに。
コンクリートをバターの如くに成した槍の、弧を描く一閃。
僅かに前髪を散らす、紙一重にてそれを避け――
ブーストされた視神経が、振るわれた長物の往来――その暇を見出し、脳に、脊椎に発破を掛ける。
“突撃セヨ”――。

「――おぉッ!!」

短く裂帛。空いた胴へ向け、再び駆けざま薙ぎ付ける警棒の袈裟懸け一閃。
肩から肋にかけてを、喰らいひしがんと迫る――!

ノーフェイス >  
(よく視てる。かたっぽなのに――)

決して手を抜いた一撃ではなかったが――やり過ごされた事実に舌を巻く。
この一撃を見せてなお、彼女は殺刃圏から脱さない。
無謀か、自信か。 自分の命に対しての頓着は、どれほどのものだろう。

(あの奥の眼が特注品か)

間合いの利を活かすように、その槍撃は"退がりながら"放たれたもの。
然して瞬然と吼え、駆ける姿はまさに餓狼の如く。
矮躯に不似合いの強化された動き、そのトップスピードに、ノーフェイスの速度は至らない。

「ッ、と」

振り抜いた腕の勢いで、踵を軸に身を翻す。
更に、掌を軸に旋転した槍は、身体の背面からその姿を現し、その一撃を迎え撃った。
すなわち、"肉体の動きとは違う部分の速度"で、彼女の速度に追いすがる。

(ゴッツい武器持ってるなぁ、このコ……!)

響き渡る金属音。槍の撓り――防御こそ間に合ったが、わずかに体勢が崩れた。
直撃していたら昏倒不可避の一撃に、ぞくり、と背筋が寒くなる――興奮する。
先の奇術が"武術"であることを晒した。万全な状態で受けられなければ、"消えない"。

「っふふ……イイね。もっと来て?
 ボクが勝ったらキスでもなんでも――だっけ?
 キミのお願い、聞いておこうかッ!」

この一撃を凌げたら。
崩れた筈の姿勢から、どうにか、と姿勢を整えようと踊るように踵が後退のステップを踏む。
しかしそれこそが欺瞞か、あるいは"本当に崩れた姿勢を整えたのが間に合った"のか。
二歩目のステップは過たずコンクリートの床をブーツの底で噛み、
火花を散らすほどの旋転から回し蹴りが放たれる。
腕同様、レッグスパンは非常に長く、しなる鞭のようにしてお返しに脇腹を狙う。

――その動きのさなかの、どこかで。
"持っていた槍が消失している"。

言吹 未生 > 当たるかも知れない。
当たれば如何程の傷が、損害が――。
常人であれば弾いてしかるべき胸算用の算盤を、狂犬は既に擲っている。
当たらねばよい。そうせよ。
当たらば如何に――死なずばよい。以て討て。
それは研ぎ上げられた武道の術理――とは程遠い、外道の、狂種の理屈である。

「――っち、」

槍の遠心力に乗せての軌道修正が、やや速い。
すんでのところで弾かれる警棒。
しかし――此度は返ったその手応え。あやかしの手管ではない。
よく練り上げられた武術。消力の一種か――。

「…まさか例の言葉を覚えてるとはね。
 君のような手合いは、記憶力も浮ついたものだと思ったが――!?」

軽口の応酬を縫って放たれる回し蹴り。
躱すか――そう思う弾指の間、一つ眼が違和をぎろとねめつける。
――槍はどこへ行った――?
ぞくりと背に氷点が這う。それに竦む間もあらばこそ、狂犬は決断する。

――蹴りは本命に非ず。

さればこそ、三度、踏み込む。
閂を込めるように横這いの腕と、真っ向に狙う警棒を添わせて――、

「《圧 し 通 る》!!」

意志をも乗せた撃声と共に、突貫――!!

「……ッ!!」

その途上でたとえ、脇腹に蹴り足がめり込もうとも。
肋骨が数本砕かれようとも――それは止まらない。

ノーフェイス >  
「好きなモノのことに関しては、昔から頭が冴えててね?」

軽口?――では、ない。
とはいえ、それどころでは、ない。のも確か。
たとえその蹴りにも、必殺の一撃としての威力は乗っていた。
牙を剥くような笑みを見せる。
猪突ではない。わかっていて死地に踏み込んでくるその有様に、

(――それそのものを愉しめるようになってくれたら、)

あるいは、と思う。
容赦なくその脇腹に蹴撃をめり込ませながら、
十字槍宜しく飛び込んできた身体を、"真っ向から"受け止める。
片脚だけで、地面を噛む。――蜘蛛の巣のようなひび割れが、軸足を中心に広がった。

「……ステージが終わったばかりで良かった」

――通さない。
その志は、意地はまだ、ノーフェイスには通せない。
未生の薔薇は、未だ咲き切っていないと女は見る。
だからこそ、今執った手札は――避けるでも、防ぐでも、やり過ごすでもない。
最善も次善も他にあった気がするが。
選んだのは彼女の"壁"となること。試練を授けること。挑戦の先に在ること。
一夜の挑戦の締めくくりに。

炎の色の輝きが、瞬だけ女の輪郭をなぞる。
畳んだ腕で受けて衝撃を緩和する。生身であればそれでも粉砕は免れなかった一撃を。
防御せしめたのは、ごくシンプルな魔術――"肉体の保護"によった身体強化。
ほんの一瞬、強靭な英雄の肉体と化した肉体が真っ向から受け止めた。
みしりと腕が軋み、骨がひび割れ、肋骨にまで突き抜けた衝撃が内臓をずたずたにかき回した。
逆流した血液に唇を、顎までを、鮮やかな朱に彩りながら――崩れない。

「未生」

真っ赤な唇が、血化粧のなかで笑って、甘く呼んだ。
ガツン、と互いの頭上存在していたドローンが火花を散らした。
言吹未生の"すぐ背後に"、落下してきた槍が突き立つ。
もし一歩を踏み込まなければ、眼前に落ちてきたそれが致命の隙を創る筈だった仕込みを。

「逃がさない」

抱擁のように。
――彼女の退路を完全に絶つための檻とした。
喉笛を狙い合うような、泥臭い趣の有様で。

先まで、けたたましく叫んでいた実況も刹那黙る、決戦を狙う一撃。
振り上げた左手に顕現せしめるは、長槍と同じ意匠の短槍。
この零距離で、"槍"は却って不利――かといえばそうでもない。
少女の細い肩口に向けて、まっすぐに、鉄槌の如く石突を振り下ろす"打突"でもって、彼女の決死に返礼を向ける。

言吹 未生 > 身体強化が行き渡っていない肉体であれば、それこそ蹴球よろしく吹っ飛ばされていただろう。もっとも、

「かふ…ッ!」

噛み殺し損ねた喘鳴と涎とが、食いしばった口の端から洩れる。
無視してよいダメージではない。あるはずもない。
それでもその一撃を徹しさえすれば、あるいは――

「……ッ!?」

そんな目論見を、目の前の――吐血にまみれてさえなお、腹が立つ程うつくしいひとは、
莞爾としてそれを受け切った。崩れなかった。崩せなかった。

――逃げられない。

背後に無常の石塔の如くそそり立った槍と、目前の彼女の手に新たに顕現する短槍。
檻に閉じ込められたような有様で、狂犬は逡巡した。
ブーストした脚力で横合いへ遁れ――られない。
連続行使によって蓄積された反動が、眼底と臓腑の淵とを焼いている。
ならば警棒の電磁プラグを起動――出来なかった。

「うあ゛っ――!」

それよりも疾く、短槍の石突きが――みぢりと、右の肩口を突き抉ったのだ。
からりと取り落とした警棒を追うように、自身もまた跪く。

「……ノー、フェイ、スぅぅうッ……!!」

ねめ上げる一つ眼が、目まぐるしく奇怪な光を帯びて“好敵手”を望む。

――やったな。よくもやってくれたな。
――まだだ。そうとも、まだだ。まだ――

やれるのか。足りないのか。及ばないのか。
そんな自問は“時間切れ”で全神経に襲い掛かるフィードバックの奔流に掻き消され。

糸が切れた人形のように、ばたりと倒れた――。

ノーフェイス >  
小さい身体の一部を、確かに打ち据えた手応え。
飛び道具では得られない"交わり"に、脳を狂わされながら。
槍を放り捨て、崩折れる矮躯を抱き支えた。

「よろしく、常世島。
 ――ボクとこのコを、どうぞ」

吼える実況と、賭け事の趨勢を叫ぶ者たちの悲喜こもごもを聞きながら、
脚を降ろして二足で立ち、息を吐く。
カメラに向けて血まみれのブロウ・キスのパフォーマンス。
余裕の笑みを最後に、これも頃合いと見てか、
"ライオット"の特別な演奏が終わると同時、ドローンたちは電源供給を失い、
がしゃがしゃと音を立てて次々に屋上に落下した。

「――フフフ。 ふ、……」

夜闇に静寂が戻り、残心の緊張さえ解けると、
抜群にキマっていた脳内麻薬の愛撫がそっけなく逃げていく。

「痛っっって……! まさかこんなにブルファイトしてくるなんて……
 意外と責めるほう……? そのうちホントにぶっ壊されちゃいそうだな……」

何日かはギターも歌もできない身体にされた痛みが遅れてやってきて、
両目に涙を溜めながら、なんなら流しながら、苦悶に震え上がる。
じっとりと眠れる少女を見つめながら、

「……あんな眼で睨まれちゃったら。
 ボクもキミを"敵"と認めざるを得ないね~。
 ……ねぇ、キミの正義で、ボクをいっぱいにして。
 このからっぽな胸のなかは、"現在(いま)"でしか満たされないんだ」

覗き込む。その距離は零に。文字通りに交わる形。
眠れる無垢の唇に含ませた体温の熱と血の味は――舌の届き得る隅々まで。
童話のスノーホワイトの類形には、本当にこんな場面があって。

「…………」

駆け上がってくる風紀委員の足音。さて、彼女を引き渡すべきかどうするか、
ペントハウスに向けていた瞳はほんの一瞬――


その扉が開け放たれた時、屋上は無人だった。

言吹 未生 > かくして狂犬は、手荒い歓迎を受けて。
無頼の異邦人から、“街”の徘徊者へと引き上げられる。
たとえ少女がそれを望まずとも。
今宵の、キャットファイトと呼ぶには血腥いにも程がある一戦が、その狼煙となるのだろう。
その牙は、浅くとも――確かに突き立ったのだ。

「――ん、ぅっ…」

まどろみの中、蹂躙/愛撫される口内の感触と、噎せ返るような血と唾液と熱とに魘されて。
幻惑のうちに、二人の姿は掻き消えていた。
遅れ馳せながらやって来た風紀の連中には、何のおこぼれもくれてやらぬと言わんばかりに。

宴の夜は、余韻の熱と共に朝焼けに捲かれ去って行く。
けれども、あらゆる人々の身に、心に、魂に、容易くは消えぬ熱情の楔を打ち込んで――。

ご案内:「《ライブ配信中》スペシャルステージ…?」から言吹 未生さんが去りました。<補足:徽章付制帽/詰襟ジャケット・ズボン/革の手袋・長靴/袖なし外套>
ご案内:「《ライブ配信中》スペシャルステージ…?」からノーフェイスさんが去りました。<補足:無造作アップヘア/黒地に白茨と薔薇がささやかにあしらわれたコート/赤ドレスシャツ/紫紺のネクタイ/レザーパンツ/ライディングブーツ>
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