2024/06/09 のログ
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」にテンタクロウさんが現れました。
■テンタクロウ >
不良と思わしき人々。
数にして3人。
今日はこれでいいだろう。
蛸や蜘蛛がそうであるように、
背中から生える触腕で自重を支えながら彼らの前に立ちはだかる。
「ハァァ……こんばんは、諸君」
「少し練習をさせてほしいんだ……」
彼らは顔を見合わせて突然の乱入者を見ている、という感じか。
どうでもいい。
骨の折れる音をより良くする練習台が何を考えているか…など。
■不良A >
「なんだテメェふざけた格好しやがって!!」
「オモシロ仮装大会はハロウィンにしやがれ!!」
■不良B >
「あー、ダメダメ……この街はそういうノリじゃないから」
「ダスクスレイのマネしたいだけなら他所でやりなよ」
■不良C >
「ガハハ!! じゃっどん愛嬌がありよる!!」
「初対面の相手に挨拶ができるのは好感触じゃあ! のう?」
■テンタクロウ >
頭痛がする。
あまりにも頭が悪い。
そういう相手とは会話をするだけ無駄だ。
「もういい、喋るな」
最初に喋った男の足首に触腕を這わせると、足首を砕いた。
■不良A >
骨が折れる音。それも、自分の足首から。
激痛。立っていられず、その場に蹲った。
「ぎゃあああああああぁぁ!!」
■不良B >
「何を!! 水を加速させる異能…アクア・ショットガン!!」
ペットボトルから水を撒き散らす、それは加速して襲撃者に強烈に襲いかかる。
■不良C >
「やりすぎじゃあ!!」
「拳に推進機能を付与する異能ッ!! ロケットNo.1!!」
拳から圧縮空気を噴出させながら剛拳を襲撃者に浴びせる。
■テンタクロウ >
電磁パルスによる障壁で水の散弾を弾く。
そして拳から突っ込んできた男をマシンアームで殴りつける。
「イチイチ、異能の名を叫ぶ……異能認知学だったか?」
「周囲に異能を告げることで神秘の実存性を高め、出力を増加させる……」
「ハァァ……無駄だ」
私とお前たちではレベルが違う。
■不良C >
頭から殴られ、地面に叩きつけられるように倒れ込む。
そのまま気絶した。たった一本のマシンアームに負けたのだ。
■不良B >
「あ、あ……!!」
ダメだ、戦闘能力が違いすぎる!!
逃げ出す? 仲間を捨てて逃げられるものかよ!?
■不良A >
「なんだお前……一体なんなんだよぉ!!」
足の痛みに身動き一つ取れないまま叫ぶ。
■テンタクロウ >
「私はテンタクロウだ」
「別に殺す気はない、覚えてくれて結構」
触腕を伸ばすと水の異能を持っていた不良の大腿骨を力任せに折って。
「ハァ……キミたちには実験台になってもらいたい」
「骨を折る時の力加減で、どんな音になるのか…という」
「実験のための」
周囲には夜という闇が広がっている。
■不良たち >
ブラックストリートに悲鳴が響いた。
その悲痛な絶叫が。
恐怖を伝播させていく。
■テンタクロウ >
「フーン……やはり粉砕骨折ではダメか、音が籠もってしまう」
「太い骨を完全骨折させると音が変わるな……?」
「指は繊細な音がするが……個体差がある部位だから不安定だな…」
「個体差、というのであれば女性の骨も試してみるべきだな」
「力加減は明日以降の課題だな……」
一人、経験を集積させながら彼らを見下ろす。
惨劇。人が三人、壊された場所。
「ハァァ…もう結構だ……逃げていいぞ」
「逃げられるものならな」
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」に黒條 紬さんが現れました。
■黒條 紬 >
此処は暗闇。
惨劇を覆い隠す為の夜闇は、鋼鉄の獣の姿を隠せはせど、
獣に喰らわれた者の苦悶の叫びも。
獣の内から発せられる黒き臭いも、掻き消しはしない。
闇の中からテンタクロウに向けて。
放たれたのは、刃。
夜陰の絹を切り裂いて、鋼の腕へ向かう刃。
刃。
そう、その筈だ。
軌跡に置かれる木箱を。
中に入っていた瓶を。
両断しながら突き進むそれを形容するのであれば。
然し。
テンタクロウの目に刃は映らない。
もし彼の目が――月光に踊る一筋の光を見たのであれば――
それが、刃の如き線であると気付くのであろう。
いずれにせよ常人であれば、それも不意に放たれたのであれば、視認は困難だ。
撓り、波打ち、腕の一つを狙い撃って放たれた、線の一撃――
――それ即ち、鋼糸の一撃なれば。
■テンタクロウ >
腕が一本、オフラインになった。
振り返ると、切断されたマシンアームが落ちている。
「ハァァ…誰だ……」
振り返る。
掘れば断頭台でも見つかりそうな夜の闇が広がっている。
「面倒だな……大規模破壊でもするべきか」
だがそれこそ面倒。さて……自分が取れる手は…
■黒條 紬 > テンタクロウがその死角を振り返れば、靴音が一つ。
そうすれば、テンタクロウの目に映るだろう。
暗闇の中に光る紫の瞳と、撓る鋼糸が。
交差させた女のその腕。
その拳の部分には、黒のグローブが填められている。
先程マシンアームを切り落としたばかりの
鋼糸が、そのグローブの元に戻っていく。
「――これは、なかなか。二本は落とすつもりでしたが」
誰にも聞こえない程度に、小さな声で。
風紀委員の制服を纏った、紫色の蛇――女が呟いた。
転がっている触腕を見下ろすその目に色はなく、
艷やかな唇には紛れもない悦の色があった。
然しそれは、路地裏の、暗闇の中での一瞬のこと。
「風紀委員です! そこの三人の方、下がれるのならば下がってください!
腕でも何でも使って、可及的速やかに!」
各々で逃げられる状態にあるかを確認しつつ。
何とか逃げ出せる状況であれば、その時間を稼ぐつもりのようだ。
三人の前に立って、腕を振り上げる。
■テンタクロウ >
「ハァァ……斬れるタイプのワイヤーか」
現れたのは、少女……だった。
風紀委員の制服を着た……
「無駄だ、これだけ骨を折れば全員行動不能だよ」
「お前もそうなるぞ風紀委員……」
斬られた触腕を一本、拾い上げる。
「正義感なんてロクな感情じゃあないぞ……女」
触腕を周囲から伸ばして風紀委員の少女に向けて絡みつかんとする!!
その数、4本。一本でも触れられれば!
■黒條 紬 >
負傷した生徒達を見る。
安物の玩具のように捻り潰されているそれらを再度確認した後。
改めて、眼前の敵と対峙する。
「出来るものなら? どうぞ、好きにしてください」
そう口にして、少しばかり笑うと同時に。
一斉に放たれる触腕。
内心、肩を竦める。
一度光の下に出てしまった以上、この多腕の男を単身で相手取るには装備不足だ。
それでも、今は風紀委員なのだから、
学園生徒を守る職務はこなさねばなるまい。
何より、見てみぬフリをするのも、性に合わない。
それを正義感と呼ぶ者も居るだろう。
その真偽は定かではないが、いずれにせよ。
黒條 紬は此処に立っている。
ならば今できる全力で迎え撃つ。
飛来する触腕。数にして四。
凄まじい速度。
戦闘に慣れていないものであれば、一瞬で四肢を拘束されてしまうだろうか。
身を躱すか、対応するか――。
打ち手の判断に猶予などない。
――逃げるのって、好きじゃないんですよねぇ。
蛇は、迎え撃つ姿勢を取る。
一つ。
左拳を払い、横薙ぎに鋼糸を放つ。
二つ。
右拳を振り下ろし、縦一線に鋼糸を繰り出す。
三つ。
地に両手をつき、側転の形で身を躱す。
しかし、迫る四つ目が――彼女の足に触れた。
そのまま掴まれれば、宙吊りとなるだろう。
■テンタクロウ >
「ハァァ……はしたないな…女性がそんなことを口にするものじゃあない」
冗談を口にしながら触腕が相手を襲う。
触腕は相手が放った鋼糸をかわした。
よって絡みつくことはできないが。
それ以上切断されて動きが鈍る愚を避けた。
そして4本目が相手の足に触れるとそのまま宙吊りにした。
「一つ……試したいことがある」
人間の指を振って。
「アバラだよ」
見定めるように相手を眺めながら言う。
「今まで人の肋骨を折ったことがなかった……」
メインの太いマシンアームがゆっくりと伸びる。
相手の肋を目指して。
■黒條 紬 >
「深窓は蹴破って此処までやって来た人間ですので」
冗談には冗談を返すも、見てくれは最悪だ。
完全に宙吊りの状況。何も手を打たなければ、なすがままの状態だ。
普段ならば髪で隠れがちな目も、しっかりと見える形で、晒されている。
その瞳は、眼前の相手をしっかりと捉えていた。
「……何故、そんなに骨を折ることに拘るんですかぁ?」
今腕を振るってこの足を掴んでいる機械腕を切り落とすのは難しい。
先の攻防で、相手がある程度頭の切れる相手であることは理解している。
愚直に触腕を振るっていたのなら、今頃全ての触腕は真っ二つになっている筈だ。
「……真逆(まさか)、男女問わず骨を砕くことが癖だとか――」
ふっ、と挑発するように笑う。
マシンアームが、制服の裾。
下腹部から臍へ、臍から肋へと向かっていく。
「――そーんな理由じゃないですよねぇ? 何か、骨に恨みでも?」
なすがままになっている宙吊りの女は、
髪を揺らしながら、男に言葉を投げかける。
艷やかな唇に、白い指を当てながら。
その穏やかな表情が崩れることはない。
■テンタクロウ >
「お転婆で地獄に来ていれば世話はない」
逆さまになっている女を嘲笑う。
「フッフフ………真逆? 逆さまなのはお前のほうだ」
「昔から言うじゃあないか……」
メインアームが相手の肋骨を折るために鋭く動く!!
「恨み骨髄に入る、とな……ハァァ」
その余裕ヅラを痛みに歪めてやる。
■黒條 紬 >
黒條の肋骨は砕かれ、壊れた女が地にばたりと落ちる。
意気揚々と躍り出た彼女の身体もまた、不良生徒と同じように。
いや、それよりも惨たらしく。完全に破壊され。
黒街には、破壊された4体の人間が転がるのみ――
■黒條 紬 >
――その筈だった。
■黒條 紬 >
マシンアームが鋭く動く直前。
女は微笑を湛えて、眼前の男に言葉を投げかけた。
とても優しく、それでいて妖艶で、耳がこそばゆくなるようなその言葉は。
小さな小さなその言葉は、眼前の男にしか聞こえないであろう。
「――、―――――――――――――、――?」
彼の眼前で、宙吊りの女の両目が、仄かに輝く――。
■テンタクロウ >
ささやきが聞こえた瞬間。
相手の足を掴んでいるマシンアームが。
解かれた。
何故、僕はこの少女にこんなことをしているんだ?
その場に呆然と立ち尽くしていた。
いや、違う。宙に浮いているのだから、立ち尽くすという言葉は正確ではない。
ただ、ただ。
その場に呆然と居続けた。
■黒條 紬 >
男に囁いた後。
誰にも知られぬほどに小さく、息を吐く。
間一髪だった。
もう少しでも異能の発動が遅れていれば、
そこに転がっている不良生徒よりも惨たらしい末路を迎えていた筈だ。
「……残念。もうちょっとで卒業でしたねぇ」
ぽん、と肋を叩く黒條。
さて、口ではそんなことを言いつつも。
いつまでもこの状況が続く訳ではない。
そして、このまま一対一で戦闘を続ければ、次こそ肋を砕かれかねない。
いや、鋼糸を振り回しているだけでは、いずれ容易く砕かれるだろう。
流石に機械相手、それもあの本数の触腕とあっては、体力が保たない。
黒條は、元より隠密が本業だ。
「それじゃ、後は――」
だが、問題はない。これだけ時間を稼げれば。
先んじて呼んでおいた応援が、そろそろ到着する頃合いだ――。
「――頼れる風紀の皆さんにお任せしましょう」
風紀委員達の靴音が、裏路地からこちらに近付いて来る!
その音が、テンタクロウの耳にも入るであろう。
■テンタクロウ >
「!!」
正常なる自我を取り戻した直後に、風紀委員の足音!!
自分は強いが、複数人の風紀委員相手に正面突破できるほどではない!!
「お前……顔を覚えたぞ…」
それは鴉がそうであるように。
増幅された憎しみは決して忘れられることはない。
マシンアームで構造物を掴み、上空に逃れていく。
「ハァァ……瞬間催眠型の異能か…」
「テンタクロウを出し抜いたことを必ず後悔させてやる」
そのまま摩天楼を巨大な蜘蛛のように這いながら去っていった。
■黒條 紬 >
「流石に、ここで大人しく掴まってくれるほど惰弱でも、愚かでもありませんよねぇ。
テンタクロウさん?」
不良生徒達には背を向けたまま。
テンタクロウ一人のみに狙いを定めた微笑を向ける。彼を見送るように。
そうして顎に手をやり、黒條は思案する。
今回の戦いで、噂のテンタクロウについて見えてきたことも幾つかあった。
風紀本庁へはこの後、報告をしておくとしよう。
そうして。
「皆さん、後はよろしくお願いしますっ……!」
駆けつけてきてくれた風紀の面々の背中を見つめながら。
汗に濡れて張り付いた髪を人差し指で掬って。
黒條は満足気に笑うのだった。
夜の幕に包まれたその表情を見つめるのは、月の光のみ。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」からテンタクロウさんが去りました。
ご案内:「常世渋谷 黒街(ブラック・ストリート)」から黒條 紬さんが去りました。