2024/06/10 のログ
ご案内:「歓楽街」にテンタクロウさんが現れました。
ご案内:「歓楽街」に葉薊 証さんが現れました。
テンタクロウ >  
ビルの間をすり抜けるように触腕で体を支えて移動。
夜の歓楽街に現れる。
すると、人々の間に恐怖が奔る。

「やれやれ……まだ何もしていないのだが」
「今日は、だけれど」

逃げ惑う人々。拷問魔に捕まった時のことを考えれば無理はない。

「鬼ごっこは趣味じゃあないな……」

今日の被害者を探す。

葉薊 証 > 「僕も連れていって欲しかったな~」

退屈そうに腕を組みながら星の無い夜空を見上げる。
今日は良くしてくれている風紀の先輩と一緒に歓楽街の警邏に来ていた。
以前から約束していて、今日の事をとても楽しみにしていた…のだけど。

「これじゃあ来た意味がないよぉ」

なんて長く気の抜けたため息をつきながら、トントンとゆっくりとつま先でリズムをとる。
一緒に来た先輩は、急用とか言って突如走り去ってしまった。
どうせトラブルなら、連れて行って欲しかった。

「あ~~~何かないかなあ」

その時だった、先輩が走り去って行ったのとはまた逆の方向から悲鳴のような雑踏が聞こえ始める。
最初は気のせいかとも思った程度のものだったが、それはだんだんと大きくなり…
人の濁流となって、押し寄せた。

「な、なんだなんだなんだ!?」

待ちに待ったトラブルの筈が、少年は突然の事にあたふたと慌て始める。
幸い隅っこの方に居た為に、濁流にのみ込まれる事は無かったが…何も出来なければ同じことである。
そして、常に動き続ける人混みの隅っこで一人だけ動けずに慌てて居れば…逆に目立ってしまうだろう。

そして少年は気づいていない。上空を見上げれば、そこには最近話題のテンタクロウがいるという事を…
自分の手には到底負えない存在が近づいているという事を。

テンタクロウ >  
男も女も我先にと逃げ出していく。
夜の歓楽街などこんなものか。
そこで動けずに止まっている、風紀委員の制服が目に入る。

「ハァァ……こんばんは、風紀委員の君」
「少し知りたいことがあるのだが、いいかな?」

触腕で体を支えたまま少年の方へ向かう。

「今、時間はあるかな」

悪意に満ちているはずの声はどこか紳士的だ。

葉薊 証 > 「どど、どうされました―か?!」

こんな混乱の中で、上から呼びかけられれば困惑を隠せず応える。
そして、混乱しながら向けた視線の先には…

「まさか…テンタクロウ?!」

数多のアーム、全身を覆う装甲、そして悪役っぽい仮面。
それらの特徴は、風紀で今要注意人物として回されている怪人そのもの。
映像でしか見た事はないが、恐らく間違いない!

「じ、時間だったっけ?あるよ!僕も丁度暇してたんだ!」

こいつを捕縛出来れば僕も実力を認めてもらえる!
なんて、お花畑の脳内で考えながら素人丸出しのファイティングポーズをとる少年。

「こっちだ!ついてこい!」

なんて、挑発しながら歓楽街の少し狭い道、戦いやすそうな方へと誘導する。
ゴミ箱や段ボールがまばらに置かれた5人は並んで歩けそうな道だ。

「僕にだって出来る所を見せてやるんだからな!」

テンタクロウの方へと向き直り、隙だらけの癖に不敵な感じの笑みを浮かべる少年が再びファイティングポーズをとった。

テンタクロウ >  
「それは何より」

ハァァ、と息をついて彼についていく。
何を壊すこともなく、ただ大人しく。

「それで……その構えで何をするのかな?」
「私が降りてくるのを待ってパンチを浴びせるのか?」
「やめておいたほうがいい……指の骨が折れるだけだ」

両手を広げて。空には細い三日月が浮かんでいる。

「私から聞きたいこと、というのはだね」
「君の骨が折れる音だ」

上方から触腕を伸ばす、その数2本。
左腕と右足を狙っている。

葉薊 証 > 「やってみなきゃ分からないだろ!」

本当にパンチするつもりは一切ない。
この前木人にやったように、パンチに乗せて爆発するエネルギーでも放ってやろう。

「なに!?」

骨の折れる音だと?!とか、そんなことを考えようとした頭が警鐘を鳴らす。

…といっても、これといって戦闘経験もなければ競技を嗜んでいた訳でもない少年が突然動ける訳もない。
上空から伸びて来るアーム2本。本当に2本であるかも、それがそれぞれどこを狙っているかも、どの程度の速度で迫っているかも一切分からない。

「うわぁ!」

出来た事は精々、情けない悲鳴をあげながら横に跳ぶことだけ。
悲鳴同様、動きも大変情けない。
大した距離を跳べてないし、何より真横…壁の方へと跳んだものだから頭からゴミ箱へと突っ込む。
幸い、ゴミ箱が固くなかったおかげで大した怪我はしないだろうが、それでも全身擦り傷まみれ。
…そして、この程度の距離の回避では、アームを回避できたかもわからない。

テンタクロウ >  
「それはそうだ、何事もやってみなければわからない」
「ハァァ……勇敢じゃあないか、風紀委員の君」

大げさな回避でゴミ箱に突っ込む彼を見て溜息を一つ。

「大丈夫かね? 立ち上がってゴミを払いたまえ」

触腕を引っ込めて。

「それともゴミだらけのまま惨劇を受け入れるか?」

マシンアームの先端を蠢かせる。
それぞれが人の腕一本、千切り取れるくらいの力がある。

葉薊 証 > 「そんな訳ないだろ!」

本当に情けない。四つん這いで背中にごみを乗せた状態で上空の怪人をにらみつける。

しかし、そんな言葉とは裏腹に少年の心中にはうっすらとした不安が生まれ始めていた。
本当に勝てるのか?なんていう不安。
それでもまだ、生きて帰れないかもしれないとか、そんなことは考えていない。
自信があるのはいい事。だが、それで現実を見れていないのは…阿呆の所業。

「喰らえ!」

勢いよく立ち上がり、ゴミを引っ付けたままファイティングポーズ擬きをとる。
蠢くアームへと狙いをつけて、拳を少し引いて…放つ!

その拳に宿るのは、やってやろうという熱情と、千載一遇の機会への歓喜と、そして少々の不安。
熱く煌めき、その中心に負のエネルギーが埋没した心象風景が、黄金の炎となって放たれる。
小石を投げたぐらいの速度で放たれた炎が、狙いをつけたアームへと向かって飛ぶ。
黄金の炎は、簡単には消えない闘志と千載一遇を掴んで離さない執念のたまもの。
アームを溶かすような熱こそないが、そう簡単には消えないだろう。

テンタクロウ >  
黄金の炎。
異能か。熱は大したものだ、だが。

アームを引いて炎を回避した。

後方を見れば、壁にぶつかった炎は金色の燐光を散らして。
今も燃えている。
石壁だ、火災を及ぼすことはないだろうが……

「なるほど……面白い」

左右から挟み込むように触腕を向けた。
それはフェイクだ、避ける前提の大振り。

本命は足元から静かに伸びる細いマシンアーム。

葉薊 証 > 「なにを!」

再び迫るアーム。
一度見て、避けれたのなら今度も避けれる筈。
そんな根拠のない自信がつくのは少年の性格故か。
だが、再びゴミ箱に突っ込みたくはない!

そんな思いで、今度は走って前へ出る。
急な角度で曲げる事は出来ないだろう、とか。そんな甘い考え。
常世学園という、言ってしまえば魔境における新参者。ぬるま湯につかって15年間生きて来た彼は現代の発展した兵器を知らない。
なんなら、運動不足の少年が走った所でたかが知れているのだが…

そんな現実はさておいて、少年の考えている事はこうだ。
このまま後ろにでも回り込んで、後ろからさっきの黄金の火炎を叩き込んでやろう。
いくら装甲に身を包んでいようが、熱は苦しいだろうとか、そんな舐めた構想。

足元から迫る本命のアームなんて、予想できない。

テンタクロウ >  
「ハァァ……」

相手の足首を掴み、一息に宙吊りにした。

「杜撰だな少年……」

右手の人差し指を立てて左右に振り。
チッチッと舌を鳴らすような音を立てた。

「ここで君にできることはなんだ?」
「宙吊りにされたまま炎を出す?」
「それともプランBがあるのか……ハァァ」

細いマシンアームを鞭のようにしならせて二回、少年に向けて放った。
鞭の先端がマッハを超えるように。

当たれば痛い、では済まない。

葉薊 証 > 「わぁぁぁ」

怪人の言う通り杜撰な少年にまともな抵抗など出来る訳もない。
人生で初めての宙づりに慌てふためきバタバタと手をばたつかせる事しか出来ない。

そして少年の思考はというと、初の宙づりと回避行動空しく捕まってしまった現状にすっかり支配されていた。
思ったよりも宙づりは痛くて苦しい。そして、捕まるなんて全く思っていなかった。

「うるさい!!—―ッッ!!!!!」

混乱と、少々の恐怖を感じながらも先ほどのように黄金の炎を放とうとする。
しかし、拳に集ったエネルギーの色は黄金というより、黄土色。恐怖という暗い色が影を落とした心象風景は、先ほどまでのようにきれいな黄金とはならず、熱量もその燃焼力も大きく劣る。先ほど壁に飛んでいた炎も今にも消え入りそうな程弱くなっていく。

己の心象が恐怖に染まっている事にも気づかぬまま、炎を放とうとした時だった。
人生で一度も感じた事がないような強く、鋭い衝撃が少年を襲った。
まともに反応することも、叫ぶ事も許されぬまま連続で襲い来る二連撃が少年の未成熟な肉体に深く鋭い傷をつける。

「あああああああああああああああああああ!!!!!!!」

鈍くも鋭い音に続いて狭い通路に響き渡るのは、少年の絶叫。
喉が張り裂けてしまうのではないかと心配になる程の絶叫だが、それ以上に…
右腕と、左脇にひどい裂傷が出来ていた。
制服は破れてしまい、乱れて裂けた傷口が良く見える。どくどくと血が溢れ出し、痛々しい様相を呈していた。

「いたいいたいいたいいたいいたい!!!!」

16年の人生における最大の苦痛に、悲鳴を上げながら暴れる。
宙づりであることを忘れ、顔を涙と涎でぐちゃぐちゃにしながら手足をばたつかせる。
実に見苦しい姿がそこにはあった。

テンタクロウ >  
流れる血と絶叫に仮面の奥で目を細めて。

「ハァァ……男なら我慢したまえ、まだ前奏(プレリュード)だ」

魔人の憎悪はその場に充満していく。
凄惨なる叫び声と憎悪に、周囲からネズミが逃げていった。

「これからキミの骨を一本ずつ折っていく」
「ルールは一つだ、キミは能力を使って可能な限り抵抗する」

「それだけだ……ではシンフォニーといこう」

見せつけるように何本かの触腕を蠢かせた。
わざわざ、彼の前で。

葉薊 証 > 「はなせはなせはなせはなせ!」

少年の耳に怪人の言葉は届かない。耳を傾ける余裕などない。
上半身を起こして足を掴むアームに攻撃を試みるも…
腹筋の弱い少年では数センチ起き上がるので精々。
仮に起き上がれたとしても、出来ることと言えば精々素手で殴りかかる程度。
そうなれば、怪人が言っていたように…
指の骨が折れるだけだ。

「や”め”ろ”おおおおおおおおおおお!!!」

怪人の象徴であり、凶器でもあるアームを見せつけられ、少年の狂乱は既にクライマックスである。

過度な感情に少年の異能が暴発し、周囲にノイズのようなどす黒い歪みが生じ始める。
これ自体は特にこれといった意味もないエフェクトのようなものだが、これが表すものは即ち少年の心象風景。
風景と呼ぶにはあまりにも歪み、狂い、激しいその心象風景は…

「じね”えぇぇぇぇ!」

怪人の方へと向けられた見開いた瞳から、強烈な狂気が放出される。
指向性が一切操作されていない、秩序なく荒れ狂う心象風景。
少年へと向けられた暴力をそそまま反映した破壊のエネルギーが、少年の瞳に映るもの全てに破壊のエネルギーを伝播させる!

テンタクロウ >  
「!!」

これは異能──金色の炎ではない!?
破壊のエネルギーに触腕が数本、使用不能になる。

本体は電磁パルスをフィールドとして纏うことで無事だったが…
こいつは危険だ。甚振られるだけのモルモットではない。

いや、こいつに触腕を通して触れていること自体がリスクだ。

「フン」

少年を路地から表通りに放り出す。
悲鳴が幾重にも広がった。

「異能の最大出力を隠していたか…だが」

メインアームにエネルギーが集中していく。
伝播ソリトン弾で戦闘不能になってもらう。

「!!」

次の瞬間、風紀委員の銃弾が幾重にも身を掠めた。
電磁パルスフィールドで歪曲しなかったら数発当たっていたな…

「運が良かったな、少年」
「いや……悪かったのかな、フフ」

「また会おう、次はキミの骨が折れる音を聞かせてもらう」

蜘蛛のように屋根から屋根へと移り、災厄は去っていく。

葉薊 証 > 「み"だがあああああああ!!!」

視界に入ったもの全て…すなわち、ビルの壁や、地面までも。
強烈な衝撃により概ね円形にひび割れ、砕け、崩れ落ちた。

己の力が通用したという真実に興奮し、絶叫する。叫び続けた事で喉は枯れ始め、多少とはいえ意図の込められた発言故まともな発声にはならなかった。
相変わらずひどい面だし、余裕がない事には変わりないが大量に放出されたアドレナリンと目にした状況に心象風景が移り変わっていく。

(ころすころすころすころす!!!)

今なら殺れる。そんな直感と共に、エネルギーの指向性が少年を中心とした周囲へ広がり始め…た所で、怪人が少年を放り投げる。

「あ”あ”あ”ッ!」

地面に衝突した痛みに一瞬呻くが、今はそんなことよりも怪人を殺す。
その一心で、異能を意図的に発動し、破壊の衝撃を広げていく。
…周囲の一般人にも気づかずに。

風紀の先輩 > 『証!!!やめろ!!何をしてるんだ!!!異能を止めるんだ!!!』
葉薊 証 > 「!!!」

後方から聞こえる先輩の声に、異能の発動が止まる。
殺意も怒りも狂気も忘れた訳でも消えた訳でもないが、先輩の言葉に思考が一筋クリアになった。

「ッ!逃げる”な”!」

何やら言いながら去っていく怪人に、右腕を伸ばす。
このまま逃がしてたまるか、絶対にこの手でそのアームを全てへし折って、中身を引きずりだして――

「あ”れ…?」

視界が暗くなっていく。
深い裂傷が二つ、血が止まっていない。血を流しすぎたのだ。
視界の端から暗くなり、遠ざかる怪人から手元の方へと焦点が迫ってくる。
そして、右腕の血が溢れ出す裂傷辺りに焦点が合った所で…

「にげ…る…な……」

少年は、完全に意識を失った。




少年は、入院する事となった。

ご案内:「歓楽街」からテンタクロウさんが去りました。
ご案内:「歓楽街」から葉薊 証さんが去りました。