2024/06/19 のログ
ご案内:「学生通り」にテンタクロウさんが現れました。
ご案内:「学生通り」に伊都波 悠薇さんが現れました。
■テンタクロウ >
星と月、惨劇と守護者。
絡みつくような足音。
今日は防衛側の勝利か……一般人の骨を折る前に撃退された。
だが私は諦めない。
太陽と月に背いた日から、私の悪意は尽きることはないのだから。
リフターを使って駐車場にマシンアームを支えに降り立つ。
ここから上手く逃げ切れるか。あるいは。
■伊都波 悠薇 >
賭けには、『負けなかった』。
「はぁはぁ……」
走った、先。
そこは駐車場。
これは偶然だ。
偶だ。でも‐‐
「……はぁ、はぁ」
自分が、走り出したから、得た、偶然だ。
駐車場の出口、そこに、少女が、立ち塞がる。
でも、その少女は、今までのどの、『対面』よりも。
『震えて』、いた。
■テンタクロウ >
「……!」
足音、もう追いつかれたのか!?
バカな、リフターの時速を考えればそんなことはあり得ない。
そして振り返った先にいたのは。
悠薇ちゃん……だった。
凛霞さんの妹の。
それがなんだ。
僕は……私は相手が誰であろうと骨を折ると決めている。
昨日、あの女の骨を折った時に。
覚悟は決まったはずだ、テンタクロウ。
「単騎駆とは感心しないな、御嬢様」
■伊都波 悠薇 >
「…………テンタ、クロウさん、ですか」
ぜぇ、ぜぇと、息を整える。
姉であれば、こんな事になっていない。
妹だからだ。そう、妹は『才能がない』。
テストの結果も、運動も。知っている人こそ、少ないが。
知っている人は知っている。
風紀委員に、姉に縋るように、所属している、やつだと、ばかにするやつも、いるということも。
「単騎、ではありません」
ふーっと、息を整える。
でも、震えは、止まっていない。
怖い。あぁ、怖い……逃げ出したい。興味本位。
そう、好奇心は猫をも、殺す。
だったら、逃げればいいのに……
「だって、戦いに、来たわけじゃ、ないですから」
震えた、唇。絞り出すような声。
恐怖に屈しそうになりながらも。
言葉を、紡ぐ。
■テンタクロウ >
息が切れている。
彼女は姉のような完璧な存在ではない。
『凛霞じゃないほう』『不全なる妹』『伊都波の平凡』
口さがない噂を聞いたことも一度や二度じゃない。
それでも、追いついた。
このテンタクロウの行動の先を読んだ。
面白い。
「ハァァ……キミにそのつもりがなくても私は誰だって骨を砕いてきた」
「力任せに関節を外してきた」
「この私に風紀委員の真似事をして投降勧告かね?」
「それとも説得? どちらも馬鹿馬鹿しいと先んじておこう」
月下、両手を広げてみせた。
■伊都波 悠薇 >
「いいえ」
首を横に振った。
その、どちらでもない。
「あなたを、止める、なんて。姉のようなことはできません。私は、そんな実力がないからです」
誰よりも、自分の無力を、知っている。
「あなたを、説得できるほど、私は弁が立ちません」
でも。
「私は、あなたと『話』に来ました」
タイムリミットは、『他の風紀委員』が来るまで。
「でも、あなたは、付き合う義理が、ありません。そんなリスクを、背負う、理由も、ない」
息を大きく吸う。ようやく、息切れが、なくなった。
「だから、対価を支払います」
ざぁっっと、風が撫でた。
舞う前髪。見える双眸。
その、顔は。恐怖に体を震わせながらも、テンタクロウを正面から、見ていた。
まっすぐに。まっすぐに。
「腕、一本。差し上げます。折るなり、好きにしていただいて構いません。
時間稼ぎ、ではありません。他の風紀を、呼ぶつもりもない。あなたと、ちゃんと、話をしたいんです」
■テンタクロウ >
頭が真っ白になった。
それは薬毒の影響ではない。
思考の虚を突かれた発言だったからだ。
「何を………」
これは本当にあの悠薇ちゃんなのか?
光学欺瞞で姿を変えた別人ではないのか?
罠……しかし、そんなことをする意味が薄い行動…
────馬鹿がッ!!
取り繕え、テンタクロウッ!!
何を呆けている!!
悪の矜持のままに動け!!
「ハァァ………いいだろう、話をしてやる」
「つまらない話をしたら即座にその腕が折れると知れ」
マシンアームを蠢かせてみせた。
恐怖心を煽るように。
これから始まる惨劇を楽しむかのように。
■伊都波 悠薇 >
びくぅっと、体がすくむ。
そんな、ことでさえ、恐怖を感じる。
そう、本当に、この妹という存在は『弱い』。
いつでも、叩き潰せそうなほどに。
「ありがとうございます」
応じてくれてホッとする。
「テンタクロウ、さんは、どうして、毎回『骨』を折るんですか?」
話をしよう、そう切り出したが、そもコミュ障である自分が咄嗟に出てくるデッキは、天気が多い。
だから、用意してきた会話デッキから。
まず、気になることを、一つ。
「骨、が好きなんですか?」
■テンタクロウ >
「お前はどう社会と関わっている」
質問を一つ、返した。
「私にとって人の骨を折るということは社会との関わりであり、抗議だ」
「人は食事に飢えればレストランに入るだろう」
「思想に飢えれば本を買う」
「私は人の骨を折る時の音に飢えているのだよ」
しばらく見ない間に。
悠薇ちゃんは随分と成長したのか。
僕だけがどこにも行けていない。
僕だけが。
■伊都波 悠薇 >
「私、ですか?」
社会、と言われると、難しい。
「えっと、学校に、行ってます」
すごく、恥ずかしそうに。
「あの、テストで0点取ったとき、とか。体力テストで、全部、評価1、だったときとかも。休みたいなー、と思います、けれど」
すぅっと息を吸って。
「姉に、置いていかれたくない一心で。学校に、行ってます」
骨は、抗議、というのなら。
自分の、抗議、は。
「自分が、ダメであることを、認めない。諦めの悪い、抗議として、学校に行っています」
質問に、応える。
そして、質問を、もう一つ重ねる。
「骨を、折る音は、どんな音がいいんですか。その、音は、テンタクロウさんをどんな気持ちにしてくれるんですか?」
■テンタクロウ >
人は努力しないと成長はできない。
しかし、努力は決して平等な結果を齎してはくれない。
人一倍努力していても。
誰にも追いつけないことだってある。
悠薇ちゃんにとって社会への抗議というのは……
社会の関わりというのは………
次の質問だ。
「美学、と言いたいところだが」
「人の影響だよ」
「初めて事件を起こした時にその場にいた男に、音の良さについてのインスピレーションを受けた」
「実際のところ、骨が折れる時のクラッキング音はセロリを折る音に似ている」
「ハァァ…姉の名前を出したが……お前も姉の影響を受けていないわけではあるまい」
■伊都波 悠薇 >
最初の事件での、影響。
「では、最初の事件では、何を考えて?」
一つずつ、紐解いて、いきたい。
自分は何も知らないから。何も知らないのであれば。
そも‐‐彼の『抗議』を止めたり、その抗議に関わることなんてもっての外だ。
「食事と、同じようなもの、と先ほどはおっしゃっていました。が、最初の一口で、夢中になる前は。なにが『食事』、であったのですか?」
姉のことを言われると。
「もちろんです。なんだったら影響しか受けてないです。なんだったら、人生、終わりというくらい沼ってます……どうにか、しようと、してるんですけどね」
自虐ネタ。こういうことも、できるようになったのはとある悪人のせいだ。
■テンタクロウ >
真っ直ぐな視線。
「私は誰かが傷つけばいいと思った……」
「骨を砕かれ、惨めに患部が腫れ、そのことを思い出すだけで嫌な気分になるように」
「そうなればいいと思って骨を砕いた」
食事と言われると首を左右に振った。
「私も生まれた時から人の骨を折りたかったわけではない」
「人と話し、笑い、一緒に食事をし、友人と帰りに取り留めのない談笑をしていた」
「私を変えたのは摂理だ」
相手を嘲弄するように笑い。
「ハァァ…お前の姉が誰かは知らないが……」
「0点を取る妹に敬愛されて嬉しいのかな…なぁ?」
■伊都波 悠薇 >
「そういう、気分、だったと。そういう気分が、続いて『しまって』いると、そういうことですか?」
あぁ、自分もそう、思う時期がある。共感できる。
でも、共感できる、なんて言えるはずない。
言う、わけにいかない。だって、誰よりも、『苦しんで』いるのはきっと。
‐‐眼の前の人間だ
「喜ぶわけ無いです」
嬉しいのか、と聞かれれば。
「姉が、妹だから、慕ってくれているのを知っています。もし、私が、妹じゃなかったら、そんなふうに思ってくれるわけがないです」
そう‐‐
「なんて、昔は、思ってました」
でも‐‐
「悠薇は、悠薇だからと。そう言ってくれる、言葉が嘘だと思うときがあります。まだ全部なんて信じられていません。でも、自分の敬愛する姉は、そんな‐‐大した事ない人物だなんて
ほかでもない、妹である自分が、下げるわけにはいきませんから」
にこりと、微笑む。
そして、その表情は、テンタクロウに。
「私は、あなたも、そういう人間であると勝手に、思っています。だって、あなたは一度も、風紀委員から、逃げたことがありません。戦って、必ず、交戦して、
『自分をこんな目にしやがって』と、抗議を、骨という声を使って、大きく、大きく、声を大きくして。あげている。そういう、こと、ですよ、ね?」
今聞いた話から。
「やり方が、あっている、とは思いませんが。私は、すごいと、そう、思います」
震えは、もう、止まっていた。
■テンタクロウ >
「ハァァ……」
さて、どう反論してやろうか。
そう考えていると、喉に異物感。
「うぐぁ」
短く悲鳴を上げて血の塊を吐き出した。
呼吸循環システムにエラーが発生している。
その場で何度も咳き込む。
クソ、脳神経加速剤の反動がここまでとは…!!
「もういい……!」
その声の色は、怒りに染まっていた。
「私がお前と同じであるわけがない……」
「姉の心に寄り添えているお前がッ!!」
「大切な存在なんてものがあるお前が!!」
「私を理解などできるものか!!」
■伊都波 悠薇 >
「テンタクロウさん!?」
血反吐。
それを見て、駆け寄ろうとして、止まる。
近づいて、どうする? 近づく行為は彼にとってリスクでしかない。
それで、敵対行動だと思われたらと。今の会話の時間がなくなるのが、惜しくて。動けない。
あぁ、なんて、打算的。
「寄り添えているように、見えます?」
悲しい、表情。
ざぁっと、風が撫でれば、その表情は、曇って。今にも泣きそうだった。
「私は、誰も『理解』できないんですよ」
なぜなら。
「私は、憧れしか持てない。憧れなんて、理解から最も遠い、感情なんですから」
‐‐だから。
「はい。テンタクロウさん。理解できません。尊い、『反逆者』。今の行為が、正しいとは思えません。でも憧れます」
血を、吐くほどに、声を上げ続けるあなたが。でも。
「テンタクロウさん。抗議を、もっと長く、あげられる、あげ続けて、変えやがったものたちを、変えるために。
声のあげ方は、変えられないのでしょうか」
理解をしていない、あこがれだけだからこそ。
こんな言葉しか、なげることができない、自分を悠薇は恥じた。
■テンタクロウ >
それでも続く言葉は。彼女の声は。
震えていなかった。
「なッ」
その声は悲痛に響いた。
■テンタクロウ > 「何故だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
■テンタクロウ >
半ば錯乱した、叫び。
何故、人を害し続けた私を!! 僕を!!
同情か!? 違う、彼女はそんなこと考えてはいない!!
苦しい!! 苦しい!! 苦しい!!
橘壱の兵装にやられた時も!!
凛霞さんの剄打を受けた時も!!
こんなに苦しい気持ちにはならなかったのに!!
殺すしかないのか……馬鹿が…!!
そんなこと、僕にできるわけがないだろうが!!
仮面を両手で押さえたまま、呻くことしかできない!!
■伊都波 悠薇 >
「…………」
呻く、怪人を見つめる。
苦しい、苦しい。
苦しい、苦しい。
何もできない。もし、ここにいるのが自分じゃなければ、姉であれば。
もしかしたら救えるのだろうかとも、思う。
『いいや』
一歩歩み寄って、見る。
袖を捲る。 素肌が、あらわになり、腕が、見える。
「……骨、必要です、か?」
ふーっと、覚悟を決めたように息を吐く。
狂乱。
やはりと言うべきか。
仮説が、一つ。
根っからの悪人では、ない。
それが、浮上する。本当に心の底からの悪人なら、こんなに苦しそうにしていない。
こんなに、自分が置かれた状況を悲観しない。
なら。
自分が『姉であったのなら』『眼の前の怪人であったなら』
「どう、ぞ」
だったらどうにか、どうにかして。少しでも。
少しでも、苦しみを何処かへといってほしいと。
憧れを抱いたソレに、そう思うのは至って。
普通だ
■テンタクロウ >
即座にマシンアームが少女の腕に絡みつく。
「私をッ!! 無礼ているのかぁぁぁぁぁ!!」
そうだ、このまま少しでも力を入れれば!!
相手の骨を砕いてまた飛び去るだけだ!!
この苦しみから逃れるためなら!!
こんな苦しみから逃げれるだけなら!!
■伊都波 悠薇 >
ぎゅっと、目をつぶった。
怖い。当たり前だ。痛い。
絶対に痛いはずだ。
だから歯を食いしばった。
泣いてしまうと、良くないだろうか、
骨が折れた音が、かき消えてしまうだろうか。
我慢したほうがいいのだろうか。
いいや、そんなの、絶対に無理。
耐えられない。
だから。
「……ぃゃ」
自分で言いだしたことにも責任が取れない。
でももう、漏れ出した言葉は消すことなんてできない。
テンタクロウを、どこまでもちゃんと。
まっすぐ見て、認めていて、そうであると受け入れているからこその。
‐‐漏れ出てしまった、おと、だった。
■テンタクロウ >
「ハァッハァッ」
肺が苦しい。呼吸が、酸素が。
相手の骨を折れ!!
ねじ切らんばかりの力で関節を砕け!!
そして、悠薇ちゃんは。
いや、と小さく言った。
「オゴエエエエエェェッ!!」
心的負荷に、吐いた。
もうマシンアームは相手の腕に絡みついてはいなかった。
呼吸循環システムが死んでいく。
いや、本当に死んだのは。
■伊都波 悠薇 >
「…………」
いつまで経っても、音が響かない。
その代わり、耳に届いたのは嗚咽。
「ぇ……」
目を開けて、手を見れば。
無事だった。そして、そこには何も、巻き付いては、いなかった。
「テンタ、クロウさん?」
ひとつ。仮説がまた一つ。
眼の前の怪人は‐‐この、叫び続ける行為で、負荷を、負っている?
■あの時の声 > 『藤井先輩、また警邏ですか? ダスクスレイの警戒、続いてるけど…』
■テンタクロウ > 『凛霞さん……でも、芥子風くんがこの前ダスクスレイを撃退したって話もあるし』
■あの時の声 > 『先輩、気を付けてくださいね』
■テンタクロウ > 『大丈夫だよ、桃田さん』
■あの時の声 > 『危なくなったら逃げたほうがいいよ』
■テンタクロウ > 『はは……芥子風くん、風紀は正義の味方だよ? 逃げたら、誰が島民のことを守るのさ!』
■あの時の声 > 『先輩』
■テンタクロウ >
悠薇ちゃん……
気がつくと、自分の手には血がべったりと付着していた。
姿も黒い複合金属で覆われている。
周りの風紀委員たちは、みんな僕のことを汚らわしいものを見る目で見ていた。
■テンタクロウ >
「う」
リフターを起動させてその場に浮き上がる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉ!!」
そのまま上部メインアームを目の前の少女に向けた。
ハァァ……誰だこいつは…?
伝播ソリトン砲で吹き飛ばしてやる。
光弾が今にも放たれそうな、白い光が集中して。
■伊都波 悠薇 >
「はい」
そう、『それでも』。
声を上げ続けるから。
「すごいな」
避けられない。避けれる、距離でもない。
「ごめんなさい。ちゃんと、我慢、できなくて」
眼の前の、少女は。
まっすぐ、まっすぐ。自分のことを恥じながら。
白い光の集中。風が、舞う。
前髪が揺れて。今度は、ちゃんとと。
「さようなら、テンタクロウさん」
優しく、頑張って。笑みを作って。まっすぐ、見つめて。
『終わり』を待った。
■テンタクロウ >
人間を一撃で吹き飛ばすだけの威力。
伝播ソリトン砲を撃った。
■伊都波 悠薇 >
吹き飛ぶ。
体が、舞い、まるで紙くずのように飛んでいく。
頭が回らない。何が起こったか、わからない。
ドン、っという壁に当たる音。
唯一、救いがあるとすれば、その受け方は無意識の受け身を取っていたことか。
いいや、それでも――無事であるかどうかは、怪しい。
(ほら)
なぜなら駐車場の壁に、あたったあと、ベコンと、凹みができるほどの、威力。
手心を加えてくれたかは、定かではない。
(理解なんてしてない。だからこんな、ことになってる)
当たり前だ。
意識が消える、間際で思ったのは。
(ちゃんと、話ができてよかった)
そこで、意識が途切れて。
吹き飛んだ、壁の音を聞いたからか、どこかから、バタバタと足音が、響く。
何人かがこちらへやってきているようだった。
■テンタクロウ >
壁まで転がる少女。
何故、こいつは私の眼の前に居たのかは知らんが…
正しく報いを受けたな!!
ハハハハ!!
そうだ、私に戦いを挑んで来い!!
「ハァァ…来い……風紀委員ども…」
そうだ、僕はダスクスレイを倒す。
みんなとの約束があるんだ。
「私に勝てるものならな!!」
駆けつけた風紀委員に襲いかかる。
この私に並び立つものなど存在しないことを。
証明するために。
■伊都波 悠薇 >
倒れ伏した、少女は。
そのあと保護された。
意識のない状態。だけれど、死んではいない。
普通であれば、重症であったろうが、今までの努力が実を結んだ、のだろう。
そうして、目を覚ましたのは。
不思議と、その日の、夜、であったという。
青い薔薇と、怪人の最初の邂逅。そしてもしかすると、最後、だったのかもしれない。
ご案内:「学生通り」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ご案内:「学生通り」からテンタクロウさんが去りました。