2024/12/25 のログ
ご案内:「Don′t wake me from the dream」に藤井 輝さんが現れました。
藤井 輝 >  
僕は夢を見ているのか。
そうか、死ぬ。
僕は死ぬんだ。

本当に死は忘却と同義なのか。
全てが今からわかる。

芥子風 菖蒲 >  
「お疲れ、センパイ。って……なんか眠そう?」

藤井 輝 >  
芥子風くん……?
ど、どうして。僕は死んだんじゃなかったのか?

桃田 舞子 >  
「先輩はたくさん苦しみました。もう自分を許してあげてください」
「贖ったから許されるとか、許されなかったから罪が重いだとか。もういいですよ」

藤井 輝 >  
桃田さん……
そうか、これは。

レイチェル・ラムレイ >  
「もういいんだ、死ぬ間際くらい。お前だって許されたいはずだろ」

伊都波 凛霞 >  
「先輩」

伊都波 悠薇 >  
「先輩」

藤井 輝 >  
「やめろ!!」

藤井 輝 >  
「彼らがそんなこと言うわけないだろうが……」
「地獄の責め苦にしても杜撰だな、獄卒も余程ヒマなのか?」

足に義足の重みがない。
だからか、僕は再び憎悪に苛まれていた。

ダスクスレイ >  
「どうした、笑え」
「お前のために用意したショータイムだぞ?」

仮面の男が闇から這い出てくる。

「死に際し、人は諦めの果てに真理を悟る」
「即ち諦観忘我のアパテイア……」

一本の刀を手に肩を揺らす。

藤井 輝 >  
「ダスクスレイ……!!」

これも地獄の前菜なのか?
だとしたら捻じくれた趣味だ。

「貴様……!!」

ダスクスレイ >
「これが気に入らなければ、お前に別のプレゼントをくれてやってもいい」
「自分の体に限り、体内時間を自在に操れる異能だ」

愉快そうに仮面の男は笑う。

「奇跡の生還だ、娑婆で拷問魔に戻ってもいい」
「ああ、最近の流れだとヒーロー側に助力するのも流行りかな?」

「テンタクロウ・リナーシタとでも名乗るも一興だろう? フフフ」

藤井 輝 >  
足……僕の足が治る異能…
生きられる……まだ、生きられる…?

ふ、ふはは。
ははははははは!!

「ハァァ……私を無礼(ナメ)るな、亡霊」
「お前の正体は見破っている……だが」

全身を複合金属が覆っていく。
ガスマスクにも似た仮面を被って僕は……私はダスクスレイを名乗るイツワリを睨んだ。

「その前に八つ当たりでもさせてもらおうか」

触腕の六連撃。

ダスクスレイだったもの >  
触腕に弾かれて闇の欠片になって散っていく。
ガラスの向こうにいるようなくぐもった声が響いた。

「不満か」

藤井 輝 >  
「やはり、常世ノ鐘」
「いや……常世神と呼んだほうが通りがいいか?」

ゆっくりとガントレットに包まれた手を持ち上げて。
ゆらゆらと手を揺らす。

「光との戦いで私に異能を渡したことには感謝はするが」
「私の死は私だけのものだ、もうお前に渡せるものなど何一つない」

「感謝の言葉だけくれてやる、ありがとう、もう失せろ」

ダスクスレイだったもの >  
「やはり」

「人間は素敵だ、思いも寄らない感情を吐き出す」

それきり闇の気配は薄れ、周囲には何もない空間が広がるばかりだろう。

藤井 輝 >  
「ふぅ」

複合合金に覆われたまま溜息をつく。

「これでもう邪魔者は入らない」

全ての輪郭が滲むように溶けていく。

「ようやく会えるね、光」

藤井 輝 >  
茫洋に溶けていく世界の中で、祈る。

──聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。
──楽園を追われた黒い羊よ、永遠に神の家から離れなさい。

「ただいま、光……」

そうして僕は意識を手放した。

公式記録 >  
12月25日。21時28分32秒。
大規模な破壊を齎した甲種犯。
かつてテンタクロウを名乗った男は隔離病棟で息を引き取った。

今まで面会を拒んでいた彼の両親は遺骨の引取を拒否。
藤井輝は常世島の墓地に埋葬された。

聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。
生前、第十三補習室で彼のその言葉を聞いた者は少なくない。

ご案内:「Don′t wake me from the dream」から藤井 輝さんが去りました。