2015/06/24 - 20:55~00:56 のログ
ご案内:「中波放送送信所跡」に三千歳 泪さんが現れました。<補足:【乱入不可】金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。重たそうな巨大モンキーレンチつき。>
ご案内:「中波放送送信所跡」に桜井 雄二さんが現れました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入不可)>
三千歳 泪 > 今日は久々の大仕事の日。私一人じゃ間に合わないから桜井くんにヘルプを頼んで待ち合わせをした。
目印はこの送信鉄塔。研究区の摩天楼にも負けないくらい背が高いから、どこにいたってよく見えるはず。
そのてっぺんにいる私には、地上のみんなが砂粒みたいに見える。

いた。桜井くん。水色の髪はけっこう目立つんだよね。

「おーーーーーーーーーーーーーーい!!! 桜井くーーーーーーーーーん!! 来てくれたんだーーーーー!!」

鉄塔のハシゴを一段一段下りながら風に負けないように声を張りあげる。聞こえてるのかなー。

桜井 雄二 > (三千歳泪に呼ばれて来たところは送信鉄塔)
(過去、どんな風にこの建造物が使われていたのか)
(この建物が見ている夢から醒めさせるような、彼女の大声)

来たぞーー!! 危ないから、気をつけろーーー!!

(珍しく大声を張り上げたのでちょっと咽る)
(とにかく梯子を降りる時に注意を払ってもらいたかった)

三千歳 泪 > 「わかったーーーーーーーーーーー!!!! ありがとーーー!!!」

ぶんぶんと思いっきり手を振って答えた。風も弱まってきたみたい。ゴーグルを外して前髪にのせた。
地上では今日の依頼人たちが待っている。その名もずばり《AMラジオ同好会》。メンバーは男子が七割くらいかな。
てんでばらばらの寄り合い所帯だけど、たったひとつの共通項があの子達を結びつけてる。みんなラジオが大好きなのさ!

「うーーーん気持ちよかったよ! こっちの塔は大丈夫。見た目以上にしっかりしてたし、けっこうお金かけたんだろうねー」
「改めましてグッドアフタヌーン桜井くん!! わかりやすかったでしょ? ここはどこからでも見えないと駄目。ちょっと特別な場所なんだ!」

桜井 雄二 > だから、梯子の途中で片腕を振るのは……!
(そわそわしながら三千歳泪が降りてくるのを待つ)

(待っている間にAMラジオ同好会に挨拶を済ませる)
どうも、生活委員会で怪異対策室三課の桜井雄二だ。
今回はよろしく。(軽く会釈して挨拶完了)

ああ、グッドアフタヌーン、泪。
そうなのか……? 確かに目印としてわかりやすかったが。
(あまりラジオを聴かない桜井にとってピンとくる場所ではない)

三千歳 泪 > 「桜井くんは「ラジオ」って知ってる? 聞いたことあるかなー。私はいっつも聞いてたよ。いわて吉里吉里FM!!!」
「週末土曜の夜には最新のヒットチャートを流してくれる番組があってね。たまに超豪華ゲストもきちゃったりしてサタデーナイトフィーバー!!だったんだよ!」
「遠野の山奥にいた私が時代からとり残されずにすんだのは…ううん、今の私がいるのはいわて吉里吉里FMのおかげなのかも。ありがとういわて吉里吉里FM!!」
「ここはそういう放送を中継して島じゅうに流してた場所。でも、外の世界の混乱であちこちの局が閉鎖したりなんかして――」

へたなお化け屋敷よりもドロドロに荒廃した建物を見上げる。人の手が入らなくなってからずいぶん経ってしまったらしい。
窓ガラスは割れたまま放置されて、分厚くつもった埃の中に割れた蛍光灯が転がっていた。

「このありさまってわけ! 中は一体どんなことになっているやら、それは誰にもわからない…わざわざ君を呼んだ理由、わかってくれたかな」
「君がどんどん片付けて、私は設備をよみがえらせる。こういうの何て言うんだっけ…二人のはじめての共同作業? うんそう、だいたいそんな感じ!」
「ちなみに同好会の人たちは全員君の部下になる。好きに使っちゃっていいってさ!!」

桜井 雄二 > ラジオは一応……緊急時における災害情報や避難誘導に関して高い信頼性を誇っているからな。
いわて吉里吉里FM………?(初めて聞く単語だった)
なるほど。遠野の山奥でも世間の情報が知れたのは、いわて吉里吉里FMがあったからだったのか。
……というか、遠野の山奥というのがどの程度田舎なのかがわからない。

(鉄塔を見上げた)
(人の夢が詰まっていたものならば、もう一度息を吹き返してもいい)
(素直にそう思えた)

わかった、生活委員会として仕事をするだけだ。
(無表情に頷いて)楽しそうな『二人のはじめての共同作業』じゃないか。
これだけ大きければ掃除のしがいもある。
(話を聞いてAMラジオ同好会のメンバーに話しかける)
というわけだな、みんなでこの鉄塔を生き返らせよう。
掃除の基本『高いところから順』を忘れるな!
割れモノは気をつけて扱う、まずは棚や蛍光灯の点検からだ! はじめよう、みんな!

三千歳 泪 > 「たまに妖怪が出るぞ! でもそれだけだよ。半径三時間の圏内にコンビニ三つもあるし。今度里帰りするときついてきなよー!」
「やる気十分だね! 掃除のおじさん的には垂涎の物件だったかな。私も手伝うつもりだよ。片付かないと作業できないしさ!」

士気も高く気炎をあげる同好会の人たち。これから自分たちのお城になる場所なわけだから、やる気もでるってもんだよね。
消耗品は女子たちが一箇所にてまとめてくれてスタンバイ済み。男衆は桜井くんの号令を待ってる。

「いいねー隊長って感じ! 割れたガラスはここにまとめる。OK! はじめるよー」

好き嫌いはあんまりない方だと思ってるけど、私は人知れずこつこつがんばる働き者が好き。最近だんだんわかってきたんだ。
クモの巣を払いながらぞろぞろと建物の中へ。埃が立って視界が悪くなっていく。

「うっ…窓開けよう!? 電気は通ってるはずなんだけどなー」

桜井 雄二 > たまに、の頻度で妖怪が出るのか……俺の実家だと三時間以内という範囲のコンビニは数え切れないんだが。
……泪の里帰りについていったら俺はなんて紹介されるんだ………?
(お父さん、娘さんを僕にください、そんなことを言う場面なのだろうか)
だから掃除のおじさんじゃないと何度言ったらわかる。ああ、手伝ってくれ、泪。

(AMラジオ同好会のみんなの気合に満足げに腕組み)
いいぞ、掃除の基本の三つのKを教えよう。
すなわち、気合、気合、気合だ。
気合さえあればこの鉄塔を必ず綺麗にできる!
みんなでやってやろう!!

(舞い上がる埃にマスクを装備して)
換気には気を使おう。これだけの人数がいるんだから必ず終わる、焦るな。でも気合だ。
(気合を重点的に強調して掃除を始める、いつもは一人で掃除をしているので楽しい)

三千歳 泪 > 「桜井くんは桜井くんだよ。私の大事な友達で、特別な人! 遊びにおいでよ。きっとかわいがられるよー」

力こそパワー!みたいな脳筋スローガンに負けないくらいパワフルな大合唱がこたえる。楽しそうだなー。

クッションが破れたイスに脚が錆びた長テーブル。大きなごみから運び出されて建物の前に並べられていく。
資料室のような場所には不規則に開けられた書類棚。その下には茶色く酸化した書類がばらばらに散らばっていた。
左手の小部屋には外界から持ち込まれたプロモ企画のポスターとか、色あせた印刷物がそのままになっている。

運び出すもの一苦労だから、その場で直せるものはどんどん直していって探索をつづける。
奥まった部屋のひとつ。壁に備え付けの設備には通電されている様子がなかった。

「外に換気の装置があったから、どこかに自家用のジェネレーターがあるはず。地下に下りる階段とかないかな」
「そっちはどう? エレベーターが使える様になるといいんだけどなー」

桜井 雄二 > ……ああ、わかった。次の機会にな。
(頬を掻いて視線を逸らす、照れているのだ)

いいか、まず前もって用意しておいたこのちょっと長いだけの棒。
これに雑巾を巻いて、輪ゴムで固定する。
これを生活委員会に伝わる伝説の生活委員棒といい…
(過去に流行った掃除グッズを得意げに解説しながら)

(ポスターを剥がした痕は目立つが、じきに全部真っ白にしてやろう)
(そんなことを考えながら掃除を進めていく)

こっちに下りる階段があったけど、どこまで繋がっているかはわからないな。
電気が使えるなら掃除も一気に進むんだが。

三千歳 泪 > 「ほんとだ! ビンゴ!! それっぽいのがあったよ。お手柄だねー桜井くん!!」
「行こう。お先にどうぞだよ桜井くん。何か出てくるかもしれないし。ほら、黒くて早くてGがつく…」

まだ一匹も見かけていないのが不思議なくらい。クモの巣があったから生き物はいるはずなんだけど。
桜井くんの背中を押しつつ建物の地下構造を思い描いて、自家用発電機の置かれた電気室へとたどりつく。

「これが私のさがしもの。まちがいないね!」
「―――……っっひゃあぁぁぁあ!!? なななななんかっ!! 今見た!? 桜井くん見た!?!!」
「あの箱のかげだよ!! 黒い影がぶわーって!」

明かりを向けたわずかな一瞬によぎったもの。黒いアイツより大きいけど、バスカヴィル家の犬よりは小さい何か。
悲鳴をあげて飛びついて、それが走りこんでいったボロボロの段ボール箱に懐中電灯を向ける。暗闇の中で何かが光った。

桜井 雄二 > ………まぁ、こういう場合に女性を先に行かせるほど薄情な男ではない。俺は。
それに俺の氷は黒くて速いのより素早く精密な動きをするから大丈夫だ。

(階段を降りるにつれて光量が絞られる)
(電気室に辿り着いて、暗闇の中の気配に気をとられる)

なんだ……? 待て、泪。俺の視界を熱探知に切り替えてみる。
黒い影の正体も見ればわかるさ……知っているものならな。

(飛びつかれると、何か柔らかな感触がするが今は気にしないよう努めた)
(ボロボロのダンボール箱に近づきながら)
気をつけろ、いざという時には氷を使う。俺から離れるな、泪。

三千歳 泪 > 金色に光る一対の瞳。それは謎の生き物がそこにいるということ。まだ鎮まらない混乱が半分、怖いもの見たさも半分あって。
桜井くんの後ろから懐中電灯の照明を向けてじりじりと近づいていく。そして――。

「………ねこ。ねこだ! ねこの親子だよ桜井くん。黒いのだけじゃない。茶トラと白い子もいる!」
「うーーーんなんだねこかー。びっくりして損した気分だ! でもヘンな謎生物じゃなくてよかったねー」
「放棄された実験施設っていかにもなロケーションだしさ。なにがでてもおかしくない感はある…あるよね?」

「とにかく、これで仕事にかかれるね! 明かりがないと真っ暗だから、こっちを照らしといてくれる?」

ねこちゃんは女子にまかせて、工具を出してジェネレーターと配電盤の様子を調べる。となりのCRTモニターは管理システムの画面かな。
この島が築かれた頃の建物ではわりとよく見る組み合わせだ。ちょっと旧式で、たぶん型番までそっくり同じ。
だから、復旧までそんなに時間はかからなかった。程なく、ディーゼルエンジンによく似た駆動音がして建物に明かりがともる。

「ここまでくれば大丈夫。折り返し地点は過ぎた感じがあるねー。でもまだまだ上の階が残ってる。やるぞー!!」

桜井 雄二 > ………なんだ、猫か。(ほっと胸を撫で下ろして視界を通常のものに戻す)
猫か…………ねこ…(視線が離せなくなる)
(猫が大好きな桜井雄二17歳だった)

ああ、怪異だったらどうしようと思っていたところだ。
だがこんなに可愛くて愛らしくて可愛い猫なら大歓迎だな。

(灯りを手に)わかった、電灯は任せろ泪。

おお……電気が生き返ったか。
お疲れ様だ、泪。よし、徹底的にやってやろう。
……古くて使えなくなったものは、悪いものじゃない。
そんな当たり前のことをここにいると思い出せる。
(力強く首肯して)やるぞ。(やる気をアップさせて残った仕事に向かう)

三千歳 泪 > 「そっかー桜井くんはねこが好きかー。私も大好きだよ!! いつか私のねこ画像コレクションをみせてあげよう」
「あの子たち、このまま局のマスコットにしちゃったらどうかな? ねこも同好会の人たちもまんざらでもなさそうだしさ」

そんなこんなで片付けはなんと従来の三倍速(当社調べ)。文明の利器が使えるってやっぱりすごいことなんだ。
桜井くんはといえば、まるで水を得た魚みたいな活躍ぶりだ。気持ちいいくらいみるみる片付いていく。さすがその道のプロだよね。
桜井くんが褒められると自分のことみたいに嬉しい。建物に人のぬくもりが取りもどされて、熱い魂が吹き込まれていく。

放送局としての設備は正直期待以上のものがそろってた。ひとつよみがえるたび歓声があふれる。ボルテージはあっという間に最高潮だ。
ここを作った誰かはいつか自前で島のローカル局をやるつもりだったのかも。その遺志を継いでくれる人たちがここにいる。その日が来たんだ。

「桜井くん桜井くん!! レアものみつけたよ! すごいお宝!! これ何だと思う?」

桜井くんの手を引いて、大きなスピーカーがついた音響機器のある部屋へ。ダンボール箱のひとつから磁気テープのカセットを拾う。

桜井 雄二 > ああ! 見せてくれ!(ここだけは無表情でもローテンションでもいられない)
いいと思う。猫にとっても、同好会の人たちにとっても、な。
……ここであの猫たちと触れ合えるならまた来たいな。掃除でも何でもするから。

(指示することこそ最初は慣れなかったものの、みんな気さくに話を聞いてくれたおかげで何とかなった)
(こんなに掃除の話を人と共有したのは久しぶりだし)
(ラジオの話を人から聞くのも新鮮で驚きがいっぱいだ)

……同好会のみんな、いい人だな。いい仕事ができて嬉しい。
それに……泪がテキパキとあちこちを直したおかげで…ん?
(手を引かれて部屋に入ると、磁気テープのカセットがあるのだが)
……これはなんだ? 泪。記憶媒体のように見えるが。

三千歳 泪 > 「ふっふっふ、カセットテープだよ!! うちにいた頃はいつもこれで音楽聞いてたんだ。なつかしいなー」
「でもこっちじゃ全然見ないよね? 不思議。すっごく不思議な話だよ! これ何度でも録音できちゃうスグレモノなのに」
「いわて吉里吉里FMのヒットナンバーをこういうのに録ってさ、何度も何度も聞いたりなんかして。小さい頃はね、ほんとそういうのばっかりだったんだ」
「えへへへへ。これも古そうだし、たぶん昔の音楽だよね。見て、ここにタイトルを書きこむの。なになに…”Never Let Me Go”?」

私の家にもまだテレビがなかった頃、ラジオが歌う流行りの曲とカセットテープに封じられた調べが外の世界のすべてだった。
甘ったるい歌もほろ苦い歌も好き。オペラはよくわからなかったけど、外国の歌の中にもけっこう気に入ってるのがあったんだ。
電源を入れてカセットテープをセットし、巻きもどしのボタンを押し込んではじまりの時へ。

再生ボタンを押せば流れだす。私はこの歌を知っていた。
ジャズの番組ではおなじみの曲。定番中の定番で、いつの間にか記憶に刷り込まれるほどのスタンダードナンバーだったから。

「―――――『わたしを離さないで』」

桜井 雄二 > カセットテープ………?
(単語を聞いたことはあるが、それが目の前のものだとは結びつかなかった)
何度でも録音できるのか。それは便利じゃあないか。(感心して)
そうか……泪の故郷ではこういうものを使ってラジオを録音していたのか…

(そして流れ出すメロディアスな旋律に目を細める)
わたしを離さないで。Never Let Me Goか……
(鸚鵡返しをしたのは、上の空だったからかも知れない)
(あまりにも美しい音楽、色あせない定番中の定番)
……こういうものを、ラジオで流したら…みんな聴くだろうにな。
世界が不完全であればあるほど、音楽は綺麗に聴こえるのかも知れない。

三千歳 泪 > 『わたしを離さないで。きみが行ってしまったら、わたしは途方に暮れるから』
『きみがいない一日は千時間くらいに感じちゃうかも』
『きみに抱かれたその時から、わたしの世界は変わってしまった』
『それがすべてのはじまりだった』

昔々のそのまた昔、おかーさんが意味を調べて教えてくれた。当時の私にはいまいちピンと来なかったけど。

「とかとか、そんな歌詞だよ! 私の性格とはちょっと違うかもだけど、言いたいことはわかる気がする」
「わかるようになった、のかな。おかげさまでさー。大人の階段のぼっちゃったなー!」
「古いテープばっかりだけど、これだけあれば貴重な音源も混ざってるかも。これは期待できそうだね、桜井くん!」

あちこち煤がついて汚れてるけど、それは桜井くんも同じこと。これは働きものの証。
がんばった勲章みたいなものだから、恥ずかしさなんて微塵も感じない。健闘をたたえて、右の拳を突き出した。

「お疲れさま、桜井くん。君のおかげでなんと一日で終わっちゃったよ! 自分でもびっくりだよこれは」
「えっと、それでね! 私の家…工房みたいな場所、この近所なんだ。寮じゃなくてさ。私はこっちがホームグラウンドだから。シャワー浴びてかない?」

桜井 雄二 > ……うん。(歌詞を聞くと、それはラブソングのようだった)
(いや、タイトルから察せはするんだけれど)
(意識してしまうと、目の前の少女を抱きしめたくなってしまうだろうから)

……いい歌詞じゃないか。俺の心にも響いたよ。
そうだな、一つ一つ確かめてみないと。
まさに宝の山だな、泪。(無表情に顎に手を当ててカセットテープの入ったダンボールを見る)

今日はお疲れ様だな、泪。(右拳を軽くコツンと合わせて)
……いいのか?(沈思黙考、それからしばらくして)
それじゃシャワーを借りようかな。このまま寮に帰るよりずっといい。
ありがとう、泪。(大きく伸びをして)なぁ、泪。少し話を聞いてくれないか。

……人と一緒に何かをするのって、素晴らしいと思ったんだ。
ラジオの話をしたり、掃除の話をしたり、一緒に掃除をしたり、この鉄塔を直したり。
この喜びを、俺は泪と一緒にたくさん分かち合いたい。だから……
これからもよろしくな、泪。(柔らかく微笑んだ)

三千歳 泪 > 「いいのいいの。こういう時は遠慮しない! こちらこそ、どういたしましてだよ」
「とりあえずおなかが膨れるくらいのモノでよければ、軽くごはんも出せるから。自分の部屋だと思ってゆっくりしていくといいよ」

「うん? そっか。そうだねー。だれかに喜んでもらえたら私も嬉しい。一緒に汗をかいたら尚更だよ」
「また君の手が借りたくなったら呼んでいいってこと? ありがと。すごく助かる!! 頼りにしてるよ、桜井くん!」

二人っきりだと思ってついつい話し込んでしまった。副会長ちゃんが咳払いしてわざわざ開いたドアをノックする。
そのまま呼ばれてついていくと、同好会のみんなが年代モノらしいアンティークの卓上ラジオを囲んで聞き入っていた。
流れる歌声は”Never Let Me Go”の次に入っていたはずの曲。歌手も同じ。レコーディングの感じも似てる。


つまり。

さっきの部屋は。



「~~~~~~~~~~~~ッッッ!!!!!! うわぁぁーー!!! うわぁー!!! うーーーわーーーーー!!!!!」

顔から火が出そうなんてものじゃない。ほんとに出てるんじゃないかなこれは。桜井くんの影に隠れて、背中にガンガン頭突きする。
そのあとの事はよく覚えていない。ラジオ放送は大復活。記念すべき最初の番組は彼と私の…なんだろうあれは。
シャワー浴びたあと? ご飯をつくって、食べてもらって。ごろごろしてたら夢の中。それだけだよ。たぶんそう。

桜井 雄二 > (顔を真っ赤にして俯いた)
(二人きりだと完全に油断していた)
(背中に泪が頭突きをしてくるが、その衝撃が正気を保たせてくれた気がした)

わ、忘れてくれ!! さっきの話は、全部っ!!

(耳まで真っ赤になって、もう無表情なんてやってられない)

忘れてくれぇー!!

(大分恥ずかしい、けれど、大事な思い出がまたひとつ)

ご案内:「中波放送送信所跡」から三千歳 泪さんが去りました。<補足:【乱入不可】金髪碧眼ダブルおさげの女子生徒。重たそうな巨大モンキーレンチつき。>
ご案内:「中波放送送信所跡」から桜井 雄二さんが去りました。<補足:不燃不凍のスーツに身を包んでいる。(乱入不可)>