ご案内:「常世電脳領域 《電脳転移荒野》」に
《銀の鍵》さんが現れました。<補足:【乱入歓迎】 正体はNo47 橿原眞人/黒を基調としたサイバーウェア。多くの自作プログラムを積んでいる。>
《銀の鍵》 >
ワイヤーフレームで構成された世界の中に橿原眞人は――《銀の鍵》はいた。
師匠が囚われているはずの《ルルイエ領域》、そこに突入するための調査に来ていた。
今《銀の鍵》はいるのは、常世電脳領域の一領域。《電脳転移荒野》であった。
電脳領域には、常世島が再現されている。とはいえ、完全に再現されているわけではない。
現実に存在する転移荒野は、非常に不安定な場所で、異界の「門」が良く開く場所であった。
そして、電脳世界の《転移荒野》も同様であった。
ここは、非常に不安定な領域であり、この深淵にこそ、《ルルイエ領域》はある。
「……なんだ!?」
サイバースペースを駆けていた《銀の鍵》であったが、突如自らの体に異変を感じ、立ち止まる。
《銀の鍵》 >
「ぐ、うっ……なんだ。これは……反応、している?」
《銀の鍵》はサイバースペースの中で、右腕を抑える。
脳裏に、何かが現れていた。それは銀色の鍵のイメージ。
「《銀の鍵》が反応しているのか……!? なんだ、何が起こってるんだ……!?」
不意に、《電脳転移荒野》の中に設けられたウィンドウに、何かが映っていた。
何かのニュースであるようだ。情報は未だはっきりとしておらず、報道部のニュースは混乱しているようだ。
場所は落第街のようだ。
「……「門」?」
《銀の鍵》は、その映像を見て小さく呟いた。直感的に、わかったのだ。
それは似ていた。かつて眞人が家族を失った時に現れた「門」に。
そして、先日電子の世界の中で潜り抜けた「門」に。
それらが同一の存在であるのかどうかはわからない。だが。
眞人の《銀の鍵》はそれに反応していたのだ。
《銀の鍵》 >
「……いや、違うか。あれは、俺が見たものとは、また少し違う」
あの「門」は確かに、かつて眞人が見た「門」に似ているようであった。
とはいえ、完全に同一のものではないのだろう。眞人が現在目指しているのは電脳世界の「門」だ。
「だが、この胸騒ぎはなんだ……あれは、ダメだ。あれは、来てはならないものだ。
師匠、師匠は、あれを――?
クッ……!」
右手が自然に伸びる。その手にはいつの間にか《銀の鍵》が握られていた。
「……ひらかねえ、ぞ。俺は……!」
《銀の鍵》にはわかった。あの地上の「門」に反応して、こちらの「門」が近づいてくるのを。
一度あの「門」を見たのだ。故によくわかる。
あの「門」の向こう側には師匠がいるかもしれない。
だが、今では、あの時幻視した怪物たちに勝てるはずがない。
今のままでは――
《銀の鍵》 >
今地上で何が起こっているのかは、情報が錯綜しているためよくわからなかった。
多くの生徒が何かと立ち向かっているらしい。風紀委員会なども出動していることだろう。
おそらく、カタはつくはずだ。それよりも――
「……ッ!?」
《銀の鍵》の前に「門」が現れていた。
奇怪な物だ。アーチ状の門だ。
それに、手が伸びそうになるのを力ずくで止める。自らの手にいくつものプログラムを起動し、手を縛る。
「……何なんだよ。この「門」が、俺の《銀の鍵》と何か関係があるって、いうのかよ!!」
『そうだよ』
不意にサイバースペースに声がした。《銀の鍵》の脳内に滑り込んでいくようにして。
ハッと後ろを振り向けば、そこには少女がいた。
《電子魔術師》――眞人の師匠……それとよく似てはいるが。
嘲笑を浮かべたようなその表情は、師匠にまったく似ていなかった。
「……なんだ、お前……!」
《銀の鍵》 >
『初めまして、僕は《電子魔術師》――君の師匠だ』
「なんだと……?」
《銀の鍵》は、眞人は、電子の仮面越しに《電子魔術師》を名乗った少女を睨む。
あるはずがない。確かに、その身は師匠とうり二つであった。
気配も全く同じと言っていい。白い髪、褐色の肌、赤い瞳――何もかもが同じだ。
その、嘲笑を浮かべた表情を除いては。
「違う、お前は師匠じゃない。誰だ。ハッカーか!?」
『莫迦だなあ。僕がそんな風に見えるのかい? 「鍵」の君は』
そんな存在でないことは眞人にもわかっていた。師匠と気配が同じ。
そして、《大電脳図書館》出であった、黄衣を纏った存在に似ていた。
眞人は戦闘用のプログラムを起動させる。だが、右手は今自由に使えない。
『……まあ、そうだね。君が師事していた《電子魔術師》そのものじゃない。
でも、同じ存在だよ。今は理解できないかもしれないけどね
理由はよく知らないけれど、どこかの誰かが「門」を開いてくれたみたいでね。
こうして僕も一時的にここに来られている、ってわけ』
ご案内:「常世電脳領域 《電脳転移荒野》」に
ルナさんが現れました。<補足:【Noさ3 交流歓迎】銀髪青目のぼんやりした少年。今はひとり。>
ご案内:「常世電脳領域 《電脳転移荒野》」から
ルナさんが去りました。<補足:【Noさ3 交流歓迎】銀髪青目のぼんやりした少年。今はひとり。>
ご案内:「常世電脳領域 《電脳転移荒野》」に
ルナさんが現れました。<補足:【No3 交流歓迎】銀髪青目のぼんやりした少年。今はひとり。>
《銀の鍵》 >
「わけの、わからんことを……」
左手に電子の刃を出現させる。だが、相手が師匠と同じ《電子魔術師》というのなら、こんなものでは勝てるはずがない。
電子魔術師は電脳世界において神の如き強さを発揮する。電脳世界において、《電子魔術師》は普通のハッカーとは違う。
電脳世界への没入率は100%だ。存在ごと没入してしまうのだから。
故にそうであるならばあまりに状況は悪かった。
目の前の、師匠に似た《電子魔術師》は薄い笑いを浮かべていた。
『安心してくれ。別に、君に危害を加えるつもりはないんだ。
ただ、君には早くあそこに来てもらわないといけなくてね。地上で「門」が現れたために、僕も動けるようになってね。
だからこうして、導きに来てあげたのさ。戦うつもりはないよ。
君にとっても、いいことだと思うけど?』
「……ふざけるな! 何も説明になってねえよ!
それに、そんなわけのわからん誘いに乗ると思うか……?」
ルナ >
強引にアクセスをしようとする気配がひとつ。
それは、届くだろうか。
《銀の鍵》 >
『……おや、少しまってほしい。お客さんらしいね』
《電子魔術師》を自称する少女は、不意に、この領域にアクセスしようとする者を感知したようだ。
今やこの領域は《電子魔術師》の世界だ。同等の力が無ければ、アクセスは出来ない。
『面白そうだね、受け入れてみよう』
そういうと、アクセスしようとする者に、道が開かれた。
ルナ >
ふらりと、其処に現れたのは銀髪の少年。
その姿には見覚えがあるかもしれない。
「……タイミング、悪い……」
力なく《電脳魔術師》のほうを睨むと、
《銀の鍵》の隣へと近づこうとする。
《銀の鍵》 >
「……お前」
現れたのは銀髪の少年。たしか、以前電脳領域で会ったことがある。
誰かを探しているとのことだったが、結局眞人は大した情報を見つけられなかった。
「……何をしに来たんだ。どう考えてもあいつがヤバいのはわかるだろ。
奴の狙いは俺だ。さっさと逃げろ!」
『まあ、いいじゃないか。どの道、同じことだよ。
僕はさっきからいっているように、君と戦うつもりはなくてね。
君を導きに来たんだ……君の「師匠」のもとにね』
「なんだと……!?」
《銀の鍵》の反応が変わる。食いつくような目だ。
「師匠の、所に……?」
『そう、君の師匠のところに。
……そこの君も、行ってみたいかい? 「門」の向こう側に』
ルナに向けて、《電子魔術師》を名乗る少女は言う。
ルナ >
「……それは、『窮極の門』の先?」
嫌な予感しかしない。
下手をすれば、自分と、ここにいる《銀の鍵》だけではない。
現実の常世島にいる人たち。
今、『門』の前で奮闘する人たち。
それどころか、もっとたくさんの人を巻き込むことも、
もしかしたらありえるのだろうか。
興味を持ってしまったため、それ以上のことは知り得ない。
言葉少なに、それでも慎重に言葉を選びながら問いかける。
《銀の鍵》 >
『さあね。今地上に現れようとしている「窮極の門」は確かに、ヨグ=ソトースの門に違いない。
だけど、それも一つの側面にすぎない。外なる世界に繋がる「門」は、この世界において「窮極の門」だけとは限らない。
僕が言っているのは、この世界――電脳領域の「門」のことさ。これもまた、一つの「窮極の門」だ。
まだ星の位置は上古のものになっているわけじゃない。たまたま地上で「門」を開いてくれたからね、時空のゆがみが生じたわけ。
そのおかげで僕がここに来られたというわけだよ。別に、地上で行われていること自体は僕に関係がないね。
ただ、「門」が現れたことが重要なんだ』
要は、《銀の鍵》に用があった。地上に「門」が出現したはずみで電脳世界の「門」も開きかけているということなのだろう。
そして、ルナが心配しているような「たくさんの人を巻き込む」ということは、今はまだ起こらないということだ。
少女は愛らしい笑みを浮かべながら《銀の鍵》へと近づき始める。
「――来るな。お前は師匠じゃない。お前は、別の何かだ!」
『酷いな。確かに違う存在だけど、同じなんだよ。なんだろうね、陰と陽とでもいうのかな?
まあいいさ、僕の目的は君を導くことだけさ――早く来てくれないと、僕も困るからね』
そういうと、少女はふわりと飛び立ち、《銀の鍵》の胸に飛び込むようにして浮き上がる。
「なあっ……!?」
ルナ >
「…………っ」
歯噛みする。
《電脳魔術師》の言葉を頭の中で整理して、
自分の行動の軽率さに腹を立てた。
つまりは、逆も言えるのだ。
こちらの「門」とあちらの「門」に
直接の関係はない。
ただ、あちらの「門」がきっかけになっただけ。
こちらの動きを止めても、
向こうの助けにはならないということだ。
どうするべきか、一瞬だけ迷い。
《銀の鍵》に近づこうとする少女の動きを止めようと試みる。
《銀の鍵》 >
『……ハハ、ダメだよ。悪戯したらさ。僕は「鍵」に用があるんだ。
別に君にも、地上の「門」にも興味はないよ。ロストサインの「門」ならまた別だけど。
あれも今すぐに来るわけじゃない――だから、邪魔をしないで。電脳死したくないだろう?』
ふわりと浮きあがりながら、ルナへと笑みを向ける。
赤い瞳に吊り上る口。電脳世界においてすら、それは人知の存在の気配を纏っていた。
「やめろ、くるなっ……!」
『――《コード・ルーシュチャ》』
褐色の肌の少女が《銀の鍵》に、眞人に迫る。
ルナが少女を阻止しようするも、まるで幻か蜃気楼になったかのごとく、少女の体はルナをすり抜けていく。
そして、《銀の鍵》に抱きつき――幻影のように、電子の記号となっつえ彼の体の中へと入りこんでいった。
「――ッ、は、ぁっ……!?」
刹那、《銀の鍵》が苦しみ始めた。
「や、やめろ、俺の中に、入ってくるな……!」
酷く禍々しいものが、憑依するのを眞人は感じた。
そして。
『……』
苦しんでいた《銀の鍵》の動きが止まる。その姿が変容する。変質する。
髪の色は真っ白に染まり、その瞳は赤く光っている。そして、肌は褐色に染まっていた。
あの《電子魔術師》を自称した少女のように。
『まあ、こういうことさ――さあ、どうする? 別にこの「鍵」は君にとって何の関係もない男だ。
彼が門の向こう側に行こうが何をしようが、関係ないと思うけどね』
《銀の鍵》の姿と声でそれは言う。だが、明らかに違う存在であった。
ルナ >
「…………っ!」
手遅れだと分かっていても、手を伸ばす。
策もない。助ける理由もない。
自分の感情が自分でも分からない。
それでも、嫌だった。
理由は、分からないのに。
伸ばした手は届かない。
別の干渉が、ルナを引き離す。
ご案内:「常世電脳領域 《電脳転移荒野》」から
ルナさんが去りました。<補足:【No3 交流歓迎】銀髪青目のぼんやりした少年。今はひとり。>
《銀の鍵》 >
『……行ったか。本気を出されると厄介だったかもしれないな。
まあしかし、今は「窮極の門」が二つ出現している。そしてこちらは電脳世界の門。
別に何かを呼び出すわけでもない――収束する前に、彼を導かないとね』
眞人の意志は体は、電子の魔術師に憑依されたことによって奪われた。
眞人はひどく懐かしい感覚に襲われていたものの、同時に酷く禍々しい感覚を得ていた。
明らかにまずいものが体の中にいる。精神を乗っ取っているのだ。
『――「鍵」の君には、やってもらうことがある。君が中々慎重で早く来てくれないからね。
サービスだよ。「道」を開いてあげるよ。《ルルイエ領域》へのね。
そして、君には封じられた「彼ら」を解き放ってもらうんだ。
まあ、この話はもう聞こえていないだろうけどね……』
そして、《銀の鍵》だったものは、電脳領域に出現した「門」へと向き直る。
『別に外なる宇宙に行くわけじゃない。彼らの元に行くだけだ。
儀式は略そう、構わないね? ――開錠』
《銀の鍵》だったものはそう呟く。まるで門に向って言っているようだった。
鍵を回すこと九回。そして、電子の「門」が開いていく。
ワイヤーフレームで構成された「道」がその中にはあった。
《銀の鍵》 >
『君の体でなければ「鍵」が使えないというのは実に面倒だね。
ランディのときはそうでもなかったのにね。まあ、いいさ。
そろそろあちらの「門」もどうにかなってしまうだろうし、永遠に開いておけるものでもない。
さあ、行こうか、《銀の鍵》、マヒト君――』
『銀の鍵の門を越えるんだ』
そして、褐色の肌の青年は高らかに笑いながら「門」の中へと入っていく。
それと同時に、門はその扉を閉じていく。
『そして、君の師匠のところへ行こう。
よかったね、望み通り、師匠を解放できるよ!
ハハ、ハハハハハ!!』
門は消える。電子領域から門が消える。
電脳転移荒野には、もう既に何者の姿もなかった――
ご案内:「常世電脳領域 《電脳転移荒野》」から
《銀の鍵》さんが去りました。<補足:正体はNo47 橿原眞人/黒を基調としたサイバーウェア。多くの自作プログラムを積んでいる。>