2015/06/27 - 03:39~07:41 のログ
ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」にクロノスさんが現れました。<補足:簡素な服に手錠、足枷。 >
クロノス > 無いはずの奇跡に縋って、彼女は夜の闇を走る。

―――そして、無いはずの奇跡は続き、荒げた息をそのままに、
『彼女』が居るはずの、そのホテルの一室のドアを開いた。

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」に朱堂 緑さんが現れました。<補足:汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。>
朱堂 緑 >  
 
「よう――『室長補佐代理』」
 
 
 

朱堂 緑 > そこに、それはいた。
真っ黒なザンバラ髪を揺らして。
真っ黒な伽藍洞の瞳を揺らして。
 
その男は……そこにいた。
 
照明の抑えられた部屋。
よくみれば、徹底的にモノが撤去された。ただの籠のような部屋で。
 
その男は……待っていた。

朱堂 緑 > 「久しぶりだな。絶対に、此処に来ると思ってたよ」
 
椅子に座ったまま、左手を仰いで苦笑する。
その中指には、相変わらずの銀の指輪が、輝いていた。
以前と違うところは、右腕に公安の腕章がないことだけ
 
「もし俺がまだ『公安』にいたら、きっとそうしただろうからな」
 
男は、目を細める。
以前よりも、笑みは明瞭ではない。
皮肉気なその笑みは相手よりも、むしろ己に向いているかのようにみえた。

 

クロノス > 「ツヅッ―――ッ!!」

『よう――『室長補佐代理』』

彼女の居るはずの部屋に彼女《救い》がおらず、
彼女が居るはずの部屋に彼《終わり》が居る。

―――『一瞬』で理解した。理解できてしまった。
理解して、崩れ落ちて、床を叩いて、
彼に請うような姿勢で睨みつけると、唯叫び声を上げた。

「貴方は―――ッ!!!『公安委員会』は―――ッ!!!!!
 ここまで、ここまで出来るんですか!!!!」

ギリッと、歯を食いしばる。

「こんな―――こんな―――ッ!!!」

人の心を弄ぶような真似、心底腐っている。
そう言おうとした口は、何も言えずに閉ざされる。

自分は『大罪人』だ、だからこそ、そうなっても許してくれるであろう
―――彼女に縋ろうとここに来た。

『自分に、彼を罵る権利は無い。』

その事実が彼女から言葉を奪い、
かわりに、その瞳からは唯涙が零れ落ちた。

朱堂 緑 > 「出来るさ……『正義の味方』だからな」
 
男は語る。嗤いもせずに。笑いもせずに。
口を引き結び、椅子に座ったまま、泰然と『室長補佐代理』の目をみて、語る。
ただ、語る。
ただ――騙る。
 
「お前だってそうだったはずだ。西園寺偲だってそうだったはずだ。
お前達はお前達の正義の為に何人殺した? 何人不幸にした? 何人貶めた?」

詰問するように。窘めるように。確認するように。
男は、語る。
 
「俺達は同類だ。貶めるのが『心』か『命』か、『その両方か』の差しかない」

ただ、事実だけを確認するかのように。
ただ、事実だけを露呈するかのように。

厳かに……男は、語る

「だからいったろう? ……『上手くやれ』ってさ」
 

クロノス > ―――言葉は、出ない。
ただ息を飲んで、彼の言葉をただ受け入れた。
床に跪き、手には手錠、足には足枷。
『罪人』はただ『罪人』らしく、彼の言葉を聞く。

「同類でしょうね。
 目的の為に手段を選ばず、『命』を弄んだ。
 『上手くやれなかった』のなら、貴方がここに居るのは当然です。
 ―――それが貴方の役割ですから。」

その言葉はまるで自分に言い聞かせるように漏れ出た。

「そうでしょう、『室長補佐代理』」

彼女は笑う、奇跡に縋った、自分を嘲るように、
そして、忠実な駒であり続ける、彼を嘲るように。

ゆっくりと立ち上がると、その鮮紅の双眸で彼の瞳を覗き込む。

「ええ、いいでしょう。
 ―――貴方は貴方の役割を果たすといい。
 命乞いはしません、それも、私の『正義』ですから。」

彼女の瞳は、もう揺らがない。
かつて、彼に語った『正義』を、自分で裏切るわけにはいかない。

―――ただ心の中でただ一人に謝り、来るべき終わりを待つ。

朱堂 緑 > 曳かれ者を前にして、男は聞く。
かたや『敗者を憂う何者か』として。
かたや『正義を騙る何者か』として。
いや、恐らく……互いに『最初』は、その両方として。
 
「前『室長補佐代理』さ。
俺は、『俺の正義』に従って此処にいる。お前と同じだ。
違うところはたった一つ。
『俺の正義』のほうが、少しだけ節操がなかったってだけのことさ」
 
皮肉気に、そこでようやく自嘲の笑みを漏らす。
頭を振って、立ち上がる。
まるで柱のように。まるで影のように。
まるで……フォークロアの怪物のように。
 
「お互いとんだ貧乏籤だよなぁ」
 
かつて、『同僚』に言った言葉をそのまま繰り返して、男はまた……繰り返す。
一歩、踏み込む。
一歩、踏み入る。

「同じ『室長補佐代理』ながら、同情するぜ」
 
歩み寄るたびに、その身体が。その長躯が。
 
闇に、滲む。
 

朱堂 緑 >  
「遅過ぎた――タイムリミットだ」


      「提案しよう――せめて、喚け」

朱堂 緑 >  
 
影が、滲む。
 
 

朱堂 緑 >  
 
 
            【食事の時間だ】
 
 
 

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」にゲートクラッシャーさんが現れました。<補足:にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!>
ゲートクラッシャー >  
――――そして、影の溢れる静寂に爆音が飛び込んだ。

窓ガラスをぶち割って、飛び込んだのは純白の重二輪。
かつて“彼女”が見えない翼を得たもの。
部屋の床をタイヤが踏みしめ、甲高い音を鳴らした。

跨った男の、顔の包帯が入り込む風に揺れている。



「待てよ、“大敵(アークエネミー)”」



 

クロノス > 闇を、その『終わり』を前にしても、
彼女のその紅い双眸は、その顔は揺らがない。

『喚く』事もしない。

せめてその終わりを、自分の首を刎ねる刃を見届けようと。
ただ、その『闇』をその瞳に映す。

―――それは、今まで『彼』に対した『悪人』達のソレではなく。

―――それは、今まで『彼』が殺して来た『悪人』達のソレではなく。

―――それは、今まで『彼』が繰り返して来たソレではない。


その双眸に、奇妙なものを映す。
そこにあるはずのない、もう一つの奇跡を。

朱堂 緑 > 見返されて尚、影は嗤わない。
瞳を合わせて尚、影は背かない。
覚悟を知って尚、影は違わない。
 
ゆっくりと、終わりを与えにいく。
ただ、淡々と、『いつも通りにいつも通りではない』それを実行しようとする。
 
右手を……伸ばそうとしたその時
 

影が、振り向く。

影が、目を向ける。
 

その、目前に割り込んできた、迅雷の如く状況を震撼させる……波紋を生む。
 
破門の男に。
 
 
「お呼びじゃねぇぞ“破戒者(ゲームクラッシャー)”」
 
 
 
 

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」に能見さゆりさんが現れました。<補足:優等生のお姉さん?>
ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」から能見さゆりさんが去りました。<補足:優等生のお姉さん?>
ゲートクラッシャー >  
受け止める。
伽藍の瞳を、漆黒に燃える瞳で真っ直ぐに。

マシンが重音を響かせる中、
魔神の男をその前にして歯を剥いた。

「残念ながら、“招かれざるもの(ゲートクラッシャー)”やからな」

降りる間も、少女の方は見なかった。
白いボディから黒い手が滑り落ちる。

「今回はな、“末路(オワリ)”にするわけにはいかへんよ。
こいつの路は、まだ続けさせてもらう」

害来腫の時とは違うと。
確かに違う。
己も、彼も。

朱堂 緑 > 黒い影を纏ったまま、その身を闇に浸したまま、男は嗤う。
じわりと、滲むように。
闇ごと滲ませるように……嗤う。
 
「西園寺の死を肯定しておいて都合の良い話だな。
ソイツの“活路(ツヅキ)”を背負うってことがどんな意味なのか、知らないわけじゃねぇだろう。
これは予定調和だ。結末は決まっている。
『室長補佐代理』としての責は、クロノスも重々承知だ。
そこにきて……合意の上の『敗北』に、どの口で異を唱える?」
 
左手の銀の指輪が、滲む。
光が、滲む。
銀の輝きが、責める様に波紋を舐める。

ゲートクラッシャー >  
影を見ている
闇を見ている。
あるいは何かを本当に見ているのか。

「別に、オンナノコを助けに来るヒーローなんかせえへんよ」

暗黒の塊ヘ向けて、黒く、そして一切黒でない瞳は笑ってはいない。

「確かに“こいつの今”は、決めた通りかもな。
やけどコイツは“俺を喰った”。
本当に、テメェらの予定調和(みちすじどおり)か……?
先のアレが?
なあ、“魔神(アークエネミー)”。
テメェの終わりの後に、来る始まりを学園はどう描く?『合意の上の敗北』の次に?」

「……それを俺は、気に入らんと言っとるんや。
こいつらの路は俺が貰う」

黒い手が横から額を掴む。
揺れる包帯の下、額の中央に燃える瞳が、滲んだ。

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」に薄野ツヅラさんが現れました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手に金属製の前腕部支持型杖、左腕には公安の腕章。>
薄野ツヅラ > 「生憎だけどぉ──……ヒーローは来るわぁ?
 女の子なら誰であれ、助けてもらう権利があるのよぉ──……」

奇跡を願って、諦めて。奇跡を喰らった少女は。
当然のように『自分の寝床へと』帰ってきた。
杖をついて、泣き腫らした瞳で不敵に笑って。
随分と酷い惨状になった自分の暮らしていたホテルの一室に、
───足を踏み入れる。

「人の寝床で何してくれてるのかしらぁ?
 ───騒がしくて寝れたものじゃあなさそうだけれど」

ゆらり、幽鬼の如く。
杖の音が、じわり反響する。

朱堂 緑 >  
「気に入らないか。何物にも勝る理由だな」
 
闇を滲ませたまま、男は嗤う。
鼻を鳴らして強かに嗤い、左肩を竦める。
闇が、滲む。
男を覗き込み、覆うように。
這寄るように……滲む。
燃える瞳の眼光すら、侵すように。

 
「舌戦を愉しみたいのはやまやまなんだがな。
合意の上の敗北の先に俺は『日常』を見ている。
今まで通りの日常だ。何も変わらない毎日だ。
クロノスの正義は俺の日常を侵す。
だから、排除する。
簡単な理由だ。シンプルで暴力的で『お前が俺にしようとしていること』と何もかわらない」
 
影が、嘯く。
  
「その上で……具体的に何をするつもりなんだ? 破門の男。
それは……俺の暴を収めるに足る理由か?」

クロノス > 現れた二人に、やれやれと首を振る。
しかも、片方は死んだはずの男に、彼女はゆっくりと口を開く。

「2人とも、この場に来たのは別に構いません。
 ―――ですが、元『室長補佐代理』が言っているとおり、
 これは『合意の上』の『敗北』です。」

2人をその燃える瞳で睨みつける

「これ以上、私の『正義』を邪魔しないでくれますか。」

朱堂 緑 > 新たに現れた……いや、帰ってきた本来の部屋の主に一瞥を向ける。
滲む闇が。闇その物が。
足を踏み入れた『後輩』に、一言向ける。
 
「悪いな。帰る前には終わらせるつもりだったんだがな」

ゲートクラッシャー > その時、ようやく乱入者は瞳に感情を出した。

ああ――――来た。

立つ己も眼前の男も、居る理由は機能としてだ。
だが、もし来るなら、
多分もっと、個人的な理由というのがやってくる。
面倒になる。
わかっている。

それでも、自分はゲートクラッシャーだ。
新たな少女も、見はしなかった。

「クロノス=クロノスの神格は俺が“閉じ込める”。
混ざりこんだ原初の混沌ごとな。
やから大敵、テメェの終わりと学園の描く始まりには渡せねぇし
――――“正義(ヒーロー)”も否定する。

俺はゲートを把改する。」

クロノス > ふっとツヅラに笑いかける。

「―――どうせ、遅かれ早かれ来る結末、
 最後に、一目だけ貴女に会うという願いが叶った。
 もう、これ以上奇跡は望めませんよ。」

そう言って、ゆっくりと自らその闇に歩を進める。

「いつまでお友達とお喋りしているつもりです?
 最後くらい、ちゃんと『仕事』してくださいよ、補佐代理。」

薄野ツヅラ > 部屋の奥の闇を──『先輩』をちらと一瞥する。
直ぐに目線を、ずっと探していた『先輩』に向ける。
ゼエゼエと肩で息をしながら、ゆっくりと口を開く。

「ホント、人の部屋でやることじゃあないわよぉ───……?
 やるならさっさとやっとくべきだったわねェ」

笑いかける『先輩』に笑顔を返す。

「望むだけなら許されると思うわぁ。
 叶うにしろ、叶わないにしろ其れは当然の権利、だから───

 其れでも、会えてよかったわぁ──…… 先輩」

ぐちゃぐちゃに泣き腫らした笑顔をひとつ。
目の前の無貌の男に視線を向けることはなかった。

朱堂 緑 > 「『仕事』が遅い事を詰られちゃあ返す言葉もねぇな」
 
一部始終、男の『理由』を聞き終え、少女の笑顔を一瞥してから……クロノスの言葉に静かに嗤って、一歩踏み出す。
ただ一歩前へ。
静かに一歩前へ。
それだけで闇が滲み、黒が膨らみ、影が爆ぜ、その身をより一層の黒へと。
 
「俺もさっさと仕事したいことはやまやまなんだが、そっちの『2人』はどうにも聞き分けそうにねぇ。
よくよく聞いてみりゃあ主張は俺と同じで『自分の信じることを成す』だ……まぁそういうのがぶつかり合った時の結末は、決まってるよな」
 
男が、引き抜く。
その得物を。
その引き金を。

その右手を。

右手を、伸ばす。

手の甲に、悪魔の紋章が刻まれた、その右手を。

朱堂 緑 >  
 
右手を、伸ばす。
 
 

朱堂 緑 > 銀の指輪が輝く。銀の魔が煌めく。銀の光が闇を引き寄せる。
男の輪郭から光が奪われ、その身がただの『黒』へと変ずる。
その長身はただ闇に混じり、影と化し、ただそのシルエットを虚空に浮かび上がらせる。
そこにいるのは、最早人ではない。
人の形をしただけの影。
人の形をしているだけの黒。
 
輪郭の中、沈んだままの黒瞳が、じわりと滲む。
茫洋の中、浮かんだままの口角が、じわりと滲む。
 
闇が、人の『怖れる何か』が、形となって。
 
右手を、伸ばす。

朱堂 緑 >  
 
 
 
                   【右手を伸ばす】
 
 
 
 
 
 

朱堂 緑 >  
 
 
 
 
               【『終わり』は、わたさない】
 

 

朱堂 緑 > 輪郭が、ボヤける。
輪郭が、蕩ける。
輪郭が、滲む。
 
右手が、身体が、膨らみ上がる。
 
 
ただ、その異能を用いて。
 
演算を最大限に利用して、ボヤける。滲む。
 
その身が、影が。
 
 
 
闇が、這寄る。
 
 
 

朱堂 緑 > 来いよ。こっちも別に余裕綽々じゃあねぇんだ。
 

お喋りしながら……『命張って』やるさ。
 
 

朱堂 緑 >  
 
 
闇が、嗤う。
 
 

クロノス > 「『それでいい。』……貴方と私は、『それで』」

伸ばされた手に、這い寄る闇に、その終わりに、
―――彼女は自らゆっくりと歩を進める。
これまでもそうであったように、これからもそうであるように。

闇に飲まれる間際、彼女はにっこりと笑って振り返った。

「ツヅラ」

そう、『世界で二番目に好きな彼女』に呼びかける。

「―――これからも、いい仕事を期待しています。」

彼女は最後にそういって、闇に『踏み込んだ』。

ゲートクラッシャー >  
「ここで終わりになる正義で……」

額が燃える。
緩んで落ちる包帯の下は漆黒の顔がある。

「何の路が開くんや」

飛び込む少女を、ようやく見た。

「呑んだそれを……放り出す気か……」

そこに広がるのは絶殺の闇。
アレはやるだろう。
絶対に終わりを見せる。
それでも前へ。

「アークエネミー!テメェらの選択が、それが、本当に終わらせられるんかよ……」

漆黒の手を伸ばす。三眼は燃えている。
前へ出た。

薄野ツヅラ > 『世界で二番目に大事な人間』が闇に踏み込むのを見て。
彼女は大粒の涙を両の眼に湛えながら、必死に笑顔を作った。

「貴女の居た第二特別教室での時間は忘れないわぁ──……
 ───貴女の愛した『秩序』と。貴女の犯した『叛逆』も、忘れない」

くしゃっと顔を歪めて、ぽたり、床に涙を落とす。

「貴女の名前を鎖に刻む。万物を喰らう鎖に。
 ───貴女が成り得なかった番人に、ボクは成る」

大好きでした、と。
彼女は、歩む背中を見送った。

ゲートクラッシャー > かつて自分も奇跡を願った。
存在しない奇跡を。

目の前の闇はどこまでも正しい。
呑んだ混沌に混ざった自分では遠すぎる。

見ないようにしていた、それがもう見えている。
理解している。
あれは俺にはならない。

朱堂 緑 > 漆黒の手が、拳が男を捉える。
闇を捉える。
寸分たがわず、活路開くその拳は男に突き刺さり、その闇を穿つ。

嗚呼、だが、それでも。

男は、

「Vassagoそれは邪知の化身」

「秘奥の真意をただ暴き」

「隠された罪。その罰ですら、抜き身とす」

「悪魔の契約。それは絶対。即ちそれは」

「我は汝。汝は我。我思う故に……汝在り」
 

         嗤う。


「『主観論』(コギト・エルゴ・スム)」

          「The iMitation ∴Justice∴your best arc enemy」




男は、傷ついた。
男は、血を流した。
闇は隙間から血を流し、解れた『黒』から喀血した。


だが、男は……倒れない。

男は前にでる。
男は前に進む。
男はただ、活路たる攻撃を全て『受けて』なお、前に出る。
 
それすら飲み込む終焉のように、前へ、出る。

朱堂 緑 > 敵を知る。悪魔の契約により、それを知る。
知り得たのなら、定義する。
定義即ち。
 
『その女の天敵』たる定義。

『その女を打倒する為』だけの定義。

ならばそれは。


「俺は『定義する』……俺は『アイツの正義を終わらせる俺』になる」


……漆黒の活路の挑む男には、『定義』されていない。

男の迫撃を受け、攻撃を受け、それでも正義は男は進む。
拳を受けてもひるまず、ただ凄絶に笑み


「破門を騙る凄絶よ」

「お前の拳は俺に届く」

「正義を騙る同類よ」

「お前の覚悟は俺に届く」



「それでも……おまえの声は届かない」




男の影が、膨れ上がる。
それは汝自身。それは汝を知るもの。それは汝の敵。
汝を知るが故、汝を謀る。

右手を、伸ばし、


「残 念 だ っ た な !」

振り下ろす。

振り下ろされる、その右手。
 
滲んだ闇は偏在し、変質し、偏向する。
 
無数の数式が。
 
無数の術式が。
 
編み込まれる。ただ『クロノスを斃す』ためだけに。
 
組上げられる。ただ『クロノスを斃す』ためだけに。
 
それを滅ぼす。喰らう。滅する。終わらせる。

それ以外の機能の全てを消失した闇が、迫る。

目に映る全てを喰らい付くし、世界ごと改変するかのようなその闇が、迫る。

朱堂 緑 > 我思う故、我在りて、我思う故、汝在り。

しかして、我思わざるは……否。

朱堂 緑 >  
 
「我ら思うが故……汝無し」
 
 

クロノス > 闇に飲まれながら、彼女は目を閉じる、
ただ『納得』して目を閉じる。 『ああ、これが私の終わりですか』と。
 
彼女のその純白は、その鮮紅はその黒に飲み込まれ、音もなく消えた。
ただただ、溶ける雪のように。―――儚く。
 
  
『人生で一番あわただしく、二番目に楽しかった、
          第二特別教室での日々を思い出しながら。』


                            ―――彼女は溶けて、消えた





 

クロノス >  
 
『―――『次』は誰でしょうね。』


―――そんな声が、どこか遠くで聞こえた気がした。

ゲートクラッシャー >  
視界の端、お互いに見合わない少女がいる。
あぁなれたら良かった。
多分それが綺麗だったのだ。

だがそうはしなかった。
そうはなれなかったから

「テメェは俺を食って、アレを開いたんじゃねえか……!」

追いすがる。
混沌の手が闇を撃つ。
その手は闇には届く。

だが時の敵は、速やかに殺す。


消える。


分かっている。
終わる。

次までは。

薄野ツヅラ >  
 
  
 彼女の終わりを、クロノスの物語の終わりを見届ける。
   美しく、そして儚い其の白い死神の終わりを。
     
     そして彼女は其の「正義」を継ぐ。
 
  ────其の終わりの先を、薄野ツヅラは、綴る。
 
 
 
 「もう終わりよぉ。こんなショウはボクが幕を下ろすわぁ」


   落第街の住人らしく、不敵に、不遜に───嗤った。
  
 
 

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」からクロノスさんが去りました。<補足:簡素な服に手錠、足枷。 #乱入する場合はPLに連絡下さい>
朱堂 緑 > 消えていく、溶けていくクロノスの呟きを耳にして、笑う。
嗤うのではなく……笑う。
いつか、同僚にしたそれのように。
 
「わかってるだろう。『室長補佐代理』」
 
そう、虚空に呟いて、彼女の残した腕章を……かつて、自分の渡した腕章を拾い上げる。
 
「全部、わかってやってたんだろうに。
お前は俺より、『仕事』はずっと優秀だったんだからな。
なぁ、『正義の味方』」
 
そう、呟いて、ようやく、二人に向き直った。 
 
体中から喀血を隠しもせず、傷ついた顔を隠しもせず。
ただ、笑う。
 
「まぁ、こうなるよな。だから、そうなった」
 

なんでもないように、いつものように。
 
「それが、日常さ」
 
 
嗤った。
 

ゲートクラッシャー > 眼前に血に塗れた痩躯がある。
それに届く。
届いても、何も意味はない。

招かれざるものは、招かれざる故に。

届きはしない。

「……そうあれかしで、続けるんか」


「なあ、前々室長補佐代理」

薄野ツヅラ > ゆらり、泣き腫らした顔を上げる。
目の前で『なかったこと』になった彼女の笑顔を胸に仕舞って、
目の前の『正義の味方』に笑顔を向ける。


「お疲れ様でした、前々室長補佐代理
 ────彼女を救ってくれて、有難うございました」


無貌の男を倣って、ぽつりと。
杖に体重を掛け直して、何処か安心したように腰を折った。

朱堂 緑 > 「当たり前だろう」
 
男は、堂々と答える。
血塗れの痩躯。今にも倒れそうなほどの出血。
それでも、不敵に微笑み、不敵に目を細める。
その伽藍洞の瞳には……光は差し込まない。
 
「正義を一度、『騙った』以上、することはかわらない。
やるべきことは……いいや、やらざるを得ないことは、かわらない」

朱堂 緑 > そして、コツコツとツヅラに歩み寄って、目を見ずに。
顔を見ずに、ぽんぽんと、頭を撫でる。
左手でぎこちなく。ただ少しだけ、撫でて、笑う。
 
「俺もアイツも、自分を信じただけだ。
それだって俺は……ギリギリで、一度踏みとどまろうとしたあたり、いつまでも笑われるだろうがな」
 
活路と言葉を交わした事実。
ツヅラの到着まで時間を稼がれた事実。
それは、何か。 
 
己の正義への……甘えでしかない。 
 
その疼痛こそが、クロノスのもたらしたものだとすれば。

否、語るも無粋。 
願うもまた、無粋。 
 
「救いは、案外何処にでも転がってるもんさ。気付かないだけでな」

ゲートクラッシャー >  

「……ならやっぱり」


と続く言葉は声にならず。
客は背を向けた。

一瞬、残った少女を見て。

音が去っていく。夜の混沌に消える。

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」からゲートクラッシャーさんが去りました。<補足:にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!にゃる・しゅたん!にゃる・がしゃんな!>
薄野ツヅラ > 一瞬手を上に持ち上げられればびくっと身体を震わせる。
持ち上げられた手が頭に触れれば、擽ったそうに目を細めた。

「誰だって、自分の正義を信じれる人は恰好いいわよぉ、
 お嬢さんも、其れこそあなただってねェ」

笑いたい奴には笑わせておけばいいわぁ、と。

「人の正義を否定する資格があるのは、
 自分の正義を喰われる覚悟がある奴だけよぉ──……☆

 ただ、自分が自分の正義を哂うようになったら屹度死んだほうがマシ」

くすりと、楽しげに微笑む。
真赤に腫らした目元を隠すことなく、真っ直ぐに笑う。

「救いは此処にあるわァ、ボクは救われない人間を救いたい」

男の伽藍洞の瞳をジイと、覗き込むようにして笑う。


「第二特別教室側でやるべき事後処理を教えてくれるかしらぁ、『先輩』」
 
                               

朱堂 緑 > 「それはちげぇよ」
 
そう、静かに笑う。
以前とは少し違う笑みをうかべて、笑う。
 
「俺は、『カッコつけ』なだけさ。カッコ悪いから必死になってんだよ」
 
血塗れの、凄味の無い笑みで……笑う。
伽藍洞の瞳は、真っ黒な瞳は、静かに笑っていた。
 
「誰だって、『正義の味方』なんてのはそんなもんかもしれないけどな」
 
そういって、歩み出す。
 
「やるべきことは多いが、まぁそうだな、ひとまずは」
 
一度だけ振り返って、笑う。
 
「始末書、ちゃんと書いとけよ。
俺もコイツには散々書かされたからな」
 
そして、後ろ手を振って去っていく。
ゆっくりと。
ただ、当たり前のように。
いつも通りに。 

ただ、日常へと。

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」から朱堂 緑さんが去りました。<補足:汚らしい薄笑いとザンバラ髪の男。垂れ目。長身。制服にコート。>
薄野ツヅラ > 「………始末書よりも此の部屋でどう寝ろって云うのかしらぁ」

酷い惨状になったホテルの一室をぼんやり眺める。
そう云えば、彼がいなくてよかったなァ、と。
屹度寝てるのを邪魔されたらボクに八つ当たりと、鋭利な杭とが飛んできただろう───と。

「あァ、経費で落としてやるわぁ──……」

ふう、と深く溜息をひとつ。
散々な状態になった部屋の中心で、ごろんと寝転がる。
明日からは、たった一人の教室でたった一人の公安業務が始まる。
早いうちに始末書は書いてしまおう、と独り言ちた。

薄野ツヅラ >  
 
 
 
────街は、何事もなかったかのように今日も動き出す。
 
 
 
                      

ご案内:「落第街のとあるホテルの一室」から薄野ツヅラさんが去りました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手に金属製の前腕部支持型杖、左腕には公安の腕章。>