2015/06/25 - 22:52~03:39 のログ
ご案内:「公安委員会 第二特別教室『調査部別室』本部」に薄野ツヅラさんが現れました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。左腕には公安の腕章。>
薄野ツヅラ > 誰もいない夕焼けの差し込む教室。
2人しか所属している人間のいない、公安委員会の第二特別教室に割り当てられた教室。
生憎もう一人は外に出ているらしく、此処に居るのは自分一人だった。

「データ纏まったのだけど──って居ないわねェ
 相変わらずご機嫌なことで」

ぼんやりと独り言ちながら、机の上に分厚い書類の束を置く。
先日から続いていた落第街の事件のデータをようやく纏めて持ってきた。

薄野ツヅラ > カチャリ、音を立てて備え付けられたマグカップと電気ケトルに手を伸ばす。
珈琲の粉をスプーンでひとつ、ふたつ掬ってマグカップに落とす。
ケトルが沸騰を告げればゆったりとお湯を注いでいく。
屹度上司が見たら怒るのだろうが、あくまで今は自分しかいない。
優雅なティータイムを過ごすのも悪くない。

「苦ッ」

頭を動かすために無理矢理に苦い珈琲を飲む。
彼女の癖であり、頭を切り替えるスイッチの役割も果たしていた。
ぱらぱらと纏めたデータを片手に、苦い珈琲を、また一口。

薄野ツヅラ > 相も変わらずデータは同じ。
誰に書き換えられることもなく、完璧で詳細な報告書。
主観的に書かれた部分は一切なく、其処には客観的に見受けられた情報の数々。
公平で、ある意味悪平等な報告が事細かに記載されている。

(───なんか面白そうなもの埋まってないかしらぁ)

ふと、思い立ったように椅子から腰を上げる。
金属製の杖を片手に、かつり、音を鳴らして教室の隅の埃を被った書類に歩み寄る。

薄野ツヅラ > 嘗て『監視対象』であった生徒のデータ。
今は果たして彼らがどうなっているかはツヅラの与り知らぬところだが──、
        
「ボクの来る前の第二特別教室。
 ………興味がない訳じゃあないしぃ──…」

ゆらり、手を伸ばす。
偶然見つけた其の紙束は捨てられる予定だったものか、
其れとも保管されるべきものなのかはわからない。

────手を伸ばしてしまう。

薄野ツヅラ >      『当該人物の『処分』は完了しました。
             以後、当該人物の情報の閲覧を制限し
            一般生徒、教師が閲覧する事を禁じます。』

薄野ツヅラ > 「────ン、」

不意に目に入った一文に面食らった。
戸惑いの方が先に在ったのかもしれないが、其れはもう今は定かではない。
ただその一文の下に在った事実が──紛れもない公安の情報が、彼女の思考を止めた。

『公安委員メンバーにして元ロストサインの一員』
『最後は当時の『室長補佐代理』により「処分」された』

「────、そりゃあ隠したくもなるわよねェ」

にやり、口元を三日月に歪める。

薄野ツヅラ > (──公安委員会の中では同僚を『処分』することに抵抗はない?
 其れともあの無職のザンバラの独断?

 ────其れとも、上層部の命令?)

一気に思考が進む。
其れは先刻呷った苦いだけの珈琲のお陰か、不意に覚えた焦燥感か。
少なくとも、自分が持ち得る情報では其の理由を知ることは出来ない。
故に、不安感と恐怖感を覚えざるを得なかった。
『元室長補佐代理』が首を切られたのも確かこの頃だった。

「───どちらにせよ。
 公安の上部には余り喧嘩を売るのは得策ではない、と」

ご案内:「公安委員会 第二特別教室『調査部別室』本部」にクロノスさんが現れました。<補足:白い髪、紅い目、公安委員会の制服。にっこりと笑みを浮かべている。>
クロノス > ゆっくりと室内へ『戻って』くる、
ふわりとその白いマントをはためかせて。
満足そうに帽子の鍔を撫でながら。

「見つかってよかった。」

昨日の戦闘中に飛んで行ってしまった帽子を探して、
一日中探し回っていたらしい、どうやら見つかったらしく。
彼女はその鍔を掴みながら安堵の息を漏らした。

ふと、先客が居る事に気がつくと
彼女のほうに向けて笑みを零す。

「―――『堂廻目眩』ではありませんか、お仕事ご苦労様です。」

薄野ツヅラ > ゆらり、声を聞けば振り返る。
もう随分と聞き慣れた声に見慣れた笑顔。公安の制服に白い髪。
其れから───軍帽の鍔を直す其の仕草。

「やァ、クロノスお嬢さん」

手元に書類を握ったまま、にっこりと笑顔を返す。
珈琲でも如何かしらぁ、と小さく呟いてゆっくりと立ち上がる。

「この間の戦闘のデータとそれ以外の細々としたデータも。
 一応纏めるだけ纏めたから置きに来ただけなんだけれどぉ──……」

かつり、杖を鳴らして机の方へと戻る。
笑顔を湛えたまま、のんびりとした笑顔を浮かべる。

クロノス > 「コーヒーよりも貴女の血が飲みたいですね。
 ―――ですが、一応頂きましょう。折角の機会ですから。」
そう言って手を上げる、『1杯だけご馳走になりましょう』と。

「なるほど、貴女は実に優秀ですからね。」

彼女を誘い込んでからの、彼女の『公安委員』としての働きは見事だった。
『自分が便利に使えればそれで十分』
―――くらいの心積もりで引き入れたのだが、

自分が多少『本業』をサボっても、
それを埋め合わせて余りあるくらいの仕事を彼女はしてくれている。

彼女の手に持っている資料を見て満足そうに微笑むと、
ゆっくり、ゆっくりと、彼女の近くへと歩み寄る。

「何か、面白いものでも見つけましたか?」

机に手を置くと、歪に口元を歪め、彼女の瞳を覗き込んだ。

薄野ツヅラ > 「何時から此処は献血所になった訳ェ?
 
 あっは、優秀だなんてそんな。
 ただこっちも好き勝手にデータを使わせてもらってる訳だしぃ──……
 其のお返し以上に働いてるつもりはないわぁ、少なすぎず多すぎず」

くすり、と小さく微笑む。
あくまで1:1。其れ以上のことも其れ以下のこともする心算はない、と。
ゆっくりと歩み寄る上司を見遣れば手元の紙を見て暫し逡巡する。
果たして、誤魔化すべきか。其れとも。

「───公安委員の内輪揉めの残滓、かしらねェ」

ひらり、手にした紙を手渡した。
其れは嘗ての公安委員。第二所属の学生、そして──ロストサイン。
"害来腫"と呼ばれた男の、消される筈だった記録。

クロノス > 彼女は優秀な『公安委員』だ。
彼女にはこの組織の暗部も知らせておこうと、資料を『置いて』行った。
どうやら、期待通りに彼女はそれを見つけたらしい。

紙に視線をうつすこと無く、
彼女の瞳を覗き込んだまま、口元を歪める。

「内輪揉めではありませんよ、
 『公安』はそうやって成り立っているんです。
 ―――今までも、そして、恐らくこれからも。」

彼女の机に腰掛け、彼女の頬に指先が触れる。

「マジックで言う『ミスディレクション』と言ったでしょう。
 『公安委員会』の印象が悪くなれば、
 『目立っている公安委員』を処分し、それで体裁を保つ。」

ツヅラの頬に触れる指先が、ツヅラの頬を掻き混ぜる。

「『集団』ではなく『個人』に目を向けさせる事で、
 自身に向けられるはずだった『批難』を1人に押し付ける。
 それが終われば、また次の『処分するための公安委員』を用意する。
 ―――そうやって、『公安委員会』は自身の権威を保っている。」

彼女の瞳が細くなり、彼女の頬を掻きまわす指、手は、
彼女の髪へと流れていく。彼女を撫でるように。

「その資料は、それの残滓ですよ。
 本来ならば、捨てなければならないものですから、
 後で貴女が『捨てて』おいてください。」

そういって、彼女に笑いかけた。

薄野ツヅラ > 「────其れなら、次はお嬢さんだと思うのだけれど」

彼女の其の紅い、燃える炎の如き双眸に視線を向ける。
二つの紅い、朱い視線が交差する。
頬に指先が触れれば、擽ったそうに目を細める。

「本来は『公安委員』は目立たないものじゃあないのかしらぁ?
 『公安委員』」の印象が悪くなるようなことはそうそう起こり得ない筈。
 其れに、そんなの───」

暫しの逡巡。
目線をゆらり、地面に落とす。
其の目を上げることなく、ぽつりと、縋るように漏らす。

「──お嬢さんは『公安の』『舞台装置』として扱われてるのよぉ」

彼女が其れを理解しているのは知っている。
知っていても、幼い彼女の思考回路ではそう漏らさずには居られなかった。

「学園の秩序を守るための組織が、なんでそんな演劇じみたことをしてる訳ェ──…?
 
 あくまで『学内組織』の一つがそんなにパフォーマンスじみたことをする理由は?
 ───そうでもしないと権威を保てない理由は?」

ぽつり、ぽつりと堰を切ったかのように湧く疑問。
其れを逡巡することなく、口に出していく。
屹度彼女は『教えて呉れる』だろう、と。

「棄てる分には構わない。 
 ───此れを棄てたら彼は『なかったこと』になってしまわない?」

幼い子供のように、純粋にひとつ問いかける。

クロノス > 「ええ、次は『私』です。
 私はいずれ、そう遠く無い内に処分されるでしょう。
 ―――『公安』の書いた筋書き通りに。」

彼女はそう言って口元を歪め、
机に置いた片手を彼女の手に置き直し、指に指を絡める。

「何故そんな『パフォーマンス』をしなければならないか、
 それは『落第街』と『学生街』二つの街があるからですよ。」

彼女の指を弄びながら、彼女の髪を弄びながら、彼女は続ける。

「公安委員会が本当の意味で何も仕事をしなければ、
 当然、秩序と平穏の住人たる学生街の人間から不満の声があがる。
 真面目に仕事をすれば、落第街の人間の反感を買う。
 ―――以前貴女が、そうした私に反感を抱いたように。」

髪を撫でる手、その人差し指がゆっくりと彼女の唇に当てられる。

「どちらもやり過ぎなければいい、
 でも、その『やり過ぎ』の基準は生徒それぞれに違う。
 不正を取り締まっても、取り締まらなくても、
 『落第街』か『学生街』のどちらかから不満の声があがり続ける。」

彼女の瞳が細まり、口元が歪む。

「だからこそ、公安委員会はこの『パフォーマンス』を続けなければならないんですよ。」

資料を指差す。

「元ロストサイン、害来腫、彼は落第街の人間に味方し、
 不正を見逃し、むしろ煽りました。つまり、『学生街の敵』です。」

そして、彼女の唇に当てていた人差し指を自分の唇に当てる。

「―――だから、次は私に白羽の矢が立った。
 『落第街の敵』として君臨し、過激に正義を成そうとする人間。
 どちらを潰す事もなく、どちらを助ける事も無い。
 あくまで組織自身はパフォーマンスでそれを示しつつ、
 それによって自身の印象が著しく偏る事を防ぎ、学園の『秩序』を守り続ける。」

「それが、今の公安委員会です。」

薄野ツヅラ > 「抗おうとは思わない訳ェ?
 ────こんなとこに引っ張るだけ引っ張って置いてっちゃうの?
 一人でこんな広い教室、どう使えばいいのかしらぁ──……?」

俯いて、声を震わせながら。
独白にも似た其れを、ぽつり、吐き出す。

「どっちつかずじゃ駄目な訳ェ?
 公平に、悪平等に。学生街も落第街も両方ないといけない街。
 今のボクみたいに、どっちの味方もせずに自分の味方だけしているのじゃ駄目なのかしらぁ」

其の言葉を吐き出した時点で自分の味方以外をしているのは事実だが、彼女は気付かない。
否、目を逸らしているのかもしれない。
其れでも、自分のエゴを目の前の上司にぶつける。
彼女に何を云っても結末が変わらないのは知っていても、そうせざるを得ない。

「ずっとこんなことを繰り返していたところで何も変わらない。
 ただ同じようなことを繰り返して、また繰り返すだけ」

上目遣いで、紅い瞳に大粒の涙を湛える。
ぎゅうと、悔しそうに唇を噛んだ。

「誰の敵にも成らない、其れじゃあ駄目なの?
 わざわざ其れを解って、自分が踊らされるだけだってお嬢さんは、解って」

紡ぐ言葉はしどろもどろ。
堂々巡りな思考の末に、ふらりと目眩にも似た感覚。
ぷつり、と感情の糸が切れる。

「血塗れの法と、鉄錆の浮いた正義も。
 こんな可笑しなパフォーマンスを続ける公安に喧嘩を売ろうとは思わない訳ェ?
 止められるかもしれないのに、黙ってその筋書きを受け入れるの?
 
 お嬢さんはボクと違って強い。
 自分も在れば、異能だって、魔術だって。
 其れを公安に向けようとは、思わないの──……?」

ぽたり、乾いた床に涙が落ちる。

クロノス > 「抗えるものなら、抗っていますよ。
 ですが、『社会』というものの前に、
 『個人』が出来る事なんて何もありません。」

泣き出す彼女を慰めるように、
手袋を外して彼女の目を拭うとにっこりと笑みを向ける。

「『公安委員会』でいる以上、自分だけの味方ではいれません。
 自分が納得行かなくても罰を与えなければならない場面もありますから。
 ―――だから、私は人を名前で呼ばない。
 貴女にも、嫌でも理解できる時はいつか来ると思いますよ。」
『あるいは、優秀な貴女の事ですから既に理解の上かもしれませんね。』

そう言って帽子を脱ぐと、
そっと彼女の肩に手を置いて、彼女を抱き寄せる。

「踊らされるのも悪い事ばかりではありませんよ、
 見えるようになった、『目立たなければならない公安委員』は
 その与えられた『大義名分』を利用して、
 『公安委員』という立場を持ったまま、
 自分がやりたい事を存分にやる事ができます。」
 
「まぁ、『願いを叶える猿の手』のようなものですけどね。」

慰めるように、そっと頭を撫でる。

「ツヅラに会えたのは嬉しい誤算でしたよ。
 こんなにいい子を、部下に持てて良かった。
 ―――ですが、貴女には申し訳ありませんが、
 その『猿の手』を使ってでも、
 私には叶えて『あげたい』願いがある。」

『といっても、少し行き先を見失いつつありますがね。』
そう、心の中で考えつつ、彼女は目を伏せた。

薄野ツヅラ >  
  
「其れでも───」


それ以上言葉は続かない。
彼女の云っていることは紛れもなく正論で、間違いがなかった。
だから───其れ故に、感情を抑えられない。
正論だからこそ、感情論でしか返せない。
さながら獣の慟哭のように、只管に叫ぶしか出来ない。
笑みを向けられれば、余計に涙が止まらなかった。

「理解してる。頭では解ってるわぁ──……
 解っていても、解っていても納得できなくて。
 罪が其処に在るならば罰を与えるのは当然のこと、だけど」

抱き寄せられれば、更に大粒の涙を浮かべる。
震える声と四肢を精一杯に抑えながら、
彼女の公安委員の制服の裾をちょんと握る。

「────猿の手なら」

嗚咽交じりに、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
丁寧に、自分が今彼女に伝えられることをしっかりと伝えられるように。
──何時伝えられなくなるか解らないから。

「猿の手なら、平凡な日常にささやかな抵抗を試みた誰かは、
 大きな代償を支払って元の日常に戻れる筈よぉ

 だから、お嬢さんだって────」

嘗て自分が敵だと宣言した彼女に抱かれて、何故此処まで泣いているのか。
自分が一番解らない。
其れでも、近くで彼女を見れば繊細で、優しくて、とんでもなく儚い。
普通の女の子で在れた筈の彼女の笑顔は狂おしいほど美しくて。
そんな彼女を、失いたくなかった。

「お嬢さんの願いは『誰の』願いなの?
 お嬢さんは───、『何を』望むの?」

初めて名前を呼ばれれば、堪えていた涙も我慢が出来なかった。
あれだけ何度も名前を頑なに呼んでくれなかった彼女にそう呼ばれれば。
ぽろぽろと涙を流しながら、大きく肩を震わせた。

クロノス > 「―――ええ、大きな代償を払って、
 もし代償が私に『払いきれた』のなら、
 私も元の日常に戻れるんでしょうね。」

因果応報、そこに罪があるのなら、当然罰もある。
自分が持てる全てを使い切ってでも払いきれなかったのなら、
最も大事な『ソレ』を、手放す事でしか払う事が出来ない。

服の裾を握る彼女の手に、それに自身の手を重ねるかを迷って、
空中で一瞬手が泳ぐ、やがてゆっくりと、その手に手を重ねた。

彼女の泣き顔が、自分が彼女を失った時のそれに似ていたから。
『まだ』握れる内に、握ってあげようと思ったから。

手を握ると、抱きしめていたツヅラをゆっくりと放す。
彼女の瞳を覗き込み、いつものように口元を歪めて笑みを作る。

「私の願いは、彼女の―――偲様の願い。
 私が望むのは、彼女の願いを叶える事ですよ。
 たとえ私がどうなったとしても、彼女が願った事は叶えてみせます。」

握った手に、少しだけ力を込める。

「ですが、貴女を泣かせてしまったお詫びはしないといけませんね。
 ツヅラ、何か望みがあるのなら言ってください。
 ―――ええ、今のうちに。」

そう言って彼女は、ツヅラに向けてにっこりと微笑んだ。

薄野ツヅラ > 「───」

其の言葉には、もう何も返すことが出来なかった。
正論で、感情論でもどうにでもならない"事実"。
現に法の番人である公安委員の第二特別教室の『室長補佐代理』であれば、
どうにもならないことを解った上で。
優しく言葉を選んで呉れる彼女にはもう何も云えなかった。
手にぽたり、と涙が落ちる。

偲様。
つい先日の事件の首謀者である其の少女の名前は
耳にしたことがあった。
笑みを浮かべて言葉を紡いだ彼女を見遣れば、
少し納得したように目を合わせた。
屹度、目の前の彼女も自分と同じなのだろう、と。
自分より大切な何かの為に一生懸命になって、
必死でやっていたのだろう、と。

ぐちゃぐちゃに泣きはらしながら、必死に笑顔を作る。
目が合えば、擽ったそうに肩を竦めて笑う。
握られた手を、ぎゅうと握り返す。

「───魔術を教えて。
 お嬢さんみたいに、誰かの願いを叶えられるような。

 誰に記憶を弄られても、例え自分で頭の中を空っぽにしようとも。
 ボクがお嬢さんを絶対に忘れられないように」

ぽたりと涙を溢しながら、明るく何時もの笑顔を作る。

「可愛い後輩に置き土産をひとつ、くださいな」

クロノス > 「ええ、勿論構いませんよ」

そう言うと、彼女は笑顔のまま、
彼女の小指に指を絡める。『約束です。』と。
ポケットからハンカチを取り出すと、
もう片手を彼女の頬に当て、彼女の目をふんわりと拭う。

「やっぱり、貴女は笑顔のほうが可愛いですよ。」

拭き終わると彼女の頭を撫でて、
『最後に一夜の思い出をとか言われなくて良かったです。』
と冗談をいいつつ、にっこりと笑った。

薄野ツヅラ > 「ええ、約束よぉ」

ふんわりと、柔らかい笑みを浮かべた。
目を拭われれば、擽ったそうに目を細める。

「………お世辞は結構よぉ、それと───」

人差し指をぴんと立てて、彼女の先刻の所作を模す。
自分の唇にそっと人差し指を宛てがう。

「ボクのことを忘れてほしくないから。
 一夜の思い出じゃないけど、少しくらいなら献血してもいいわぁ」

悪戯に、小さく笑った。

クロノス > 「お世辞ではありませんよ。『可愛い後輩』ですからね。」

彼女のその仕草を見ればくすっと笑って。

「では、お言葉に甘えて、
 『少しだけ』献血して貰いましょうか、
 ツヅラの事を忘れないように。」

実際には、そんな事をしなくても忘れはしない。
でも、彼女がそう言うのなら―――。

彼女の唇に宛がった手に自分の手を重ね、
彼女の肩に手をかけると、口元を歪めて瞳を細めた。

「―――ええ、『少し』だけ。」