2015/06/26 - 03:46~03:27 のログ
クロノス > 手を握ったまま、一瞬でもあり永遠の時間が流れる。
『それ』を終えてしまえば、彼女との別れが決まってしまう気がして。
他には誰も居ない教室、空けた窓から他の委員会の会議の声と、
初夏にはまだ少し早い時節の心地よい風が吹き込み、
帽子を取った彼女の白い髪を揺らした。
ふわりと漂う彼女の髪の香りが、ツヅラの逸らした顔に届く。
その頬は少しだけ朱が差し、その目元は涙の跡に染まっている。
逸らした瞳は夕日を受けて煌き、その瞳から伸びる睫毛は、
緊張からか僅かに震えている。
自分の為に泣き、自分の為に怒ってくれた彼女を、
心の底からいとおしいと思った。―――だから。
自分が彼女を忘れないように、そして、彼女が自分を忘れないように。
ゆっくりと瞳を閉じると、少しずつ彼女に近寄って行く。
『ごめんなさい』と『ありがとう』、そして『さようなら』と、
握った彼女のその白い手、
―――その指先に、少しだけ牙を立てる。
薄野ツヅラ > ふわり、彼女の白い髪が目に入る。
落第街でも、今此処でも変わらない柔らかそうな髪。
ぼんやりと眺めれば、幸せそうに目を細めた。
始めは気に食わない公安の犬、なんて思っていた。
けれど傍で見てみれば随分と健気で、優しくて。
それ以上に手を伸ばさないと消えてしまうように儚い。
────やっと手を掴んだと思ったのに、
自分の力が足りずに直ぐに手をすり抜けてしまうような。
指に牙を立てられれば、ツウと頬に一筋の涙が零れた。
クロノス > 「あ、痛かったですか?」
そう言いながら、彼女の指先の血を少し舐める。
少しだけの血から、彼女の直前の記憶と思いが流れ込む。
『ああ、そうですか、この子は―――。』
そう思いながら、片手は彼女の血の流れる指先に指先を絡め、
もう片手はゆっくりと彼女のその涙が伝う頬に手を伸ばす。
「貴女の力は十分に足りています、
私がいなくなるのは、貴女のせいじゃない。
―――だから、泣かないで下さい。」
指先でその頬に伝う涙を拭うと、
ゆっくりとその震える唇に、自身の唇を重ねた。
彼女の唇から彼女の『命』の一部が、『魔術の欠片』が流れ込む。
―――それは信じるココロ、彼女の『魔術』の欠片、そして、彼女自身の『欠片』
理屈を抜きに『魔術』を信じられる、そんな『奇跡』の力の断片。
一瞬だけ触れ合った唇が離れ、指先がゆっくりと解ける。
「貴女に会えて本当に良かった。―――さようなら、ツヅラ。」
『世界で二番目に愛していますよ。』
その言葉は、彼女の心のうちで発されたものか、
口から漏れ出たものか、彼女には分からない。
瞳を伏せ、帽子を深くかぶりなおすと、
その教室から鉄底の靴の音を立てて出て行く。
僅かに空中に煌く透明の雫が、夏風に溶けて―――消えた。
ご案内:「公安委員会 第二特別教室『調査部別室』本部」からクロノスさんが去りました。<補足:白い髪、紅い目、公安委員会の制服。にっこりと笑みを浮かべている。>
薄野ツヅラ > へたり、その場に座り込む。
暫くその場で呆然としていたのは果たして戸惑か、
其れとも面食らったのか。
「────ボクも二番目に大好きです、先輩」
ひとり残された「第二特別教室」で、誰に云うでもなくぽつりと呟いた。
屹度もう会えないんだろうと。彼女の唇の温度を忘れないよう。
何度も唇に指を宛てがって。
両の手で顔を覆って、涙でぐちゃぐちゃになった顔を隠して────
彼女は、やっと心から笑えたような気がした。
ご案内:「公安委員会 第二特別教室『調査部別室』本部」から薄野ツヅラさんが去りました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。左腕には公安の腕章。>
ご案内:「外側環状道路」に五代 基一郎さんが現れました。<補足:特殊警備一課の制服。現在学生街から異邦人街の間、歓楽街の中間あたりで渋滞に捕まった。>
五代 基一郎 > 委員会街からの帰り。
会議の資料を半私用のパトロールカーの助手席に乗せて
車で一課棟に戻ろうとした矢先だった。
学生街から高速に乗り、異邦人街までと思っていたものの
その中間あたりの歓楽街で渋滞に捕まる。
先日確かに事故はあったが、処理についてはもう終わっているはずだ。
車内のナビゲーションシステムによれば、なにかの規制らしいが
詳細は出ていない。高速機動隊も出ているらしいが
風紀の無線から入ってくる情報があまり鮮明ではない。
公安関係の案件や、特殊装備についての資料作成がある。
早く戻りたいところだがどういうことだろうか。
ご案内:「外側環状道路」に朱堂 緑さんが現れました。<補足:No.38 五代と電話越しに会話中。>
朱堂 緑 > 突如、五代の電話が鳴る。
まるで、示し合わせたかのようなタイミングで。
コールは短く5回。
昔と変わらぬ『合図』であり、符丁。
五代 基一郎 > 突如となるコール。
ディスプレイに名前は表示されない。
しかしコールは5回。つまり昔と変わらぬ通例。
相手はわかっている。
それにこのタイミングという事は。
今起きていることは乃ち。
それらを考える前に電話を取り、電話の主に問いかけた。
「どういうことか、説明はあるよな」
朱堂 緑 > 「30分前に落第街で状況『R』だ。
既に主幹道路は全面封鎖。鉄道委員会もつい5分前に運行の一部見合わせを公式に発表した。
恐らく、下手人は監視番号266番。
能力からしてまず間違いないが、余計なものが増えている。
市井の有志が応戦しているが、状況は芳しくない」
誰何の受け答えすらなく、簡潔に状況を伝える。
お互いに時間が惜しい。
ならば、することは決まりきっている。
「これが現場の状況だ。『上』の状況は? 執行部は動くのか?」
五代 基一郎 > 監視番号266。
数字上での表記、それは懸念されていた事案の一つである。
それが落第街が暴れている。しかも余計なことが増えているということは
やはり”シュラウド”から得たものを使っているに違いない。
状況は”かなりよろしくない”と言っていい。
「動かないな。執行部が”動く”ということがどういうことか。
それなりの地位なら知らない人間はいやしないだろう。
それひっくるめて議題でも聞いたがどこも動かない、というのが妥当でこの現状じゃない。
英雄の勲章どころが業務の執行もそうだ。誰も彼もが泥ひっかぶるのが見えてる今だ。
こういう問題が二度連続して起きてるんだから
どこの『上』もある程度保身を考えるのは無理ないよ。
予想は出来てたんじゃないの」
朱堂 緑 > 「ああ、あんまりにも『妥当』な判断過ぎて眩暈がするくらいだ」
動くはずがない。
この状況で動くことは行政側の過失を全面的に認めることになるし、何よりも対応が早すぎる。
早すぎる対応は『未然防止』ができたのではという言い訳を反体制側に与える材料になり、最大与党である生徒会シンパから見てもロクな事がない。
このような状況での即応は即ち『十二分な軍備』を日頃からもっていることの示唆にしかならないのだ。
少し前の西園寺によるクーデター騒ぎの直後にそんなものを誇示すれば保安権の発言力と引き換えに予算をとりあうための軍縮の言い訳にされるのがせいぜいオチだ。
この島での保安権に対する発言力なんて、『次の鬼』の役目でしかない。
クーデター前ならいざしらず、今は旨みが少なすぎる。
だいたい、この状況で判を押せる奴がどこにいるのか。
いるとすれば生徒会だが、生徒会は基本的に事が済んでからでなければ動かない。
このような状況での即応は結局現場の事後承諾になるのが大半だ。
だが、その『事後承諾処理』の手番を手薬煉引いて待っている『上』の連中がここで迂闊に動くとは思えない。
どこがババを引くのか、優雅に会議室で誰も彼もがパスの連打だ。
「動くとしたら、全部終わってからか。
泥ひっかぶる奴が決まってからようやくおっとり刀で駆けつけて全部台無しにして大団円ってわけだ。
公安執行部の絶滅部隊が出るだけのお膳立てには最低でもそれくらいは必要だろうからな。
風紀のほうで『羊』はでるのか?」
責任押し付け先の人柱のことだ。
公安から出ることはない。既に『そいつ』は今『場』で暴れている。
五代 基一郎 > 「出るわけないじゃない。先の件でわかりやすい形で出たんだから。
風紀から出せるわけもなし。公安から出せるわけはない。」
少し前の西園寺によるクーデター騒ぎの際にわかりやすい
英雄という形の『羊』すなわちレイチェル・ラムレイが出た。
とはいえ軽度に済ませられるもので、そう状況に落とし込めるものがあった。
だが二度目はない。誰であろうと二度目を出せば英雄を重ねて出すか
風紀の立場を強くすることになりかねない。
さらにいえばいくら治安維持が御題目とはいえ、公安にそこまで差し出すことを
許すものはいないだろう。事がそもそういう組織の中のはみ出し者の範疇が引き起こした程度の話になる。
であれば自分の尻を拭けないなどということはないだろうし、そも拭けないならそこまでしてやる義理はない。
早く内々に処理しろお前らの落ち度だろうとのが風紀の上の見解だろう。
公安から保安権をそも揺るがす事案が連続して出されているものだから
業務として同門とはいえ嫌気がさしているのが実情だ。
現状風紀が勇み足で委員会街公安本部付近等で第二特別教室の
人間をひっ捕らえないのがせめてもの救いである。
そのような愚か者がいないということが、だが起きかねない程度には詰まっている。
そうなればそいつが次の風紀の『羊』の札が着けられる。
「どこも看板だよ。シャッター上げたがる奴はいないだろうさ。」
遠条寺に説明した通りである。
何所の組織も動かないし、何所も動きたがらない。
止めるものはできない。下手に動けばどうなるかわかっているからだ。
「だけどその先も予出来ていたから、こうして確認してるって話じゃないのか」
朱堂 緑 > 「何事も確認は大事だからな。
まぁ個人的には何かの間違いで良いニュースが聞けることを常に祈っているがね」
祈るだけなら誰でもできる。
祈りも嘆きもすべて真実なのだろう。
だが、真実に力はない。その実状がこれであり、この有様だ。
どこの『上』の連中もそのくせどうせ楽しんでいる。
アクシデントは常にチャンスと隣り合わせだ。
今回も、対岸にいる連中からすればこれは『それ』でしかない。
「何処も彼処もミスキャストで一杯、か。
相応しい役者が舞台にいないなら、その舞台はどうするべきか。
そういう話になるんだろうな、やっぱりこれは」
五代 基一郎 > 「聞きたくはなかったさ、いつもどこでも悪いニュースだらけだ。
どこの誰もがそれを楽しんでいる、それで楽しませているつもりになってると思うと
神に祈る気なんざ起きなくなるよ」
確認は大事だがここまでハッキリした現状を見せられれば
こういった事態やそれらの問題、予想されうる事態が浮き彫りになる。
ミスキャストどころの騒ぎではない。
舞台ごとひっくり返したくなる状況だ。
いや、納められるのだろう。
それは機械の神が舞台装置をひっくり返すのではなく。
「今一番妥当なのは、相応しい役者を観客から上げることだろうな」
ご案内:「外側環状道路」に薄野ツヅラさんが現れました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。左腕には公安の腕章。>
薄野ツヅラ > ───カツリ、カツリと。
夜の高速道路に、乾いた杖の音が響く。
生憎渋滞していて、屹度『何かが』在ったのだろうと少女は車を降りた。
「───こんばんは、最低で───素敵な夜ですね」
『誰か』と電話をしているであろう五代の傍に、
左腕に公安委員会の腕章を巻いた紅いジャージの少女が姿を見せた。
朱堂 緑 > 「参加型の舞台はウケもいいしな」
既に、舞台は仕上がった。
緞帳も既に紐が緩み、今にも外れて幕が落ちる瀬戸際。
ならば、そこで求められるのは最早、役者ではないのかもしれない。
「宴も酣ってか。仕上げはまだまだってところだが、生憎時間が許さない。
なら、もう、するべきことはどこにもない。
やらざるを得ない事が、あるだけなんだろうな」
皮肉気に嘯いて、鼻で笑う。
いつだってそうだ。
選択などしてない。
そこにあるのは、選択「させられた」何かだけだ。
自分で選んだことなんて、恐らく一つもない。
それでも、やらざるを得ないのならば。
「そろそろ、『若いの』がそっちにいく。あとは頼んだ」
それだけいって、電話を切る。
お互いに必要な情報は交換した。
なら、もうそれ以上は必要ない。
それだけのことだった。
ご案内:「外側環状道路」から朱堂 緑さんが去りました。<補足:No.38 五代と電話越しに会話中。>
五代 基一郎 > 結論はもう出ている。
それが実態として出るのは、遅かれ速かれの話であり
もうそれは始まったことなのだ。
終わりが始まる。
閉幕の時間だ。
話は終わった。
何を、と
返す前に窓ガラスを叩き挨拶をする少女が見えた。
電話は切れている。
それを仕舞いエンジンを切れば、返事のようにドアを開けて
外に出た。
動くときは高速機動隊が通達するだろう。
「どうだろうかね。それとも、そういうのが第二の習わしなのかな
特徴的な挨拶をするのがさ」
ドアを閉めて思う。
何が後は頼んだ、なのやら。
夜の高速道からでも遠目に見える落第街の姿に目を向けながら
その第二の『若いの』に返した
薄野ツヅラ > 「───あっは、光栄です」
特徴的な笑い声を溢しながら、ふんわりと笑顔を浮かべる。
暫し瞑目して、深く、深く深呼吸をひとつ、ふたつ。
ゆっくりと目を開ければ、真っ直ぐに紅色の双眸が。
不敵で、挑戦的なその目が五代を捉える。
「はじめまして、かしらぁ?
公安委員会直轄第二特別教室所属、活動名『堂廻目眩』よぉ──……☆」
間延びした語尾に、やる気のなさそうな口調。
その場に相応しくないのんびりとした笑顔を浮かべて、くすりと微笑む。
五代 基一郎 > 「彼女がどうなるか、ならもう決まってるよ」
その第二の若いの。堂廻目眩に自己紹介することもなく
聞きたいだろう本題についてさらりと切り出した。
今こんな場所で、第二特別教室の室長補佐代理が暴れている中
その人間が偶然現れることはない。そして公安でもない人間に態々訪ねてくる理由は1つ。
朱堂緑と呼ばれる前室長補佐代理と個人的な繋がりがあるだろう
人間であり状況が説明できそうな、また予測されうる結果を知りたくて来たのだろう。
堂廻目眩の伺うような、見定めるような瞳など気にも留めず
欠伸混じりに落第街を見ている。ボンネットに腕を乗せて休みながら。
薄野ツヅラ > 「教えて貰えないかしらぁ、其れが知りたいだけで───」
当然のようにそう云われれば、困ったように笑顔を浮かべる。
落第街をぼんやり眺めながら「ホテルは無事かしらぁ」、と独り言つ。
何が起きたのかは屹度自分の予想通りだろう。
ただ知りたいのは、自分の上司がどうなるのか、
あそこまで暴れてお咎めなしな筈がない。
「其れと、第二特別教室側で必要な後処理を。
何をすればいいのか教えてもらえないかしらぁ?」
最近引き抜かれたばかりでねェ、と笑う。
五代 基一郎 > 「首が落とされて代りの首が入るだけだよ。
後処理は俺じゃなくて新しい室長補佐代理に聞けばいいんじゃないの」
俺に聞かれても困るよ。
俺は風紀だし。と答えつつ思う。
そろそろ高速が動けるようになるかなと。
薄野ツヅラ > 「───新しい、」
室長補佐代理ねェ──と言葉は続く。
自分以外には第二特別教室にクロノスしかいなかった筈だ。
適当な部署から左遷されてくる人でもいるのかな、とぼんやり思案する。
「ええと、そりゃドーモ、です」
想像以上にシビアに云い切った彼を見遣ればきょとん、と。
ぼんやりと視線を高速へ向ける。
このままいつも通りになるのかな、と小さく呟いた。
五代 基一郎 > 高速の情報が新たに受信される。
交通規制は一応解除されるようだ。
事態が終わったように見える。
「そろそろ動くから、戻った方がいいよ。
ここの見世物騒ぎも終わるだろうし」
返事など待つこともなく、ドアを開けて
乗り込み。エンジンをかける。
他に聞きたいこともないだろう、と言外に伝え。
ウィンドウを開けて、堂廻目眩に顔を向けて一言。
「それじゃ、また機会があれば。」
薄野ツヅラ > 「あ、ええと──ありがとうございます」
エンジンを掛ける五代をぼんやりと眺めながら、
邪魔にならないように数歩下がる。
自分の降りたタクシーをちらりと探す。
ウインドウ越しに五代の顔を見遣れば、ふんわりと笑顔を浮かべる。
「ええ、また何処かでお会いする機会があれば」
にっこりとほほ笑んで、そのまま五代を見送るだろう。
五代 基一郎 > 微笑みに返すこともなく、挨拶は終わったのだからと
ウィンドウを閉じて規制の解除を待った。
結構に前の方の車が動き始めている。
しばらくすれば、ここも高速道路としての機能を取り戻すだろう。
そう
いつもの通りに。
ご案内:「外側環状道路」から薄野ツヅラさんが去りました。<補足:赤いジャージにヘッドフォン。右手で金属製の前腕部支持型杖をついている。左腕には公安の腕章。>
ご案内:「外側環状道路」から五代 基一郎さんが去りました。<補足:特殊警備一課の制服。現在学生街から異邦人街の間、歓楽街の中間あたりで渋滞に捕まった。>