2015/06/26 - 19:41~21:16 のログ
ご案内:「保健室」に畝傍・クリスタ・ステンデルさんが現れました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。狙撃銃を持っていない>
畝傍・クリスタ・ステンデル > 打ち捨てられた祠で起こった、"這い寄る混沌"――鳴鳴とその従者・石蒜の二人と、畝傍の戦闘からしばらく後。
畝傍は鳴鳴の追撃を振り切ることには成功したものの、やがて体力の全てを使い果たし、異邦人街の路上で倒れてしまっていた。
それを保健課の生徒によって発見され、幸いにして命に関わるほどの怪我がなかったことから、ここ保健室まで搬送されていたのだ。だが――
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……うう……来るな。こっちに来るな……!わたしに……触るな……!」
畝傍は悪夢に苦しんでいた。その原因は、交戦中に狙撃銃を身代わりとして放り投げたことだ。
しかも投げた狙撃銃は、突如として畝傍に開花した未知の『炎』の力の影響で爆発四散し、恐らくは跡形も残っていない。
畝傍は狙撃銃、あるいはその形を模したものが手の届く位置にないまま長時間が経過すると、
忘れがたい過去――死の淵に瀕し、異能に目覚め、狂気に陥ったあの日のフラッシュバックに苛まれてしまう。
畝傍・クリスタ・ステンデル > そして何より、今の畝傍を苦しめているもの。それは――
「……シーシュアン……ちがう……サヤ……ボクは……ボクは……」
石蒜――否、『サヤ』に対する悔恨の念。
あの時、畝傍は石蒜あるいはサヤのため、自身にできる限りのことをしようとした。
しかし、結局サヤとしての彼女を取り戻すこともならなければ、かつては畝傍の『トモダチ』だった石蒜としての彼女にも敵と見做されてしまう結果に終わってしまったのだ。
畝傍はふたたび、独りになっていた。
畝傍・クリスタ・ステンデル > 自分が『生きている炎』のことを、『サヤ』のことを探ろうとさえしなければ。
愚かにもあの黒い童女の手からサヤを取り戻すなどと考えなければ。こんな事にはならなかっただろうか。畝傍は悔やんでいた。
そして、保健室のベッドの上で布団に包まりながら、畝傍はしばしの間身動き一つ取れず、恐怖に怯え、哀しみに暮れていた。
だがしばらくすると、畝傍は震える右手で頭をなぞり、ヘッドギアを操作して開くであろう収納ポータルから狙撃銃のレプリカを取り出すことで精神を落ち着けようとする。
どうにかヘッドギアがあるべき場所にあることは確認できたものの、触れてもポータルは開かない。故障しているようだ。
「…………そんな」
ご案内:「保健室」に蓋盛 椎月さんが現れました。<補足:蜥蜴のヘアピンをした白衣の女性。いわゆる保健医>
蓋盛 椎月 > 「邪魔するよ」
(控えめな音を立てて保健室の扉が開かれる。
怪我人が運ばれたという連絡が少し前に入っていた。
重傷ではないらしいが――一応様子は見ておくべきだろう)
(ベッドの上で悶えている少女が目に入る)
「……どうした。何か必要かね」
(丸椅子を取り、近づいて座ろうとする)
畝傍・クリスタ・ステンデル > 亜麻色の髪に蜥蜴のヘアピンをした白衣の女性が目に入る。
どうやら保険医のようだ。
「……銃が……ないんだ。ううん……ボクが投げた……だから……うう……っ」
女性に説明をしようとするが、難しい。
せめて寮内の自室にある予備のヘッドギアが手に入ればよいのだが、そのようなことで保険医の手を煩わせるわけにもいかないと考えていた。
畝傍は狂人ではあるが、そのあたりの判断は少なくとも年齢相応にはついているほうだ。
蓋盛 椎月 > 「ふむ……、まるで戦場帰りの兵士だな」
(自身の顎に手をあて、無表情に畝傍の身体を観察する。
てひどい外傷はないように見える。
すると精神的なもの――PTSDか)
(頷いてみせる)
「銃か――わかった。少し待っていなさい」
(一度畝傍の元を離れる。
カチカチ、と錠のなる音が聴こえる。
しばらくして戻ってきた保健医の手には
上下二連式の30インチほどのショットガンがある。
おそらく保健室のどこかに、どういうわけか隠されていたのだろう。
もちろん弾丸は抜いてある)
「どういう銃がいいかは知らないが――
これでどうかな」
(再びそばの丸椅子に座り、そっと渡す)
畝傍・クリスタ・ステンデル > 畝傍は震える両腕を伸ばし、差し出されたショットガンを受け取り、抱える。
普段から携行している狙撃銃とは違うが、その感触は畝傍の精神を落ち着かせるに十分なものだった。
「…………ありがと。おかげで、なんとか」
平静を取り戻した畝傍は、女性に礼を述べ。
「おねーさんは、ここのせんせい、だっけ?」
畝傍は長らく不登校状態だったため、ほとんどの教師の顔すら知らないものの、
眼前の女性の服装から恐らくは養護教諭であろうと察し、問う。
蓋盛 椎月 > 「どういたしまして。落ち着いたかい。何か飲み物でもいる?
……保健室にこんなん隠してるのは内緒にしておいてね」
(笑顔を作り、指を立てて内緒のジェスチャー)
「そう。生徒の心身の健康を守る養護教諭、蓋盛先生だよ。
……きみは畝傍さん、でよかったかな? よろしく」
(銃を常に持ち歩き、保健病院でカウンセリングを受けている
畝傍という生徒がいる――というのは、知識としては知っていた)
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「のみもの……ボク、オレンジジュースがいい。ある?」
先程までの苦しみようはどこへやら、蓋盛と名乗った養護教諭に笑顔で話す。
畝傍の精神は肉体に輪をかけて幼い。飲み物の好みもやや子供っぽい部分がある。
「フタモリせんせー……おぼえた。そう、ボクはウネビ。よろしくね、せんせー」
蓋盛の自己紹介に応じ、畝傍も自身がそうであると名乗る。
蓋盛 椎月 > 「はーい。了解」
(席を立ち、二人分のオレンジジュースをコップに注いで
トレイで運んで戻ってくる)
「その散弾銃はかわりがどうにかなるまでは持ってていいから。
あたしが持っててもどうせ使わないだろうし。
……鉄火場に持っていかれるとちょっと困るけど」
(自分のコップの縁をなぞる)
「銃がスキかい? もしくは撃つのが」
畝傍・クリスタ・ステンデル > 代わりが見つかるまでは散弾銃を持っていてよいとのことなので、ありがたく受け取っておくことにした。
「ありがと、せんせ。コレ、だいじにする」
畝傍はトレイの上のコップの片方を手に取り、オレンジジュースを一杯。
「……ぷはー」
美味しい。飲んだ後、蓋盛の問いに答える。
「ボクは……むかしボクのいた国で、銃を持って戦ってたから。いまはここでマモノを撃ってるけど、むかしはヒトを撃ってた。撃って当たればキモチよくなるけど……スキとかそういうのじゃなくて、ボクには……ソレしかないから」
先程まで明るかった表情は、またしてもやや暗くなった。
蓋盛 椎月 > 「おう、壊すなよ。ちゃんと元のママ返すように」
(畝傍の答えには、口を笑みの形にしたまま目を伏せる)
「そうか。少しもったいないな。
ずっと共にいることになるなら、スキになれたほうが
楽しくはあると思うけど」
(無理にスキになる必要もないしな、と付け加え)
「……ほんとうに、きみに他にはなにもないの?
スキになれそうなものはさ」
(穏やかな表情。ベッドのシーツに、軽く手を置く)
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「スキになれそうな、もの……」
考えたこともなかった。祖国で身体強化実験の被験体となり、狙撃手として活動しだしてから、畝傍は銃と共にあった。
銃は自身の一部であり、自身もまた銃を撃つために存在していた。
故に、それ以外のことなど、これまでの畝傍の眼中にはなかった。
畝傍の世界を広げてくれるかもしれなかった『トモダチ』は、今はもう敵となってしまっている。
「…………ボクの」
畝傍は黙り込んだ。蓋盛への印象が悪くなったわけではない。
ただ、うまく言葉を紡ぎだすことができなかった。
蓋盛 椎月 > (口ごもった様子を見て、目を細め)
「無理に口に出そうとしなくてもいい。
……まだあるんだろう、それが、きみにも。
大事にしたほうがいいよ。
せっかく悲しんだり楽しんだりできるんだ。
そうしたほうが、生きる難易度は低くなる」
「少し説教じみてしまったな。
おかわりはいるかい?」
(再び冷蔵庫に向かって、
オレンジジュースのボトルを持ってきた)
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「……うん、そうする」
顔を上げ、蓋盛のほうを向いて、畝傍は自らにも言い聞かせるように述べた。
「おかわり、あるの?ちょうだい」
笑顔に戻り、蓋盛にジュースのおかわりをねだる。
蓋盛 椎月 > 「きみは素直だな。いい子だ」
(楽しげな様子で、コップになみなみとジュースを注ぐ)
「もう大丈夫そうだね。
……あたしはちょいとエラい人に呼ばれてるんで一旦失礼するよ。
体調がよくなっても、何かあったらまた来てね。
話し相手ぐらいにならなれるから」
(席を立つ。
笑顔でひらひらと手を振って、保健室をあとにする)
ご案内:「保健室」から蓋盛 椎月さんが去りました。<補足:蜥蜴のヘアピンをした白衣の女性。いわゆる保健医>
畝傍・クリスタ・ステンデル > 「ばいばい、せんせー」
蓋盛に手を振り、見送る。その後、ジュースを飲み干した畝傍は、
蓋盛から受け取った散弾銃をしっかりと抱え。
「……ボクも、いかなきゃ」
畝傍は、自分ひとりの力でサヤを救うことは不可能と悟っていた。
ならば。せめてサヤを知る彼らに、そしてサヤを追う風紀委員に。
伝えなければ。自らが見たものを。サヤの背後に潜む悪意の正体を。
畝傍は散弾銃を左手で抱え、右手で端末を起動、操作しつつ、早足で保健室を後にする。
端末の画面には、風紀委員への情報提供フォームが表示されていた――
ご案内:「保健室」から畝傍・クリスタ・ステンデルさんが去りました。<補足:短いブロンドの髪と赤い瞳、オレンジ色のボディスーツ姿。狙撃銃を持っていない>